笠を深く被り直し、緊張しながら店内に入る。店内は昼間といえど賑わっていて、顔を合わせない限り、政宗に気付かれることもなさそうだ。

光秀「二人だ」

お店の人「すぐに準備いたします」

(光秀さん、やっぱり慣れてるんだろうな)
ぎこちない私に比べ、飄々としている光秀さんに感心させられる。

(政宗はどこに・・・・・・)
角の席に案内され、周囲を見回すけれど・・・・・・

光秀「おそらく、中・・・・・・だろうな」

(え、中って・・・・・・?)

お店の人「こちらお熱いので、お気を付け下さい」

「あ、ありがとうございます」

ちょうど運ばれてきたお茶を受け取る。すぐに視線を戻すと、光秀さんがある場所を見つめていた。その視線の先をたどると・・・------

(あっ)
調理場から出てきた政宗に気付き、慌ててお品書きで顔を隠す。すると、意地悪な含み笑いが聞こえてきた。

光秀「逆に怪しく見える。普通に振る舞え」

(絶対に面白がってる・・・・・・)

「普通って・・・・・・光秀さんが冷静すぎるだけじゃないですか?」

光秀「冷静さというのも、尾行には必要なことだからな」

(確かに・・・・・・もっと自然に振る舞えないとすぐにばれちゃうよね)
そっとお品書きを顔から引き下ろすと、政宗がお店の主人と挨拶を交わしているのが見えた。

主人「政宗様、またいつでもいらっしゃってください」

政宗「ああ。また来る」

(まさか、アルバイト・・・・・・?いくら料理好きとはいえ、武将がアルバイトなんてしないか)

光秀「出るぞ。見失う前に移動する」

いつの間にかお会計を済ませていた光秀さんにお礼を言い、私も慌てて席を立った。

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飲み屋を出て、政宗が次に向かった場所は・・・・・・

光秀「香の店か」

品のある香りが、お店の外にまで広がっていた。
(政宗はお香をよく焚いてるから、ここに来ること自体は自然なことだと思うけど・・・・・・)

手前のお店の陰で窺っていると、綺麗な女の人が出てきて、政宗にしっとりと微笑みかけた。

女主人「文、お受け取りしましたよ」

政宗「急な頼みで悪かったな」

(えっ・・・・・・)
妖艶な笑みを滲ませる女主人と政宗のやりとりに、どぎまぎしてしまう。

(っ・・・・・・きっと注文のお手紙とかだよね)

光秀「ここの女主人の旦那は愛妻家で有名だ。お前の心配するようなことはないだろう」

私の心中を察したのか、光秀さんが教えてくれた。

光秀さん、優しい💙

「そ、そうなんですね・・・」

(よかった)
ほっと息をつき、二人の様子を窺う。

女主人「ご注文の品ですが・・・・・・こちらが良いと思います」

女の人が何か包みのようなものを政宗に手渡した。

政宗「ああ。助かる」

包みの中身を確認し受け取る政宗に、女主人は続けた。

女主人「優しい香りで、安眠できる作用のものだなんて・・・・・・寝不足ですか?」

政宗「まあ・・・・・・そんなところだ」

(政宗が寝不足?最近忙しくしてるし、疲れてるのかな)
心配する私の表情を見て、光秀さんが堪え切れなくなったように小さく笑いだした。

「なんで笑うんですか?」

光秀「いや?百面相しているお前がなかなか面白くてな」

「っ、からかわないでください」

意地悪な言い方に、思わず言い返すと・・・・・・

政宗「ん?」

私の声が聞こえてしまったのか、政宗がこちらを振り返った。
(っ、ばれた・・・⁉︎)

その時・・・------

光秀「・・・・・・」

「っ・・・⁉︎」

(光秀さん⁉︎)
片手で口を塞がれて、路地の影へと押しやられる。

光秀「しー・・・・・・」

政宗が行ってしまうと、光秀さんがようやく塞いでいた手を離してくれた。

「何するんですか・・・!」

光秀「声をあげれば、政宗に尾行が気付かれるだろう?間諜として育てるには、骨が折れそうだな」

「なりませんから・・・・・・!あっ」

言い合いをしているうちに、政宗が少し先にあるお店に入って行くのが見えた。
(私がよく使ってる反物(たんもの)屋・・・・・・?)

「何の用事だろう」

政宗はなかなか出て来ない。

光秀「この場所こそ、何か心当たりがあるんじゃないか?」

「心当たり?」

(あ・・・・・・っ)


------

「いいものを作るためにも、裁縫道具を新調したいなって思ってるの。せっかく新調するなら、質のいいものがいいし・・・・・・もっとがんばらなくちゃ」

政宗「欲しいものがあるなら言えばいいだろ。買ってやる」

「ありがとう。でも、目標があった方が頑張れる気がするから」

政宗「お前らしいな。そういうことなら、応援する」

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(もしかして、私が道具を新調したいって言ったから・・・・・・?)

光秀「よかったな。疑いが晴れて」

にやにやと笑みを浮かべる光秀さんは、何もかもわかっていたのかもしれない。
(もしかして光秀さん、政宗の計画に気づかせるために、わざと私を連れ出したんじゃ・・・・・・)

ちらっとその横顔を見上げるけれど教えてくれそうにもなかった。
(でも尾行なんて、やっぱり政宗のことを疑ったみたいで、ちょっと申し訳なかったな。帰ったら、正直に打ち明けよう)

今になって罪悪感がこみ上げてきて、そんな風に考えていると・・・・・・

「っ、え!」

誰かに笠をふわっと取り上げられる。

「あ・・・・・・っ」

振り向く前に、私は後ろからぎゅっと抱きしめられていた。

政宗「なーにやってんだ」

↑この言い方がさー、何がいいのよね〜 
政宗らしい言い方。尾行されてんのに、怒るわけでもなく。。。

愛しいその人の声が耳元で響き、どきっと鼓動が高鳴った。

「っ・・・!政宗!」