政宗「・・・・・・甘えるな」

(え・・・・・・)
厳しい一言に、思わず息を呑む。

政宗「お前が武家に生まれた以上、武士として逃げ出すことは許されることじゃない」

宗二郎「っ・・・・・・」

正論をつきつけられ、宗二郎くんは視線を落とし膝の上で拳を握りしめた。
(厳しい言葉だけど、政宗の言っていることは正しい。甘やかすことが優しさじゃないから・・・・・・)

政宗「でも・・・・・・よく話したな」

政宗は柔らかく微笑み、宗二郎くんの頭をくしゃっと撫でた。
(え・・・・・・)

政宗「逃げ出したことは褒められたことじゃない。だが、自分の弱さを素直に認めて、それを受け入れているお前は強い。どうするべきか、それに、お前自身がどうしたいのか・・・・・・とっくにわかってるんじゃないのか?」

(政宗・・・・・・)

宗二郎「・・・・・・政宗様、俺・・・・・・」

ぐっと唇を噛み、宗二郎くんは政宗を見上げる。

宗二郎「家に帰ります」

「宗二郎くん・・・・・・」

政宗「ああ、そうしろ」

宗二郎「俺・・・・・・一人の人間として向き合ってもらえたのが初めてだったんです。政宗様は、得体の知れない俺のことを、子どもだからといって甘やかすわけでもなく、自分の信念に従った上で、向き合ってくださいました」

政宗「・・・・・・」

宗二郎「俺は小さなことでいつまでも悩んでいて・・・・・・情けないです。母上に必要とされていないと思って生きてきました。でも、だったら・・・・・・必要としていただけるよう、政宗様のように前を向き、強くなりたいです」

そうね。政宗は生き方?生き様?がかっこいいもんねー。

政宗「そうか」

自分の歩む道を見据え直した宗二郎くんを、政宗は褒めたたえるように頭をぽんぽんと撫でる。

政宗「お前は、俺なんかよりずっと強い。母上と、上手くいくといいな」

(政宗・・・・・・)

宗二郎「はい」

その横顔に、もう迷いは見られなかった。

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それから宗二郎くんを家まで送り、私たちは部屋に帰ってきた。

「宗二郎くん、ちゃんと許してもらえたみたいでよかったね」

政宗「ああ、そうだな。ゆう」

いきなり政宗は、後ろから私の身体を引き寄せ、包み込むように抱きしめた。

絵になるな。この状況。政宗は綺麗なんだろうな。。。引き寄せ方も抱きしめ方も。。

「どうしたの?」

政宗「・・・・・・いや」

そう答えながら、政宗は私を抱きしめる腕をぎゅっと強くした。
(こういうの、珍しいな。甘えてくれてるみたいで・・・・・・嬉しい)

「政宗、変わったね。勿論良い意味でなんだけど・・・・・・自分の過去と向き合った上で、宗二郎くんの背中を、押してあげたんだなって思って・・・・・・」


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政宗「お前は俺なんかよりずっと強い。母上と、上手くいくといいな」

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(以前の政宗ならきっと、あんな風に言わなかったと思う。政宗の中で、辛かった過去ときちんと向き合えてるからなんだろうな)

政宗「俺が変わったとすれば・・・・・・全部お前が変えたんだぞ」

「私が・・・・・・?」

政宗「ああ、そうだ。いつも肝心なところで、俺の背を押してくれるのはお前だろ。お前がいて背を押してくれるから、後悔せずに済んだことだってある。お前には感謝してる」

「政宗・・・・・・」

熱いものが胸いっぱいに溢れるのを感じて、私を抱く政宗の腕にそっと触れる。すると、政宗は首筋に顔を埋めるようにしてくっついてきた。

政宗「・・・・・・」

(っ、やっぱりなんだか・・・・・・甘えられてる?いつもなら、こんな風にしないのに・・・・・・)
滅多にない触れられ方にも、首に触れる吐息にも、身体が熱を上げていく。

「・・・・・・政宗?」

耐えきれなくなって、声をかけた時------

政宗「お前が・・・・・・俺のそばにいてくれてよかった」

ひとり言のように、政宗がわたしの耳元で零す。思わぬ素直な言葉に、胸に温かなものがじわりと流れ込んできた。
(政宗が素直な気持ちをさらけ出してくれるなんて・・・・・・嬉しい)

「政宗が変われたんだとしたら・・・・・・それは、政宗自身の強さだと思う。私が背中を押してあげられたとしても・・・・・・一歩前に出る勇気は、政宗自身のものだから。宗二郎くんと向き合う政宗も、すごくかっこよかった。子どもとしてじゃなく、一人の人として接して、成長を促してあげたことも・・・・・・」

政宗「・・・・・・おい、そのくらいにしておけ」

そう咎められたかと思うと、身体をくるっと反転させられた。
(えっ?)

顔を覗き込むようにして、政宗のおでこが私にこつんとくっつく。

政宗「お前の気持ちはわかった。それ以上言うなら・・・・・・塞ぐぞ」

「ん・・・・・・っ」

呼吸が上手くできず苦しくなっても、政宗は離してくれそうにない。甘く深い口づけに頭の奥は痺れ、力も抜けてしまう。唇が離された時には、私は褥の上に押し倒されていた。



政宗「お前と・・・・・・いつか子どもを作ったとしても、ちゃんと愛してやれる自信がある」

「え・・・・・・」

政宗「お前じゃなければ、きっとそんな風に思わなかった」

(政宗・・・・・・)
政宗の言葉が私の奥深くまで響き、染み渡っていく。真上から私を見おろす瞳は優しくて、涙がこみ上げそうになるほど愛おしかった。

「私も・・・・・・いつか政宗との子どもができたら、めいっぱい愛するよ」

政宗「ああ」

そう言って、政宗が私の頬を優しく包む。

政宗「だがまあ・・・・・・今はお前と過ごす時間を大切にしたいから。もう少し先でも良いな」

政宗の口元が艶やかな笑みを描いたかと思うと、その唇が私の首筋に押しつけられた。

「あ・・・・・・っ」

政宗「だから今は・・・・・・お前を感じていたい」

ゆっくりと唇は首を伝い下りていき、甘い感触に小さく肩が震える。
(私も・・・・・・今は、政宗をたくさん感じていたい)

その想いのまま、広い背中へと手を回す。肌に触れる熱を受け止め、ふたりの長い夜が始まった。