彩花side
齊藤京子を一言で表すと一匹狼。日向坂の楽屋はいつもガヤガヤしているのに、京子は一人でポツンと一人でいる
私と話す時でさえ、声を掛けないと振り向いてくれない。よく本当に二人は付き合っているのかと聞かれる
最初は付き合ってるよと言い返しているのに、今はいまいち京子の事が分からなくなる
「ねぇ、京子…」
「……何?」
「…っ、何でもない…」
「そっ…」
そう言うと京子は、本に視線を戻した。冷たすぎる…家でも、楽屋でもこんな感じなのはもう嫌だ。
もっとくっつきたいし、イチャイチャしたい
「久美~助けてぇ…」
「おっ、恋する乙女の悩み?」
「馬鹿にしてるでしょ…」
「ううん、してないよ」
「本気で悩んでるのに……久美に相談した私が馬鹿だった」
「ぁあ…ごめんって~ご飯奢ってあげるから許して?」
「ご飯で私が折れると思ってんの?」
「おたけが行きたがってたお店予約したんだけど、他の人と行こうかなぁ~」
「許す……今回だけだからな」
「あざっす!それで、どうしたの?」
「うん……実はね」
「ぁああ…成る程ねぇ」
「もう、どうしたらいいのかさっぱりで…」
「確かに京子はいっつも一人だもんね」
「うん…」
「てか、何で京子と付き合ったの?告ったのって誰から?」
「ぇ~っと京子」
「京子かぁ…いつ、どこで?」
「去年の春?くらいかな?」
「大体一年くらいか…倦怠期なんじゃない?」
「倦怠期…?」
「そう…いつも一緒にいるから飽きちゃってるんじゃない?」
「そう……なのかな」
「マンネリ化を解消しないと、このまま…」
「別れたくないよ…」
「でもこのまま放置したら確実に仲が悪くなるし…」
「どうしたらいい?」
「う~ん…一旦同棲をやめてみるとか?」
「京子は、許してくれるかな?」
「もし住む場所見つからなかったら私の家に来たら?」
「それは、遠慮しておく…」
「そっか笑…他の一期にも協力を促しておく」
「なんか、申し訳ないなぁ」
「謝るんじゃなくて…?」
「…ありがと…」
「よしっ!…そんじゃ今日辺り行ってきな」
「うん…頑張る」
~収録終わり~
「ねぇ、京子。この後予定ある?」
「…ないけど」
「じゃ、一緒に帰ろ」
「ん…」
今日が二人で過ごす最後の夜だと思うと少し寂しいけど……
京子は何も喋らないで外の景色を見ている……気まずい雰囲気のまま、家に着いた
京子side
急に彩花から話があると言われた。家に着くと真面目な表情で私を見つめてくる
「話って……何?」
「うん…あのさ、、一旦同棲を解消したいんだ。最近お互い仕事が忙しくて、気まずくなってるんだよね…」
「…っ、そっか…」
「最近京子の事が好きか分からなくなってきたの。京子の為にも、一旦距離を置きたい…」
「……」
好きか分からなくなった…か。心にグサッと突き刺さった…彩花がそんな事を思っていたなんて…
「…分かった。明日には、出ていくから」
「…うん。ごめんね」
彩花の顔を見たらきっと私も泣いてしまう…振り返らずに、家を出ていった
「はぁ…」
明日も彩花と会う…他のメンバーに勘づかれたくない。明日からどうしようか…
ずっとその事ばかり考えているけど一向に、解決策が思い付かない
「切り替えていこ…」
~翌日~
ピピピッ…
起きると、顔を洗い朝食の用意をする
「そうだ…居ないんだった…」
二枚並べられた食パンを戻して、一枚食べる。生活音が殆ど無い…いつも彩花が歌いながら階段を掛け降りる音も無い
「くそっ…」
頭の中が彩花の事で溢れてくる…今までそんな事思っても無かったのに……
失ってから気付いた。でも…もう手遅れ…かな
今日から彩花とはメンバーであって、彼女ではないんだから。
「…おはよ」
楽屋に行くと、彩花は既に着いていて久美らと楽しく話しているみたいだ
こうなったら、本を読んで時間が来るまで待っていよう。お気に入りの小説に、目を通す
「京子さん~」
「…何?」
「今度、丹生ちゃんと一緒にご飯行くんだけど京子さんも来ません?」
「……考えとく」
「珍しいですね、京子さん。あんまり人の誘い受けない人なのに…」
「うるさい、愛萌…」
「絶対来て下さいね!」
「はいはい…」
「丹生ちゃん~京子さん来るって!」
「ぇ~!やった!」
そんなに大声で騒ぐなよ……うるさいなぁ
「皆さん、そろそろ準備お願いします」
「「はいっ」」
ひなくりのライブのリハーサルが始まった。沢山の曲をお届けするから、覚える量も半端ない
少人数グループに先生が付きっきりで、細かい指導を受ける。久し振りのライブな為、頭がパンクしそうだ
ダンスが苦手な私はレッスン室に一人残って、課題を片付ける。動画を見ながら、ひたすら練習を続ける
「…ふぅ…」
「お疲れ、京子」
「まなふぃーか…ありがと」
「こんな時間まで練習してたの?」
「…ん、まぁね」
「そんなに自分を追い込んだら、倒れるよ」
「これくらい平気」
「無理は禁物だからね」
「分かってるって」
「そんじゃ、もう帰るよ。事務所閉まるよ」
「…ん」
家に帰った後も、残った課題を終わらせてからお風呂に入った
「はぁあ…」
ライブ本番まで後二週間を切った…
続く