乙一さん:人気作家、小学館児童出版文化賞贈呈式で別名義の活動認める


 第61回小学館児童出版文化賞に中田永一さんの『くちびるに歌を』(小学館)が選ばれ、東京都内でこのほど贈呈式が開かれた。

 同作は、多感な少年少女の姿を描いた青春小説。NHK全国学校音楽コンクールの課題曲「手紙」(2008年度中学の部)と、
五島列島の合唱部がモチーフだ。編集者から執筆依頼があったという。
「最初はお断りしようと思った。でも、歌を聞いたら10代の頃の胸がちくちくしたような、つらいような苦しいような気持ちになり、
他の人が小説にしてよくないものになったら悔しいな、自分で書いた方がいいのかなと迷った。
その時、家内から『中田永一の合唱部の話が読んでみたい』との一言があり、書くことになりました」と、とつとつと語った。

 実は「中田永一」は、人気作家、乙一(おついち)さんの別名義だ。「山白朝子」名義でも小説を発表している。
乙一さんはジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受け、17歳という若さでデビュー。
ライトノベルで若者の人気を博し、『GOTH(ゴス)』で本格ミステリ大賞を受賞するなど高い評価を受けた。

 ところが05年、恋愛小説アンソロジー『I LOVE YOU』に収録された「百瀬、こっちを向いて」を中田名義で執筆。
みずみずしい感性で注目され、以来、覆面作家として『吉祥寺の朝日奈くん』などを発表してきた。
同年、怪談専門誌『幽』で山白名義でも活動を開始。『死者のための音楽』『エムブリヲ奇譚(きたん)』など、妖しい物語が刊行された。




 別名義での執筆について、乙一さんは
「いろいろ理由はあるのですが、一つは心のバランスをとるため。一から出直したいという気持ちがあったから」と説明する。
デビュー直後から読者の支持を受け、新刊は常に話題を呼んだ。
「過大評価されているようで、持ち上げられている感じがよくないと思った。誰も知らないところで、しばらく隠れようということでした」

 昨年6月、自身のツイッターで「出版社が宣伝しにくそうで申し訳ない」からと、
「中田永一と山白朝子です」とつぶやいたが、ツイッターは乙一名義ではない。
今回、「中田永一」への賞の贈呈式に乙一さんが出席した事実をもって、別名義を公式に認めた。



毎日jp(毎日新聞) 2012年11月20日 東京夕刊
http://mainichi.jp/feature/news/20121120dde018040071000c.html



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