3-2008 メラニン合成の律速酵素の名を記せ。 | 皮膚科専門医試験勉強されている方、皮膚病、皮膚に関心のある方のためのブログ!!!

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3-2008 
メラニン合成の律速酵素の名を記せ。











メラニン合成の律速酵素の名を記せ。

チロシナーゼ
tyrosinase





メラノサイトとメラニン合成

1.メラノサイトの形態と分布
 メラノサイト(melanocyte:色素細胞)は神経堤(外胚葉)由来の遊走性,樹枝状の細胞で,皮膚では基底層と毛母に分布する.HE 染色などの光顕標本では固定脱水の過程で細胞質が収縮してしまい,Langerhans 細胞とともに澄明細胞(clear cell)と呼ばれる.ドーパ染色では黒褐色に染色され区別できる.皮膚1 mm2 あたり約1,000 ~ 1,500 個のメラノサイトが存在し,顔面などの日光露光部や外陰部などの生理学的な色素沈着部位に高密度で存在する.
 表皮のメラノサイトは基底層に存在し,やや真皮側にはみ出すように位置する.電顕で観察するとメラノサイト下部に透明帯や基底板を認めるが,係留線維の発達は悪く,ヘミデスモソームやデスモソームは存在しない.細胞内ではGolgi 装置が発達し,種々の発達段階(stage Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ)のメラノソーム(melanosome)を含有する.メラノソーム内でチロシンからメラニンが生合成される.成熟したメラノソームは,中間径線維の関与のもと,隣接する基底細胞や有棘細胞へ供与される.メラノソームの供与を受けた基底細胞は,メラノソームを核の上方に集合させ,核帽(melanin cap)を形成して紫外線からDNA を守る.
 人種による色調の差異は,メラノソームの数と大きさにより決定される.メラノサイトの分布や密度に人種間の差異はない.


2.メラニンの生合成
 メラニンとはフェノール類物質が高分子化して色素となったものの総称である.ヒトの皮膚に存在するメラニンは,チロシンから合成されたさまざまなインドール化合物がポリマーを形成した形態をとっている.
 ヒトにみられるメラニンは2 種類存在し,黒色のユーメラニン(eumelanin :真性メラニン)と,黄色のフェオメラニン(pheomelanin:黄色メラニン)とに大別される.ヒトの皮膚や髪に存在するメラニンは,この2 種のメラニンの複合体であり,その比率により皮膚や毛髪の色に違いが出る.
 血中から供給されたチロシンは銅含有酵素のチロシナーゼ(tyrosinase)によって酸化されてドーパ(dopa)に,さらにドーパキノン(dopaquinone)へと代謝される.チロシナーゼはこの2 つの反応を触媒する酵素であり,この代謝はメラニン生成における律速反応として働く.
 ドーパキノンは自動的に酸化を起こしてインドール化合物に変化し,それらが互いに結合することでユーメラニンが合成される.また,このときシステイン(cysteine)が存在すると,ドーパキノンはシステインと結合して5-S-cysteinyl dopa(5-S-CD)に変化し,これが重合してフェオメラニンが合成される.

$健康/病気/生老病死-メラノサイト(melanocyte)
メラノサイト(melanocyte)
メラノサイトは通常の光顕標本では固定脱水の過程で細胞質が収縮してしまうため,表皮基底膜に沿って存在する澄色細胞(clear cell,矢印)として観察される

参考
http://www.derm-hokudai.jp/textbook/pdf/1-04.pdf