環境重視の流れのなかで、みせかけの“グリーンウォッシュ”も | 碧空

環境重視の流れのなかで、みせかけの“グリーンウォッシュ”も

(【2021126日 スマートでんきコラム】)

 

【欧州議会 「原発はグリーン」承認】

社会の基本的な流れとして、温暖化対策やSDGs(持続可能な開発目標)における“持続可能な開発の三側面、経済・社会・環境を調和させる”という理念に見られるように環境対策重視の方向性があります。

 

ただ、昨今のウクライナ情勢を受けたエネルギー不安から、石炭利用が復活するなど、その時々の事情で紆余曲折はあります。

 

そうしたなかで物議を醸したのが、EUにおける地球温暖化対策に貢献するグリーンな経済活動の基準。

欧州議会は、このグリーンな経済活動に原発と天然ガスを認定するEU法案を承認しました。

 

****「原発はグリーン」のEU法案 欧州議会が承認****

欧州連合(EU)欧州議会は6日、地球温暖化対策に貢献するグリーンな経済活動として、原発と天然ガスを認定するEU法案を承認した。議会に提出されていた修正提案は否決した。EU法案は来年1月の施行に向けて前進した。

 

法案は、欧州委員会が今年2月に発表した。グリーンな産業を認定するEUの独自基準「タクソノミー(分類)」の中に、天然ガスと原発を加える内容。タクソノミーには、2050年に温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にすることを目標に、特定産業に官民の投資を誘導する狙いがある。

 

欧州議会では、原発事故や核廃棄物がもたらす環境への懸念が指摘され、経済委員会などが先月、EU法案への修正要求を採択していた。6日の本会議(定数705)採決では、修正への支持が278票で過半数に達しなかった。

 

法案は、7月11日までが異議申立期間。今後、加盟国で構成する欧州理事会が異議申し立てをしない限り、1月に施行される。

 

法案をめぐっては、非原発国のオーストリアなどが反対する一方、原発推進派のフランスや東欧諸国が支持しており、理事会による反対決議は困難な情勢。オーストリア政府は6日、法案の差し止めを目指し、EU欧州司法裁判所に提訴する構えを示した。【76日 産経

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このあたりは、考え方や現状認識で対応・意見が別れるところ。

原発をグリーンな経済活動に含めることに反対するオーストリアなどのその後の動きに関する記事は、今のとこは目にしていません。

 

【プラスチック製品規制の世界的流れ】

環境重視の流れの一つがプラスチック製品の規制。日本でも「プラスチック資源循環促進法」が41から施行されています。

 

****使い捨てプラ、4月から企業に削減義務 代替素材に転換****

コンビニエンスストアやスーパーで無料で配られるプラスチック製のスプーンなどの使用量を減らす「プラスチック資源循環促進法」が1日、施行される。事業者に対し、削減計画を立てて使用量を減らすよう義務付ける。(中略)

 

削減対象となるのは飲食店やコンビニ、スーパーの店頭で配るストロー、スプーン、マドラーのほか、ホテルが提供するヘアブラシや歯ブラシ、クリーニング店のハンガーなど12品目だ。削減目標の設定は各事業者に委ねているが、全然減っていなかったり、増えたりした場合などには50万円以下の罰金が科されることがある。

 

法施行をきっかけに削減に取り組む企業が広がっている。

「餃子の王将」を展開する王将フードサービスは持ち帰り用のスプーンを1日から有料化する。全国の700店舗超で、持ち帰りのスプーンやレンゲを15円で提供する。「かつてのレジ袋有料化を鑑み、有料化がプラ削減に効果的と考えた」(同社)という。

 

有料化に踏み切る企業は少なく、植物由来のバイオマスプラスチックを配合したり、紙・木製に素材を変更したりする対応が多い。(中略)

 

客離れやレジシステムの混乱への懸念から有料化に踏み切る企業は少なく、当面は素材変更によるコスト増が重荷となりそうだ。

 

もっとも、今回の施策で削減対象となるプラ製品の国内流通量は10万トン弱にとどまる。日本全体のプラスチックの排出量は年850万トン程度で、1%程度にしかすぎない。プラごみは海に流出して環境問題になっているだけでなく、脱炭素の観点でも削減が重要だ。国内では温暖化ガスの総排出量の1%強にあたる年1500万トンをプラスチックの燃焼で排出している。

 

欧州の一部の国では使い捨てプラ製品の流通禁止といった強い規制もある。3月にケニアのナイロビで開かれた国連環境総会では、200近くの国・地域がプラスチックの使用量を減らし、海洋汚染を低減させる国際枠組みを作る方針を全会一致で決めた。

 

世界的にプラスチックの規制を強化する流れのなかで、日本のプラ法も実効性が問われることになる。【41日 日経

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私などはあまり意識が高くないせいか、プラスチック製品を敵視するような対応が本当に合理的なものなのかやや疑念もありますが、“世界の大勢”であることはまちがいありません。“あの”インドでも。

 

****インド、7月より使い捨てプラを禁止 違反者は刑務所収容も****

インドで2022年7月1日よりプラスチック製品の製造や輸入、販売、使用を禁止する規則が施行された。インドでは、プラスチックごみによって排水溝が詰まったり、牛が誤飲したりするケースが続いていた。違反者は、刑務所に収容されるか、最大17万円の罰金が科される可能性がある。

 

スプーン・フォークなどの使い捨てプラスチックが対象

インド政府は2022年7月1日から、使い捨てプラスチックの使用を禁止。スプーン、フォーク、ストロー、食器、包装用フィルム、風船、キャンディーなどが対象となる。アイスクリームに使用する棒、タバコ容器なども含まれ、対象となるものは多岐にわたる。

 

今回の規制には、厳しい罰則も設けられている。一部の報道によると、違反者には最大5年間、刑務所に収容されるか、10万ルピー(約17万円)の罰金が科される可能性があるという。

 

インド政府は今回の規制について2021年に方針を明らかにしていたが、準備期間が不十分であるとし、食品・飲料メーカーや消費財メーカーなどからは今回の規制に対し不満の声も上がっている。

プラスチック関連企業は今回の規制で閉鎖に追い込まれることが考えられるという。また需要に応じて、無許可のプラスチック製造業者が現れる可能性があり、警戒や監視の必要性が指摘されている。厳しい罰則が設けられた背景には、そのような懸念があるようだ。

 

人口14億人のインドではプラごみが公害問題へ発展

14億人以上と、世界第2位の人口を抱えるインドは、急速な経済成長にともなってプラスチック製品の需要も増加。年間のプラスチック使用料は1,400tにおよぶという。だがその一方で、排水溝や河川、街中にはプラスチックごみがあふれ、排水溝が詰まる、動物が誤飲するといった問題が生じ、公害問題に発展している。

実際、オーストラリアのMinderoo Foundationが発表したレポートによると、インドはアメリカ、中国に次いで、世界で3番目にプラスチック廃棄物が多いそうだ。

インドではこれまでに州単位でプラスチックを規制する動きがあったが、その成果はまちまち。そのため、今回の国全体での規制に舵を切ったことは大きい。今後もインドのプラスチック規制の動向に着目していきたい。【78日 ELEMINIST

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途上国では先進国以上に、露店やローカルな店で、持ち帰り用にビニール袋やレジ袋などが多用されています。

個人的な経験ですが、数年前インドを観光した際、ローカルな店でプラスチック製品を使わずに紙(新聞紙?)で商品を包装してたのに驚いたことがあります。帰国後に確認したところ、その州は厳しい規制を実施していたようです。

 

一方で、街や郊外の空き地、道路わきは使い捨てされたプラスチック製品で溢れていました。意識低い私でも「これはひどい・・・」と唖然とするぐらい。

 

そうした個人的経験からすると、インドに必要なのはプラスチック製品の規制ではなく、ゴミをそこらに捨てないという意識改革、ゴミ回収のスステムの構築ではないか・・・という感も。

 

なお、インドで厳しい規制がなされた背景には、ヒンドゥー教で聖なる動物の牛がプラスチック製品を誤飲したりする事例が続出していることもあるとか。これも私に言わせると、いくら“聖なる動物”とは言え、病気のために捨てられた牛が街を徘徊していることの方が問題にも思われますが・・・・。

 

インドでも規制するぐらいですから、意識高いアメリカ・カリフォルニア州では・・・・

 

****画期的なプラスチック規制法を導入、米カリフォルニア州****

米国はプラスチックごみの排出量が世界で最も多い。またプラごみのうち、海岸に不法投棄あるいは不適切な処理で廃棄された量は沿岸国で3位だ。2016年は推計約4200万トンのプラごみが排出された。にもかかわらず、米国が毎年リサイクルしているプラごみの割合は9%未満だ。

 

だからこそ2022630日にカリフォルニア州のニューサム知事が署名した、広範囲にわたるプラごみ抑制策を定めた法律は、増え続けるプラごみへの取り組みを国家レベルで大転換させ得るものとして歓迎された。(中略)

 

新法はいくつかの大きな目標を同時に達成しようとしている。最大の目標は、2032年までにカリフォルニア州での使い捨てプラスチック包装材を25%減らすことだ。21世紀半ばには世界で生産されるプラスチックの量が現在の3倍の年3200万トンずつ増加すると予測される中、今回の新法はプラスチックの生産量を抑制する米国初の法律だ。

 

包装そのものを小さくしたり、詰め替え可能な容器に切り替えたり、リサイクル可能な紙やアルミニウムといった別の素材を使うことで削減は可能になる。オーシャン・コンサーバンシー(米環境保護団体)は、こうした取り組みによって使い捨てプラスチックを今後10年間で2300万トン近く減らせると予測する。カリフォルニア州資源循環回収局(CalRecycle)によると、同州は毎年450万トンのプラごみを排出している。(後略)【711日 ナショナル ジオグラフィック日本版

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【環境重視の企業・投資活動 なかには見せかけの“グリーンウォッシュ”も】

こうした流れのなかで企業活動としても環境重視を前面に出すことが多くなっており、ESG投資(財務情報だけでなく、環境(Environment)と社会(Social)、ガバナンス(Governance)の視点を取り入れて判断する投資)といった言葉を目にすることも。

 

しかし、なかには“名ばかり”のものも。そうしたものが排除される仕組みがつくられないと、環境保全や社会の変革などにもつなげようというESG投資は一時的なブームで終わってしまいます。

 

****ESG投資の実態は“グリーンウォッシュ”にメス****

環境先進国・ドイツから届いたあるニュースが市場関係者の間で話題になっています。ESG投資をめぐってドイツの金融大手が当局の家宅捜索を受けたというのです。

「グリーンウォッシュ=“名ばかりESG投資”の排除に当局が乗り出したか。いよいよブームから選別の時代だ」。

ある金融機関の幹部はいいます。いったい何が起きているのでしょうか。

 

“グリーンウォッシュ”疑惑に当局動く

531日。ドイツ銀行と傘下の資産運用会社・DWSに検察と金融当局が家宅捜索に入ったと、現地メディアが一斉に報じました。当局が動いた理由はESG投資をめぐる疑惑です。

 

DWSをめぐっては、元幹部が去年「ESGの取り組みが実際よりも誇張されている」などと告発し、株価が大幅に下落。会社側は、根拠がないと告発を否定していましたが、捜索の直後、ドイツ銀行が、DWSCEOの辞任を発表しました。

 

環境保護をうたいながら、中身を伴っていないという企業の取り組みに対しては、これまで環境団体がたびたび抗議してきました。ただ、今回、当局が本格的に捜査に乗り出したことに市場関係者の間で驚きが広がりました。

 

こうした“名ばかりESG”は、グリーンウォッシュ(Greenwash)と呼ばれます。

「うわべだけ」とか「ごまかす」という意味の「Whitewash」に、環境に優しいという意味がある「Green」を組み合わせた造語です。つまり、「うわべだけの環境対策」「環境に配慮しているようにみせかけて実態は違う」という意味です。

 

アメリカでも…

グリーンウォッシュをめぐる動きはアメリカでも。

 

アメリカの証券取引委員会は、523日、金融大手のバンク・オブ・ニューヨーク・メロン傘下の資産運用会社に対して、150万ドル、日本円にしておよそ2億円の制裁金を科したと発表しました。

証券取引委員会は、ESG関連の投資の説明で、虚偽の記載や不十分な情報開示があったと指摘。

 

すべての投資がESG評価を受けているとしていた会社側の説明に対し、実際にはESG評価を受けていないケースがあったと認定したのです。

 

ESG投資 市場拡大の影で

環境への関心の高まりから、「ESG投資」は拡大を続けています。その規模は、2020年時点で総額35兆ドル、日本円でおよそ4700兆円にのぼるという調査結果もあります。(世界持続可能投資連合まとめ)

 

人気を象徴するのが、「グリーニアム」という現象です。こちらは「グリーン」と、上乗せ価格などを意味する「プレミアム」を組み合わせた造語。

 

例えば、同じ企業が発行する社債であっても、ESG社債の方が、通常の社債よりも価格が割高となり、投資家が将来に受け取れる利回りは低くなるというものです。

 

たとえ上乗せ価格を支払う必要があっても、脱炭素などの取り組みにつながるESG社債の方に投資したいという投資家が増えているのです。

 

今後も市場の拡大が期待される中、実態を伴わないグリーンウォッシュを放置すれば、ESG投資の成長を阻害しかねない。当局が排除に動き出した背景には、こうした危機感があるとみられます。

 

実は、日本でも気になる調査結果が。

金融庁がESG投資信託を取り扱う資産運用会社37社に調査を行ったところ、30%にあたる会社が「ESGの専門部署を設置していない」と回答しました。また38%が「専門の人材がいない」と回答。

 

およそ3割の会社でESG投資のための態勢が整っていない実態が浮き彫りになりました。

 

ESG市場は成熟へ向かうか 

こうした中、各国では、ESGの基準づくりや監督強化に乗り出しています。

 

EUは去年3月、資産運用会社に投資先のESG情報の開示を求める開示規則の適用を開始したほか、アメリカもESGの情報開示を強化する統一基準の導入を目指しています。

 

日本でもESG市場への信頼を向上させるため、今年度末をメドに運用会社の情報開示や顧客への説明などについて、監督指針をまとめるなど、必要な措置をとることにしています。

 

ESG投資は、脱炭素の分野であれば、温室効果ガスの削減効果の測定や情報開示など、手間やコストもかかり、専門知識も求められます。

 

市場関係者からは「エコやグリーンといった言葉が飛び交い、玉石混交だという指摘もあるだけに、真面目に取り組む事業者からすれば、グリーンウォッシュの排除は歓迎だ」という声も聞かれます。

 

投資のリターンだけではなく、環境保全や社会の変革などにもつなげようというESG投資。一時的なブームに終わらせないためには、市場のとしての信頼をどう築き上げ、安心して投資できる環境を整備していくかがカギになりそうです。【612日 NHK

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日本の企業活動でグリーンウォッシュとの指摘があった事例

 

****グリーンウォッシュとは?実際の事例や見分け方、対処方法をご紹介****

(中略)

グリーンウォッシュの事例

H&M

H&M2019年、「コンシャスコレクション」とのキャッチフレーズで、リサイクル素材を使用した商品を売り出しました。

しかし、リサイクル素材の使用量など十分な根拠が示されていないことから、ノルウェー消費者庁は「違法なマーケティングの疑いがある」と非難しました。

 

マクドナルド

マクドナルドは2018年、イギリス等の店舗でプラスチック製ストローの使用をやめ、「100%リサイクル可能」と謳った紙製ストローに切り替えました。

しかし実際には、ストローの強度を高めたために厚すぎてリサイクルできず、廃棄されていたとして大きな批判を受けました。

 

三井住友銀行

三井住友銀行は、パリ協定に関する政府方針に準じて脱炭素社会を実現すると表明しました。

しかし実際には、大規模石炭火力発電所への融資を継続しており、NGOからグリーンウォッシュだと指摘を受けました。(後略)【618日 COCOCOLOR EARTH

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消費者も、企業の見せかけの活動に騙されず、「具体的に何をしているのか?」「それは本当に環境に良いことなのか?」をしっかりと考えるようにしないと・・・ということのようです。