第1部おまけ 姉の目覚め

目を覚ますと、香奈は見慣れた自宅ではなく、見たこともない落ち着いた部屋のベッドに横たわっていた。

「……な、なにこれ!?」

まだ寝ぼけ眼の香奈が、叫び声と同時に布団を跳ねのける。
朔斗はベッド脇の椅子に座り、穏やかに微笑んでいる。

「おはよう、香奈さん」
「え、何でここに……?」
「一緒に過ごしたくて、攫ってきてしまいました」

香奈は瞬時に顔を赤らめ、ベッドから起き上がろうとするが、まだ眠気と混乱で動きが鈍い。
朔斗は優しく手を差し出す。

「落ち着いてください。実はもう既に、香奈さんは妻なんですよ」

言葉を聞いた瞬間、香奈は目を見開き、顔を真っ赤にして叫ぶ。

「な、なにそれ!?キャーッ!」
「どういうこと!?勝手に!?いやぁぁ!!」

朔斗は微笑んだまま、肩を軽く揺らして落ち着かせる。
朔斗の手や体に触れることはせず、ただ穏やかに言葉で制御するだけ。

「感情が抑えきれないですか。でも、安心してください。不安かもしれませんがあなたの存在は大切に扱います」

香奈はバタバタと動き回り、キャーキャー叫びながらも、胸の奥で何かが高ぶる感覚を覚えていた。
朔斗は淡々と彼女を観察し、静かに微笑む。

「だから、今日からは私たちの関係は妻と夫。安心して一緒に過ごしてください」

香奈は叫びながらも、内心では少しずつ状況を理解し、怒りと混乱の入り混じった高揚感に身を任せる。
朔斗はそれを見逃さず、目の前でニコニコしながら、姉の感情を静かに受け止めていた。

部屋には甘く、胸糞悪いほどの空気が漂う――
姉の叫び声と、朔斗の静かな微笑みが、不思議な空間を作り出していた。

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