
「音楽は引き算」
「曲」という漢字の語源は、竹やつるを細かく編んで作った籠の形から来ているそうです。
竹やつるを曲げて折り重ね編んでいくということでしょうか。
音楽で使われる「曲」も同様に、音を上下(音程の高低)に曲げたものを重ねて作っていきます。
こう言うと、音楽も籠もゼロから足し算をして作りあげているような気がしますが、歴史に残る音楽家はその逆で、引き算をしながら音楽を作りあげています。
なぜなら、彼らの中には既にたくさんの音が鳴っているのですから。
一般人にはわかりませんが、彼らにとって、ある音から次の音に行くまでの道のりというのは限りなく多くの選択肢があります。
音楽を学べば学ぶほどその選択肢は増えていきます。
そこから一番最適な道を選び出していくわけです。
ただ、あっても一見害にはならないものの中から、最適なものを見つけ出すというのは非常に難しいものです。
これこそが音楽を深く学んだ人間がぶつかる壁なのでしょう。
ちなみに引き算の作業は、編成が大きくなれば大きくなるほど難しくなります。
それだけ選択する回数が増えるからです。
大編成の音楽を可能な限り引き算をして作りあげた大作がこの『シークレット・ストーリー/パット・メセニー』です。
私にとってこの曲は、初めてアメリカに渡ったときに飛行機の中で聴いた思い出の曲です。