顕如「だが、この恨み・・・・・・どれほど忘れようとしたとて、忘れられん」


乱暴な行動と裏腹に、顕如の声はどこか救いを

求めているように聞こえた。

(この人を私が憐れむのは、何か違う気がするけど・・・・・・悲しい、人だな)


政宗「どうあっても、復讐を諦める気はないってことか」


頑なな顕如の主張に、政宗がようやく、刀の

柄に手をかけた。


顕如「当然だ。他の連中とやらがここを見つける前にお前を片付けて、また姿をくらまし、好機を待つ」


政宗「へえ、俺を片付ける?お前がか」


顕如「正々堂々、勝負してやる気はない」


そう言うと、顕如はなぜか私から手を離した。瞬間、背中からどん、と身体を押され地面に倒される。


「え・・・・・・?」


政宗「ゆう!」


(っ・・・・・・、崖だ・・・・・・)

目の前の地面が途切れているのに気づき、ぞくりと背筋が震えた。慌てて立ち上がろうとすると、錫杖の先を向けられ阻止される。


顕如「伊達政宗、少しでも怪しい動きをしたら、この女を突き落とす。だがお前が自分から崖に飛び降りるなら、この女を落とさないでおいてやる。お前が決めろ」


(っ・・・・・・、そんな・・・・・・)


政宗「・・・・・・」


政宗は黙ったまま、一歩一歩と、崖淵へと

近づいて行った。


1. どうする気なの?


2. 政宗、やめて      ♡


3. 黙っている


「政宗、やめて・・・・・・!」


政宗「心配するな」


 ハラハラして見守っていると、政宗と視線が絡む。


政宗「・・・・・・」


(あ・・・・・・)

政宗は視線だけで、『信じろ』と語っているようだった。



------


政宗「もう充分、お前に支えられてるよ、俺は」


政宗「お前が俺のことをしんじてくれれば、何でもできる気がする」


------



(・・・・・・うん、信じてるよ、もちろん。私は政宗を、信じてる)

心を落ち着けて、私も肩の力をすっと抜いた。


政宗「・・・・・・」


政宗は眼差しをかすかに和らげると、顕如を強い眼光で見すえた。


政宗「・・・・・・いいぞ、落とせよ」


顕如「・・・・・・何?」


政宗「その女だ。落とせばいい」


 政宗の言葉にも、私は全く不安を覚えなかった。

むしろ顕如が動揺した様子で、一瞬ちらりと私を見た。


顕如「・・・・・・っ」


(あ・・・・・・)

錫杖の先が、ためらうように揺れる。

その一瞬の動揺を見逃さず、政宗が地を蹴るのが視界の端に映った。

 

政宗「ゆう、飛べ!」


「・・・・・・・っ!」


政宗の声に、弾かれたように身体が動いた。


顕如「っ、何・・・・・・⁉︎」


こちらへ駆け寄る政宗を見据えながら、私は思い切って地面を蹴った。とっさに伸ばされた顕如の錫杖の切っ先が、喉元をかすめる。


政宗「・・・・・・っ、上出来だ」


政宗は顕如の錫杖を刀でさばいてかわすと、私を

抱き締めて------


「っ!」


そのまま崖へと飛び降りた。


顕如「・・・・・・まさか、飛び降りるとはな」


政宗とゆうが飛び降り、崖下の川面へと消えたのを見下ろして、顕如はあっけに取られたように呟いた。


顕如「運良く助かったか、濁流(だくりゅう)に呑まれたか・・・・・・どちらにせよ、愚かな奴等だ」


ぽつりとつぶやき、手に持つ錫杖へ視線を落とす。


顕如「俺も・・・・・・まだ、鬼にはなりきれん、愚か者か」


顕如が苦々しげに呟いた、その時、


光秀「お前が顕如だな」


顕如「・・・・・・っ」


顕如が振り返るとそこには、光秀が悠然と立っていた。その背後には、秀吉や家臣たちの姿もある。


秀吉「今、政宗のやつ、飛び降りなかったか・・・・・・」


光秀「気のせいだと思いたいが、十中八九飛び込んだな」


光秀「まあ、あいつのことだ、無事だろう」


光秀はさほど動揺を見せず、冷静に顕如を見すえた。


光秀「こそこそとよく動き回る奴だったが、ようやく今までの苦労が報われる」


秀吉「信長様暗殺の計画も、これで終いだ」


顕如「・・・・・・次から次へと、信長の周りには本当にうるさい小蝿が多いな」


光秀「その小蝿が信長様の元へ、お前を連れて行ってやると言っているんだ。大人しく捕まっておけ」


顕如「・・・・・・信長の元へ、連れて行くだと?」


秀吉「殺さずに連れて帰れと信長様身体命じられている」


左右から回り込んだ秀吉の家臣が、顕如を捉えようと距離を詰める。


顕如「・・・・・・なるほど、まだ信長の首を狩る機会は残っているというわけか。俺を安土城内へ自ら招き入れるとは、愚かな男だ」


秀吉「・・・・・・そんな戯れ言言えるのも、今のうちだ」


顕如はさして抵抗することもなく、秀吉の家臣によって捕縛された。


秀吉「連れていけ」


秀吉の家臣「はっ」


顕如「・・・・・・」


顕如は薄い笑みすら浮かべて、家臣たちに引っ立てられていった。


秀吉「あの表情・・・・・・まだ諦めてないな」


光秀「そうだな。牢で大人しくしてくれればいいが」


家康「秀吉さん、光秀さん」


その時、別の区域を探索していた家康とその一団が到着した。


家康「顕如の身柄は、捕らえたんですか」


秀吉「ああ、たった今拘束した」


家康「顕如の手下連中が、この辺りに潜伏している可能性は・・・・・・?」


光秀「それは俺の部下があらかた殲滅しているはずだ」


家康「・・・・・・そうですか」


ほっとしたような表情で、家康は周囲を見回し、ふと、地面に落ちている刀に目を止めた。


家康「あれは・・・・・・政宗さんの?」


訝しげに眉を潜めて馬を降り、家康がそれを拾い上げる。


家康「政宗さんとゆうは、どこに?」


光秀「ああ、政宗達なら、崖から飛んだぞ」


家康「・・・・・・は?」


家康が、崖の向こうへ目を向ける。


家康「飛んだ・・・・・・?」


光秀「政宗のことだ、勝算があって飛んだんだろう」


家康「まさか、ゆうも?」


光秀「ああ、そのまさかだな」


家康「・・・・・・っ、バカじゃないの、ほんと」


焦りをにじませつつため息をつくと、家康はすぐ家臣たちへと向き直る。


家康「すぐに下に向かって、ふたりを探して」


家康の家臣「っ、はっ・・・・・・!」


家臣たちへ捜索の指示を飛ばすと、家康は心配そうな面持ちで、もう一度、崖の下を見やる。


家康「・・・・・・無事じゃなかったら、ただじゃ置かないから」




視線だけで、”信じろ” って、語ってるように感じて、あの状況で落ち着けるってすごい信頼と愛だよねー❣️


しかも、「ゆう、飛べ!」って。。。


そのタイミングで崖へ飛び降りれるゆうも、すごいよ〜〜!


バンジーの縄ありでも、なかなか飛べないのに!


ゆうなら飛べると思える政宗が凄いのか、政宗にの一言で、飛べるゆうがすごいのか 


二人の絆 が凄いのね 



秀吉さんの「今、政宗のやつ飛び降りなかったか?」光秀さんの、「十中八九飛び込んだな」に吹きました