聞き役
「聞いてよ…」
今日も誰かが私を呼ぶ。キャストの愚痴。ママの愚痴。ボーイの相談。店の人間関係。気付けば私はいつも聞く側だった。みんなは私に色んな話をする。秘密も。不満も。怒りも。悲しみも。でも私は、その話を誰かに言うことはできない。言ったら信用を失うから。だから全部、自分の中にしまう。一つずつ。また一つ。そうやって抱え込んでいく。⸻昔からそうだった。本当は誰かに助けてほしかった。でも助けを求めた先が、安心できる場所ではなかった。家族だから安心できる。そんな当たり前を私は知らない。傷つく言葉。怖かった出来事。思い出したくない記憶。本当なら守ってくれるはずの人達から受けたものだった。だから私は覚えた。人を頼るより、自分で何とかした方が傷つかないと。⸻大人になっても変わらなかった。仕事も。生活も。病気も。障害も。全部、自分で何とかしてきた。だから周りは言う。「強いね」と。でも違う。強いんじゃない。弱っている暇がなかっただけだ。⸻そんな私にも、少しだけ心を許せた人がいた。こうくんだった。一緒にいても無理をしなくてよかった。沈黙が苦にならなかった。特別な言葉がなくても安心できた。だから私は今でも思う。こうくんがおったらな、と。⸻もちろん分かっている。こうくんがいたとしても、電気会社の問題は消えない。障害も消えない。仕事のストレスも消えない。でも。仕事が終わった朝。キャストの愚痴も。ママの愚痴も。ボーイの相談も。全部聞き終わった後に。「お疲れ」そう言ってくれる人がいたら。少しだけ違った気がする。⸻最近、よく思う。私は誰かの話を聞いてばかりやな、と。みんなのことは知っている。でも私のことを知っている人は少ない。みんなの気持ちは考える。でも私の気持ちを考えてくれる人は少ない。だから時々、しんどくなる。⸻それでも家に帰ればチョワがいる。小さな体で尻尾を振って待っている。その姿を見ると少しだけ笑える。少しだけ救われる。⸻人生は思っていたより大変だった。家族のことも。恋愛も。仕事も。障害も。全部簡単じゃなかった。それでも私は今日も前を向く。泣きながらでも。文句を言いながらでも。立ち止まりながらでも。進む。いつか私の話を最後まで聞いてくれる誰かに出会える日を信じて。そしてその時は。「今まで頑張ったな」そう言ってもらえたらいいと思う。
続きよみたい!
とは、ならん笑笑





