平成26年度皮膚科専門医認定試験の概況と傾向分析 | 皮膚科専門医試験勉強されている方、皮膚病、皮膚に関心のある方のためのブログ!!!

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平成26年度の専門医試験についてのまとめの確認をしました。

まとめ-2014


平成26年度から、試験委員長が、岩月先生から古川先生になっていました。

専門医試験のために貴重な時間をさいていただいた面接試験委員の先生、専門医試験委員会の委員、日本皮膚科学会事務局の皆さんに御礼を申し上げます。



以下、広報誌 JDA Letter No.21(2014年9月号)より転記

平成26年度皮膚科専門医認定試験の概況と傾向分析

平成26年第22回日本皮膚科学会専門医認定試験が、8月3日(日)に東京の都市センターホテルにおいて実施されました。受験者は筆記試験247名(男性97名、女性150名)で、191名(77・3%)(男性73名、女性118名)が合格し、皮膚科専門医の総数は10月1日現在で、6、461名になる予定です。

専門医試験合格者の概要

合格者数をみると、東高西低の傾向が顕著でした(表1)。支部別合格者の年次推移を図1に示します。東部支部は昨年と同様に高い合格率(90・6%) を維持しましたが、他支部では合格率がさらに低下しました。受験時の皮膚科経験年数との関係があるかもしれません。今後の解析課題です。


専門医試験問題の構成

今年度の試験
問題は、筆記試験100題(選択86題、記述14題)と、面接試験19題(5カテゴリー)(一人約15分)からなります。筆記試験では、いろいろな分野からバランスを考えて出題しています。病理組織問題ダーモスコピーに関する問題の多くは、じっくりと考える時間が必要との判断で、筆記試験として出題されています(従来と同じです)。面接試験の目的は、一般的な疾患を通して、皮膚科専門医として十分な知識と診療スキルを身につけているかどうか、教科書だけで勉強したペーパードクターになっていないかどうかを判断することです。面接試験に選んだテーマは、(1)円形脱毛症、(2)ボーエン病、(3)食物依存性運動誘発アナフィラキシー、(4)バザン硬結性紅斑、(5)特発性後天性全身性無汗症でした。皮膚科医にとって知っておくべき疾患でその病態・検査・治療法を質問項目としました。あがりやすい受験生もいますから、試験問題の順番はかなり配慮したものとなっています(できだけ平易な問題からスタート)。声が小さいあるいは聞こえないのは困ります。口頭試問の試験官を患者とおもって受け答えしてください。コミュニケーション能力の有無も、面接試験の重要な判断基準となります。


試験問題の出題方針と解答する上での取り決め

筆記試験問題の一部は、本年も日本皮膚科学会雑誌の原著やセミナリウム、The Journal of Dermatology(JD)に掲載された症例、診療ガイドライン、日本皮膚科学会主催研修講習会テキストから出題しました。筆記選択問題は、他の選択肢に比較して最もこれがベストである選択肢を正解とする手法をとっています。多くの問題は解答がひとつですが、「2つ選べ」と記載しているにもかかわらず、1つしかマークしていない解答が、今年もいくつかありました。


試験問題の評価とその取り扱い

専門医試験問題にはメッセージが含まれています。メッセージを受験者が適切に受けてくれたかどうかを、試験終了後に一問ごとに識別指数、正答率、誤答解析を実施して、評価しています。
識別指数は、各試験問題について、成績上位者(上位1/4程度)の正答率(1・0を満点)から成績下位者(下位1/4程度)の正答率を引いた値を指します。マイナス値を示す場合は、適切な問題ではない可能性、あるいは実施した試験で測定する能力と異なる能力を測定している可能性があるということです。通常0・2を超える程度を目安とし、0・4以上になると良問と見なせます。今年度の識別指数からみると、0・2以上の問題が78%、0・4以上になると31%でした。昨年とほぼ同様な傾向です(昨年も今年も0・45以上は17%)。

正答率からみると、CD34陽性となるものを選ぶ皮膚病理の問題の正答率が1・6%(4名が正解)と最低でした。誤答解析を委員会で行い、日皮会関係の講習会で重要なポイントとして指摘されていること等を踏まえて、不適切問題とはしませんでした。一方、識別率がマイナスとなった問題が一問ありました。皮膚腫瘍の五択問題で、正答率が6・1%(15名が正解)と低く識別率は-0・105で、難問であると判断し、この問題を不適切問題とし、削除することとしました。なお、受験者には筆記試験に一点加算し、満点をそのまま100点とすることにしました。この問題では、脂腺癌の発生部位に関して受験者の知識にピットフォールがあったようです。教科書によっては誤解を招く記載があることを確認しました。少なくとも日皮会誌やJDの臨床研究的な論文、例えば脂腺癌(Sebaceous carcinoma)の臨床的観察 (日皮会誌:118( 7 ), 1247│1252, 2008(平20))などには注意を払う必要があります。このことは、研修医を指導教育する指導者や教科書の編纂者・著者にも求められることです。

なお、例年と同様に試験問題はモノクロで日皮会誌10月号に掲載することとし、その際に日皮会誌、JD誌及び講習会テキストから出題した問題は、その出典を明記します。また、筆記試験問題はPDF版として、日皮会ホームページの会員専用ページにて掲載します(その際は個人が特定できる数点の写真をトリミングします)。昨年から始まった申請書類の評価も二年を終了し、次年度から加点減点を含め採点の対象となります。
平成29年度からいわゆる新専門医制度が始まりますが、日本皮膚科学会皮膚科専門医認定試験は先駆的な位置にあると思います。会員に皆様の意見を傾聴し、他科の試験を参考にしながら、皮膚科専門医認定試験の精度や透明度を上げてまいります。

和歌山県立医科大学医学部皮膚科教授
専門医試験委員会委員長
古川福実
執筆者


表1-2014

図1-2014