「唐茄子屋政談」(とうなすやせいだん)(Ⅰ)
むかし江戸のあるところに、
遊び好きの若だんながすんでおりました。
吉原というところのおねえさんに夢中になって、
毎日毎日遊んでばかりおりました。
ある日お金がなくなって、とうとうおい出されてしまいました。
家に帰ることもできません。
思いつめて、橋から川へ飛び込んで死んでしまうことにしました。
そこへ通りかかったのがおじさんです。
若だんなは助けられ、おじさんの家に世話になることになりました。
おじさんの家はやおやさんです。
「おまえは遊びばかりに夢中になりやがって、
今日からトウナスを売って歩けっ!」
トウナスとはカボチャのことです。
若だんなは、したくをととのえると、
しぶしぶトウナスを入れた天びんをかついで出かけました。
しかし、ちから仕事などしたことがありません。
とちゅうでころんで、トウナスを全部ばらまいてしまいました。
そこに通りかかった親切な人が、話しをきき、かわいそうにと、
ほとんどのトウナスを売ってくれ、残ったのは2こだけです。
しかし、なかなか売れません。
それもそのはずです。何もいわずに売っていたのですから、
売れるわけがありません。売り声の練習をはじめました。
そこは吉原田んぼというところで、
むこうにはおねえさんたちがすんでいる家がみえました。
「トウナス~」「ええ、トウナスです~」
どうもかっこがつきません。
「ええ、トウナス~ トウナス屋でござい」
やっとかっこうがついてきました。
