(そうだよね。秀吉さんと一緒ならなんだってできる)
秀吉さんは私の手をとり、優しく握ってくれた。
秀吉「じゃあ、行くぞ」
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安土城の広間に大名が到着し、ついに会談が始まった。
(落ち着いた感じの方だな)
数人の家臣を引き連れた大名は、名のある武士としての貫禄を漂わせていた。秀吉さんの隣に大人しく座り、行く末を見守る。
大名「信長様の政策はいつも斬新ですな。特に商売の規制緩和は、思いきった決断だと評判です」
秀吉「時代の流れに合わせ、つまらぬ旧制度を廃止する。当然のことです」
大名「なるほど。あの政策の数々は、信長様が先見性に富んでいるからこそ、打ち出せるものなのですね」
しばらくふたりの会話に耳を傾けていると、不意に大名がこちらを見た。
大名「それにしても、ゆう様は本当にお美しい。さぞ信長様のご寵愛を受けておられるのでしょうな」
「お褒めいただき、光栄です」
なるべく優雅に、にっこりと微笑む。すると、秀吉さんはぐいっと私の腰を抱き寄せた。
(わっ・・・・・・)
秀吉「ゆうは外見だけてなく、中身も優れた女。だからそばに置いているのです」
(秀吉さん、いつもより大胆だ・・・・・・)
信長様としての演技だとはわかっていても、ドキドキしてしまう。
秀吉「公務に同行して民と交流を持つだけではなく、世話役のような仕事も、自ら買って出ています」
大名「なんと・・・・・・!」
秀吉「ゆう以上に健気でできた姫は、この世におりません」
「私も、この方を心から尊敬しております」
秀吉「・・・!」
大名「おふたりの絆に感心しました。安土はこれからもどんどん栄えていくでしょうな」
その後、秀吉さんの手によって、大名との同盟は無事に結ばれた。
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夜になり、大名を交えた宴が終わった後------
秀吉「今日は寒さがいつもより和らいでるな」
「本当だね」
さっきまでの賑わいはすっかり薄らぎ、私たちはふたりで庭を散歩していた。淡い月明かりの下を歩いていると、秀吉さんにそっと手を繋がれて・・・・・・
秀吉「大変だったな。疲れてないか?」
「ううん。大丈夫だよ。ほとんど秀吉さんが受け答えしてくれたから。でも、自分のことも人前であんなに褒められると思わなかったから、ちょっと照れるな。もしかしたら、少し大げさに言ってくれたのかもしれないけど・・・・・・」
秀吉「何言ってる。あれは俺の本心だぞ。お前は安土に来てから、ずっと一所懸命頑張ってきたんだ」
「私も、秀吉さんを心から尊敬してるっていう、あの言葉は本心だよ。あと、秀吉さんだからそばにいたいと思う・・・・・・っていう言葉も」
秀吉「ゆう・・・・・・」
秀吉さんは、穏やかな笑みを浮かべて私を見つめた。
秀吉「表面は取り繕っても、お互い心は本心のままだな」
「そうだね」
(『信長様と姫』を演じていても、心はいつもの私たちみたいに通じあってた)
上座で悠然としていた、秀吉さんの姿が脳裏に浮かんだ。
「でも、会談の時の秀吉さんは、本当に完璧に振舞ってたよね。同盟が失敗しないように、本気で臨んでるのが伝わってきたよ」
秀吉さんは、いつもの笑顔の中に、どこか毅然とした表情を浮かべて頷いた。
秀吉「あの同盟は、今後の織田軍と安土にとって重要な役割を果たすはずだ。こうして俺たちがひとつずつ礎(いしづえ)を築くことで、皆が平和に生きられる世の中に、少しづつ近付いていくんだ」
(やっぱり秀吉さんは、自分のことより人のことなんだな。改めて気付いた。私は、秀吉さんのそういうところが好き。秀吉さんが自分を褒めることを忘れても、私が褒めてあげればいいんだ)
モヤモヤが晴れて、心がほどけていく。秀吉さんが、繋いでいないほうの手で、私の頭を優しく撫でてくれる。
「あのね、秀吉さん。伝えたいことがあるの」
秀吉「ん。なんだ?」
「ええっと・・・・・・」
(改めて言葉にしようと思うと、難しいな。でも、上手に言えなくても、これだけは秀吉さんに伝えたい)
秀吉さんはなにかを察したのか、足を止めた。
秀吉「ゆっくりでいいからな。お前の言葉なら、一つ残さず聞きたい」
(秀吉さん・・・・・・)
私は募る愛おしさをこめて眼差しを向けた。
「いつも、人のために行動する秀吉さんのことは尊敬してるけど・・・・・・私にとって、誰よりもかっこよくて一番なのは秀吉さんだよ。そのことだけは覚えておいてね」
(秀吉さんだけを、この世でこんなに愛してる)
湧き上がる衝動に突き動かされるように、ぎゅっと秀吉さんに抱きついた。
秀吉「・・・・・・っ」
秀吉さんは一瞬驚いた後、少し頬を染めて笑みを漏らした。
秀吉「お前に言われると照れくさいな」
「でも、これも私の本心だから。私だけは、秀吉さんにこうして伝えたいの」
素直な想いが口からこぼれると、温かな腕に抱きしめ返された。
秀吉「ありがとな。他の誰でもない、お前にもらった言葉だから嬉しい。約束する。俺は、いつまでもお前の一番であり続けるよ」
↑一番であり続けるっていう約束って、素敵だよね。最高の言葉だなって思う。よーく考えるとね、「いつまでも俺の一番だ」より長い愛を約束された気がするな。。。
ゆっくりと顎をすくわれて、
「・・・・・・ん・・・・・・」
触れるだけの優しいキスが、唇に落とされた---・・・
(秀吉さんの好きなところは数えきれないほどあるけど、全部伝えていきたいな・・・・・・)
とめどなく溢れる感情に翻弄されながら、引き寄せ合うように、私たちはまた口づけを交わした。
えっと、今更だけど、大名と同盟締結したんだよね。
この同盟締結した大名と、信長様はこの先ずっと会えないね。だって、会った瞬間本物の信長様じゃ無かったってばれるよね。。。?
と、変な心配をしたゆうでした。