○居酒屋・店内(夜)
   大勢の客で賑わっている店内。その一画のテーブル席に長谷川宗(28)と国見和樹(30)、鍋物を突付きながら、ビールを飲んでいる。宗、腕時計を見る。
宗一「先輩に報告したい事があるんです」
国見「なんだよ、改まって」
宗一「俺、結婚する事になりました」
国見「お~、お前もついに結婚か。やったな、
おめでとう」
宗一「ありがとうございます」
国見「はは、これからは、今までみたいに合
コン出来なくなるな」
   店内のドアが開き、吉村聡美(26)が入って来る。
   宗一、聡美に気付き、席を立つ。聡美に向かい手を振り、
宗一「聡美、こっち、こっち」
   聡美が宗達の席やって来る。
宗一「紹介します。俺の婚約者の・・・」
聡美「始めまして、吉村聡美です」
宗一「この人は、俺の大学時代の先輩で」
国見「国見和樹だ、よろしくな。立ってるの
もなんだ、さぁ、座って。今夜は結婚祝いだ。パァーと飲もう」
   国見、手を上げて
国見「店員さん、ここビール追加ね」
   ×××
   宗一と聡美、国見、ビールの入ったグラスを持って乾杯する。照れ笑いをする宗一と聡美。

○マンション・宗一の部屋・寝室(夜)
   床に乱雑に置かれた野球雑誌やスポーツ新聞。窓際に置かれたベッドに座る聡美。
聡美「ふ~。久しぶりに結構飲んじゃった」
   宗一がキッチンから水を注いだコップを持って来る。
宗一「ほら、水」
   聡美、コップを受け取り、飲み乾す。
宗一「明日、実家に行く時、二日酔いなんて、
よしてくれよ」
聡美「大丈夫、大丈夫」
宗「明日は、家に泊まってくのか?着替えと
かは?」
聡美、ブランド物のボストンバックを指差す。
聡美「宗の御両親ってどんな人?最近の若者
に厳しかったりする?会社の社長でしょ」
   宗一、聡美の隣に座る。
宗一「そんなことないよ。放任主義って言う 
のかな。俺は自由にやらせてもらってきた
よ。昂と比べると、俺はあまり期待されてなかったからな」
聡美「ふ~ん。それじゃ、私でも大丈夫かな。
弟君は、なにしてるの仕事?」
宗一「昂は・・・、親父の会社に入ったよ。
だけど・・・、今は辞めて・・・。俗に言うフリーターってやつかな・・・」
聡美「そうなんだ・・・、色々遭ったんだね、
きっと」
宗一「ああ、そうみたいだ」
   宗一、ベッドに仰向けになる。
   聡美、コップを床に置き、
聡美「ねぇ!明日、実家に泊まるならH出来
ないでしょ。今夜一杯やっておこうよ」
宗一「(笑い)スケベだな、お前って」
   聡美、宗一の体に抱きつく。
聡美「宗だって、したいんでしょ」
宗一「ああ、すごっくしたい」
   宗一と聡美、抱き合い、キスをする。
   
長谷川家・外
   2階建ての和風建築。広い和風庭園があり、石造りの壁に囲まれている。
宗一の運転する自動車、助手席に聡美が乗っている。門から入って来て、家の前で停車する。
   
同・応接間
   高級な調度品が飾られている。木製のテーブルの下座に座る宗一、聡美。上座に座る長谷川章太郎(58)。
   長谷川君子(54)が障子を開け、急須と茶碗、和菓子をお盆に載せて入って来る。
君子、茶碗にお茶を注ぎ、お茶と和菓子を聡美の前に置く。
君子「どうぞ」
聡美「(お辞儀する)どうも、すいません」
君子「そんなに、固くならないで」
   君子、章太郎と宗、自分の分のお茶を入れる。
宗一「彼女は、吉村聡美さん。スポーツクラ
 ブで働いています。俺たち結婚します。式
は再来月上げる予定です」
章太郎「そうか、おめでとう。宗一、聡美さ
んのご両親には、挨拶に行ったのか?」
宗一「はい、先週行ってきました」
章太郎「聡美さん、宗一のことよろしくお願
 いします(お辞儀する)」
聡美「はい、こちらこそ、よろしくお願いし
ます(お辞儀する)」
君子「聡美さん、よろしくお願いしますね」
聡美「はい」
   章太郎、君子に向かい、
章太郎「お前、頼んでおいた寿司は、届いて
いるか?」
君子「ええ、それじゃ、支度してきますね。
聡美さん、ゆっくりして行って下さい」
   宗一、聡美を肘で小突く。
聡美「義母さん、私も手伝います」
   聡美、立ち上がり歩こうとするが、足が痺れ躓く。
君子と聡美、出て行く。

○同・1階廊下
   君子の後を聡美がついて行く。

同・応接間
   テーブルに桶盛りの特上寿司としょう油皿が5枚、茶碗が5つ置かれている。座りお茶を飲んでいる宗と章太郎。お盆を持った聡美と君子が入って来る。
君子「準備出来たわね。昂も呼んで来ます」
章太郎「あいつは、呼ばないで、いい!(怒
鳴る)」
   聡美、驚きお盆を落とす。
君子「でも、折角の席ですし」
宗一「母さん、俺が行ってくるよ」
   宗一、席を立ち客間から出て行く。

同・階段
   階段を上がって行く宗一。

同・廊下・昂二の部屋の前
   ドアをノックする宗一。
宗一「昂、いるんだろ。今日さ、彼女連れて
結婚の報告に来てるんだ。昼飯、寿司頼んであるんだけど、一緒に食わないか?お前にも、彼女紹介したいしさ。どうだ、出てこないか?」
  宗一、ドアをじっと見詰める。
宗一「・・・・・・」
昂二の声「結婚すんの・・・、おめでと。で
 もオレには関係ないだろ。ほって措いてくれよ」
宗一「関係ないって、・・・俺達兄弟だろ」
   宗一、しゃがみ込み、肩を落とす。
宗一「・・・・・・」
   宗一、立ち上がり、
宗一「じゃあ、また今度な」
宗一、ドアに向い手を振る。

○同・応接間(夜)
テーブルに並ぶビールの空きビンや焼酎の空きビン。
章太郎、酔いつぶれ、畳の上で布団を掛けられ寝ている。
柱時計が1時15分を指している。