佐助「忘れないで、三ヶ月後だ!その時に・・・」
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(その時に・・・・・・また、ワームホールがここに現れる・・・・・・)
佐助くんが叫んだ言葉を胸に刻みつけて・・・ガイドブックをバッグにしまい、私は雨の中を、ひとり歩き始めた。
------・・・三ヶ月後。私はまた、京都を訪れていた。どれだけこの日を、じれったい気持ちで待ったかわからない。本能寺跡地の石碑の前へ着き、空を見上げる。風が強くなって、空を黒い雲が覆っていく。
(戦国時代に戻ったからって、幸村に再会できるかはわからない。あんなふうに突き放して勝手にいなくなったこと、許してもらえないかもしれない。恋人には、戻れないかもしれない。でも・・・・・・)
(あ・・・)
いよいよ雨が降り出すのを見て、手のひらに力を込めて、願う。
(神様、お願いです。もう一度だけチャンスをください。私は何もいりません。だから・・・・・・幸村に幸せな未来を、ください)
暮らしていたワンルームは引き払い、転職先の会社の人達に謝って仕事を引き継ぎ、辞めてきた。身の周りの人達には、お世話になったお礼と、遠くへ行くことだけ伝えてある。
(そばに戻って・・・・・・幸村が幸せになるために、なんだってする)
心の中で叫んだ瞬間、雷鳴がとどろいて・・・
(っ・・・・・・!)
三ヶ月前と同じもやが、私を包み込んだ。
その時・・・
???「ゆう・・・!」
(え・・・・・・?)
よく知っている声が、かすかに私の名前を呼んでいる。
(今の、声は・・・・・・)
幸村「ゆう!こっちだ!」
「ゆき、むら・・・・・・⁉︎」
かすむ視界の向こうに、幸村がいた。
幸村「迎えに来たぞ、バカ」
「嘘・・・・・・っ」
幸村「嘘じゃねえし、夢でもねえ」
(本当に・・・・・・幸村なの?)
幸村「話はあとだ。とにかく今は・・・・・・」
幸村の大きな手のひらが、私に向かって、真っすぐ差し伸べられる。
幸村「来い、ゆう」
(え・・・・・・?)
幸村「今度こそ断らせねえからな。お前は、俺と生きろ」
「っ・・・・・・うん」
精いっぱい腕を伸ばして、幸村に手を重ねる。世界が真っ白になった瞬間、幸村の胸に固く抱きしめられた。
(幸村・・・・・・っ)
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(ここは・・・・・・)
目を開くと、三ヶ月前と同じ場所に私は立っていた。前と違うのは、幸村の腕の中に抱き締められていること。
幸村「っ・・・・・・くらくらすんな、これ。ゆう、お前、平気か?」
「うん・・・」
幸村「なら良かった」
笑顔を浮かべる幸村の頬に、手のひらで触れる。たしかな体温が伝わって、雨に濡れた私の指先を温めた。
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幸村「来い、ゆう。今度こそ断らせねえからな。お前は、俺と生きろ」
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(夢じゃ、ない。幸村と一緒に・・・・・・戦国時代に戻ってきたんだ)
「一体、どうして・・・・・・」
幸村「佐助に、お前がいなくなってからのこと、全部聞いた。」
(佐助くんに・・・・・・?)
幸村「お前が未来を変えるために、元の時代に戻るって決めたことと・・・三月後にまた、こことお前の時代が繋がる機会があるってこと。それから・・・」
(っ・・・⁉︎)
むにっと頬をつままれて、幸村の顔が間近に迫る。
幸村「お前が俺に、未練タラタラだってこともな」
「っ・・・え・・・?」
幸村「・・・・・・佐助に言われた。お前の笑顔が痛々しくて、見てられないって。もう一度わらわせるために、迎えに行けって」
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佐助「ゆうさん、時間がないからこれだけ伝えておく。俺は・・・・・・君と一緒には帰らない」
「え・・・⁉︎」
佐助「ガイドブックに名前が載ってたのは君だけだ。俺は残って顕如討伐隊のところに戻る」
「なんで急にそんなこと・・・・・・っ」
佐助「急じゃない。あのガイドブックを読んだ時から考えてたことなんだ。俺には・・・・・・やり残したことがある」
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(佐助くんがやり残したことって・・・・・・こういうことだったの?)
目の前にいる幸村を、ひたすら見つめる。
差し込む月明かりの下で、ふたつの瞳がきらきらと眩しく輝いた。
「佐助くんは、今どこに・・・・・・?」
幸村「合戦の手助けをしたあと、俺の城に来ることになった」
「幸村の城・・・・・・?」
幸村「あれから、織田軍との同盟は解消して敵同士に戻った。だけど、お互い合戦で兵が疲弊してることもあって休戦になったんだ」
幸村「信玄様は散り散りになってる武田家の家臣達を集めて国に帰れることになって・・・俺も、故郷の城に戻ることにした」
(そうだったんだ・・・・・・)
幸村「血の気の多い謙信様のとこよりのんびりくらせそうだから、一緒に来いって佐助を誘った。俺の故郷で、お前が来るのを待ってるぞ、あいつ」
幸村が私の頭をくしゃっと撫でる。大きな手のひらが、私の心の奥まで、甘やかした。
(幸村・・・・・・)
幸村「お前が泣いても喚いても、二度と離さねえからな」
「怒って、ないの・・・っ?」
幸村「あ?俺に怒る理由ねーだろ。それに言っただろうが。俺はお前を守るって。・・・お前じゃなきゃ駄目だって。手離す気なんて、とっくになかった。追いかけるって約束したしな」
(それって・・・・・・)
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幸村「お前が、俺を愛してないって言うなら・・・今度は俺が、お前を追いかける」
「え・・・」
幸村「めためたに惚れさせてやるから待ってろ」
↑これって、何回聞いても反則だよー!
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(それで、本気で、おいかけてくれたの・・・?)
五百年の時さえ駆け抜けて、幸村は私を迎えに来てくれた。何度も繋いだ大きな手で、私をここにまた、連れてきてくれた。
「っ・・・・・・あのね・・・・・・」
幸村「ん?」
「愛してないなんて、嘘だったの」
幸村「・・・・・・」
「本当は、私・・・・・・っ」
幸村「言わなくても、お前の顔に書いてあった」
(え・・・?)
私の頬を幸村の手のひらが包み込む。瞳の奥に炎をらともして、幸村は微笑んだ。
幸村「ほんとお前、嘘つくの下手な」
(ばれてたんだ・・・・・・)
幸村「でもまあ、言えよ」
「え・・・」
幸村「俺のこと、どう思ってる?」
(今までと反対だ・・・)
幸村は答えをとっくに知りながら、私の言葉を待っている。別れたあの日、抱きしめられなかったたくましい身体に、きゅっと抱きつく。
幸村「・・・・・・っ」
「愛してる・・・。世界で一番、他にはなんにもいらないくらい、愛してるよ」
幸村「・・・ん」
「幸村と一緒に生きる。絶対絶対、離れないから・・・」
幸村「・・・・・・ん」
背中に腕が回されて、ぴったりと胸が重なり合う。
「別れ際にひどい嘘ついて、ごめん・・・」
幸村「もういい。今こうして、お前が腕ん中いるからな」
幸村が背中に片手を回したまま、空いている手で私の顎を持ち上げる。
(幸村・・・・・・)
惹かれあうように口づけを交わしながら、私は胸に誓った。二度と幸村のそばを離れずに、生涯、この温もりと生きていくことを・・・・・・。