断るまもなく三成さんに背を押され、私は安土城へを足を踏み入れた・・・

一方その頃、安土城の城下町では・・・

幸「思った以上に賑わっているな」

幸と呼ばれた男が、道の端であたりを見回していた。

幸「にしても佐助のやつどこいったんだ?昨日から顔見てねーけど・・まぁいいか」

男は息をつくと、安土城の天守を、怒りを宿して光る瞳で睨み上げた。

「首を洗って待ってろよ、信長」


安土城の中へ足を踏み入れた私は、三成さんに居心地のいい部屋へと案内された。

三成「お気に召していただけると嬉しいのですが・・。どうぞご自由にお使いください」

「ありがとうございます、三成さん」

三成「どうか私のことは、三成と。敬語もおやめくださいね」

「えっ、でも・・」

三成「お願いします、ゆう様」

「わ、わかったよ。でも呼び捨てはさすがい申し訳ないから・・・三成君って呼ぶね」
(この笑顔で押されると断りにくい。)

三成「ありがとうございます。ではごゆるりとお休みくださいね」

優しく告げて、三成くんは部屋を出て行った。

(佐助くんとははぐれちゃったし、これからどうしたらいいんだろう・・・)
畳の上にへたり込み、手放さないでいたバッグを開いてみる。イケメン武将トラベルガイド、携帯電話、財布、自宅の鍵、ポーチ、試作品のぬいぐるみ、「くまたん」が頭をのぞかせていた。
(採用面接の時、服のパターンと一緒にサンプルとして持って行って入れっぱなしにしてたな。ようやく夢がかなってデザイナーとして頑張ろうってときに、どうして・・・)
ため息がこぼれたその時・・・カタッっと上から音がした。
(何の音・・?)

天井を見上げると、戸板がはずれ・・・見知った人がひょっこり顔を出した。

佐助「お邪魔します、ゆうさん」

「佐助くん?!追いかけてきてくれたの・・?」

佐助「ああ。人が来たから姿を隠したけど、後をつけてきた」

「ありがとう・・・!」

慣れた様子で天井裏から飛び降り、佐助くんは口元の布を下ろす。

佐助「影から見てて事情はだいたい分かった。君、大変なことになってるな」

「佐助くんこそ4年間いろいろあったんだね・・・。今の、完璧に忍者だったよ」

佐助「ありがとう。それより、さっきは大事なことを伝えそびれた」

(大事なこと・・?)

「こっちに来てから俺は、現代に帰る方法を研究し続けていて・・・つい最近、一定の周期でワームホールが出現することを解明した」

「え?!それじゃもしかして・・・」

佐助「大きな声は出さないで。俺はここで見つかると、ちょっとまずい」

(そっか。佐助くんはこの城の人じゃないし、どうみても忍者だし、見つかったら捕まるよね)

「端的に説明すると・・・俺達には現代に帰る方法があるってことだ」

(現代に帰れる・・・?)

佐助「根拠や原理は未解明だけど、データを元に計算すると・・・次にワームホールが出現するのが、三ヶ月後だとわかった。出現場所は調査中だけど、うまく接触できれば・・・現在に戻れる可能性が高い。」

「なんだかよくわからないけど、とにかく帰れるってことだよね。よかった・・・!」

佐助「ただ・・・それまでの三ヶ月、君はここにとどまっていたほうが良さそうだ」

「安土城に?どうして・・・」

佐助「俺達が今いるのは、戦が耐えない乱世だ。城の外は物騒だし・・・君は織田軍の武将たちにずいぶん気に入られてるみたいだから」

「たしかに、逃げ出してもまた追いかけられて捕まるだろうな・・・」

「時々様子を見に来る。困ったら狼煙でも上げて」

「分かった・・・。狼煙の上げ方勉強しとく」

佐助「それから・・・この時代の人相手に、深煎りしないよう気をつけて」

「深入りって?」

佐助「端的に言うと、恋愛感情を抱くことだ。いずれ未来へ帰る足かせになる」

「恋愛?!ないない、絶対。武将と恋愛なんてありえないよ・・・」

佐助「・・・だったらいいけど。それから、現代からきたって素性も隠しておいたほうが無難だ」

「そうだね。きっと信じてもらえないし、妖しいやつだと思われるよね」
(信長様と三成くんも、冗談だと思ったみたいだし・・)

佐助「俺は仕事で安土城に城下に雇い主と滞在することになったから、すぐに駆けつけられる」

「仕事って・・・」
尋ねた時、佐助くんがはっと視線を障子の方へと走らせた
(・・・!誰かきたのかな)

佐助「・・・続きはまた今度。じゃ」

素早く口ことを隠し佐助くんが窓から外へ飛び出した後障子が開いた。

光秀「逃げきれなかったらしいな、お前」

(この人は・・・明智光秀、だっけ)

光秀「信長様がお呼びだ。お前の顔を見たいそうだ」

「わ、分かりました・・・」

踵を返す光秀さんを、慌てて追いかける。

(元の歴史だと、この人が本能寺の変の犯人なんだよね。信長様を襲ったのは別の人だったみたいだけど、やっぱり謀反を企んでいるのかな)
隣を歩きながら、次第に動きが硬くなる。

光秀「そんなに強く握ったら怪我をするぞ」

(え?)
無自覚に握りしめていた私の手を、光秀さんが掴んで引き寄せる。手の甲にキスをされ、私は慌てて飛び退いた。

「な、何するんですか・・・?!」

光秀「緊張を解いてやろうと思ってな」

「逆効果です・・・!」

光秀「それは失礼」

微笑みを崩さず、光秀さんは何事もなかったように先に進む。

(からかったのかな・・・っ?なに考えてるのか全然わからないよ)
警戒心を二割増しにし、距離をおいて光秀さんの後をついていき・・・




光秀さん〜〜!いくらゆうの動きが硬いからって。。

手の甲にキスはダメ〜〜

余計緊張しちゃうし、逆効果。。。だよね

この時代って、みんなこんなサラッとスキンシップするのーかな?

っていうか。。。。。。

手の甲にキスなんて、されたことないし〜〜