「ミドリムシ」-5(純粋培養のメカニズム)
 
「いいことずくめのように思われますが ミドリムシを増やすのは結構大変なんですよ
 というのはミドリムシは食物連鎖の出発点にあるわけで
 オタマジャクシとかボーフラなどに食べられてしまいます」
「そうですね 大量に培養するとすれば適度の温度も必要ですし太陽の光もいります
 それから開放的に培養しますから それを無菌的に培養しなければなりません
 この点が一番難しいところだと思います」
「じゃ~ どうやってミドリムシを多く増やしたらいいのでしょうか?」
 
沖縄の石垣島にミドリムシを純粋培養する施設があります。
1年の半分が晴天に恵まれ、日照時間の長いこの地域で、
年間60トンのミドリムシを培養しています。
光合成することで成長し増殖するミドリムシを純粋培養するには、
高い二酸化炭素濃度を保つ必要があるのです。水中の二酸化炭素濃度を上げた場合、
濃度が10%を超えるとほとんどの動物プランクトンが死んでしまいます。
一方ミドリムシは、二酸化炭素濃度が27.5%という環境でも生き残れるというのです。
 
ではなぜ二酸化炭素濃度が高くても生きていられることができるのでしょうか?
二酸化炭素が水に溶けると炭酸水素イオンと水素イオンが発生します。
その水素イオンが生物の細胞に入ると中性に保たれていた細胞が酸性に代わります。
しかし、生物は酸性に弱いのでナトリウムポンプという機能を使って、
水素イオンを外にくみ出し細胞内を中性に保とうとします。
しかし、水素イオンが大量に入るとくみ出しきれず酸性になって死んでしまいます。
ところがミドリムシは、このナトリウムポンプをたくさん持っているのです。
そのため二酸化炭素濃度が高い環境でも生き続けることができると考えられています。
酸性に強いミドリムシ、この特徴を生かして、
安定的に培養することができるようになったのです。