この春、友人の姪っ子が中学校に進学しました。
「私、中学生になったらブラバン
(吹奏楽部)に入るんだ。」とのこと。
友人が「どの楽器をやりたいの?」と尋ねると、元気に「フルート
」との答えが返ってきたそうな…。
その話を中学・高校と6年間ブラバンで裏部長(←部長になると予算会議や行事ごとの時に色々出動するのがめんどくさかったので、部長を裏で操り好き放題に出来る副部長を中・高やっていた。)だった私に嬉しそうに話してくれた。何だか昔を思い出しました。
中学校はフルート
高校はファゴット
という特異な経歴の私。
(木管楽器と言う共通点しかなく、吹き方が全然違う)
本来は自前の楽器を買う事がほとんどなので、中・高と同じパートになる事が多いのだが、フルートを始めたきっかけが、アルトサックス
がやりたいところだが人気が高く、ジャンケンに負けて人数の足りないフルートに回されるという経緯からフルートを吹く事になったので、うちの両親が
「そんな気持ちで始めたのなら続かないだろう」
と決め込んで飽き症の私に楽器を買ってくれませんでした。
しかし、ハマるとトコトンな性格の私。
これがすっかりはまってしまい、同じような吹き口のものは何でも吹いてしまう始末。
田舎の祖父が祭り囃子の時に使っていた横笛から、カルピスの空き瓶、ジュースの缶に一輪ざし、学校に置いてあった見本としてしか使われたことのなかった尺八まで…。
尺八に関しては音楽の先生曰く、
「この尺八さぁ、『尺八とはこんなもんですよ』と見せる為だけにしか使った事ないねん。この学校創立以来誰ひとりとして吹ける人いーひんかったし、挑戦する人もなかったからさぁ、そうなるとタダの竹の筒やなぁ…。」
との事。
この話を聞いた私は何ともその“ただの竹の筒”に成り下がった尺八に憐みを感じ、同時にいつもの強烈な自己愛に後押しされた「この尺八を吹いた唯一無二の存在」の地位が欲しくなり、
「音の出る仕組みがフルートと同じなら鳴らない筈はない。鳴らぬなら、鳴かして見せよう竹の筒
」
と本来の練習そっちのけで尺八を吹く始末。
1週間ほどたつ頃には我流でメリ音・カリ音らしきものまで習得し、ユリと言ってビブラートをかけて気分はすっかり虚無僧。
どうも“吹奏楽”思った以上に向いていたらしい。
そのまま高校に進学した私は
「どうせ自前が無く学校のものを拝借するのなら、他分野にも挑戦したい」
とまったく別分野コントラバスに志願しました。
しかし大問題。
当方身長152㎝と大変小柄で華奢な為、手が任意の所に届かない…
泣く泣く諦め、自分の中でもう一つ迷っていたパート・ファゴット
に。
これにはさすがに先輩たちも驚いた。
「えー!!これで良いの?ベース(コントラバス)は確かにちょっときついけどさぁ、だからってそんなに気にしなくてもさぁ、フルートやクラリネット、サックスや金管楽器だってあるんだよぉ?」
との事。
後から聞いてわかったのですが、毎年人気が無く、あふれた部員に回されるお払い箱的パートだったらしい。
かなりの渋めの選択だったのか?「ホントに良いの?」と再確認されたが私がキラキラ眼でブンブン首を縦に振るので、先輩たちは不思議なものを見るような眼でそのパートを与えてくれました。
しかし!!ここからが問題。
人気がなかったので、教えてくれる先輩がいない。(尺八同様、吹ける人がなかった。)
これは困った
楽器の難しい所、それは“音が出る”のと“音を奏でる”のには大きな差があるのです。
“音が出る”のは教則本があれば何とかなるレベル。
しかし、“音を奏でる”のはイメージが無いとたどりつかないレベル。
なので、イメージを作りたいのだが、私の手元にあるのは2次元の教則本のみ。
先輩たちも長い間持ち主の居なかったパートだけにあまり聞いた事が無いので、なんとなくこんな感じの音と言う曖昧なイメージしかない。
そこで、リアルなイメージを作ろうとCDを探すが、あまりファゴットを主体にした曲が無い。
そらそうだ、だって縁の下の力持ち的な楽器なんだもん。
まるで「空気の様な」と言う表現がぴったりの楽器。
有っても周りにそれ以上に目立つ存在が有るから誰も気づかない。でも無いと困る。
だから皆なんとなくこんな感じだったかしら?と思っていても主人公の楽器に気を取られるので名脇役を覚えられない。
今から思うと大変マニア向きの楽器であります。そう、私向き
なのでがっつりハマりました。この私のハマり様に先生(←フルート奏者)が興味を持ち(「変わってんなこの子」と思ったのであろうが、その先生も学校では有名な変わり者。類が友を呼んだらしい。)
「クラブ顧問の名義は貸すが、クラブの運営・レッスンは一切ノータッチ」
と言いきったにも関わらず、「専門外だが、大学時代の知識でわかる範囲なら…」と個人レッスンを始める事に。最初の1年は、ほぼクラブと言うよりは個人プレイ。本番直前の練習にだけ団体に参加するという大変美味しいとこ取りの登場。自分好きの私にはもってこいのシチュエーション
たまらん…。
ポジション的にも面白い楽器ですが、楽器自体の特性も大変変わったもの。
木管楽器の中で一番目立たない存在なのだが、出る音域は1番広い。4オクターブ強~特殊な技術を使えば5オクターブ弱にまで及ぶ。チューバ
と同じ所を演奏しているかと思えば、次はフルート
と同じ高さで歌ってる。何とも守備範囲が広い楽器なのです。
お陰様で個人レッスンで技術を、イメージを作る為に聞いたCDからは複数の音に紛れた音を抽出するのに耳を、かなりの精度で鍛えられました。
現役時代のあだ名は
「歩くチューニングメーター」
何Hzとかいうレベルで音を聞き分けておりました。
一時は音大を勧められ、私自身ももっとどっぷり漬かりたい世界だったのですが、音大は大変セレブな世界であり、お金が無いと中々やって行けないのリアルな現実…。入学するまでにピアノのレッスン、声楽の勉強、音楽理論、歴史、もちろん楽器も自前にしないといけないのですが、楽器だけで100万近くかかる上、メンテナンス、普通の大学よりも学費が高く、おまけに就職先があまりない…。やはり考え直し「食いぶちを稼げる」進路へ。
世の中“好き”だけではどうにもならない現実があるのかと理不尽に思いました。
そんな思いを馳せていたのもつかの間、昨日その友人と夕食を共にする機会が…。
何だか腑に落ちない表情で
「あーちゃん(←私の呼び名)さぁ、ちょっと聞くけどフルートって首が長くないと吹けへんもん?」
と尋ねられました。
私も短くは無いものの、別に取り立てて首が長い訳でもなく、私の師匠の先生なんかフルート奏者だが、肩の上にそのまま頭を置いたような容姿で頭大きく、首は短く、よく学生時代は遠くから歩いてくる先生を見て
「あ、足の生えたベートーベン(←ギョロ目で顔と頭のボサボサ具合がそっくり)の頭が歩いてくる。」
とバカにしたものでしたので聞いたこともない。
「指が短い」や「唇の形が…」とかは相談理由として幾度か聞いたことはあったのですが、厳密には不利有利があるのかもしれませんが慣れでどうにでも成る事で、ましてや“首”と言うあまりに突拍子もない質問だったので吹きだしてしまいました
それを見た友人は安心した様子でゲラゲラ笑いながら、
「そーやんな、そーやんな、私もそんな事ってあるかしら?って思ってたんやけど、あんまりにも姪っ子が本気で悩んで心配してたから…。」
との事。
何とも可愛いではありませんか
「大丈夫、私がレッスン見てあげるし。」
ということで一件落着。子供には色んな才能が眠っているものです。それを引き出すのに最大限のお手伝いが出来ればと思っております。
私も落ち着いたら趣味でまた音楽を始められたらと思っています。(でもね、ファゴットって絶対人口が少ないので、意外とアマチュアのオケとかに結構入りやすくひっぱりだこらしい。おいしいね、希少価値。)