【Interview】「音楽のイマとコレカラ」音楽ビジネスの抱える問題〜ジェイソン・マイルス | 新世代ジャズ・ウェブマガジン「The Ensemble Magazine」

新世代ジャズ・ウェブマガジン「The Ensemble Magazine」

新世代ジャズを発信するレーベル「akashic ensemble」がお送るウェブマガジン。国内外イベント情報・インタビュー・アルバムレビュー・ジャズを学べる動画などのコンテンツを配信していきます。

$新世代ジャズ・ウェブマガジン「The Ensemble Magazine」

「音楽のイマとコレカラ」はじめに。

「音楽のイマとコレカラ」ジェイソン・マイルス Part.1
~一夜のジャムセッションが生んだ新たなプロジェクト~


「音楽のイマとコレカラ」ジェイソン・マイルス Part.2
~人々がジャズとは何かを決めるんだ~


~ジェイソン・マイルス Part.3 音楽ビジネスの抱える問題~

The Ensemble Magazine:

音楽ビジネスの衰退によって、アーティストにとって今は音楽で生計をたてにくい時代になっています。特にCDをはじめとするパッケージ商品の売上減少が顕著です。我々は当初、CDがダウンロードへと音楽ビジネスのモデルが変化していくと考えていました。しかし、ダウンロード販売も期待していたほどの伸びを見せていません。もはや音楽に対してお金を払うという行為が為されていないように思えます。YouTubeを始め、無料で音楽を聴き手に入れられるウェブサイトに行って音楽を楽しむのが当たり前になっています。

Jason Miles:

この問題を考える上で人口統計学的な視点で捉える必要がある。2012年現在、CDやレコード世代のリスナーは、まだパッケージ商品を所有したいという割合の方が多い。私は特にライブで物販を購入する顧客層を見てそれを感じるんだ。確かにコンピューターの前に座ってストリーミングで音楽を聴けるがそれには制限がまだあり、音楽を聴くという体験としては不十分だ。音楽を盗用する海賊行為も行われている。ただ、アルバムを買い、所有する人は少なくなっても、ジャズだけは多くのリスナーがアルバムを買って聴くんじゃないかな。ジャズのリスナーというのはとても洗練されたオーディエンスであり、より音楽に対して注意を払っているからね。だから、ジャズミュージシャンはポップアーティストよりも息が長いんだ。しかし、音楽に対して注意を払わないリスナーが増えてきているというこの状況はミュージシャンに与える影響はかなり大きいね。

私が知っているのはどうやって質の高いアルバムを作るかということだけ。素晴らしいミュージシャンを使い、レベルの高いミックス技術のあるエンジニアを雇い、私が望む通りの高いクオリティーの音を生み出す。これをするにはコストがかかるよ。もちろんノートパソコンを寝室で広げて私一人でCDを作ることだってできる。でも、何かを制作する時にはアーティストやオペレーターに対してお金を支払うべきだ。低コストで素晴しいアルバムを作ろうとすれば、必ず製品の質は落ちる。ただ、一方でこれはとても危険であると言える。マーケットがサポートするのは作品を作るのに多くの予算を持っているアーティストで、他のアーティストに関しては生活するのに精一杯という状況だ。良い作品を作るのに多くのお金を要する。これは私の音楽人生において常につきまとう問題であり、悩まされている。そしてそのお金は次第に少なくなっている。

The Ensemble Magazine:

ただ、音楽を無料で視聴できるということは、逆をいえばアーティストも無料でプロモーションできるという利点もあります。

Jason Miles:

プロモーションを行うことと生活することは別問題だ。もし、プロモーションのために作品を2、3曲無料で配信するのは良いだろう。だが、一度そうやって配信した音楽には金銭的な価値は永久に失われる。それはアーティストにとって良いことであるとは言えない。音楽に対して金銭的な価値がなくなったら、アーティストはどうやって生活していけばいいんだい?レストランへ行ってただで飯を食わせてくれるっていうのかい?私はそんなのはごめんだよ。しかし、現に若い世代は音楽に金銭的な価値があると考えていない。この恐怖は今我々ミュージシャンに迫っていて、決してどこかへ去ってしまうことはないんだ。