「唐茄子屋政談」(とうなすやせいだん)(Ⅱ)
練習したばかりの売り声で、ほそい道へ入っていきました。
「ええ、トウナス~ トウナス屋でござい」
「やおやさん!」
赤ちゃんをおんぶした、みなりのまずしい女の人が声をかけました。
「ひとつ売ってください」お金はこれだけしかありません。
「ひとつはおまけです。そのかわりに、ここでお昼をさせてくださいな」
女の人は「どうぞどうぞ」とお茶を入れてくれました。
若だんなが、食べようと弁当をひろげると、そこへ坊やがでてきました。
まずしくて坊やはもう3日もごはんを食べていませんでした。
若だんなは、ようすをきいてごはんを坊やにあげると、坊やは夢中で食べました。
若だんなは、売り上げのお金をぜんぶそこにおくと、
にげるように家へ帰りました。
おじさんは、からになった天びんをみると「てえしたもんだ!」とおどろきました。
「ところで金はどうした」
「ぜんぶあげてなにもありません」
「また遊んできやがったな」
「いえ、まずしい女の人がいて、ぜんぶ…」
話しをききましたが、おじさんはほんとうかどうか、たしかめることにしました。
ふたりは、その女に人の家にむかいます。
となりのおばあさんがぜんぶ話しをきかせてくれました。
「おかみさんは、こんなだいじなお金をもらうわけにいかないと、
あとを追ったのですが、もうやおやさんはいません。
そこに大家がやってきて、やちんがたまっているからと、
ぜんぶまきあげてしまったのです。
それを苦におかみさんは首をつってしまったのです。
みんなが助けおろしたのですが、元気になってくれるといいのですが…」
おじさんも、若だんなのいうことがほんとうだったことがわかりました。
若だんなは、大家の家へむかってかけだしました。
ぞうりのままつかつかとあがり、そこにあったヤカンをとると、
夕食を食べていた大家のヤカン頭をいやというほどなぐりました。
けんぶつ人は「やったやった」と手をたたいておおよろこびです。
そして大家はのちに、きついおとがめをうけることになりましたとさ。
(おしまい)
