「海底地震津波観測網」-11(終)(東日本大震災の教訓から)
 
震災直後から6月までのデータを解析した篠原さんは、ある現象に気づきました。
「ほとんど余震が起きなくなった場所があります。」
 
東日本大震災の海域で、あまり余震が起きないことが分かったのです。
さらにその地下を分析してみると、東日本大震災を引き起こしたプレートの境界で、
余震が消えていました。
 
「ひずみがたまって地震が起きるわけですけど、そのひずみが地震の直後は、
  ほとんどなくなってしまったのではないかと考えています。」
 
震災から3年、篠原さんは、この海域に再びひずみがたまり、
地震の兆候が起き始めるのではないかと考えています。
海底地震津波観測網が整備されれば、こうした地震の発生場所や大きさが、
リアルタイムで把握でき、そのメカニズムがより詳細に分かるはずです。
 
「この観測網は、地震研究を根本的に変えそうですね。」
「この観測網のデータは、海底地震津波計を使ったグループだけが分析するのではなく、
  データは流通させることになっていますので、日本中の研究者がそのデータを使って
  解析を進めることができるということです。これまで気づかなかった新しい事実とか、
  検証というものが出てくるでしょうし、地震がどうして起きるのか、
  あるいは津波はどのように発生するのか、それらは起きたそばから解明されてしまう、
  そういうことになると思います。」
「地震学の教科書が書き換えられてしまう可能性がありますね。」
「今後のこの分野の成果が期待されますね。」
「日本は科学技術立国だと思っていましたが、でも東日本大震災の時に、
  津波の高さが予測できませんでしたね。それが衝撃的でした。
  でも今回のこの観測網によって、何かが大きく変わりそうな、
  そんな光明が見えてきたような気がします。」
「私たちにとって津波や地震がより速く正確に分かることは、すごくありがたいことですけど、
  その情報が出た後に、私たちはどのように対応していくかを、
  自分たちで考えていかなければいけないなぁと思いました。」
 
(おわり)