アロマターゼ阻害剤による治療について、調べたことを書き残しておきます。

 

回答アラン・モニエさん
セントラル・ホスピタル・ブロスシェ腫瘍内科&放射線科部長。
フランスナショナル・フェデレーション・オブ・がんセンター常任理事。
これまでに150以上の国内外の臨床試験にかかわり、そのうちの1/3は非常にエビデンスレベルが高いと評価されている。

 

再発がとくに起きやすいのは、手術後の3年間。
タモキシフェンを使うと使わなかった場合より再発率が下がります。
さらに、アロマターゼ阻害剤を使うと、再発率をさらに下げることができます。
また、手術から6年目にも再発のピークがありますが、これも予防できます。

 

Q1:タモキシフェンやアロマターゼ阻害剤による治療では、どのような副作用が現れているのでしょう?

A: タモキシフェンで出やすいのは、ほてり、血栓塞栓症、婦人科疾患などです。
これらは、アロマターゼ阻害剤でも、まったく出ないというわけではありません。
アロマターゼ阻害剤に特徴的な副作用としては、関節痛、骨粗鬆症、高コレステロール血症などの問題などがあります。

 

Q2:タモキシフェンではなく、最初からアロマターゼ阻害剤を使うのですね?

A: タモキシフェンにも効果はあります。予後がいいなどと言われていますが、
これは主にローリスクの患者さんを対象にした場合です。
再発する可能性が高いハイリスクの患者さんは、最初からアロマターゼ阻害剤を使うべきなのは明らか。
アロマターゼ阻害剤をファーストラインで使う場合以外に、タモキシフェンを2~3年使い、
患者さんが閉経したらアロマターゼ阻害剤という方法があります。
また、タモキシフェンを5年間行ってから、アロマターゼ阻害剤に切り替える方法もあります。
アロマターゼ阻害剤は閉経するのを待って使われるのです。

 

Q3:ホルモン療法の副作用としてあげられるのは、ほてりなどの更年期症状、血栓塞栓症、婦人科疾患、関節痛、骨粗鬆症、心疾患、性的な問題などということでした。
まず、更年期症状ですが、これはアロマターゼ阻害剤とタモキシフェン(商品名ノルバデックスなど)に共通する副作用なのですか?

A: どちらの薬でも、ほてりや発汗などの更年期症状が現れます。
ただ、ホルモン療法を始める段階で、すでに20~30パーセントの人が、このような症状を持っているのです。
プラシーボ(偽薬)を使った試験も行われています。
アロマターゼ阻害剤群で症状の現れた人がいますが、プラシーボ群にもかなりの割合で現れています。
つまり、副作用による更年期症状は、プラシーボで現れている更年期症状を除いた部分なので、ほんのわずかなのです。
タモキシフェンとアロマターゼ阻害剤との比較でも、アロマターゼ阻害剤は更年期症状が少なかったという結果が出ています。

 

Q4:更年期症状にはどんな治療がありますか?

A: 患者さんには、スパイシーな食事は避け、天然素材のゆったりしたデザインの
衣類を着るように指導します。こういった生活改善で治らなければ、薬を使います。
薬としては、抗てんかん薬、抗うつ薬、プロゲステロン類似薬などを使っていきます。
個人差があるので、実際に使ってみて効かなければ薬を変えます。

 

 

Q5:血栓塞栓症は、血管内でできた血液のかたまりが血管に詰まる病気ですね?

A: 静脈、とくに深部静脈で血栓ができます。
多くの場合、それが流れて行って肺の血管に詰まり、肺塞栓症を起こします。
主にタモキシフェンで起こる副作用です。

 

Q6:アロマターゼ阻害剤ではどうですか?

A: アロマターゼ阻害剤の副作用で血栓塞栓症が起きることはありますが、タモキシフェンより少ないという報告が多いです。

 

Q7:関節痛はアロマターゼ阻害剤の重要な副作用ですが、どうして関節が痛むのですか?

A: 関節の滑膜にはエストロゲンの一種であるエストラジオールの受容体があり、このホルモンの働きで、滑膜が正常に機能しています。
アロマターゼ阻害剤でエストラジオールが枯渇すると、滑膜の正常な機能が失われ、関節痛が起きると考えられています。

 

 

Q8:関節痛の起きる頻度は?

A: 約40パーセントですね。私が患者さんを診療していて、最も多い訴えが関節痛ですし、
治療を中断する主な理由にもなっています。
もともとリウマチの人は、アロマターゼ阻害剤でリウマチが悪化するのか、リウマチとは別に関節痛が起きているのか、はっきりとはわかりません。

 

Q9:どのような治療が行われるのですか?

A: まず、マッサージや、関節をゆっくり動かす運動を行います。
しばらく様子を見ることも大切です。アロマターゼ阻害剤を使い始めた早期に関節痛が現れますが、自然に消失することもあるからです。痛みが消えなければ薬を使います。
鎮痛薬は、アセトアミノフェン、非ステロイド系消炎鎮痛剤、COX-2阻害剤という
3つのレベルに分かれていて、これを必要に応じて使います。併用もできます。

 

Q10:骨粗鬆症は重要な副作用ですが、骨密度はどの程度低下するのですか?

A: 閉経期には骨密度が低下します。寛骨(骨盤を形成する骨)では5~10パーセントですが、脊椎骨では20~30パーセントも低下するといわれています。
さらに、乳がんは骨密度を低下させる働きを持つ病気ですし、化学療法も、アロマターゼ阻害剤による治療も、骨密度を低下させます。
こうしたことも含めて、骨密度が低下しやすい状況にあるのです。
アロマターゼ阻害剤では、年間1~3パーセントくらい骨密度が下がります。
これは、加齢による低下率より、大きな低下率です。閉経後に骨密度が下がる率を1とすると、アロマターゼ阻害剤による骨密度の低下率は2.6倍になるのです。

 

Q11:骨に対する影響は、どのアロマターゼ阻害剤でも同じですか?

A: 骨に対して、アロマターゼ阻害剤はすべて高いリスクを抱えています
一方、タモキシフェンには、骨密度を高める作用があります。
そのため、タモキシフェンを2~3年使ってからアロマターゼ阻害剤に切り替えたIES試験では、31カ月のフォローアップの段階では、骨密度への影響はあまり明確なものではありませんでした。
ところが、58カ月フォローアップした結果が昨年出たのですが、治療終了時も含め長い期間みてみると2~3年のタモキシフェンではサポートしきれないことが明らかになっています。
そこで、どうせサポートしきれないなら、タモキシフェンは使わず、最初から効果の高いアロマターゼ阻害剤を使ったほうがいい、という方向に向かっています。

 

Q12:どのような人に治療が必要なのですか?

A: 骨密度の検査結果からTスコアを求めることができます。
WHO(世界保健機関)では、Tスコアがマイナス2.5以下を骨粗鬆症としています。
ASCOのガイドラインでは、アロマターゼ阻害剤を使っている人には、カルシウムとビタミンDを処方し、よく歩きなさいと指示します。そして、骨密度の低下を抑制するビスフォスフォネートは、Tスコアがマイナス2.5以下の場合に使います。マイナス1~マイナス2.5の場合には、
使う場合と使わない場合があり、マイナス1以上の場合には使いません。
これとは別に、ヨーロッパでは新しいガイドラインをまとめています。
それによると、アロマターゼ阻害剤を使っていてTスコアがマイナス2以下なら、
ビスフォスフォネートを使います。
また、Tスコアがマイナス1.5以下だけれどリスクファクターがある場合や、
骨密度を測っていないがリスクファクターが2つ以上ある場合もビスフォスフォネートを使います。

 

Q13:リスクファクターとは?

A: 65歳以上である、ステロイド剤を6カ月以上使っている、腰椎骨折の家族歴がある、脆弱性骨折の経験がある、という4つです。

 

Q14:ビスフォスフォネートはどのような剤形を用いるのですか。

A: 飲み薬より静脈注射が適しています(注1)。
アロマターゼ阻害剤による治療を始めると、初期に骨密度が低下するので、
骨に対する副作用対策も初期に強力に行ったほうがいいからです。

また、ヒトできちんと調べる必要がありますが、動物実験の結果ですが、
ビスフォスフォネートには抗がん作用もあるので、初期に強力に治療すべきなのです。

注1)日本においてはこのような使い方は保険適用されていません

 

つづく