「地球深部にダークマグマが存在」-2(終)(実験と地震学との融合)
 
そのため村上さんたちは、マントルの底にあると想定される玄武岩ガラスに、
地球内部と同程度の圧力を加えてみました。
地上で最も固い物質であるダイヤモンドとダイヤモンドの間に、玄武岩ガラスを挟み込み、
地球内部の80万気圧を再現し、そこにレーザーや赤外線を照射して玄武岩ガラスが、
どう変化するかを観察してみました。
 
最初に分かったことは、地上では透明だった玄武岩ガラスの色が暗くなっていくことでした。
この色の変化は、何を物語っているのでしょうか?
村上さんたちはさらに大型の放射光施設SPring-8(放射光メスバウアー分析)を用い、
圧力を与えたままの玄武岩ガラスを原子レベルで分析しました。
すると圧力に伴う色の変化に応じて岩石に含まれる鉄の電子スピンが、
変化することは分かりました。この電子状態の変化が、色が暗くなる原因でした。
電子スピンの状態は、物質の熱の伝わり方も大きく左右されます。
 
スーパーホットプルームの根元では、液体状のマグマが熱を伝えにくい状態で、
存在していたのです。
これらの実験でマントル底部に存在するマグマ領域では、地震波が遅くなるだけでなく、
周囲に比べて5~25倍も熱が伝わりにくいことが分かりました。
村上さんたちは、このマントル底部に存在するマグマ領域・色の暗いマグマを、
「ダークマグマ」と名付けました。
 
今回の研究成果は、プルーム仮説と実際の地震波の観測成果を
実験によってつないだことで、海外からも注目を集めることとなりました。
 
「マグマがここにあったらどんな物質になるか それと地震学的な観測がうまく整合的に
 説明できるのではないか 実際に議論できる状態になったということです」
 
村上さんたちの発見は、実験と地震の観測を通して得られた知識とが、
直接比較できるようになったという地球科学の新しい時代を象徴しています。
地球が誕生してから46億年。「ダークマグマ」という言葉が新たに登場し、
謎に満ちた地球深部の解明に一つの手がかりが生まれました。
 
(おわり)