声 | アヅ☆マスター

アヅ☆マスター

アヅサのユルユルダラダラ記録

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月命日。
初。
 
矢張り涙が出る。毎朝、毎夕、線香をあげ手を合わせ話しかけてきた。
日記も作成し、毎日毎日彼への言葉を書き綴ってきた。
それでもこの一か月は何度も涙した。
 
嬉しい事があると、全て彼がもたらしてくれたように思えた。実際そうだと思う。
だって、大抵前日の夜に落ち込んで悩みを相談していたりするもの。すると翌日に良いことがある。
きっと彼が幸せを呼んでくれたんだ。
だって、知っている?彼は招き猫なのです。
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落ち込んだ日は彼の声が何度か聴こえた。
 
あたしの部屋のドアを今もいたずらしている時がある。
彼にとって気に入った花を飾ると、いたずらして花瓶を倒してしまうこともある。3度ほどあったのだ。
本を読んでいると、何も無いのに急に花瓶が倒れたり、眠りに付いた夜中に急に倒れたり。
 
その度に「またいたずらして、気に入っているのかしら。」と少し笑っては水を拭き取った。
 
 
さて、あたしの部屋には彼のお骨を置いている。
普段眠っていた、赤いクッションの上で鎮座している。
辛い闘病生活だった。
 
「もう、ゆっくり休んで良いのよ。」
 
お骨をクッションに置いた瞬間にあの日も泣きじゃくっていた。
同時にホッとした。きっと色々な感情が沸き上がってしまったんだろう。
 
切ない。もう会えないのに。
もうお骨となってしまった。
もう辛い病気との戦いが終わったね。
今日からまた一緒にこの部屋で二人きりで過ごせるね。
色んな気持ちで語りかけている。なのに、姿が見えないの。
やっと楽になれたね、という安心感と姿の見えない悲しみとで、気持ちがちぐはぐになってどうしようもなく涙が出た。
 
あれからひと月。
 
去年末に撮った写真が、何百枚とある彼の写真の中でも後期の一番の出来となった。
笑顔であたしを呼んでいる彼の顔。
近づこうとする脚の動き。
おめかしをした彼の一張羅。
 
毎日あたしを送り出し、帰ってくると走って玄関まで迎えに来てくれた。
 
「いってらっしゃい。」
「いってきます。」
 
「おかえりなさい。」
「ただいま。」
 
あの日々はまだあたしの中では毎日の出来事だ。
闘病生活後半はもう、彼は玄関まで来ることすら出来なかったがそれでも気持ちは届いていた。
 
だから。
この写真を玄関と居間の間の廊下に飾りたかった。
走って迎えに来ていたこの廊下。
ここでいつも「おかえり。」「ただいま。」と二人で挨拶をしていた。
 
部屋にもこの写真や、何よりお骨も髭も毛も爪もある。
だが、真っ先に迎えに来る彼の笑顔を何時ものように廊下でも見たかった。
大きく写真を伸ばし、愛して頂いた方にも彼の名前を書いて頂き、皆に愛された彼らしい明るさを振りまいて欲しかった。
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うん、矢張り色男。
 
今晩は久しぶりにあたしの部屋からお骨を居間へ、夕飯時のみお出掛けさせて皆で御馳走を戴いた。
美味しかっただろうか。
大好きな居間で、皆と過ごしたね。
 
悲しみは一生残るが幸せはそれ以上に残る。だからこそ、悲しみが深くもある。
 
精一杯の思いを彼に自分は届けられたのだろうか。
今もまだ、毎日彼の愛の呪いから離れたくないと願っている自分の思いは、彼に届いているだろうか。
 
一か月が経ってしまった事も悲しくて仕方がない。
まだ、彼の重みも、声も、温もりも、手触りも、鳴き声も、喉の音も、肉球の柔らかさも、耳の硬さも、全てが感覚として残っているのに。
そして忘れないように毎日思いだしたり、似ているものを見つけたりしているのに。
 
悲しいだけではなく、一つ一つを彼が教えてくれている一か月だった。毎日が勉強でもあった。
旅立ってまであたしの事を気にしてくれている。
いや、旅立っていないんだ。側に一緒にいるんだと、また感謝しては自分の背筋を伸ばそうとしてきた一か月でもあった。
 
そしてつい先ほどもまた、大きな声で鳴き声が聴こえたのだ。
甘えた声で、あたしを呼ぶ。
 
側にいるのね。
悲しんでたらこうやって気付かせてくれるのね。
愛おしい、あの声で。