環境対策における各国の温度差 小泉環境相の沈黙 インドネシアの「恒例」煙害 | 碧空

環境対策における各国の温度差 小泉環境相の沈黙 インドネシアの「恒例」煙害


(【9月23日 情報速報ドットコム】)脱石炭火力の具体策を問われて沈黙する小泉環境相)

【各国の温暖化対策の温度差 小泉環境相の沈黙 欧州は戦略的に環境対策重視】
国連気候行動サミットでのスウェーデンの高校生環境活動家グレタ・トゥンベリさんの「How dare you!」(よくもそんなことを!)という怒りのスピーチが話題になっていますが、各国の温暖化対策の温度差も明らかになっています。

石炭火力発電所の新設・増設を続ける日本はアメリカと並んで、あまり熱意が感じられない部類に分類されています。

石炭火力はイメージとは違ってクリーンだとの主張もあるようですが、問題は小泉環境相の(セクシー発言よりは)脱石炭火力の具体策を問われたときの「・・・・」という沈黙でしょう。

****国連女性幹部の助けでやっと記者団から解放****
記者から「石炭は温暖化の大きな原因だが、脱石炭火力に向けて今後どうする?」と質問された小泉氏。

即座に「減らす」と答えたが、記者から「どのように?」と具体策を尋ねられると答えに詰まった。

6秒間の沈黙後、出てきたのは「私は大臣に先週なったばかり。同僚、環境省スタッフと話し合っている」と苦しいコメント。

隣に座るクリスティアナ・フィゲレス国連気候変動枠組条約前事務局長から「これは日本だけの問題ではない。彼は大臣になって10日、何をすればいいのか分からなくても驚かない」と助け舟を出してもらい、その場を乗り切った。【9月24日 J-CASTテレビウォッチ 】
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小泉氏が沈黙したのは大臣になったばかりというだけでなく、政府にそういう考えがなく、当然に具体策もないからであり、その意味では「減らします」と即答断言した小泉氏の“意気込み”は、これまでとは異なるものなのかも。

日本の石炭火力発電技術が優れており、(SOx、NOxの排出量について)クリーンだという議論は、たとえそうであるにしても、CO2排出が重視される現在の世界の流れを考えると、温暖化対策を軽視しているという国際的イメージのリスクを過小評価しているようにも。

一方、欧州は温暖化対策・環境対策を戦略的に最優先課題として、国際的影響力発揮の梃とするだけでなく、国内の極右・ポピュリズム勢力台頭への対抗策、経済活性化の手段とする方向にあります。

****欧州、地球温暖化対策が最大の政治課題に***** 
欧州連合(EU)では、地球温暖化対策が最大の政治課題として浮上する。

11月に就任するフォンデアライエン次期欧州委員長は、環境対策を最優先課題に掲げ、今後10年で1兆ユーロ(約120兆円)の投資を目指す方針だ。反移民のポピュリズム(大衆迎合主義)政党が伸長するEUで、環境対策は中道勢力巻き返しのカギと位置付けられている。
 
フォンデアライエン氏は今夏発表した施政方針で、2050年に温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にする目標の法制化を公約した。実現に向け、30年までに排出量を1990年比で55%削減する新たな目標を表明。これまでの目標は40%だったが、「より野心的に取り組む」と主張した。
 
ドイツのメルケル政権は20日、気候変動の総合対策を閣議決定した。23年までに540億ユーロ(約6兆4千億円)の拠出を目指す。排出量の少ない鉄道を割安にし、航空機への課税を強化する方針で、電気自動車購入の助成金を増額する。
 
EUでは、環境ビジネスを経済テコ入れの核にしようという動きも進む。独仏両国は今年5月、電気自動車(EV)向け電池の開発に向け、官民共同で最大60億ユーロ(約7500億円)を投資する計画を発表した。マクロン仏大統領はEV生産推進で、仏自動車業界の再生を目指す。
 
環境重視の政策は、EU有権者の関心の高まりを反映したものでもある。5月のEU欧州議会選では環境政党が躍進。緑の党がドイツで21%、フランスでは13%を得票し、左派陣営の主力政党に躍り出た。
 
今春実施のEU世論調査では、93%が気候変動を「深刻な問題」と位置付けた。ドイツや英国、北欧など8カ国では「世界が直面する最も深刻な課題」とする回答が、貧困やテロを上回って首位になった。
 
今夏、欧州各国は熱波で史上最高気温を記録し、独仏では40度を超えた。仏政府は1400人以上が猛暑で死亡したと発表。英国でも列車の減速運行を迫られるなど、異常気象が庶民生活に打撃を与えている。環境活動家、グレタ・トゥンベリさんに呼応する若者デモもEU各国に広がった。【9月24日 産経】
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仕事中に聞こえてきたTV放送のためうろ覚えで恐縮ですが、小泉環境相も何かの会合で、「政府の政策というと安全保障や財政などがあげられるが(何を例示としてあげたかは忘れました。別のものだったかも)これからは環境があげられなければならない」みたいな発言をしていたようにも思います。

温暖化対策に限らない欧州の環境対策重視の一例として、フランスの殺虫剤禁止の取り組みも。

****パリなど仏5都市、殺虫剤の使用を禁止****
フランスで、首都パリを含む5つの都市が12日、市内での殺虫剤の使用を禁止した。地方部で始まった反化学物質運動が広がりを見せている。
 
殺虫剤禁止に踏み切ったのは、パリに加え、北部リール、西部ナント、南東部グルノーブル、中部クレルモンフェラン。生物多様性と市民の健康の保護の必要性をその理由に挙げている。
 
とはいえ、公園や緑化スペースで公共機関が合成殺虫剤を使用することはすでに法律で禁じられているため、今回の都市部での殺虫剤禁止措置は象徴的な意味合いが大きい。
 
フランスでは今年1月から、個人の庭でも合成殺虫剤の使用が全土で禁止されていて、天然成分のもの以外は使用が認められていない。
 
政府は住宅地から5〜10メートル以内の範囲での殺虫剤の使用禁止を提案しているが、環境活動家らからは十分な施策ではないと批判を受けている。 【9月12日 AFP】AFPBB News
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最初に読んで、蚊やハエ用の殺虫剤スプレーの連想して、「いくら生物多様性といっても・・・」とも思ったのですが、そうではなくて、(多分)農業・園芸で使用するネオニコチノイド系殺虫剤の話で、生物多様性云々は花粉の受粉を媒介するハチやチョウの激減、いわゆる「沈黙の春」現象が急速に進行していることを意識したもののようです。

【インドネシア貧困地区ではプラごみは「宝物」】
環境対策に温度差があるのは先述のとおりですが、途上国などになると全く異なる様相にもなります。

近年問題視されているプラスチックごみですが、インドネシアの貧困地区では生計を立てる「宝物」にもなります。

****プラごみは「宝物」、輸入廃棄物で生計立てる貧困地区住民 インドネシア****
金目の廃棄物を拾い集めて子どもたちの学費を捻出したと、クマンさんは日焼けした顔に笑みを浮かべて話した。クマンさんの住むインドネシア・バングンでは廃品集めが盛んで、住民の多くはその恩恵を受けている。
 
各国が使い捨てのプラスチックごみ問題に取り組む中、バングンの人々にとってごみは現金に等しい。住民の約3分の2は廃棄されたペットボトル、プラスチックの包装やコップを拾って選別し、地元企業に売ることで何とか生計を立てている。
 
クマンさんはAFPの取材に「3人の子どもがいる…全員が大学に行った」と、くるぶしまでごみに埋もれながら誇らしげに語った。「私が一生懸命ごみを拾い集めたおかげだ」
 
バングンは、インドネシアで最も人口が多い島ジャワに位置する貧困地区の一つ。住民たちは、米国、英国、ベルギー、中東などから送られてくる廃棄物から再利用できるものを拾い集めて売ることで生計を立てている。
 
リサイクルごみの最大輸入国だった中国が今年、輸入禁止に踏み切ったことで、世界中のリサイクルごみ業者が混乱に陥り、大量の廃棄物が今度は東南アジアに送られるようになった。バングンでもそれ以来、ごみの量が増えている。
 
国際環境保護団体グリーンピースによるとインドネシアのプラスチックごみの輸入量はここ数年で急増しており、2017年後半は月1万トンだったものが、2018年後半には同3万5000トンにまで拡大。グリンピースは、プラスチックごみの増加は環境と健康に甚大な被害をもたらすと警告している。(中略)

■環境保護主義者と住民たちの考えは平行線
しかし、環境保護主義者の見方は異なる。使い捨てプラスチックが夜間に燃やされ、町中に有毒ガスをまき散らし、マイクロプラスチックが水路に流れ込んでいると指摘する。
 
インドネシアは中国に次いで世界2位の海洋汚染国で、2025年までに自国海域におけるプラスチックごみを約70%削減するという目標を掲げている。
 
NGO「エクトン」の環境保護活動家で、ノーベル賞にも例えられる「ゴールドマン環境賞」を受賞したプリギ・アリサンディ氏は「(ごみの受け入れはインドネシアの)私たちにとって高くつく。医療制度の面でも、次世代のために環境をよみがえらせるにしても金がかかる」と指摘する。
 
だが、バングン住民の考えは全く違うようだ。
クマンさんは「ごみはここでは宝物だ」と話す。「なぜかって? 朝に乾かして選別すると、夕方にはお金になっているからだ」 【翻訳編集】
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【恒例ともなったインドネシア野焼き・森林火災の煙害】
インドネシア関連の環境問題として毎年メディアを賑わすのが、野焼き・森林火災の煙害(周辺国への影響、健康被害など)です。いささか恒例行事になった感もありますが、今年は近年では最悪の事態ともなっています。

****煙害で空が一面真っ赤に インドネシア****

インドネシアで大規模な森林火災による煙害が深刻化している。スマトラ島中部ジャンビ州では先週末から週明けにかけ、昼間の空が一面赤く染まる現象がみられた。

ソーシャルメディアには、同州の村落や幹線道路が真っ赤な霧に覆われたような画像や動画が投稿された。
インドネシア気象気候地球物理庁(BMKG)はインスタグラムで、これは日光が大気中の大きな粒子に当たった時に起きる散乱現象だと説明した。

BMKGによると、赤い霧が観測された日の衛星画像では、ジャンビ州周辺にPM10(直径10マイクロメートルまでの粒子状物質)の濃度が高い地点が集中していた。

ジャンビ州では先週末、大気汚染の度合いを示すAQI(空気質指数)も、住民に重大な健康被害の恐れがある「危険」レベルに達した。

隣接するリアウ州は23日、大気汚染の深刻化を受けて緊急事態宣言を出した。

煙害は近隣諸国にも及んでいる。マレーシアでは汚染地域の生徒らにマスクが配られ、約600の学校が一時休校となった。

インドネシアの森林火災による焼失面積は32万8000ヘクタールを超え、数百人の住民が避難を強いられた。緊急対策当局によると、現地には消防要員ら9000人余りが出動している。

インドネシア警察は野焼きなどによる人為的な火災が大半を占めるとの見方を示し、これまでに200人近くを逮捕した。【9月25日 CNN】
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上記記事にもあるように、毎年、周辺のマレーシアやシンガポールにも汚染が広がり国際問題ともなります。煙はタイやフィリピンにも到達しているようです。

****インドネシア、煙害深刻 森林火災、有害物質で死者****
インドネシアで、大規模な野焼きや森林火災によって有毒な煙が発生する「煙害」(ヘイズ)が深刻となっている。近隣のマレーシアやシンガポールにも大気汚染は広がって生活に深刻な影響を及ぼし、互いに責任をなすりつけ合う外交問題に発展している。(中略)

 ■周辺国でも街かすむ
煙害は、マラッカ海峡を越えて周辺国にも及ぶ。マレーシアの首都クアラルンプールでは20日、超高層のペトロナスツインタワーが、かすんで見えていた。
 
銀行員のジェーン・ウォンさん(50)は、職場でマスクが配られ、出勤以外は外出を避けている。「目やのどの乾燥がひどく、家とデパートと職場を車で訪れるだけ」と嘆いた。
 
教育省によると、19日までに2600校以上が休校に。ボルネオ島サラワク州では、政府が「とても健康に悪い」と認定する汚染値に達した。マハティール首相は「ドローンで人工雨を降らせることも検討している」と述べた。
 
シンガポール政府も「この3年間で最悪レベル」としている。20日からは観光客が集まるF1グランプリが開かれ、主催者は観客用のマスクも用意した。

 ■違法野焼き、対策打てず
煙害は毎年起きており、エルニーニョ現象で乾期が長引くと、被害はより深刻になる。引き金は、アブラヤシ農園などの開拓で繰り返される違法な野焼きだ。「開拓方法として最も手軽で安上がりだからだ」と、インドネシアの中部カリマンタン州の林業局長は取材に話した。
 
インドネシアの国家警察は、計249人を放火容疑で捜査中だ。野焼きを依頼した疑いで六つの企業も調べている。
 
原因を作っているのはインドネシアだけではないとされる。同国政府は、同国内でマレーシアなどの外国企業も野焼きをしていると主張している。
 
マハティール氏は「企業が国外で煙害を出した場合、罪に問えるようにする」と述べ、法改正を検討していると表明した。シンガポールのズルキフリ環境相は、インドネシアに支援の用意があると伝えた。ただ、国をまたいでの対策やルールはまだなく、解決への道筋はついていない。【9月23日 朝日】
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インドネシア国内でマレーシアなどの外国企業も野焼き云々の非難の応酬も例年のことです。

上記記事にもあるように、アブラヤシ農園などの開拓ための野焼きが多く、また、泥炭地が多いため、いったん火が付くと消火が難しく、大量のCO2を排出することにもなります。

当然に健康被害も。

****インドネシア森林火災、大気汚染が子ども1000万人に健康リスク 国連****
インドネシアで続く森林火災による大気汚染が、1000万人近い子どもたちの健康を危険にさらしていると、国連が25日警鐘を鳴らした。
 
インドネシアの森林火災により数週間にわたって有害な煙霧が東南アジアの空を覆い、学校や空港は閉鎖に追い込まれ、人々はマスクを買い求めたり、呼吸器系の不調を訴え医療機関に駆け込んだりしている。科学者らは温室効果ガスが大量放出されていると指摘している。
 
インドネシア政府は、農業用地とするために森林が焼き払われたことから広がったこの火事に対処するため、数万人規模の人員と消防飛行機を動員している。同様の火事は毎年のように問題になるが、今年は日照りが続いたため2015年以来最悪の事態となっている。
 
国連児童基金(ユニセフ)によると、スマトラ島とボルネオ島のインドネシア領のうち最も被害が深刻な地域には、18歳未満の子ども1000万人近くが居住しており、うち4分の1は5歳未満だという。
 
幼い子どもは免疫が発達していないため特に被害を受けやすく、また母親が妊娠中に大気汚染にさらされると子どもが低体重で生まれるといった問題が生じる可能性があるという。
 
インドネシア各地ではまた大気環境の悪化によって多数の学校が休校になり、数百万人の子どもたちが授業を受けられない状態が続いている。
 
ユニセフのデボラ・コミニ氏は「インドネシアにとって、大気環境の悪化は日増しに大きくなる深刻な問題」だと述べ「数百万人の子どもらが毎年、健康を脅かし、学校を休む原因となる有害な空気を吸っている…結果として、生涯にわたる身体的な損傷や認識能力の衰えにつながる」と語った。
 
インドネシアと並行してブラジルのアマゾンやオーストラリアなど世界各地で山火事が多数発生しており、科学者らは地球温暖化に及ぼす影響について懸念を強めている。 【9月25日 AFP】
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