○ 児童相談所・外観





○ 同・面接室


   折り畳み机とパイプ椅子が間を離し対面する様に2セット置かれている。


   下手の席に座っている橋口と小百合。


   手の席に座っている穂積。


穂積「・・・虐待の状況は、わかりました。児童相談所としては、被虐待児童の家庭復帰のため、ご両親と   協力して行きたいと考えています。今後、お二人には、児童福祉司との面接と虐待防止の教育プログ   ラムを受けて頂きます」


橋口「はい、お願いします」


   橋口、お辞儀する。


穂積「小百合さんには他に、心理療法士のカウンセリングを受けてもらいたいのですが、
   どうでしょうか?」


小百合「どうしても、受けなくてはならないんですか?」


穂積「強制は致しませんが・・・」


小百合「優希とまた一緒に暮らすためなら、何だって、何だってやります」


   ドアをノックする音。


   橋口と小百合、ドアの方を振り返る。


久美子「失礼します」


久美子に連れられて、優希が入って来る。


   橋口、立ち上がり、優希の傍に来て、優希の目線に合う様に跪く。
   小百合、立ち上がるが、その場から動けない。


   優希、橋口に抱きついて来くる。


優希「パパー」


   橋口、優希を抱きしめて、


橋口「ママは優希の事が嫌いだから叩いたわけじゃないんだよ。
  注意しようと思って、思わず手が出てしまったんだ。優希を叩いた事は、
  パパが叱っておいたからな。ママも優希に謝りたいって言ってる」


   橋口、小百合を鋭い眼で見て、


橋口「さあ」


   小百合、優希に近付き、


小百合「優希、叩いてしまって、ごめんなさい。ママが悪かったわ」


   小百合が優希の頭を撫でようとすると、優希はビックと怯えて目を瞑り、とっさに久美子の後ろに隠   れる。


   小百合の表情が強張る。撫でようとした手は途中で止まったまま。


   久美子、穂積に目配せし、首を横に振る。


穂積「今日はこの位で、終りにしましょう」


   


○ 児童相談所・一時保護施設の部屋(夜)


   床に敷かれた布団に横になっている優希、寂しがり泣く。


   久美子が入って来て、優希が泣いているのに気付き、部屋の照明を点ける。
   
   
   優希の傍に座り、布団越しに摩る。


久美子「優希ちゃん、お姉ちゃん、此処にいるから泣かないで」


優希「ママ、なんで優希をおいて、かえちゃったの?」


久美子「・・・(困る)。優希ちゃんは、ママの事、どう思ってるの?」


優希「うんとね、優しい時のママは大好き、怒ってる時のママは嫌い」


久美子「そっかぁ・・・。ママはね、優希ちゃんと仲良くなるための、
   お勉強してるの。それが終わったら、直ぐに迎えに来てくれるからね。
   ・・・だから安心して」


優希「・・・うん」


   優希、寝息をたてる。


   寝付いた優希を見守る久美子。





○ 久我心療所前の道路


   古めかしい西洋式の建物、屋根に風見鶏。手入れの行き届いていない庭には、雑草が伸び放題。


   小百合がやって来る。心療所の前でためらって立ち止まり、来た道を少し戻る。腕時計を見て、


小百合「もう、予約した時間は、過ぎてしまってるけど・・・」


   診療所に戻り、周囲を見回し、不安げに中に入る。


   ドアに『久我心療所』のプレート。