29-2009 抗セントロメア抗体陽性全身性強皮症について正しいものはどれか | 皮膚科専門医試験勉強されている方、皮膚病、皮膚に関心のある方のためのブログ!!!

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29-2009 
抗セントロメア抗体陽性全身性強皮症について正しいものはどれか。3 つ選べ。
a.肺高血圧症のスクリーニングは重要である。  
b.肺線維症の合併が多い。  
c.逆流性食道炎の合併は稀である。  
d.しばしば爪上皮出血点が陽性となる。  
e.軽症の原発性胆汁性肝硬変を合併しやすい。 


抗セントロメア抗体陽性全身性強皮症について正しいものはどれか。3 つ選べ。
a.肺高血圧症のスクリーニングは重要である。  ○
b.肺線維症の合併が多い。  ×
c.逆流性食道炎の合併は稀である。  ×
d.しばしば爪上皮出血点が陽性となる。  ○
e.軽症の原発性胆汁性肝硬変を合併しやすい。 ○

以下参照。
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抗セントロメア抗体はCREST症候群で高率に検出される。
「びまん型全身性強皮症」では抗トポイソメラーゼ I(Scl-70)抗体や抗RNAポリメラーゼ抗体が検出され、一方「限局型全身性強皮症」では抗セントロメア抗体が陽性となる。

CREST症候群
 以下の5症候を有する進行性全身性硬化症の亜型で,皮膚症状は比較的限局性で,内臓病変の発現は遅い.
①石灰化症 calcinosis,②レイノー現象 Raynaud's phenomenon,③食道運動異常 esophageal dysmotility,④手指硬化 sclerodactyly,⑤毛細血管拡張症 telangiectasia


抗セントロメア抗体
 細胞の核にある染色体は2本で1対になっています。この2本の染色体はちょうどその真ん中でお互いつながっています。このつなぎ目の部分がセントロメアと呼ばれます。この抗体は全身性強皮症の約30%に陽性となります。この抗体は、症状が比較的軽い全身性強皮症に陽性となることが特徴です。この抗体を持っている患者さんでは、1)皮膚硬化の範囲、程度が軽い。2)肺線維症を合併することはまれ。3)症状の進行が非常にゆっくりである。4)皮膚硬化がはっきりとするまで、レイノー症状が長期に(通常10年以上)先行する。5)石灰沈着、血管拡張などの症状を伴いやすい、ことが知られています。




   全身性強皮症にはどのような内臓病変がみられますか?
 全身性強皮症は多臓器疾患ですから、いろいろな内臓病変がおこります。内臓別に説明しましょう。まず、逆流性食道炎ですが、これは食道が硬くなって、動きが悪くなった結果、胃酸が食道に逆流して生じるもので、胸やけ、胸のつかえる感じ、逆流感が主症状です。逆流性食道炎は、強皮症の代表的な内臓病変の一つで、典型的な強皮症患者さんだけでなく、皮膚硬化が比較的軽い人にも多くみられる内臓病変です。
 肺では、肺線維症が代表的な病変です。これは肺が、皮膚と同じように硬くなったもので、肺の下の方に生じます。肺線維症は比較的典型的な強皮症患者さんに多くみられる症状です。肺にはこれ以外に、肺の血管の血圧が高くなる肺高血圧症がみられることがあります。心臓についてですが、肺線維症や肺高血圧症がひどくなると心臓の働きが弱くなることがあります(心不全)。また、心筋が硬くなって、心臓の信号を送る伝導系に異常が生じて不整脈がおこることもあります。
 肝臓では、胆汁が流れる管が硬くなって、原発性胆汁性肝硬変と呼ばれる変化がおこることがあり、これは、比較的症状の軽い強皮症患者さんに時にみられます。原発性胆汁性肝硬変と名前は立派で、恐ろしそうですが、特に自覚症状もなく、検査値の異常だけで、治療を必要とすることもあまりありません ので、不必要に心配しないで下さい。
 また、腸が硬くなって、動きが悪くなると、便秘や下痢を繰り返したりします。わが国ではまれですが、腎臓の血管が硬くなった結果、突然、高血圧になり、頭痛、めまいなどがおこることがあります。これは強皮症腎と呼ばれています。強皮症でも、関節や筋肉に炎症がおこることがあります。まれですが、心臓や肺の外側を覆っている心膜や胸膜に炎症がおこることもあります(心膜炎、胸膜炎)。




  全身性強皮症と診断された場合にはどのような内臓病変の検査が必要ですか?
 逆流性食道炎は、バリウムを使った上部消化管透視、食道内圧測定、内視鏡などで診断します。肺線維症は通常胸部レントゲン写真で診断しますが、変化の軽いものをみつけるためにはCT(体を輪切りにしてみることのできるレントゲン写真)が必要となります。また、呼吸機能検査(肺活量などを測定する検査)も合わせて行われます。さらに、動脈から血液をとって、血液中の酸素含有量を測定します。肺高血圧症には心ドップラー・エコー法(超音波を使って体の外から肺の血圧を測定する検査)、心カテーテル法(肺の血管の中に、実際にカテーテルという管を入れて肺の血圧を直接測定する検査)が有用です。心臓の合併症に対しては、心電図、心ドップラー・エコー法(心臓の動きを超音波を用いて、体の外から測定する検査)、ホルター心電図(一日中携帯型の心電図をつけて、心臓の一過性の異常をみつけだす検査)などが行われます。肝臓の病変には、血液中肝酵素の測定、腹部超音波エコー法(超音波で体の外から肝臓の中を検査する)が行われます。腎病変には、尿検査、血圧測定、血清中のレニン活性、腎機能検査などが行われます。筋炎に対しては、筋電図(筋肉に針をさして、筋肉の中の電流の流れを測定する)、筋生検(筋肉の一部を切り取って、顕微鏡で検査する)が施行されます。

参考  http://www.h.u-tokyo.ac.jp/der/kyouhishou3.html