碧空
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イスラエルがヨルダン川西岸地区で進める「静かな併合(creeping annexation)」

2026215日、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区北部で、ユダヤ人入植者が設置したイスラエル国旗で飾られたフェンスの前を歩くパレスチナ人男性【216日 ARAB NEWS】)

 

【国際法違反との国際批判にもかかわらず、西岸地区の入植地拡大に固執するイスラエル】

イスラエルが国際法違反との(米以外の)国際社会の批判にもかかわらず、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区での入植活動を拡大させ、パレスチナ問題解決の方策と(イスラエル・トランプ政権以外の)国際社会が考えるパレスチナ国家樹立の土台を突き崩していることは、20251225日ブログ“イスラエル  新たな入植地承認 なぜ入植地を拡大し続けるのか?”など、これまでも再三取り上げてきました。

 

****イスラエル、ヨルダン川西岸の入植地19カ所を承認****

イスラエルの安全保障閣僚会議は、同国が占領するパレスチナ・ヨルダン川西岸地区の新たな入植地19カ所を承認した。ベザレル・スモトリッチ財務相が21日、明らかにした。イスラエル政府は入植地の拡大方針を継続している。

 

極右のスモトリッチ氏は、この決定はパレスチナ国家の樹立を阻止するためのものだと述べた。同氏自身も入植者で、イスラエル・カッツ国防相と共に今回の案を提案した。

 

ヨルダン川西岸のイスラエル入植地は国際法上、違法とされている。

サウジアラビアはこうした動きを非難している。国連のアントニオ・グテーレス事務総長も、イスラエルの「とどまることのない」入植地拡大は、緊張をあおり、パレスチナ人の土地への移動を制限し、パレスチナが主権国家として存在する可能性を脅かすとしている。

 

ヨルダン川西岸では、202310月にガザ地区で戦争が始まって以来、暴力が急増している。それにより、入植地拡大がイスラエルの占領を強化し、2国家解決を損なうのではないかとの懸念がいちだんと高まっている。

 

2国家解決とは、ヨルダン川西岸とガザにパレスチナ国家を建設する構想で、首都を東エルサレムとし、イスラエルとの境界は1967年の第3次中東戦争以前の境界線にほぼ沿ったものとする。

 

イスラエルの現政権は2022年の発足以来、新たな入植地の承認を大幅に増やし、無認可の前哨基地を既存入植地の「近隣地域」として合法化する手続きを進めている。

 

スモトリッチ氏によると、今回の決定で、過去3年間に承認した入植地は計69件となった。イスラエルの入植地拡大については、2017年以来となるレベルに達したと、国連が発表したばかり。

今回の承認には、約20年前に解体されたガニムおよびカディムの入植地2カ所の再確立も含まれている。

 

西岸地区併合の懸念も

イスラエルは今年5月、ヨルダン川西岸で22カ所の入植地を承認した。過去数十年で最大規模の拡大だった。

イスラエル政府は8月にも、エルサレムとマアレ・アドゥミム入植地の間に3000戸以上の住宅を建設する「E1計画」を承認している。この計画は、国際社会の強い反対を受けて長年凍結されていた。

 

スモトリッチ氏は同計画の推進を発表した際、この計画について、「パレスチナ国家という考えを葬る」ものだと述べた。

 

入植に反対するイスラエルの団体「ピース・ナウ」によると、ヨルダン川西岸と東エルサレムには入植地が160カ所近くあり、計約70万人が住んでいる。それらの土地は、パレスチナ人が将来の独立国家の土地だとして求めている。

 

アラブ諸国は入植地の拡大に対し、2国家解決への展望を損なうとして、一貫して激しく反発している。

 

入植地拡大はまた、イスラエルがヨルダン川西岸を併合する可能性への懸念も生んでいる。

アメリカのドナルド・トランプ大統領は、イスラエルのそうした動きに警告を発している。もしヨルダン川西岸を併合すれば、イスラエルはアメリカからのすべての支援を失うだろうと、米誌タイムに話している。

 

イギリスやオーストラリア、カナダなどの国々は9月、パレスチナ国家を承認した。各国政府にとっては、象徴的ではあるものの大きな意味をもつ政策変更となった。

 

イスラエルはこの動きに反発。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、パレスチナ国家は「実現しない」としている。【20251222日 BBC

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1225ブログで触れたように、イスラエルが国際社会からの強い非難や「国際法違反」との指摘を受けながらも入植地を拡大し続ける背景には、単一の理由ではなく、

イスラエルが西岸地区を安全保障上必要と考えていること、

旧約聖書に遡る宗教・歴史的イデオロギー(西岸地区はユダヤ民族発祥の地としての深い愛着があること)、

ネタニヤフ連立政権は極右政党・宗教政党の協力を必要としているという国内政治

という重層的な要因が絡み合っています。

 

また国際法違反という国際批判に対しては、「西岸地区は、第一次世界大戦後の1922年から1948年までイギリスが国際連盟の委任を受けて統治していた委任統治領に含まれており、この委任統治領は当時から“ユダヤ人の国家(郷土)を作るための土地”として認められていた」という論理を対抗軸と打ち出しています。

 

【進む「静かな併合(creeping annexation)」

そうした状況で、実質的西岸地区併合に向けて更に一歩踏み出す動きが。

 

****イスラエル、ヨルダン川西岸で入植者の土地登記を承認 パレスチナ反発****

イスラエルの安全保障閣僚会議は15日、ヨルダン川西岸地区でイスラエル人入植者による土地の登記を承認した。

 

土地の登記を認めるのは、イスラエルが1967年の戦争でヨルダン川西岸を占領して以来、初めて。イスラエルによる支配力を強化し、入植者が土地を購入しやすくすることが狙いだ。

 

パレスチナ自治政府は「パレスチナ領土の事実上の併合であり、違法な入植活動を通じて占領を定着させることを目的とした併合計画の開始を宣言するものだ」と非難した。

 

イスラエルはヨルダン川西岸地区で入植者の土地購入を容易にするため、パレスチナ人に対するイスラエル当局の執行権限を強化する措置を8日に承認。国際世論の反発を買ったが、追加措置に踏み切った。

 

ヨルダン川西岸地区は、パレスチナ人が将来の独立国家樹立を目指している地域の1つ。大部分はイスラエル軍の支配下にあり、西側諸国が支援するパレスチナ自治政府が一部の地域で限定的に自治権を認められている。【216日 ロイター

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イスラエルがヨルダン川西岸地区で入植者の土地購入を容易にするため、パレスチナ人に対するイスラエル当局の執行権限を強化する措置を8日に承認、15日にはヨルダン川西岸地区でイスラエル人入植者による土地の登記を承認した・・・・という一連の措置は、単なる行政手続きの変更ではなく、占領地の法的・制度的統合を進める動きとして大きな政治的意味を持ちます。

 

*****西岸地区におけるイスラエルの一連の措置の意味するもの****

1何が変わるのか(制度面)

■ 土地購入・登記のハードル引き下げ→事実上、イスラエル国内の不動産取引に近い扱い

これまでヨルダン川西岸では、以下のような制約がありました。

土地取引は軍政・民政の複雑な許可が必要

パレスチナ人所有地の売買は厳格審査

安全保障・政治的理由で却下される事例も多い

 

今回の措置により、入植者(イスラエル人)による購入手続きが簡素化され、イスラエル側の登記制度への接続が進み、事実上、イスラエル国内の不動産取引に近い扱いとなる可能性が指摘されています。

 

■ 執行権限強化の意味

「執行権限強化」とは具体的には、建築違反の摘発、土地利用の取り締まり、立ち退き命令、接収・差し押さえなどをイスラエル当局がより直接・迅速に行えるようにすることを意味します。

 

従来は軍政、民政当局、裁判手続きが分散していたのに対し、行政的に一体運用しやすくなるとみられています。

 

2. イスラエルの狙い

(1) 「既成事実化」の加速(最大の狙いはこれです)

入植地拡大、土地所有のイスラエル化、法制度の接続を進めることで、将来の国境交渉で撤退困難な状況を作るという戦略です。

 

和平交渉では通常、人口・住宅数・インフラ・土地登記が「現実」として交渉材料になります。

つまり、登記=政治的事実化という意味を持ちます。

 

(2) 併合(アネクゼーション)への布石

イスラエル右派・宗教右派は長年、西岸の一部または全部の併合を主張してきました。

今回の措置は軍政 → 民政、占領地 → 国内法的管理への移行を進めるため、「静かな併合(creeping annexation)」と国際社会では呼ばれることがあります。

 

(3) 入植運動支持層への政治的配慮

国内政治要因も大きいです。

入植者コミュニティは人口約50万~70万人(東エルサレム除く)で右派連立の重要支持基盤であり、政権維持に不可欠です。

そのため住宅供給、土地確保、法的安定性を高める政策は、連立維持策でもあります。

 

(4) 安全保障論理

イスラエル政府はしばしば高地支配、緩衝地帯確保、テロ対策を入植維持・拡大の理由に挙げます。

西岸は地理的にイスラエル本土の人口密集地を見下ろす高地であり、軍事的縦深確保の論理が使われます。

 

3. パレスチナ側への影響

■ 土地喪失リスクの拡大

登記が進むと私有地の売却圧力、名義不備を理由とする接収、「国有地」認定などが増える可能性があります。

西岸ではオスマン帝国時代・英委任統治時代の土地台帳が混在しており、書類不備=接収 となるケースが問題視されています。

 

■ 連続した国家領域の分断

入植地が拡大するとパレスチナ都市が飛び地化、交通・経済の遮断などで将来国家の領域連続性が崩壊します。

これは「二国家解決」を物理的に困難にします。

 

4. 国際法上の位置づけ

国際社会の大多数は、西岸=占領地、入植=国際法違反との立場です。

根拠は主にジュネーブ第4条約(占領国の自国民移住禁止)

 

ただしイスラエル政府は「係争地」であり占領地ではない、歴史的・聖書的権利、安全保障上の必要などを主張し、違法性を否定しています。

 

5. 今回措置の政治的インパクト

■ 和平交渉への打撃

国境線確定がさらに困難となり、土地交換交渉の余地が縮小

 

■ 暴力衝突リスク上昇

入植者とパレスチナ人の摩擦増大、治安作戦の増加

 

■ 国際的孤立圧力

欧州・国連の批判強化、制裁論の再燃可能性

 

6. 時系列で見た位置づけ

近年の流れとしては

入植地合法化法案

前哨地の正式承認

インフラ接続(道路・水道・電力)

民政権限のイスラエル政府移管

土地登記の制度接続 (← 今回ここ

という段階的統合プロセスの一部と見られます。

 

まとめ

今回の措置の本質は次の3点です。

法制度面:入植者の土地取得・所有を恒久化

領土政治面:将来の国境交渉を有利化

国家戦略面:西岸の事実上の併合を段階的に推進

つまり「占領の管理」から「領土の統合」へ重心を移す動きと解釈されています。

【ChatGPT】

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【イスラエルを抑止しないトランプ政権】

トランプ米大統領はイスラエルによるヨルダン川西岸地区の併合を否定していますが、同政権はイスラエルによる入植地建設の加速を抑えようとはしていません。

 

****イスラエル内閣がヨルダン川西岸地区の土地登録を承認、パレスチナ側は「事実上の併合」と非難****

(中略)

内閣は声明で、登録は「パレスチナ自治政府によって推進された違法な土地登録プロセスへの適切な対応であり、紛争を終わらせるものだ」と述べた。

 

パレスチナ自治政府は、この閣議決定は「事実上のパレスチナ占領地の併合であり、違法な入植活動を通じて占領を定着させることを目的とした併合計画の開始宣言」であるとして、これを拒否した。

 

ドナルド・トランプ米大統領はイスラエルによるヨルダン川西岸地区の併合を否定しているが、同政権はイスラエルによる入植地建設の加速を抑えようとはしていない。

 

国連最高裁判所は2024年、拘束力のない勧告的意見として、イスラエルによるパレスチナ地域の占領と入植は違法であり、できるだけ早く終結させるべきだと述べた。イスラエルはこの見解に異議を唱え、歴史的、聖書的なつながりがあると述べている。

 

今回の土地登録は、支配を拡大するために今月初めにとられた一連の措置に追加されるものだ。【216日 ARAB NEWS

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ロシア  独ソ戦を越えて長期化するウクライナ戦争 社会に疲弊感も 膨大な戦死者・帰還兵問題も

(ウクライナとの戦闘で死亡したロシア軍兵士の墓(2025220日、ロシア西部ニジニーノブゴロドで)【2025223日 読売】)

 

【トランプ大統領:ゼレンスキー大統領に「行動」を求める ゼレンスキー大統領「ウクライナがあまりにも頻繁に譲歩を求められている」と不満】

ロシア軍がウクライナに侵攻した2022224日から4年が経過しようとしていますが、戦闘は終結せず、和平交渉もウクライナ・ロシアの間の主張の隔たりは埋まっていません。

 

ロシアの支配地域をどこまで認めるかという「領土問題」、戦争終結後のロシアの再侵攻を抑止する「安全保障」などが主な争点となっています。

 

****ウクライナ外相、対ロシア和平協議で残る懸案「首脳会談」で解決必要と指摘****

ウクライナのシビハ外相はロイターのインタビューに応じ、ロシアとの和平協議で残る領土問題などの重要な懸案事項について、両国の首脳レベルの対面会談による解決が必要だとの認識を表明した。

 

現在のウクライナとロシアの協議は、トランプ米大統領が示した20項目の提案がたたき台になっている。こうした中でシビハ氏は「戦争を止められるのはトランプ氏だけだ」と改めて指摘し、11月の米議会中間選挙など新たな流動的要素が加わる前に、和平の取り組みを加速させたいと強く訴えた。

 

一方でシビハ氏は「数項目が(協議対象として)引き続き存在している。最も機微に触れる難しい事案は首脳間で対応しなければならない」と語った。

 

特に領土問題でウクライナとロシアの主張は依然かけ離れている。ロシアは、ウクライナがなお保持する東部ドネツク州の残り20%を引き渡すよう要求し、ウクライナはかたくなに拒否。ウクライナは、ロシア占領地域にある欧州最大のザポリージャ原発の掌握も求めている。

 

2月45日に中東のアブダビで開かれたウクライナ 、ロシア、米国の三者協議では事態打開の兆しは見えず、合意されたのは捕虜交換だけにとどまった。

 

ウクライナはこの戦争が終結した後、ロシアによる再侵攻を抑止する上で西側による安全の保証供与も重視している。

 

シビハ氏によると、米国は議会で安全保障の提供を批准する用意があることをウクライナに確認した。その後、和平合意を支援する安全保障上の「最終手段」を提供するが、ウクライナ国内に米軍部隊を派遣することはないという。

 

同氏は「現段階では、米国抜きでの安全保障インフラや枠組みはあり得ないと個人的に考えている。われわれは米国を味方につけねばならない。そして彼らはその過程にある。これは非常に大きな成果だ」と述べた。【29日 ロイター

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ウクライナ・ロシア・アメリカの3カ国は1月下旬と2月上旬、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで2回にわたり高官協議を実施。ただ、和平案の焦点であるウクライナ領の扱いなどを巡って結論は出ず、今月17日には3回目のウクライナ・ロシア・アメリカの高官協議がジュネーブで予定されています。

 

「勝てない戦争を始めた」ウクライナ側の責任を日頃主張し、ロシアに宥和的な言動も多いトランプ大統領は、ゼレンスキー大統領に決断を促す圧力をかけています。

 

****トランプ氏、ゼレンスキー氏に行動要求 和平機会逃すと警告****

トランプ米大統領は13日、ウクライナのゼレンスキー大統領が「行動を起こさなければ」和平の機会を逃すという認識を示した。

 

トランプ大統領は記者団に対し、「ロシアは合意を望んでおり、ゼレンスキー大統領は行動を起こさなければならない。さもなければ、絶好の機会を逃してしまうだろう」と語った。【214日 ロイター

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「ルール」や民主主義などの「価値観」よりは「力」が国際秩序を決めるという考えのトランプ大統領としては、軍事侵攻したロシアの責任はさほど問題ではなく、アメリカ・ロシアという力ある大国が決める結着に「小国」ウクライナは従うべきだという発想なのでしょう。

 

こうした流れに、ゼレンスキー大統領は「ウクライナがあまりにも頻繁に譲歩を求められている」と不満を示しています。

 

****米はウクライナに「譲歩求めすぎ」、ゼレンスキー氏が不満吐露****

ウクライナのゼレンスキー大統領は14日、ミュンヘン安全保障会議で演説し、来週ジュネーブで開催される米国仲介の和平協議について、実質的なものとなることを期待すると表明する一方、ウクライナが「あまりにも頻繁に」譲歩を求められていると不満もにじませた。ロシアが交渉団トップを交代させたことについては、決定を遅らせようとしているとして非難した。(中略)

 

ゼレンスキー氏は、トランプ米大統領から「若干の」圧力を感じていると認めた。トランプ氏は13日、ゼレンスキー大統領が「行動を起こさなければ」和平の機会を逃すなどと述べている。

 

ゼレンスキー氏は「米はしばしば譲歩の話を持ち出すが、譲歩がロシアではなくウクライナのみを前提に議論されることが多すぎる」とし、ウクライナは多くの譲歩を行っており、ロシアがどのような妥協を受け入れる用意があるかを聞きたいと語った。【215日 ロイター

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【開始から4年 ロシア社会にも疲労感】

一方、ロシアも、トランプ大統領が当初のロシア主張をほぼ丸呑みした立場から後退していると不満を示しています。

 

****「米国が立場変更」とロシア外相 ウクライナ和平で不満****

ロシアのラブロフ外相は9日までに、ウクライナ和平を巡りトランプ米政権が立場を変更したとして不満を表明した。ロシアは昨年8月の米ロ首脳会談で米国の提案を受け入れたが「米国は現在(その提案を協議する)用意がないようだ」と述べた。同日公開されたロシア系メディア「TV BRICS」のインタビューに答えた。

 

米国の提案は公表されていないが、ロシアが主張する「ウクライナ紛争の原因の根本的な除去」に関するロシアの要求を幅広く取り込んだ内容だったとされる。ラブロフ氏は、最近実施された米ロ、ウクライナの3カ国高官協議で、米国の立場が米ロ首脳会談時よりも後退したとして反発しているとみられる。

 

ラブロフ氏は、ロシアは米国提案を受け入れてウクライナ問題を解決し、幅広い協力に移行する想定だったが「現実は全て逆だ」と指摘。米国が新たな対ロ制裁を科し、インドなど友好国にロシア産エネルギーの購入禁止を迫っていると批判した。【210日 共同

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戦争が長期化するなかで、ウクライナ側が連日のロシアの攻撃に曝され、電力施設が損傷し、多くの国民が厳しい冬を暖房なしで乗り切ることを強いられているといったあたりは周知のところですが、ロシア側も「戦争の代償」は大きなものになっています。

 

もちろんロシアは自国が直接攻撃に曝されることは少なく、直接的被害を受けているウクライナとは比べようもありませんが、プーチン大統領は国民に不人気な「戦争」を極力意識させない形でなんとかしのごうとしていますが、4年にも及ぶ戦争の傷はロシア社会も蝕んでおり、大きな問題を生んでいます。

 

****独ソ戦超えた「特別軍事作戦」 軽視される露国民の疲労感=真野森作****

1418日。第二次大戦でソ連がナチス・ドイツに勝利するまでの日数だ。ロシアでは先の大戦を「大祖国戦争」と呼ぶ。プーチン政権は、国民の団結を促す歴史的な出来事として重要視している。

2026111日、ロシアがウクライナで続ける「特別軍事作戦」が開始から1418日目を迎えた。時間的長さにおいて独ソ戦を超えた。

 

ロシアにとって、今回の戦いは総力戦ではない。自国側の死者数は非公表だが、独ソ戦の推計2700万人より桁違いに少ない。地上戦はほぼウクライナ領内のみで展開されている。このように独ソ戦との違いは大きいが、その長期化によってロシア国民の間で「戦争疲れ」は確実に広がってきた。

 

251219日、モスクワで開かれたプーチン大統領の年末記者会見でも、それを感じさせるやりとりがあった。

 

「『ウクライナに関するこうした(記者会見の)放送にはうんざりだ』と。同感です。終わりにしなければなりません」。プーチン氏は、国民のメッセージとされる文章を読み、こう語った。疲労感に理解を示したと言えるが、この会見の冒頭では「危機の根本原因の除去」を訴え、開戦当初と何ら変わらぬ強硬姿勢も示した。

 

つまり、プーチン氏は国内のうんざりムードを承知の上で、自らが掲げる戦争目標の達成を追求し続けているということになる。

 

年末記者会見では、会場後方に大画面があり、国民からのメッセージとされる文章が次々と映し出されていた。現場で記録できた文章を紹介したい。

 

経済状況への不満が複数示されていた。「欧米依存は良くない。では中印依存は良いのか?」「なぜ普通の労働者はもはや大衆車を買えないのか?」

 

 移民排斥感情も書き込まれていた。「連邦下院はいつになったら、中央アジアからの移民の家族や親族の入国を禁じる法案を可決するのか?」

 

「大統領、(ウクライナ南部の港湾都市)オデッサを奪取しろ!」。こんな対ウクライナ強硬路線のメッセージも流れた。

 

そうした中で、政権の振る舞い全体を批判するような短い文章が印象に残った。「いつこのショーは終わるのか?」とあった。【215日 毎日

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【ロシアの戦死者は17万人にも及ぶ その多くがカネで集められた極東やシベリアの貧困層 命に地域格差】

ロシア本土が攻撃されている訳ではありませんが、ロシアは17万人とも25万人ともいわれる膨大な戦死者を出しています。

 

プーチン政権は国民を戦争の不安に直面させる「動員」ではなく、カネで兵士を集めていますが、その対象はモスクワなどの大都市を避け、貧しい極東・シベリア・少数民族などに偏っていると言われています。

 

****ロシアの戦死者は17万人、重症者は50万人超「命の値段」が地域で全然違うプーチンの"残酷な計算"****

小泉 悠氏:東京大学先端科学技術研究センター准教授

小林 昭菜氏:関東学院大学准教授

 

ロシアの戦死者は17万人にも及ぶ

【小泉】アメリカ国防情報局(DIA)の見積もりでは、20253月時点でのロシアの戦死者は17万人とされています。25万人というデータもありますが、17万人だってとんでもない数字です。アフガン戦争は10年やって戦死者が約15000人ですからね。戦死者の34倍の重傷者が出ているとすれば、50万人から70万人が傷を負って帰ってくる。

 

この人たちのメンタルヘルスが加われば、抗うつ剤の処方が1.5倍になるでしょう。さらに「連邦軍の兵士として戦った結果」というのならまだしも、「ワグネル」みたいな民間軍事会社の社員ということになると、一時金がもらえるだけで、ちゃんとした社会保障もない。

 

【小林】SNSでは「屠殺とさつ場に送られたダヴロボーレツ(志願兵)」と言われていますよね。

【小泉】衛星画像でいろんな墓地を見ているとき、ユジノサハリンスク近郊に「モニュメントがあるし、明らかに戦死者の墓だな」というところを見つけたので、現地の人に見に行ってもらいました。そうしたら、連邦軍だけではなくワグネルの兵士の墓もあると言っていましたよ。

このほかにも、ロシアの各地で軍人用墓地と見られるものがたくさんできているのが衛星画像で確認されています。こうしたロシア社会の今の重苦しさは確実にあるんだろうと感じました。

 

地域によって異なる命の値段

【小林】兵器も複雑化しているから死ぬ確率も高いですし、極東やシベリアの貧困層ほど戦争に行かざるを得ないという状況ですからね。

【小泉】別の対談でも話したんですが、地域格差は凄まじいです。10万人あたりの戦死者を連邦構成主体別に出してみると、一番戦死者が少ないモスクワが10万人あたり12人程度なのに対して、地方によっては300人以上というところもある。命の値段が全然違うんですよね。(中略)

 

【小林】地域差は貧しさでもありますね。

【小泉】貧しさと戦死率の相関は全ての地域で確認できるわけではないんですが、明らかにそうだという地域もまたあります。先ほど、「戦争反対の声を上げないのは、みんな生活があるからだ」という小林さんのお話がありました。教育ローンや仕事がある中間層、言い換えれば「守るものがある人たち」は、声を上げない代わりに戦争に行かずにすんでいる面がある。

 

死ぬかもしれない戦争に志願者がいるワケ

【小泉】一方、実際に戦争に行ってるのは、もっと貧しい人たちです。ローンなんか組めないような人たちが、国防省の提示する高額の報酬に惹かれて志願するわけです。2024年までのロシアは戦時景気で給与水準が上がっていましたが、それでも全国平均で85000ルーブルくらい(約12万円)。

 

これに対してロシア国防省が提示する報酬は一番下の兵隊レベルでも20万ルーブル以上になるみたいですね。加えて戦場行きを志願した人に対しては州政府などから数百万円の祝金が出るところもあります。これが「生きて帰ってこられるかわからない」という戦争であっても、志願者がいる理由です。

 

【小林】徴兵について言えば、プーチンが動員をとめた影響も大きいですよね。

【小泉】プーチンが「部分動員」を呼びかけたのは229月の1回だけ。「軍隊経験のある予備役30万人を召集する」というプランでした。つまり、男子国民の義務である有事の予備役動員義務を戦後初めて発動したんですね。

ところがこれは公的な義務だから、召集令状がみんなに平等に届いてしまう。

 

大学の予備将校課程は「軍隊経験に含まない」と軍は当初から言っていて、おそらくこれはエリート大学を出た人たちまで動員しないという配慮だったと思うんですが、そこまでのエリートではない、普通の中産階級の人々にも、日本で言う赤紙がバンバン届いてしまった。

 

人命をおもちゃのようにポイポイ捨てる

【小泉】私の知り合いでも召集令状を受け取った人がいて、こうなるとみんなパニックになるし、プーチンに対して「戦争をやめろ!」という声も出てきます。テレビの向こうの話だと思っていた戦争が自分や自分の家族のところに迫ってくると、沈黙していた中産階級も反抗するわけです。

 

だからプーチンはこれ以降、公式の動員は一度も行っていなくて、代わりに前述のようにカネの力で解決することを選んできました。ものすごく嫌な言い方ですが、貧しい人が戦場で死んでいっている分にはなかなか社会的問題にならず、したがって政権へのダメージにもならないという計算なのだと思います。(後略)【215日 PRESIDENT Online】

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【障害負った帰還兵、帰還兵の失業なども大きな問題に】

戦死者だけでなく、障害負った帰還兵、帰還兵の失業なども大きな問題になっています。

 

****ロシア“障害負った帰還兵”増加で苦慮戦争の代償とは〜ウクライナ侵攻4年〜****

ウクライナ侵攻からまもなく4年となる中、ロシアでは戦闘で障害を負った帰還兵が増え、プーチン政権も対応をせまられています。

   

今月、私たちが訪れたのは、ロシア南部ボロネジ州です。 ウクライナの戦場で負傷したおよそ30人の帰還兵が、リハビリや心理的ケアなど様々な支援を受けていました。

 

リハビリ中の帰還兵:「負傷した当初は、これほど支援があるとは思っていませんでした。退役軍人として自動車を受け取り、車用のリフトも支給される予定です」

 

州政府はリハビリ施設を今後も増やしていくといいます。

ボロネジ州・社会保障相:「帰還兵のリハビリは、州の最優先課題の一つです」

 

義足などの需要が急増

負傷兵が前線から戻ってくるのに伴い、いま、ロシアで需要が急増しているのが

義肢会社・スタッフ:「歩き出すと義足が動きを自動で調整します」

ロシア軍では、障害認定された負傷兵の半数が手足を失っていて、義足などを支給する今年の国家予算は戦前の3倍、およそ2000億円に達しています。

 

帰還兵:「国が一定額の補助金を支給してくれます」

高機能の義足は140万円から500万円と高額ですが、全額国の負担です。

 

帰還兵へのサポートの裏に危機感

こうした帰還兵への手厚いサポートの裏には、プーチン政権の危機感があります。

先月には、帰還兵の失業者数が「25万人」と国営メディアが報道。しかし、その直後「数万人」に“下方修正”したといいます。 帰還兵の不満が高まればプーチン政権を揺さぶりかねず、都合の悪い事実を隠蔽(いんぺい)しようとした可能性も。

    

帰還兵にくすぶる“不満”…

私たちが取材したのは、日本のアニメが好きだという帰還兵の25歳の男性です。

帰還兵の男性(25:「塹壕(ざんごう)を掘っている時、突然地面が爆発して砲撃が始まったと分かりました。逃げる途中で意識を失いました」

 

侵攻開始直後の20223月に重傷を負い、下半身不随となりました。こう本心を打ち明けます。

帰還兵の男性(25:「国の支援はありますが、最後までは面倒を見てくれません。本気で働きたいと思っていても、要望は聞きましたと言われるだけで、それ以上先に進みません」

 

自らが戦ったウクライナでの軍事作戦については

帰還兵の男性(25:「(軍事作戦について)最初からなかったみたいに、完全に興味を失いました」

 

失業問題に加え帰還兵の犯罪も

失業問題に加えて、帰還兵による凶悪事件の増加も社会の不安定化につながりかねません。帰還兵の犯罪件数は、少なくとも8000件に上ると報じられています。

 

いまだ和平への道筋が不透明な中、戦闘の長期化は、ロシア社会にも重い代償を突きつけています。【214日 日テレNEWS

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スーダン  内戦が続く中、数行の記事ですまされる“6000人以上殺害” 大量住民虐殺が起きる背景

(スーダンのダルフール北部で、20254月の即応支援部隊(RSF)による襲撃を受けて移動する避難民(ロイター=共同)【214日 毎日】)

 

【世界最大級の人道危機 直接・間接含む推定死者数15万人以上 外国勢力の関与、“資源の呪い”で長期化】

アフリカ・スーダンでは、20251030日ブログ“スーダン  準軍事組織(RSF)がダルフール地方制圧 国家分裂の危機 民間人大量虐殺も”でも取り上げたように、20234月以降、国軍(SAF)と準軍事組織(RSF)の間で内戦が続いています。


****スーダン内戦の現況など****

主な当事者と背景

SAF(スーダン軍):伝統的な正規軍。将軍アブデル・ファッタフ・ブルハン率いる。政治的には軍と民間の移行政府への道を模索する動きも見える。 

 

RSFRapid Support Forces 即応支援部隊):もともと準軍事組織で、(ダルフール地方でかつて史上最悪の人道危機、アフリカ系住民への民族浄化的な殺戮・暴力を主導した)ジャンジャウィードと称されるアラブ系民兵グループが母体。指導者はモハメド・ハムダン・ダグロ(通称ヘメディ)。

 

内戦の原因としては、軍とRSFとの間での権力闘争、特にRSFを軍に統合する計画への反発や、それをめぐる政治的・経済的利権の争いが根底にあります。

 

軍事・政治的状況

ハルツーム(首都):20253月、国軍(SAF)が首都ハルツームの多くを奪還したと報じられています。これによりSAF側が優勢になる地域が拡大したとされます

 

ただし、RSFもダルフール地方などで強い勢力を保持しており、戦線は末端で不安定。特にダルフールのEl Fashirなどの都市では包囲戦が続き、民間人の被害が深刻です。

 

人道的・人権的危機が非常に深刻。民間人の死傷者、避難民の数ともに膨大。食糧不足、医療施設の崩壊、避難所での生活環境悪化が報告されています。

 

国際的な評価・対応:アメリカがRSFによるジェノサイド(民族的迫害を含む人道侵害)を公式に宣言しているなど、非難が強まっています。

 

避難民・国内避難民の数:国境を越えて逃れた難民、国内で避難を余儀なくされた者の数ともに数百万規模。多くはダルフール、北部など紛争の激しい地域から出ています。【ChatGPT

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****現在の支配状況****

複数の信頼できる情報源(Wikipediaの戦況マップ、Foreign AffairsCFRPolityOperation Broken Silenceなど)によると、20262月現在も正規軍(SAFとその同盟勢力がハルツームを含む中央・北部・東部を支配しており、RSFは主に西部(ダルフール全域など)に後退しています。

 

正規軍(SAF)は20255月ハルツーム州全体がRSFから「完全に解放された」と発表

ハルツームではRSFの残存勢力や散発的な攻撃(ドローン攻撃など)は報告されていますが、優勢は明確にSAF側です。20261月には政府がポートスーダンからハルツームに正式復帰したことも、これを裏付けています。【grok】

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長引く戦闘で人道危機が深刻化しています。特にダルフールでは民族虐殺的暴力が再燃し、2000年代紛争の再来と指摘されています。

 

****世界最大級の人道危機****
スーダン内戦(2023415日開始、現在約1000日以上経過)による人的被害は極めて深刻で、世界最大級の人道危機となっています。最新の信頼できる国際機関(UNHCRIOMOCHAWHOUNなど)のデータ(20261-2月時点)を基にまとめると、以下の規模です。数字は推定値で、報告の制約や間接死(飢餓・病気含む)により変動しやすく、実際はこれを上回る可能性が高いです。

 

死者数(Casualties

直接・間接含む推定死者数15万人以上(多くのソースで150,000人超と報告)。一部の推定では20万人超、または40万人に達する可能性も指摘(例元米特使の推計や飢餓・病気による間接死を含む場合)。

 

ACLED(武装紛争データプロジェクト)の記録では202410月時点で約3万人だが、これは検証された直接戦闘死のみで、全体像を反映していない。

BBCNYTなどのメディアでは、202510月時点で15万人超、子供の栄養失調死だけで推定52万人超の報告も。

 

飢餓・病気・医療崩壊による間接死が大半を占め、WHOは医療施設攻撃で1,858人死亡を確認(20261月)。

死者数の正確な把握は困難で、戦闘地域へのアクセス制限が原因です。

 

海外難民(Refugees / Cross-border displaced

430万人〜440万人(主に近隣国へ逃れたスーダン人難民)。

UNHCR/IOM/UNデータ4.3百万(ChadSouth SudanEgyptEthiopiaなどへ)。

ピーク時で約400万人超、2026年現在も4.24.34百万規模。

多くが女性・子供で、近隣国(特にChadSouth Sudan)のキャンプが過密・不安定。

 

国内避難民(Internally Displaced Persons: IDPs

930万人〜1,000万人以上(スーダン国内で家を追われた人々)。

IOM最新9.33百万(残存IDP20261月)。ピーク時で11.58百万超、最近一部帰還(約300万人、Khartoum100万人超)で減少傾向だが脆弱。

UN/OCHA/UNHCR: 9.3百万(20261月)、総避難民(国内+国外)で1,360万人(世界最大の避難危機)。

以前の数字(2025年頃)は7.78.8百万だったが、戦闘継続で増加。

 

全体の人的影響まとめ

総避難民数(国内避難民 海外難民)1,300万〜1,500万人(人口の約1/41/3)。

人道支援必要者3,370万人(人口の約2/32026年推定)。うち急性食料不安定者21百万人超、飢饉確認地域(Zamzamキャンプなど)あり。

 

スーダンは現在、世界最大の内部避難民危機および飢餓危機を抱えています。

これらの数字はUNHCRIOMOCHAWHOAl JazeeraReliefWebなどの20261-2月報告に基づき、一部帰還が進んでいるものの、KordofanDarfurでの戦闘継続で状況は流動的です。【grok】

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内戦は事実上の「代理戦争」化しており、多くの外国勢力が関与しています。

正規軍寄り:エジプト、一部湾岸諸国

RSF寄りと指摘:アラブ首長国連邦(武器・資金支援疑惑) ロシア系勢力(旧ワグネル系ネットワークが金鉱権益と関与との指摘)

 

戦闘が長期化しているのは、外国勢力の関与に加えて、地下資源(特に金鉱)が資金源になっているためで、豊富な資源のゆえに内戦・紛争が激化する「資源の呪い」の典型事例です。

 

【準軍事組織が6000人以上殺害? スーダンやコンゴで大量住民虐殺が起きる背景】

そんなスーダンに関して、わずか数行の極めて簡単な記事が。

 

****スーダンで準軍事組織が6000人以上殺害 国連機関が報告書で非難****

アフリカ・スーダンの内戦を巡り、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は13日、国軍と対立する準軍事組織、即応支援部隊(RSF)が昨年10月に西部ダルフール地方の主要都市ファシェルや周辺で6000人以上を殺害したとする報告書を公表した。戦争犯罪のほか、人道に対する罪が疑われる残虐行為だと非難した。

 

RSFはダルフール地方を中心に勢力を保持し、ファシェルには同地方で国軍の最後の拠点があった。RSFはファシェルを1年半包囲した上で、昨年10月に約1週間の攻勢を仕掛け掌握した。【214日 毎日

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極めて簡単な記事ですが、“6000人以上殺害”という内容は衝撃的です。ウクライナ・ミュンヘン会議などが世界の注目を集める一方で、スーダンのこうした状況が数行の記事ですまされる・・・このあたりが世界の現状の“ひずみ”であり、アフリカで紛争が絶えない大きな理由のひとつでしょう。

 

それはともかく、6000人というのは文字通り死体の大きな山ができるような数字であり、にわかには信じ難いところもありますが、RSF前身組織は以前ダルフールでの最悪の大虐殺を起こした経緯もありますので・・・

 

正規軍(SAF)の最後の拠点があった場所ということで、正規軍を支えた地域住民に凄惨な報復がなされたのか?

 

スーダンでも、アフリカのコンゴなどその他地域でも、なぜこのような大量住民虐殺が行われるのか?・・・という素朴な疑問も。

 

****スーダンやコンゴなどアフリカで大量住民虐殺が起きる背景****

スーダン西部ダルフールやコンゴ東部などでは、国家統治の崩壊・武装勢力の乱立・資源利権が重なり、過去にも同様の大規模住民虐殺が繰り返されてきました。なぜこうした事態が起きるのか、構造的要因を整理します。

 

1. 「民族対立」だけでは説明できない

外からは「民族憎悪」に見えますが、実態はより政治経済的です。

争いの実態:権力闘争 土地・水資源争い 金・鉱物利権 国境密輸ルートなど

民族や部族の違いは動員の口実・識別手段として使われることが多い。

 

2. 国家の統治能力崩壊

スーダン(ダルフール)

2000年代のダルフール紛争では、政府が反政府勢力掃討を民兵に委託。民兵が無差別住民攻撃。この民兵が後のRSFの前身、ジャンジャウィードです。

 

コンゴ東部

コンゴ民主共和国東部では、国軍統制が及んでおらず、外国勢力・反政府軍・民兵が混在

 

国家が治安独占を失うと、武力=支配手段になります。

 

3. 「住民殲滅」が軍事合理性を持つ場合

残酷ですが、武装勢力の論理では合理的な場合があります。

① 支援基盤の破壊

反政府勢力を支えると疑われる住民を排除。

食料供給、情報提供、若者の徴兵源となっている 村ごと破壊

 

② 見せしめ・恐怖支配

大量虐殺は心理戦。

抵抗意志を折る、逃亡を促す、支配地域を無人化する効果がある。

ダルフールでも「村焼き払い+井戸破壊」が常套手段でした。

 

4. 土地・資源の奪取

ダルフール

砂漠化で土地希少化し、牧畜民 vs 農耕民の対立が激化

住民を追い出す → 放牧地・金鉱を確保。

 

コンゴ東部

金・コバルト・錫・タンタルをめぐり、武装勢力は鉱山を押さえ、強制労働・密輸輸出で武器購入資金とする

虐殺は資源支配の手段。

 

5. 「戦争経済」の成立

長期紛争では戦争自体がビジネス化。

収入源:鉱物密輸 略奪 人身売買 誘拐身代金 外国支援

和平になると利権を失うため、戦争継続インセンティブが働く。

 

6. 指揮統制の欠如

正規軍と違い民兵・準軍事組織は規律が弱い 報酬が略奪依存 若年兵・少年兵多数

結果:暴走虐殺 性暴力 無差別略奪

上層部が止められない、または黙認。

 

7. 国際社会の抑止力不足

虐殺が起きやすい背景には、国連PKOの装備・権限不足 大国の介入消極姿勢 主権尊重原則が存在

ダルフールでも国際刑事裁判所(ICC)が訴追しても、拘束できない例が続きました。

 

8. 歴史的・制度的要因

植民地統治の分断統治(部族間対立を利用 人為的国境線)

独立後も国民国家意識が弱い、部族忠誠が優先といった状況が残る

→武装動員が容易

 

9. 武器拡散の容易さ

冷戦期以降、アフリカにはAK系小銃、RPG、地雷が大量流入。

軽火器は安価で、子供でも扱える

→民兵組織化が容易

 

10. スーダン特有の要因

アラブ系 vs 非アラブ系の政治構造:砂漠化・気候変動 金鉱利権 軍政国家の長期化

特にRSFは、民兵起源、略奪経済経験、ダルフールでの前歴があり、住民虐殺の心理的・制度的ハードルが低いと指摘されます。

 

まとめ:大量虐殺が起きる条件

以下が重なると発生確率が跳ね上がります。

国家統治崩壊 民兵化した武装勢力 資源利権 民族動員 国際抑止力不足 戦争経済化

スーダン西部もコンゴ東部も、この条件をほぼ満たしています。【ChatGPT】

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【和平に向けた動きもあるが、成果を出しておらず、見通しも明るくない】

和平に向けた動きはいくつかありますが、現在のところ効果を発揮していません。

今後についても、出口がはっきりしないのが実情です。

 

**** 和平交渉の動き****

主な仲介枠組み

米・サウジ主導(ジッダ協議):ジッダで停戦協議 人道回廊・停戦合意を複数回締結

しかしほぼすべて崩壊

 

アフリカ連合(AU:アフリカ連合主導の政治対話構想 文民政権復帰を含む枠組み提示

軍事双方が主導権を譲らず停滞

 

IGAD(東アフリカ政府間開発機構):地域停戦案を提示

交渉参加条件を巡り対立

 

停戦が成立しない理由

軍事的決着志向:双方とも「勝てる」と判断

経済利権:金鉱・密輸・港湾収入

指揮統制の弱さ:現地民兵が停戦を守らない

国家崩壊リスク:停戦後の権力配分設計が不在

 

最近の和平に向けた兆候(限定的)

前向き材料もゼロではない:人道停戦の部分合意(短期) 捕虜交換の限定実施 文民勢力を含めた拡大協議構想

ただしいずれも戦局を変える水準ではない。

 

今後のシナリオ

専門家の間では主に3つ。

① 長期内戦化(最有力):リビア型の東西分裂 軍閥経済の固定化

② 事実上の国家分裂:ダルフール分離

③ 外圧による停戦:湾岸・米国の圧力 武器供給停止

ただし現状は寄り。

 

和平の最大障害

RSFの正規軍統合問題(発端) 文民統治復帰の設計不在 外国支援の継続 戦争経済の既得権化【ChatGPT】

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スイス  移民制限を目的に、人口を2050年まで1千万人未満に制限することの是非を問う国民投票

(スイス 移民受入れを制限する形で人口を1000万人未満に制限すべきかを問う国民投票に向けたキャンペーンポスター【213日 swissinfo.ch】)

 

【米:移民大幅減で人口増加率が鈍化 スウェーデン:国籍取得に関する規則を厳格化】

“日本の在留外国人数は20256月末時点で約396万人に達し、総人口の約3%に迫る勢いで増加、過去最高を更新中。急激な少子高齢化による労働力不足を補うため、特定技能などの受入れ拡大が中心となり、建設、農業、介護などの現場で不可欠な存在となっている。”【AIGemini

 

こうした外国人が増加するにつれて軋轢も。外国人に使うカネがあれば先ず自国民につかうべき、欧州のような移民によって社会が分断され、不安定化・治安悪化しないように流入を規制すべきといった考えに、“マナー・ルールを守らない外国人観光客”、真偽は定かでない“外国人の増加で犯罪が増えている”といった外国人嫌悪も重なって、大きな政治問題になっているのは周知のところ。

 

アメリカではトランプ大統領が看板政策として強力な不法移民対策を実施、その強引な手法で社会の分断が更に深刻化する状況にもなっています。

 

移民対策強化で移民流入が抑制されたせいで人口増加も鈍化、経済・社会への長期的影響も想定されます。

 

****米人口増加率が鈍化、移民大幅減で=国勢調査****

米国勢調査局が27日発表したデータによると、2025年6月30日までの1年間で、米国の人口は180万人(0.5%)増え、3億4180万人となった。人口増加率は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降で最低の水準に鈍化した。移民の大幅な減少が影響したとみられる。

 

西部モンタナ州と東部ウエストバージニア州を除く全州で人口増加率が減速した。

25年6月30日までの1年間に入国した移民数から出国者を引いた純移民数は270万人から130万人に減少した。

 

国勢調査局推定・予測部門のクリスティン・ハートリー次長は「出生数と死亡数は前年と比べて比較的安定しているため、純移民数の急減が人口成長率の伸び悩みの主な理由だ」と説明した。

 

トランプ大統領と政権は26年も移民の取り締まりを継続している。今月、中西部ミネソタ州で移民捜査官によって市民2人が射殺されるなど、その手法に対する反発に直面する中、移民・税関捜査局(ICE)の予算を大幅に増やした。【128日 ロイター

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中間選挙を意識するトランプ大統領は世論の逆風を憂慮、国境対策責任者が12日、ミネソタ州ミネアポリスで昨年末から実施してきた大規模な不法移民取り締まりを終了すると発表し、“一歩後退”の形に。

 

日本で移民政策に置ける“反面教師”としていつもあげられる欧州ですが、移民増加への警戒感・批判が増しており、スウェーデンでは国籍取得に関する規則を厳格化する計画が発表されています。

 

****スウェーデン、国籍取得を厳格化へ 要件は「真面目に働いて暮らしている人」 語学力や一般常識も必要****

北欧スウェーデンは9日、国籍取得に関する規則を厳格化する計画を発表した。「真面目に働いて暮らしている」ことを要件とし、言語能力および一般常識に関する試験を導入し、居住期間の要件を現行の5年以上から8年以上に引き上げる。

議会で承認されれば、新規則はスウェーデンの建国記念日である66日に発効し、既に処理中の申請にも適用される。

 

スウェーデンのウルフ・クリステション政権は中道右派3党による少数連立政権で、極右政党「スウェーデン民主党」の閣外協力を受けて過半数を確保している。

 

ヨハン・フォシェル移民相は、記者団に対し、現在、スウェーデン国籍の取得は簡単すぎると指摘。

「国籍は、もっと大きな意味を持つべきだ」「誇りとは、何かに一生懸命取り組んだ時に感じるものだ。しかし、そうしたことが国籍取得で求められていない」と述べた。

 

「スウェーデン語を一言も話せず、スウェーデン社会について何一つ知らず、無収入でも、5年で国籍を取得することができる」 さらに、最近話題になった事件に言及し、「殺人罪で服役している間にも国籍を取得することができる」と述べた。

「これは明らかに、真面目に働いて暮らしている人々と、既にスウェーデン国籍を得ている人々の両方に、全く間違ったメッセージを送っている」と述べた。

 

2015年の欧州移民危機でスウェーデンに大量の移民が流入した後、歴代の政権は右派・左派を問わず、難民と移民に関する規則を厳格化している。

 

スウェーデンは長年にわたり移民の社会統合に苦労しており、多くの移民がスウェーデン語さえ覚えず、犯罪率や失業率の高いスラムで暮らしている。

 

新たな規則では、出身国またはスウェーデンで犯罪歴がある者は、刑期を終えてから最長で17年待たなければ国籍取得を申請できなくなる。

 

さらに、「真面目に働いて暮らしていない」と判断された者に国籍は与えられない。多額の借金を抱えている、接近禁止命令を受けた、薬物依存症であるであるといったものがこれに該当する。

 

また、年金生活者と学生を除き、税引き前の月収が2万クローナ(約35万円)以上でなければ国籍取得を申請できない。

 

政府によると、国籍取得試験は隣国デンマークや米国で実施されているものと同様で、最初の試験は8月に実施される予定だ。 【211日 AFP

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【移民流入で人口が増加するスイス:人口を2050年まで1千万人未満に制限することの是非を問う国民投票実施】

そうした欧州にあって、スイスでは人口を2050年まで1千万人未満に制限することの是非を問う国民投票が614日に実施されます。

 

欧州諸国などから多くの移民が流入する中、現在のスイス人口は900万人超で、現在の増加ペースが続けば50年を待たずして1千万人に達する見込み。可決されれば、政府はEUとの協定見直しや滞在許可審査の厳格化を迫られるとみられている。

 

****スイス、人口制限問う国民投票6月実施へ 移民受け入れに影響か****

移民の受け入れを巡って意見が対立するスイスで、人口を1000万人に制限すべきかを問う国民投票が614日に行われる。賛成多数となれば、移民の受け入れ停止など政策の変更を余儀なくされる。

 

右派の国民党が国民投票を提案した。案では人口が1000万人に達する前に政府に対策を講じるよう求めている。同国の現在の人口は910万人。

 

投票で賛成多数となれば、人口が950万人に達した時点で政府は亡命希望者や外国人居住者の家族を含む新規入国を却下しなければならなくなる。また、人口が1000万人に達した場合、同国にとって最大の貿易相手である欧州連合(EU)と締結している自由な移動を認める協定を終了せざるを得なくなる。

 

スイスはEU加盟国ではないが、120以上の二国間協定を通じてEUと統合されており、EU市場にアクセスできるほか、自由な行き来や貿易が認められている。

 

1999年から最大政党の座にある国民党は、「人口爆発」によって公共サービスに負担がかかり、インフラは逼迫(ひっぱく)し、家賃が上昇していると主張している。

 

連邦参事会(7議席)で人口制限案を支持しているのは国民党のみで、参事会としては同案を否決している。だが調査会社が昨年実施した世論調査では、人口制限案は広く支持されていることが示された。

スイスでは、有権者10万人以上の署名を集めれば18カ月以内に案を国民投票にかけることができる。【213日 CNN

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スイスは「多文化共存・中立・牧歌的」という対外イメージとは裏腹に、移民問題をめぐっては欧州でも特に直接民主制(国民投票)を通じた厳格なコントロール志向が強い国の一つです。

 

社会的には移民依存度が高い一方、政治的には制限志向が繰り返し表面化してきました。

 

*****スイスにおける移民問題****

1. 構造的背景:なぜ移民問題が大きな争点になるのか

(1) 外国人比率が非常に高い

スイスの外国人比率は人口の約25%前後と欧州でも高水準。

EU加盟国ではないが、EUとの人の自由移動協定により流入が続いている。

ドイツ、イタリア、フランス、ポルトガル、バルカン諸国出身者が多い。

 

(2) 経済は移民労働に依存

建設、医療、観光、製造、金融補助職などで不可欠。

高度人材(金融・製薬)と低賃金労働の双方を受け入れている。

 

(3) 小国ゆえの人口圧力不安

国土が狭く、山岳地帯が多い。

住宅不足、地価上昇、交通混雑、インフラ負荷が「移民増加」と結び付けて語られやすい。

 

2. 移民制限を掲げる主要政治勢力

スイス国民党(SVP / UDC:スイス最大級の右派ポピュリスト政党。移民制限・EU懐疑・主権重視を掲げる。

1990年代以降、移民問題で急速に支持拡大。

主張の柱:移民上限設定 難民受け入れ厳格化 犯罪外国人の国外追放 EUとの自由移動協定見直し

挑発的ポスター(白い羊が黒い羊を追い出す図柄など)が国際的批判を浴びたこともある。

 

3. 主要な移民関連国民投票

スイスの特徴は、議会ではなく国民投票で移民政策が決まる点にある。

(1) 2014年「大量移民反対イニシアチブ」

提案主体:スイス国民党

内容:移民数に年間上限枠を設定

結果:50.3%で可決(僅差)

影響:EUとの自由移動協定と衝突 最終的には「緩和的実施」(雇用優先措置)で妥協

 

(2) 2020年「自由移動協定破棄」国民投票

内容:EUとの人の自由移動を終了

結果:約61%が反対で否決

意味:経済界・政府は強く反対 有権者は「移民は懸念だがEUとの関係悪化は避けたい」と判断

 

(3) ミナレット禁止(2009年)

イスラム系移民問題の象徴的投票 モスクのミナレット建設を禁止

57%で可決

宗教の自由との関係で国際的論争を招いた。

 

4. 難民・治安問題をめぐる投票

犯罪外国人の国外追放(2010年)

有罪外国人の自動追放 可決(約53%)

 

難民法改正(複数回)

審査迅速化 不認定者の送還強化 収容措置拡大

 

5. 社会的反応の二面性

(1) 制限支持の論拠

① インフラ圧迫

住宅不足 家賃上昇 交通混雑

② 賃金低下不安

低技能労働市場で競争激化

③ 文化的アイデンティティ

言語・宗教多様化への不安 イスラム移民への警戒

④ 治安認識

統計以上に「犯罪増加イメージ」が政治争点化

 

(2) 受け入れ支持の論拠

① 経済維持に不可欠

医療・介護・建設は外国人なしでは機能困難

② 高度人材確保

金融、製薬、研究開発

③ 少子高齢化対応

労働力補填

④ EU関係維持

協定破棄は貿易・研究協力に打撃

 

6. 世論の特徴:単純な排外主義ではない

スイス世論は一貫して「反移民」ではなく、条件付き受容の傾向が強い。

高度人材:受容的

EU労働者:概ね容認

難民:厳格化支持

イスラム移民:慎重・警戒

移民総量:抑制志向

 

7. 今回の「人口1000万人上限」投票の位置づけ

この種の提案は過去の延長線上にある。

背景問題

現人口:約900万人台後半 純増の多くが移民 都市圏の住宅・交通逼迫

想定される制度案:移民数に上限 難民受け入れ削減 EU自由移動の再交渉

ただし、過去の投票傾向から見ると、強硬すぎる案は否決されやすい

経済界が強く反対すると可決は困難

 

8. スイス特有の政治力学

直接民主制の影響:不満が議会外で噴出 小さな争点でも国民投票化

連邦制:州ごとに移民負担感が異なる

都市部は受容的、農村部は制限志向

 

9. まとめ

スイスの移民問題は以下の三層構造で理解できる。

① 経済構造

移民なしでは成長維持困難

② 社会不安

住宅・インフラ・文化摩擦

③ 制度特性

国民投票で直接制御しようとする

 

結果として、「移民は必要だが増えすぎは困る」「EU関係は維持したいが主権は守りたい」という実利的制限主義が主流となっている。【ChatGPT】

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【日本:人口は14年連続で減少、減少幅は13年連続で拡大、2070年には現在の約7割に、外国人は総人口の約1割に

人口増減と移民との関連で言えば、スイスと日本は状況が大きく異なります。

 

移民増加で人口が膨らむスイスに対し、日本の総人口は2008年の約12,808万人をピークに減少に転じ、202410月時点で123802千人と14年連続で減少しています。少子高齢化により減少幅は13年連続で拡大しており、2070年には約8,700万人、高齢化率(65歳以上)は38.7%に達すると推計されています。 

 

そうした人口減少を若干緩和する形にもなっているのが外国人増加。

 

外国人増加は人口減少下の労働力補填、地域経済の活性化、外国人材の技術・技能向上というメリットがある一方で、このペースで推移すると2070年には総人口の約1割(10.8%)が外国人になると推測されています。 

 

現在政治問題化している「外国人抑制」云々の議論と同時に、外国人との「共生」について本腰をいれて取り組む必要があります。外国人の受容限度は「共生」がどの程度進展するか次第でしょう。

 

「共生」が進まず軋轢が増し、厳しい抑制が行われることになれば、日本の人口減少は加速し、経済の活性が失われ、国力が更に低下します。

 

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カナダとトランプ大統領の軋轢 米議会は対カナダ関税に反対決議 トランプ氏は自由貿易協定離脱検討

(【211日 日経】カナダのオンタリオ州とアメリカのミシガン州を結ぶゴーディ・ハウ国際橋 カナダの建設費負担で建設が進むこの橋に、トランプ大統領は「開通を許可しない」と息まいています)

 

【様々な分野で続くアメリカとカナダの対立】

主要7カ国(G7)の中で、カナダほど貿易関係が一極集中している国はありません。カナダの輸出の約7割が米国向けで、輸入の大半も米国からです。

 

そのカナダがアメリカ・トランプ政権と間で強い軋轢を抱えていることは、24日ブログ“脱米へ一歩踏み出す流れ 「大国に従い、安全を買う時代の終焉」「いま引き下がれば、尊厳を失う」”でも取り上げました。

 

世界が注目するダボス会議でも、カナダ・カーニー首相がアメリカ主導のパックス・アメリカーナの終焉を示唆し、大国に従う事で安全が買える時代は終わったと指摘。中堅国が協力し、新しい秩序を構築する必要性を訴え、異例のスタンディングオベーション(大きな拍手)を受けました。

 

一方、トランプ大統領は「カナダは米国のおかげで生きている」と“思い上がり”を批判し、カナダと中国が貿易協定で合意した場合、カナダから米国に輸入される全ての製品に対し100%の関税を即時課すと自身のSNSで警告しています。

 

ダボス会議、カーニー首相訪中・中国との経済関係強化だけでなく、昨年のトランプ第2期政権発足以来、軋轢が続いています。

 

****2期トランプ政権発足(20251月)以降に顕在化・激化した米加関係の軋轢****

2025

1月 トランプ政権発足直後:対カナダ通商圧力の再開

USMCA(米加墨協定)見直しを示唆。 乳製品の供給管理制度(カナダの高関税・輸入枠)を再び問題視。 木材・アルミ・鉄鋼への追加関税検討を表明。

特徴:第1期と同様、「対EUより対カナダが厳しい」通商姿勢が復活。

 

23月 エネルギー・資源摩擦

カナダ産原油・電力への依存度を問題視。 「エネルギー安全保障上の対外依存削減」を主張。

カナダ側は「北米統合市場の原則に反する」と反発。

 

4月 EV・自動車補助金問題再燃

米国のEV税控除制度(北米生産優遇)を強化。 バッテリー原材料の「米国内調達比率」引き上げ案。

カナダは「サプライチェーン分断」と批判。

 

6月 国防・対中政策をめぐる温度差

米国:対中デカップリング加速要求。 カナダ:対中輸出(資源・農産物)維持姿勢。

5GAI・鉱物投資規制でも足並み乱れ。

 

8月 北極圏・防衛負担問題

米国がNORAD近代化費用の増額負担を要求。 カナダの防衛費GDP比(NATO基準未達)を批判。

北極航路・資源開発の主導権でも緊張。

 

10月 デジタル課税・IT規制

カナダのデジタルサービス税(DST)に対し、米IT企業差別と非難。 報復関税を警告。

 

2026

1月 USMCA再交渉圧力が本格化 米政権が協定再改定の前倒しを要求。 原産地規則(自動車)厳格化案。

カナダは「サプライチェーン混乱」を懸念。

 

1月 鉄鋼・重要鉱物調達問題

米国が政府調達で「Buy American」拡大。 カナダ産鉄鋼・ニッケル・レアメタル排除懸念。

カナダはWTO提訴も示唆。

 

2月 ゴーディー・ハウ国際橋問題(後述)

トランプ大統領が開通阻止を示唆。 「カナダが両岸の土地を所有」 「米国は十分な利益を得ていない」と批判。 所有割合見直し・補償要求を主張。

カナダ政府・ミシガン州が反発。

 

上記の時系列整理事案とは別に、政権発足後ずっと並行的に続く構造的対立テーマも存在します。

 

1. 農業(乳製品・小麦)

カナダの供給管理制度に対し、米酪農団体が強く圧力

 

2. 木材(ソフトウッド材)

米住宅業界 vs カナダ林業 ダンピング関税問題が再燃

 

3. 自動車サプライチェーン

原産地規則 EV補助金 バッテリー鉱物調達

 

4. 対中政策

投資規制 技術輸出 鉱物供給網

 

5. 防衛費・北極圏

カナダの軍事費不足 北極インフラ整備遅れ   【ChatGPT】

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【“言いがかり”に思えるトランプ大統領が持ち出すゴーディー・ハウ国際橋問題】

新たにトランプ大統領が持ち出したのが、ゴーディー・ハウ国際橋問題

 

****トランプ氏、アメリカとカナダを結ぶ橋の開通を阻止すると脅す****

ドナルド・トランプ米大統領は9日、アメリカがカナダに提供してきた「すべてに対して完全に補償される」まで、アメリカとカナダを結ぶ橋の開通を阻止すると脅した。

 

カナダのオンタリオ州とアメリカのミシガン州を結ぶゴーディ・ハウ国際橋についてトランプ氏は、カナダ政府が「我々が当然受けるべき公平さと敬意をもってアメリカを扱う」まで開通しないだろうと、ソーシャルメディアに投稿した。

 

橋の建設事業の公式サイトによると、この橋の建設費用はカナダ政府が提供しているものの、カナダとミシガン州の双方が公的所有する予定。

 

トランプ氏がどのように開通を阻止できるのかは不明だが、大統領は交渉を直ちに開始するとして、詳細は示さなかった。

 

デトロイト川にかかり、米ミシガン州デトロイトとカナダ・オンタリオ州ウィンザーを結ぶこの橋は、2026年初頭の正式な実地検査と承認を経て、開通される予定。2018年の着工以来、10年以上にわたり両国間の争点となってきた。カナダ放送協会によると、建設費用は64億カナダドル(約7340億円)と推定される。

 

トランプ氏は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、アメリカは「この資産の少なくとも半分」を所有すべきだと主張した。また、カナダが橋のカナダ側とアメリカ側の双方を所有しているとの意見を示した。

 

事業の公式サイトによると、橋を開発するウィンザー・デトロイト橋機関は、カナダ政府が全額出資する組織だ。

トランプ氏は、「カナダ政府は、アメリカをただ『いいように利用』できるように、私がそんなことを許可すると思っている!」と書いた(太文字は原文ですべて大文字)。

 

大統領はさらに、「アメリカが彼らに与えてきたすべてに対して完全に補償されるまで、この橋を開通させるつもりはない」とも書いた。

 

ゴーディ・ハウ国際橋の隣には、すでにミシガン州デトロイトとオンタリオ州ウィンザーを結ぶアンバサダー・ブリッジがある。この橋を所有するミシガンのモルーン一族は、第1次トランプ政権当時、新しい橋は自分たちが持つ通行料徴収の独占権を侵害すると主張し、新たな橋の建設中止をトランプ氏に働きかけていた。

 

これに対し、トランプ氏とカナダのジャスティン・トルドー首相(当時)は、橋が両国間の「重要な経済的つながり」だとする共同声明を発表していた。

 

トランプ氏は9日、両国の最近の貿易摩擦に言及し、「カナダが我々の乳製品に課している関税は、もう何年も受け入れがたいものだった」と述べた。また、カナダと中国が今年1月に署名した貿易協定について、「カナダを生きたまま食い尽くす」ことになると述べた。

 

トランプ氏はさらに、「中国は真っ先に、カナダで行われているアイスホッケーをすべて終了させ、スタンレーカップを永久に廃止する」とも書いた。

 

カナダの橋当局、オンタリオ州首相室、デトロイト市長室は、コメント取材に直ちに応じなかった。【210日 BBC

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(アンバサダー・ブリッジを所有するミシガンのモルーン一族の建設反対云々は、まるで西部開拓時代みたいな話)

 

そもそも同橋を巡っては、アメリカ側が建設費負担を拒否したため、カナダ政府が全額出資する事業体が事業全体を統括し、資金調達・契約・運営を担当する形で、カナダ政府が資金を拠出した経緯があります。用地取得費、接続道路、通関施設建設費用もカナダが負担し、通行料収入で回収することになっています。

なお、橋はカナダ政府とミシガン州の共同所有になります。

 

トランプ大統領は「カナダが両岸の土地を所有するのは受け入れられない」と批判していますが、別にアメリカ側の土地がカナダ領になる訳ではなく、カナダ政府出資の事業主体が不動産権利を保有するも、米国法の下で登記し、用途は橋関連インフラに限定、主権・治安権は当然アメリカ・・・という形です。イメージとしては外国政府系企業が米国内にビルを所有するが、土地は米国領土のままという形に近いようです。

 

「カナダが所有」・・・領土主権の話ではなく、あくまでインフラ資産の所有構造の話です。国際インフラの場合、資金負担側が施設資産を持つのは一般的です。

 

繰り返しになりますが、そもそもそういうカナダ系事業主体が施設資産を保有する形になったのは、アメリカが資金拠出を拒否したからです。

 

それを今になって意味不明の「カナダが両岸の土地を所有するのは受け入れられない」云々で「開通させない」(どうやるのかは知りませんが)などと言うのは、いささか“言いがかり”じみています。

 

トランプ大統領は“言いがかり”をつけるのは、カナダの店頭で一部の米国産アルコール飲料が扱われていないことや、乳製品に対するカナダの関税、中国との貿易協議を理由といった諸々のトランプ大統領の不満と複合した結果です。

 

【議会下院はトランプ大統領がカナダに課した関税の撤廃を求める決議案を可決 与党側にも造反者】

トランプ大統領は何かにつけて追加関税をふりかざしますが、カナダに対しても折につけそのような脅迫を示唆しています。

 

ただし、冒頭に既述したようにカナダにとってアメリカが死活的に重要な貿易相手であるように、アメリカにとってもカナダは重要な取引相手です。かつ、エネルギー(石油・電力)供給国、防衛・NORADで一体運用、重要鉱物供給国という国でもありますので、トランプ大統領もカナダを関税で脅迫はするものの、全面的な高関税の再発動には至っていません。つまり「圧力はかけるが、全面貿易戦争は回避」という状況です。

 

2018に第1トランプ政権が通商拡大法232条(国家安全保障)を基にカナダを含めて鉄鋼25、アルミ10の関税を課し米加関係が悪化しましたが、2019にUSMCA(米墨加協定)批准環境整備の一環でカナダ向け232条関税は撤廃されました。

 

2期トランプ政権では2018年型の一律関税」がそのまま再発動されている状態ではありません。
ただし、第2期トランプ政権下では、類似の国家安全保障ロジックを用いた追加関税・上乗せ措置が個別に打ち出され、結果として“事実上の232条的措置”が復活・強化されている側面があります。

 

議員の間には、消費者のコスト上昇や貿易に携わる企業への関税の影響を巡り不満が出ています。

 

****トランプ政権のカナダへの関税 議会下院が撤廃求める決議案を可決 与党・共和党議員6人が造反 トランプ大統領は「選挙で代償払うことになる」と激怒****

アメリカの連邦議会下院は、トランプ大統領がカナダに課した関税の撤廃を求める決議案を可決しました。与党・共和党からも造反者が出ています。 

 

アメリカの連邦議会下院は11日、トランプ大統領がカナダに課した関税について撤廃を求める決議案を賛成219、反対211の賛成多数で可決しました。議会下院は与党・共和党が多数を占めていますが、共和党の6人の議員が造反し、決議案に賛成しました。 

 

トランプ政権によるカナダへの関税をめぐっては、共和党の議員の中からもアメリカ経済にマイナスだという指摘が出ていました。 

 

この決議案は上院に送られ、ロイター通信は上院でも可決される可能性が高いと伝えていますが、トランプ大統領は拒否権を持っているため、関税政策の変更につながることはない見通しです。 

 

ただ、共和党議員も含めた形で議会が関税政策に反対の意思を示したことは、トランプ政権にとって痛手となります。 トランプ大統領はSNSに投稿し、「共和党の議員は、下院であれ上院であれ、関税に反対票を投じれば選挙の時に深刻な代償を払うことになる」と造反した議員に強い圧力をかけています。【212日 TBS NEWS DIG】

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【トランプ大統領は「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」からの離脱を非公式に検討 “主敵”はカナダ?】

一方、トランプ米大統領は北中米3カ国での取引をしやすくするための自由貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」からの離脱を非公式に検討していると報じられています。

 

****トランプ大統領がメキシコ・カナダとの3カ国自由貿易協定からの離脱検討と報道 日本企業への影響不可避***

(中略)ブルームバーグ通信は11日、複数の関係者の話としてトランプ大統領が、アメリカとメキシコ・カナダによる3カ国の自由貿易協定(USMCA)からの離脱を内密に検討していると伝えました。

 

 関係者は「トランプ氏が貿易協定から離脱すべきではない理由を側近たちに尋ねている」としていますが、「発表するまでは、議論は臆測にすぎない」ともコメントしています。 

 

USMCA7月の見直しで合意すれば延長されますが、離脱となればアメリカ市場向けにメキシコやカナダに生産拠点を構えてきた日本の自動車メーカーなどへの影響は避けられません。【212日 FNNプライムオンライン

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“USMCA見直しを巡っては、米国はメキシコと正式協議を始める一方、カナダとは対立が続いている”【212日 日経】という話もありますので、トランプ大統領の“主敵”は、シェインバウム大統領が極力トランプ大統領を刺激しないように配慮を重ねているメキシコではなく、カーニー首相のダボス会議演説のように公然とトランプ批判を繰り返すカナダのようです。

 

離脱となれば、日本の自動車メーカーにとっては深刻な問題です。

 

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「エプスタイン文書」  世界の政財界に広がる波紋 中間選挙結果次第ではトランプ大統領にも

(ジェフリー・エプスタイン氏【27日 Forbes】)

 

【「パンドラの箱」が開かれた形の「エプスタイン文書」 政財界要人の名前が多数】

拘禁中に“自殺”したとされる大富豪にして性犯罪者ジェフリー・エプスタイン元被告と政財界大者との少女買春斡旋などの関係については以前から噂が多くありました。

 

エプスタイン氏の釈然としない死を活用したのが(自身もエプスタイン氏との関係が取り沙汰される)トランプ大統領でした。トランプ大統領は2024年の大統領選挙で関連陰謀説を活用し支持層結集を図りました。彼の死の背後に民主党の既得権勢力「ディープステート」があり、バイデン政権がこれを暴こうとしないでいると主張。トランプ氏は大統領に当選すればエプスタイン氏と交流した人のリストなどを公開すると公言していました。

 

そうした経緯もあって公開された捜査関連文書「エプスタイン文書」をめぐる波紋が、アメリカだけでなく欧州を含めて広がっています。

 

****順調だった大物たちがなぜ一斉に震えるのか「エプスタイン文書」の富豪たちの実体(1****

性犯罪者ジェフリー・エプスタイン元被告の捜査関連文書「エプスタイン文書」をめぐる波紋が広がっている。昨年11月に米上下院が可決しトランプ米大統領が署名した「エプスタイン文書透明性法」により米司法省が文書公開を始め「パンドラの箱」が開かれた形だ。

 

公開された文書にはトランプ大統領、クリントン元大統領ら米政界の大物だけでなく、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)ら財界有力者の名前も含まれた。

 

文書に名前が出てきた人たちはいずれもエプスタイン氏の犯罪事実に対し「全く知らなかった」として否定しているが議論は大きくなっている。事件の核心人物であるエプスタイン氏が死亡しているため疑惑は解消されるよりもむしろ増幅される様相だ。

 

エプスタイン氏とは

エプスタイン氏は私立学校の教師だったが1976年に投資銀行のベアー・スターンズに入社して金融界に進出した。ベアー・スターンズで出世街道を走った彼は1981年に独立し10億ドル以上の超高額資産家を対象とした投資会社を設立した。その後莫大な富を蓄積しニューヨーク・マンハッタンの邸宅、専用機、さらには米領バージン諸島内の本人所有の島など豪華な資産を保有する大富豪となった。

 

成功した金融家として名前が知られる彼の実体が明らかになったのは2005年だ。14歳の少女の両親が彼をセクハラ容疑で通報してだ。被害者は30人以上に達し、ほとんどがエプスタイン氏所有の邸宅で性暴行を受けたという。これに対しエプスタイン氏は2006年に未成年者売買春誘導と買春などの容疑で起訴された。

 

しかし20086月に彼は司法取引を通じ重犯罪での起訴を回避した。比較的軽い容疑だけ認められ懲役18月を宣告された。服役期間中も日中は外部活動が認められる特恵を受けた。出所も前倒しされ、20097月に出所した。

 

死と陰謀説

「性犯罪」の記録はエプスタイン氏の華麗な生活を防げなかった。彼の核心資産は金ではなく「関係」だったためだ。彼は1980年代から超富裕層の顧客に向け盗難された資産を取り戻すなど手を汚す仕事も引き受けて信頼を積んだ。また、ニューヨーク芸術アカデミー理事会入りするなど有力者との接点を広げるルートを絶えず探した。

 

エプスタイン氏は富を利用して権力者が望む「環境」を提供し、彼らの後ろ暗い私生活はそのまま弱点となりエプスタイン氏に途轍もない「権力」を与えた。人脈が増えるほど影響力は幾何学的に大きくなった。ついに彼は権力者の間で関係を取り持つ位置にまで上り詰めた。

 

そんな彼は20197月に米連邦捜査局(FBI)とニューヨーク警察により逮捕される。2018年に第1次トランプ政権で労働部長官に指名されたアレクサンダー・アコスタ氏が過去にエプスタイン氏との司法取引を成功させた連邦検事だったという事実が明らかになり、忘れられていたエプスタイン事件が再び水面に浮上したためだ。

 

彼の行為が明らかになったのは米国社会全般に広がった「Me Too」運動の影響が大きかった。被害者が相次いで証言に出て世論の圧力の中でFBIはエプスタイン氏に対する再捜査に着手し、彼が組織的に行った犯罪の実体があらわれた。本人所有の島での性搾取などが明らかになり、エプスタイン氏は未成年者性搾取と売買春容疑などで逮捕されニューヨーク連邦拘置所に収監された。

 

しかしエプスタイン氏は逮捕から1カ月もたたずに拘禁中に死亡した。当局は彼が自殺したと公式発表したが、核心被疑者が裁判に立つ前に死亡して事件が終結したことにより米国社会全般で激しい疑惑が起こった。エプスタイン氏が有力者と幅広い交流関係を結んでいたため各種陰謀説が出てきた。(後略)【28日 中央日報

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映画化にはうってつけの胡散臭い人物で、「ディープステート」といった陰謀論を一部裏付け、拡散させるような話題です。

 

【共和党側の要請でクリントン元大統領夫妻が議会証言】

トランプ支持者・共和党と野党民主党、両サイドがこの「エプスタイン文書」を政治的に利用しようとしていますが、共和党からの要請でエプスタイン氏との関係を議会証言することになったのがクリントン元大統領と妻のヒラリー元国務長官夫妻。

 

****議会侮辱罪で刑事訴追の可能性もあったクリントン夫妻、エプスタイン事件で委員会証言に同意****

米国のクリントン元大統領と妻のヒラリー元国務長官が、少女らの人身取引罪などで起訴された米実業家ジェフリー・エプスタイン氏(勾留中の2019年に死亡)の事件を巡り、下院監視・政府改革委員会で証言することに同意した。夫妻の広報担当者が2日、SNSで明らかにした。

 

同委員会は1月21日、これまで証言の要請に応じてこなかった夫妻を議会侮辱罪で刑事訴追するよう求める決議案を賛成多数で可決。本会議でも採択されれば、司法省が訴追の是非を判断するところだった。

 

クリントン氏は、エプスタイン氏と親しかったことで知られ、司法省が昨年末に公開した資料でも2人が一緒に写っている写真が多数確認された。(後略)【23日 読売

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“エプスティーン関連文書の公開を定めた連邦法に従い司法省が公開した資料には、クリントン元大統領が元被告と一緒に写っている写真や、元大統領が元被告の邸宅で撮影された写真などが含まれる。

その中には、クリントン氏がプールで泳いでいる写真や、温水浴槽(ホットタブ)のような場所で仰向けになり、手を頭の後ろに組んでいる写真もあった。

 

広報担当のウレーニャ氏はこうした写真について、いずれも数十年前のもので、クリントン氏はエプスティーン元被告の犯罪が明るみに出る前に、関係を断っていたと説明していた。”【23日 BBC

 

クリントン夫妻はそれぞれ27日と26日に委員会で証言するとされていますが、元大統領は公開証言を求めています。

 

****クリントン氏公開証言要求 米富豪疑惑、与党を批判****

クリントン元米大統領(民主党)は6日、富豪エプスタイン氏に関する疑惑を巡る27日の議会証言について、公聴会のような公開の場で実施するよう要求した。共和党が、事実解明よりも党派的利益を優先して非公開で開催しようとしていると批判した。(中略)

 

クリントン氏は、X(旧ツイッター)の投稿で、非公開では被害者や国民の利益にならないと主張。「密室の茶番で小道具にされるのを看過するつもりはない」と書き込んだ。【27日 共同

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【日本との関税交渉のキーマンであったラトニック米商務長官への辞任圧力】

一方、トランプ政権側で問題になっているのが、日本との関税交渉のキーマンであったラトニック米商務長官です。

 

****ラトニック米商務長官が虚偽説明か エプスタイン氏疑惑で追及の矛先****

ラトニック米商務長官に対し、野党・民主党の議員を中心に辞任を求める声が上がっている。少女らへの性的虐待罪などで起訴され2019年に死亡した実業家エプスタイン氏との関係について、虚偽の説明をした可能性が浮上したため。エプスタイン氏との関係を巡ってトランプ大統領だけでなく、側近の主要経済閣僚にも追及の矛先が広がっている。

 

去就問題は対米投資計画にも影響か

ラトニック氏は昨年の「トランプ関税」引き下げを巡る日米交渉の際、赤沢亮正経済産業相が良好な関係を築いて合意につなげた。現在は日本の対米投資5500億ドル(約85兆円)計画の投資先を推薦する委員会の議長を務めており、その去就は日本に影響を与える可能性がある。

 

米メディアによると、米司法省が1月末に開示したエプスタイン氏に関する300万ページ以上の資料のうち、250以上の文書でラトニック氏の名前が登場する。エプスタイン氏の所有するカリブ海の島を訪問する予定や企業への共同投資を示す文書が確認されたほか、住居が隣接していた時期もあり、2018年まで少なくとも13年間やり取りを続けていたことがうかがえるという。

 

ただ、ラトニック氏は、昨年10月に出演したポッドキャストで、05年にエプスタイン氏と面会した際のやり取りに嫌悪感を抱いたとして、その後は関与していないと説明していた。

 

与野党から辞任求める声

このため民主党の下院・上院議員からは「うそをついていたことは明らかだ」、「判断力や倫理観に深刻な懸念を抱かせる」などとして、辞任や解任を求める声が強まっている。

 

エプスタイン氏を巡る一連の文書の全面公開を求めてきた与党・共和党のマッシー下院議員も今月8日、米CNNのインタビューで「多くの説明責任を問われるべきだ。率直に言えば、辞任すべきだ」と主張した。

 

エプスタイン氏を巡る疑惑は米国だけでなく欧州の政財界などを揺さぶっており、英国では親密な関係が疑われた前駐米大使が解任されたことで、スターマー首相に対する退陣圧力が強まる事態にまで発展している。

 

ラトニック氏とエプスタイン氏との関係について、商務省の広報担当者は米メディアに「ごく限られた交流があっただけだ」などと回答したが、騒動の行方が注目されそうだ。【210日 毎日

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【トランプ大統領とエプスタイン氏の関係】

肝心のトランプ大統領とエプスタイン氏の関係はどうなのか?

 

****現在明らかになっているエプスタイン元被告とトランプ大統領の関係****

1. そもそもの関係(過去の付き合い)

・社交界での交流

エプスタインとトランプ氏は1980年代~2000年代初期まで、互いの不動産パーティーや社交イベントで共に写った写真や映像が多数存在します。1990年代にはフロリダ・パームビーチやニューヨークで顔を合わせ、私的なイベントにも出席していた記録があります。

 

2002年当時、トランプ氏自身が雑誌インタビューでエプスタインを「知り合って15年の素晴らしい人物」と称した過去の発言が残っています。

 

・友人関係か否か

エプスタイン側は一時「親しい友人だった」と主張していましたが、トランプ氏側は長年にわたり「友人ではない」「付き合いは限られていた」と主張を変えてきました。

 

・決別のきっかけ

2000年代半ばごろに高額不動産の競売(Maison de L’Amitié)を巡る争いがあり、関係が途絶えたとの報道があります。

 

2. 文書・写真の公開と再燃する関心

・資料公開の進展

米司法省がエプスタイン関連の資料・ファイルを数百万ページにわたり公開しており、トランプ氏に関する記述や写真も含まれているものが公になっています。

 

・公開された写真・メール

下院民主党などが公開した写真や電子メールには、トランプ氏がエプスタイン氏と女性グループと一緒にいる様子が写っているものもあり、物議を醸しています。

 

一部の電子メールには、エプスタインがトランプ氏について何時間も一緒に過ごしたと書かれているものも含まれていますが、これがトランプ氏の犯罪に直結する証拠とはされていません。

 

3. トランプ氏の立場と主張

・関係否定と強調

トランプ大統領は現在、関係を長い付き合いとは否定し、エプスタイン氏との関係を政治的攻撃だと主張しています。特に最新の文書公開を「陰謀」と呼び、自身が関与した犯罪行為は一切ないと断言しています。

 

・反転する発言

過去の発言(「素晴らしい人物」など)は現在の主張と食い違っており、これが論争の焦点となっています。

 

4. 犯罪との関係性について

エプスタインの性犯罪・人身売買事件については詳細な刑事記録や裁判資料が公開されていますが、トランプ大統領自身がこれらの犯罪に関与したという公的な証拠や起訴状は現時点では存在しません。

 

5. 世論と政治的影響

資料公開をめぐる攻防は米国内で大きな注目を集めており、トランプ氏の支持者・批判者双方がこの話題を政治利用しています。世論調査では、情報隠蔽を疑う声も一定数あります。

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【トランプ大統領は幕引きを図る発言】

「エプスタイン文書」の波紋は広範に広がっていますが、アメリカでの報道は抑制気味で、トランプ大統領は「そろそろ別のことに取り組む時だ」と述べ幕引きを図っています。

 

****米富豪・ロシアの関係浮き彫り 情報機関と共謀疑いで調査少女人身売買、報道は抑制気味・エプスタイン文書****

少女らの性的人身売買の罪で起訴され勾留中に死亡した米富豪ジェフリー・エプスタイン氏に関する捜査資料約300万枚が新たに開示され、波紋を広げている。エプスタイン氏とロシアの関係の深さが浮き彫りになり、ポーランド政府が調査に着手。英国では同氏と与党重鎮議員の親密な交流が政治問題に発展した。

 

米司法省が1月末に公開した「エプスタイン文書」と呼ばれる資料の分析で浮上したのが、英労働党のマンデルソン上院議員が経済政策に関する機密情報をエプスタイン氏と共有していた疑惑だ。マンデルソン氏は今月に入り議員辞職を強いられ、与党を揺るがす事態になっている。

 

資料には、トランプ大統領、クリントン元大統領、実業家イーロン・マスク氏ら大物の名前が多数登場。既にエプスタイン氏との交流を認めている日本人研究者とのやりとりも含まれていた。米欧政財界の要人男性の非公式な社交ネットワークが、エプスタイン氏を媒介に形成されていた実態が垣間見える。

 

この人脈の中で注目を集めているのが、ロシアとの接点だ。報道によれば、エプスタイン氏は2010年代、ノルウェー・ノーベル賞委員会のヤーグラン委員長(当時)らを通じロシアのプーチン大統領との会談を模索したり、複数のロシア政府高官と交遊を深めたりしていた。

 

エプスタイン氏が有力者にロシア人女性を紹介していたことを示唆する文書もある。ポーランドのトゥスク首相は今月3日、「小児性愛スキャンダルはロシアの情報機関との共謀ではないかという疑惑に結び付く」と明言。ロシアが「ハニートラップ」(女性を使って弱みを握る工作活動)を仕掛けていた可能性も指摘されている。

 

一方、肝心の米国での報道は抑制気味だ。「ヨット上で赤ちゃんを解体していた」などとする信ぴょう性が低い「目撃証言」が多い上、開示情報の大半は以前から伝えられていた内容のためだ。トランプ氏は、「この国はそろそろ別のことに取り組む時だ」と述べ幕引きを図る。

 

ただ、与党共和党がクリントン氏に証言するよう求めるなど、政治利用の動きは収まっていない。クリントン氏は27日に下院で証言に臨む予定で、野党民主党も11月の中間選挙に勝利すれば、トランプ氏に同じ要求を突き付けることになるとけん制を強めている。【210日 時事

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トランプ氏は幕引きを図りたい様子ですが、秋の中間選挙で共和党が敗北すれば、民主党側はエプスタイン氏とトランプ大統領の関係について攻勢を強めると思われます。

 

【目下の最大被害者はイギリスのスターマー首相】

現時点で「エプスタイン文書」の一番深刻な影響を受けたのはアメリカではなくイギリスの、それも自身の名前があがった訳でもないスターマー首相でしょうか。

 

****政治的に瀬戸際だったスターマー英首相、ひとまず続投 今のところは……BBC政治編集長****

イギリスのキア・スターマー首相は10日、有権者に託された信任から「決して身を引いたりしない」と述べた。前日にスコットランド労働党の党首から首相辞任を求める発言が出るなど、スターマー氏は政治的危機に直面していた。 

 

アメリカで性犯罪で有罪とされた富豪ジェフリー・エプスティーン元被告(故人)について米司法省が追加公開した資料から、スターマー氏が駐米大使に任命したマンデルソン卿と元被告の関係の深さが明らかになり、首相の任命責任が与党内からも問われていた。 

 

スターマー首相はこの日、イングランド南東部ハートフォードシャー州の地域センターを訪問。そこでの演説で、「既存の制度が機能しないために抑えつけられている、数百万人の人々のために闘っている」と語り、「その闘いを決して諦めない」と付け加えた。 労働党党首としての自分の立場については、辞任の憶測を退け、次の総選挙でも党を率いる考えだと述べた。

 

一方、最大野党・保守党のケミ・ベイドノック党首は、労働党が「キア・スターマーへの信頼を失ったことは明らかだ」と指摘。スターマー氏の辞任は「あるかどうかではなく、いつになるかの問題だ」と述べた。【211日 BBC

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“政治生命の危機に瀕しているスターマー英首相に、閣僚らが相次いで支持を表明した。スコットランド労働党リーダーのアマ・サワール氏からは辞任を要求された首相だが、求心力回復へ一定の時間を得た格好になる。

サワール氏の辞任要求後、閣僚らは1人ずつスターマー氏への支持を口にした。この中には、首相の地位を脅かす可能性が最も高いとみられているストリーティング保健・社会福祉相やレイナー前副首相もいた。”という形で、いまのところ“ひとまず続投”となっています。

 

ただ、歴史的な低支持率にあえぐスターマー首相にとって、辞任を求めたスコットランド労働党の党首サワール氏の離反は痛手です。“5月の地方選挙でスコットランド労働党は苦戦が予想されるだけに、サワール氏はますますスターマー氏への批判を強めている。”【210日 Bloomberg】とも。

 

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キューバ  トランプ大統領の圧力で1月の原油輸入はゼロ 中ロの有効支援は困難 米のジレンマも

(港に到着したリベリア船籍のタンカー=19日、キューバ首都ハバナ【25日 CNN】)

 

【トランプ大統領の圧力でキューバの1月原油輸入はゼロ 影響深刻化】

アメリカの裏庭にあってカストロ以来強硬な反米左派路線を続けるキューバは、米ソ冷戦期にはアメリカの喉元に突きつけられたナイフのようなものでもあり、ケネディ大統領時代に世界を震撼させた“キューバ危機”を引き起こしたのは周知のところです。

 

冷戦終了後はそこまでの緊張感は薄れましたが、アメリカにとってキューバが目障りな存在であることには変わりありませんし、アメリカ国内に多数のキューバ亡命者・移民を抱える状況から、キューバ問題はアメリカにとってはある種内政問題でもあります。

 

トランプ大統領がベネズエラ・マドゥロ政権に続き、キューバについてもベネズエラ産原油を断ち、さらにメキシコ産も断ち、その存続を危うくする圧力をかけていることは、128日ブログ“瀕死のキューバ  トランプ政権は石油供給停止で体制転換を目指す”でも取り上げました。

 

そのキューバの石油事情はいよいよ危機的なレベルになってきており、国民生活はもちろん、多方面に影響が出ています。

 

****キューバでリゾート閉鎖、米の燃料阻止が直撃-観光業に深刻な影****

トランプ米大統領が進めるキューバへの燃料供給阻止が、同国の基幹産業である観光業に影を落とし始めている。

  

カリブ海に面したカヨココでは大型ビーチリゾートの少なくとも2カ所が、ガソリン不足を理由に今週末にも閉鎖されることが、従業員らの証言で6日明らかになった。

  

リゾート「モヒート・カヨココ」は従業員の通勤用の燃料すら不足する事態となっており、閉鎖される。従業員が匿名を条件に明らかにした。約200人の宿泊客は約30マイル(48キロ)離れた「ソル・カヨココ」に移されるという。

  

この従業員は、トランプ氏による制裁が影響していると批判し、多くの同僚が職を失っていると述べた。このホテルに20年以上勤務しており、ハリケーンで一時的な閉鎖は経験したが、気象関連以外の事態で閉鎖されるのは初めてだという。(中略)

 

キューバ政府は6日夜、米国の燃料供給阻止に対する緊急対策の一環として、観光分野で「効率化および施設集約計画」を実施していることを認めた。政府は、一部ホテルの営業を維持することで、ハイシーズン中の外貨収入を可能な限り確保したい考えだと説明した。

  

米政権は1月上旬、キューバと強いつながりがあるベネズエラからの燃料供給を事実上、遮断した。トランプ氏はその後、キューバに石油を供給する国に対して関税を課すと警告している。【28日 Bloomberg

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キューバにとって観光業は基幹産業のひとつであり、“政府は、一部ホテルの営業を維持することで、ハイシーズン中の外貨収入を可能な限り確保したい考え”とのことですが、そもそも飛行機が飛ばない事態も。

 

****エア・カナダがキューバ便運休、ジェット燃料の入手難で****

カナダの航空最大手エア・カナダは9日、キューバ行きの便を運休すると発表した。

 

米国がベネズエラからキューバへの石油輸送を阻止する中、キューバ政府はジェット燃料が枯渇しつつあると警告している。 エア・カナダは声明で、キューバ政府がジェット燃料の供給が不安定になる可能性があると警告する通知を発出したことを受け、10日時点で空港での燃料入手が困難になると予測されると説明した。(中略)

 

ペインの航空会社エア・ヨーロッパは、マドリードハバナマドリード路線において10日以降、ドミニカ共和国のサントドミンゴの空港に給油のため寄航すると発表した。【210日 ロイター

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そして“キューバの原油輸入は1月に2015年以降で初めてゼロになった”とも。

長期の備蓄があるようにも思えないキューバ、原油輸入ゼロで国家運営・国民生活が成り立つのでしょうか?

 

****キューバ、1月は原油輸入ゼロ-トランプ氏圧力でメキシコも供給停止****

(ブルームバーグ):キューバが燃料不足に苦しむ中、メキシコが同国への原油出荷の全面停止を決定した。キューバにとっては新たな打撃となり、月間ベースで10年ぶりに石油輸入が全くなかった。

 

トランプ米大統領が先月、ベネズエラのマドゥロ大統領の拘束を命じ、キューバにとって最も信頼できる友好国だったベネズエラからの燃料提供も止めた後、メキシコはキューバ最大の原油供給国として浮上していた。

 

ブルームバーグの試算によると、メキシコによる月次の原油出荷は、キューバが約1カ月分のガソリン需要を賄うのに十分な量の生産を可能にしていた。だが、メキシコのシェインバウム大統領は9日、キューバに石油を販売、または供給する国からの輸入品に関税を課すとのトランプ氏の脅しを受け、原油出荷を「保留している」と確認した。

 

海運リポートや調査会社ケプラーのデータによると、キューバの原油輸入は1月に2015年以降で初めてゼロになった。米国が昨年12月、ベネズエラやロシアなどから制裁対象の原油を運ぶ「影の船団」の船舶を追跡するため海上封鎖を開始して以降、出荷量は脅かされていた。

 

トランプ大統領は反米左派マドゥロ大統領の拘束後、キューバの社会主義体制も弱体化させようとしており、燃料供給を巡る圧力がキューバ経済を締め付けている。

 

首都ハバナのガソリンスタンドでは、給油待ちが悪化する一方となっている。国内では調理用ガスから水、電力に至るまで、全てが不足している。ジェット燃料が足りず、キューバ政府は今後1カ月間、島内で燃料を補給できないと航空会社に通告。少なくとも2カ所の大型ビーチリゾートがガソリン不足のため閉鎖される予定となっている。

 

キューバは1960年代から米国の制裁対象だが、人道支援と位置付けられたメキシコからの原油供給は認められてきた。ケプラーのデータによると、キューバは昨年、輸入原油需要の80%近くをメキシコとベネズエラで賄っていた。

シェインバウム大統領は9日、キューバの原油輸入を締め付けるトランプ氏の動きを非難。「これは正しくない。病院や学校向けの燃料がない。人々が苦しんでいる」と述べた。

 

米軍は昨年12月、キューバが約3カ月分のガソリン需要に相当する燃料を製造できる原油を運んでいた船舶を拿捕した。ケプラーのデータによれば、キューバで原油を荷揚げした最後の船舶が到着したのは12月末で、米軍によるベネズエラ軍事作戦の数日前だった。

 

キューバは情報を開示していないため、自動車燃料の供給がどれだけ続くのかを見積もるのは難しい。

政府当局者は2024年、キューバのガソリン需要が1日当たり約8200バレルに上り、制裁や封鎖の中で、辛うじて満たされている程度だと異例の発言を行っていた。【210日 TBS CROSS DIG

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【ロシア・中国は「支援」とは言うものの、実際に現状打開に資する何ができるのか?】

長年の後ろ盾ロシア、更に中国もキューバ支援を明らかにしています。

 

****キューバの燃料事情は「危機的」とロシア、米の締め付け非難****

ロシア大統領府は9日、キューバの燃料事情について「危機的な状況にある」との認識を示した。その上で、米国によるキューバ経済の「窒息」を狙った試みが多大な困難を引き起こしていると非難した。 

 

大統領府のペスコフ報道官は記者団に「キューバの状況は確かに危機的だ。われわれもこれを認識しており、外交やその他のルートを通じて、キューバの友人たちと緊密に連絡を取り合っている」と発言。 

 

「米国による窒息戦術は(キューバに)多くの困難をもたらしている。われわれはキューバ側と、こうした問題を解決するため、可能な手段、あるいは少なくとも可能な限りの支援を提供する方法について協議している」と語った。 ロシアのコロネリ駐キューバ大使は先週、国営RIA通信に対し、ロシアは近年キューバに繰り返し石油を供給しており、今後も継続する方針だと述べている。【29日 ロイター

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****中国、ジェット燃料不足のキューバ支援を表明****

中国外務省の報道官は10日の定例会見で、(中略)「中国はキューバが国家主権と安全を守ることを断固として支持し、外部からの干渉に反対する」とし「キューバ側に対し、可能な限りの援と助けを常に提供していく」と語った。【210日 

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ロシア・中国は支援するとは言うものの、現実問題として、アメリカの圧力にさらされているキューバが例えばロシア・中国などから資金援助などがあればベネズエラ・メキシコ以外から石油を調達することは可能なのか?・・・と言えば、非常に困難でもあります。

 

****キューバがベネズエラ・メキシコ以外から石油を調達することは可能なのか?****

結論から言えば、資金(中国などからの金融支援)があれば、キューバがベネズエラ・メキシコ以外から石油を調達すること自体は技術的には可能です。ただし現実には、資金だけでは解決しない複数の制約があり、調達量・安定性・コストの面で大きなハードルがあります。主な論点を整理します。

 

1. 物理的・市場的には「代替調達先」は存在する

キューバは重質原油・燃料油を主に必要とするため、供給候補は理論上いくつもあります。

想定される供給元候補:ロシア、イラン、アルジェリア、アンゴラ、ナイジェリア、ブラジル(重質油)、中東産油国(製品輸出含む)

 

実際、近年はロシアやイランの石油製品・原油がスポット的にキューバへ送られた例があります。したがって「売ってくれる国がゼロ」という状況ではありません。

 

2. 最大の制約は「米制裁(金融・海運)」

資金援助があっても最大の障害はここです。

(1) 決済制裁

キューバは米国の包括的経済制裁下。米ドル決済や国際金融網(SWIFT)利用が制限。銀行・保険会社が関与を忌避(セカンダリー制裁リスク)。→ 中国等が資金を出しても送金ルート確保・信用状発行・保険付与が難しい。

 

(2) 海運・保険制裁

制裁対象国向け輸送は船会社・保険会社が敬遠。米国は「制裁違反船舶」をブラックリスト化。入港制限・保険無効化のリスク。→ タンカー確保コストが急騰。

 

(3) 物流監視

カリブ海は米国の監視圏。AIS遮断・船籍変更など「制裁回避輸送」が必要。

 

3. 調達できても「量」と「安定性」が不足

ベネズエラが特別だった理由:地理的に近い(輸送費が安い)同盟関係で優遇価格・延払い・バーターが可能 日量数万バレル規模の長期供給

 

代替供給は多くが:スポット契約 短期 小ロット 高運賃

→ 国内需要を恒常的に満たすのは困難。

 

4. キューバ側の精製能力の制約

キューバの製油所(シエンフエゴスなど)はベネズエラ重質油仕様 老朽化 稼働率低下

そのため軽質油を大量輸入しても非効率 製品(ディーゼル・ガソリン)輸入が必要→追加コスト増

 

5. 中国支援の「現実的な形」

中国が表明する支援は、必ずしも「現金で石油購入」ではなく、次の複合形が多いです。

想定スキーム 国有銀行による信用供与 人民元建て決済 中国企業による現物供給仲介 債務繰延べ インフラ投資と抱き合わせ 石油製品の直接供給

 

ただし中国も米制裁リスクを計算、対米関係とのバランス配慮→無制限支援はしない

 

6. 制裁回避型調達(グレー輸送)

現実にはすでに行われている手法:洋上積み替え(STS 原産地偽装 ブレンド油  船籍ロンダリングAIS信号遮断→イラン・ベネズエラ・ロシアで使われている方法と同様。

 

ただし:コスト高 量が限定 供給不安定

 

要するに、中国などが資金支援すれば「石油ゼロ」は回避可能。しかしそれは高コスト、不安定、小規模、制裁回避依存という「延命的供給」になりやすい。

ベネズエラのような政治同盟+近距離+長期優遇供給を完全代替するのは極めて難しい、というのが現実です。

【ChatGPT】

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【アメリカ 制裁を強化してキューバ国内の市民生活が崩壊すれば、アメリカへの移民・亡命者が増加するというジレンマも】

一方、アメリカにしても、キューバに対し制裁強化で海上封鎖を行えばキューバに活路はないように思えますが、アメリカとしてもそうそう無理押しはできない事情があります。

 

****アメリカがキューバ問題で無理押ししづらい事情****

アメリカが制裁を極限まで強化し、事実上の「海上封鎖」に近い措置を取ることは軍事的・能力的には可能ですが、現実の政策選択としては強い抑制要因がいくつも存在します。

 

1. まず「海上封鎖」の意味合い

国際法上、海上封鎖(blockade)は通常:戦時行為(交戦権の行使) 国連安保理決議か戦争状態が前提

米国が単独で実施すれば:事実上の「戦争行為」 キューバ側の自衛権発動余地 国際社会から強い批判

 

したがって実際には:「臨検強化」 「制裁違反船舶の拿捕」 「保険・港湾制限」 「海運ブラックリスト化」

といった準封鎖の形が現実的上限です。

 

2. 移民・亡命問題という抑制要因

これは冷戦期から現在まで、米国の対キューバ政策の核心的ジレンマです。

(1) 制裁強化 → 生活崩壊 → 大量流出

キューバ経済が極端に悪化すると:食料不足 停電 医薬品欠乏 交通停止

結果:筏・ボート亡命 メキシコ経由陸路流入 中南米経由の北上ルート

 

(2) 実例:マリエル・ボートリフト(1980:約125千人が数か月でフロリダ流入

カストロ政権が出国を事実上容認 米国内で社会・治安・財政問題化

 

(3) 実例:1994年筏危機

経済崩壊(ソ連崩壊後) 数万人が海上亡命 米沿岸警備隊が大量救助→ これが契機で移民協定締結

 

(4) 現在の米国にとっての政治的リスク

もし海上封鎖級の圧力をかければ:数十万単位流出の可能性 フロリダ州の受け入れ限界 移民問題の国内政治化 国境問題と連動し政権打撃 

特に、大統領選挙年、移民が争点化している時期には抑制が強く働く。

 

3. キューバ側の「移民カード」

キューバ政府は歴史的に:出国規制を緩める/締める 港を開放する 亡命船を黙認などで圧力カードとして利用してきました。 つまり、制裁を強めるほど、米国が困る現象が起きる非対称的レバレッジです。

 

4. 軍事衝突リスク

海上封鎖に近づくほど:キューバ海軍・沿岸警備隊との摩擦 拿捕・発砲事件 偶発衝突

さらに:ロシア艦船寄港 中国艦船寄港 情報施設問題が絡むと大国間緊張に波及。

 

5. ラテンアメリカ外交への影響

米国が封鎖を行えば:「モンロー主義の復活」批判 左派政権の反米結束 ブラジル・メキシコの反発 カリブ共同体(CARICOM)の非難

結果:対中南米外交が悪化 中国・ロシアの浸透余地拡大

 

6. 人道危機責任問題

封鎖で起きうる事態:食料輸入停止 医薬品不足 発電燃料枯渇→ 国際社会から「集団懲罰」「人道危機誘発」との批判。

 

7. 米国内政治の二面性

強硬論:フロリダ亡命キューバ系有権者、共和党強硬派、体制転換期待

慎重論:移民急増懸念、人道批判、軍事衝突回避

政権は常にこの板挟み。

 

8. 実務的限界

完全封鎖には:常時艦艇展開、臨検体制、法的根拠整備、同盟国協力が必要。

現実には:ウクライナ、中東、台湾海峡など他戦域で海軍負担が大きい。

 

結論:米国は能力的にはキューバの海上輸送を大幅遮断可能。 しかし実際には「移民流出」という逆流リスクが極めて大きい。制裁強化で体制が弱るほど米国本土が直接的負担を被り国内政治問題化するため、「締め上げすぎると自分が痛む」という構造的ジレンマが存在します。【ChatGPT】

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【キューバ アメリカとの対話姿勢に転換 備蓄が数カ月にとどまる】

もちろん、キューバ側もこのままでは体制の危機につながりますので、本音ではなんとかアメリカと話をつけたいところ。

 

****キューバ、一転「米と対話」****

キューバのディアスカネル大統領は5日の記者会見で、「あらゆる問題について米国と対話する用意がある」と述べた。備蓄が数カ月にとどまるとみられる原油が枯渇する危機感が高まっており、1月のベネズエラ攻撃以降の対決姿勢を一変させた。(後略)【27日 日経

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ただし“キューバのカルロス・フェルナンデス・デ・コシオ外務副大臣は4日、CNNの単独取材に答え、キューバは米国との「有意義な」対話に応じる用意があるが、政府体制の変更について話し合う意思はないと語った。”【25日 CNN】とも。

 

“備蓄が数カ月にとどまる”・・・タイムリミットは間近です。

 

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パナマ運河をめぐる米中の綱引き パナマ最高裁、香港企業の港湾契約に無効判断 中国は報復

(パナマ運河、香港を拠点とするCKハチソン傘下企業PPCが運営してきた港湾(25日)【29日 Newsweek】)

 

【トランプ大統領「パナマ運河は中国に支配されている」「パナマ運河を取り戻す」 軍事行動を辞さない姿勢】

「ドンロー主義」なるものを標榜し西半球におけるアメリカの優位性を重視するトランプ大統領は、国際的物流の要衝であるパナマ運河についても中国に支配されているとして「パナマ運河を取り戻す」と繰り返し発言し、運河へのアメリカの関与を強めようとしています。

 

アメリカを発着するコンテナ船の年間輸送量のうち4割超、約2700億ドル相当がパナマ運河を経由しており、パナマ運河を通過する船舶の3分の2超を占めている・・・ということで、アメリカ海運にとってパナマ運河が非常に重要なのは事実です。(別にアメリカだけでなく、日本など他の国々にとっても重要ですが)

 

ただ、トランプ大統領の主張にはいつものように事実誤認・誇張があります。

 

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トランプ元大統領が「パナマ運河は中国に支配されている」と主張する主な根拠は、香港を拠点とする企業CKハチソン・ホールディングス(CK Hutchison Holdings)の子会社が運河両端の主要港(バルボアとクリストバル)の運営権を長年保有していたという事実に起因するものです。 

 

ただし、この主張は事実と異なり、運河自体はパナマ政府の自治機関であるパナマ運河庁(Panama Canal Authority, ACP)によって完全に管理・運営されています。 【google AI】

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事実誤認・誇張に関係なく、トランプ大統領は軍事行動も辞さない強硬姿勢を見せていました。

 

****トランプ政権 パナマ運河支配へ計画策定指示「武力行使はパナマ治安部隊の協力次第」*****

トランプ政権がアメリカ軍に対して、パナマ運河の支配に向けた計画を策定するよう指示したと複数のアメリカメディアが報じました。

トランプ大統領は「パナマ運河を取り戻す」と繰り返し発言し、軍事行動を辞さない姿勢を示してきましたが、ロイター通信などは支配に向けた計画を策定するようアメリカ軍に指示したと報じました。

指示を受けた中南米などを担当するアメリカ南方軍は、パナマに駐留する部隊の増強やパナマ治安部隊との連携強化策などを検討しています。

このほか、「可能性は低い」という前提で、パナマ運河を武力で占領するという案まで幅広い選択肢があるということです。

NBCは当局者の話として「武力行使するかどうかはパナマの治安部隊がどこまで米軍と協力するかに懸かっている」と伝えています。(後略)【2025315日 テレ朝news

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一方、中国もアメリカの圧力に曝され中国主導の「一帯一路」からの離脱方針を表明したパナマをつなぎとめるために昨年3月、共産党代表団を派遣。

 

****中国、パナマ引き留め画策=共産党代表団が訪問****

17日付の中国共産党機関紙・人民日報は、党外交を担う中央対外連絡部の馬輝・副部長率いる代表団が14、15両日にパナマを訪問したと報じた。パナマ政府は2月、パナマ運河が中国の影響下にあると主張するトランプ米政権への対応策として、中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」からの離脱方針を表明。中国側は今回、引き留めを画策した形だ。(後略)【317日 時事

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パナマは2017年に台湾と断交し中国と国交樹立して「一帯一路」にも参加、一時「対中接近の象徴」になりました。しかし、その後のアメリカの圧力、過度の中国依存への懸念、中国投資に関する期待との落差、事業をめぐるの汚職などの不透明性等々の複合理由によって「一帯一路」からの離脱方針を表明しました。

 

【PPCの持つ運河両端の2港の管理権を米資産運用会社に売却する契約に中国が「国家や民族の利益を考えないのか」と反発 契約は延期】

そうした米中のパナマ運河をめぐる綱引きの中で、香港の複合企業「長江和記実業」(CKハチソン・ホールディングス)が202534日、傘下企業(PPC)が保有する運河両端の2港の管理権などを米資産運用会社「ブラックロック」を中心とする企業連合に売却する基本合意を結んだと発表しました。 

 

これに対し、中国政府で香港政策を担当する部門が「国家や民族の利益を考えないのか」などと批判した香港メディアの記事を公式サイトに掲載するなど、中国は「売却批判」を連日展開して「長江和記実業」に圧力を。結局、売却は延期に。

 

****中国、パナマ運河巡り香港企業に圧力 米国への売却は延期か****

国際海運の要衝・パナマ運河の港湾事業を米国などの企業連合が買収する交渉を巡り、巻き返しを図る中国政府が管理権を保有する香港系企業への圧力を強めている。トランプ米大統領は運河の「奪還」に執念を見せてきたが、2日に署名期限を迎える買収の最終合意は延期の公算が大きくなっている。

 

パナマ運河に関しては、香港の複合企業「長江和記実業」(CKハチソン・ホールディングス)が34日、傘下企業が保有する運河両端の2港の管理権などを米資産運用会社「ブラックロック」を中心とする企業連合に売却する基本合意を結んだと発表した。

 

長江和記は、世界的な富豪の李嘉誠氏(96)が創業し、不動産を中心に多角的な事業を展開している。今回、企業連合側にパナマ運河を含む世界の計43港の管理権を売却し、その総額は228億ドル(約34兆円)に達する予定だ。

 

トランプ氏は長江和記を事実上の中国企業と見なし、中国が太平洋と大西洋をつなぐパナマで影響力を拡大することを警戒。米国が建設した運河の管理権を取り戻すと訴えてきた。

 

中国は売買合意への批判を強めている。国家市場監督管理総局は328日、市場の公平な競争を保護するために独占禁止当局が審査を始めると発表。外務省の郭嘉昆副報道局長は31日の記者会見で、米国の名指しを避けながら「経済的な強要や脅迫を利用して他国の正当な権益を侵害する行為に反対する」と批判した。

 

香港でも、中国政府に近いメディアが米国を非難し、長江和記に撤回を促す記事をたびたび掲載している。香港紙「大公報」は15日の論評記事で「一時的に大もうけしても、最後は歴史の汚名を負うだろう」と主張した。

 

中国政府で香港問題を担当する国務院香港マカオ事務弁公室は公式サイトに一連の記事を転載している。「民間取引への介入」と批判されるのを避けつつ、合意撤回を求めて圧力をかけてきた形だ。香港英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」など複数の香港メディアは、最終合意への署名が期限内に行われない見通しだと報じている。【202541日 毎日

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一方、トランプ大統領は「アメリカなければ存在しなかった」として、パナマ、スエズ運河の「無料通航」主張。スエズ運河を管理するエジプトにも火の粉が。

 

****「米国なければ存在しなかった」トランプ大統領がパナマ、スエズ運河の「無料通航」主張****

米国のトランプ大統領は26日、自身の交流サイト(SNS)で、「米国の船舶は軍用でも商用でも、パナマ運河とスエズ運河の無料通航が許可されるべきだ」などと主張した。両運河は「米国がなければ存在しなかっただろう」とも述べ、ルビオ国務長官にただちに対処するよう指示したことも明らかにした。

 

太平洋と大西洋を結ぶ中米のパナマ運河と地中海と紅海をつなぐ中東のスエズ運河は海上貿易の要衝。トランプ氏は1月の就任以降、パナマ運河について「中国の影響下にある。管理権を取り戻す」などと主張してきたが、スエズ運河にも関心を示した形だ。

 

パナマ運河を巡っては3月、香港系企業が運河両端にある2つの港の権益を、米資産運用大手が率いる共同事業体に売却する計画を発表。中国当局は反発しており、手続きが遅れている。【2025427日 産経

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【パナマ最高裁、PPCの港湾契約に無効判断 中国は国有企業に対し、パナマでの新規事業計画を停止するよう指示して報復】

上記は昨年前半の動きで、その後はトランプ大統領はベネズエラへの対応する必要などもあって、パナマ運河に関しては大きな動きは報じられていませんでしたが、パナマ運河の港湾を運営する中国系企業子会社パナマ・ポーツ・カンパニー(PPC)について、昨年、パナマ会計検査院長は不正を理由に、国益を損なう利権の無効化を求める訴訟を起こし、パナマの最高裁判所は129日、PPCが保有する主要港湾運営契約が憲法に違反するとして無効判断を下しました。中国がこれに反発しています。

 

****パナマ最高裁、香港企業の港湾契約に無効判断 売却計画に支障も****

中米パナマの最高裁判所は29日、香港の長江和記実業(CKハチソン・ホールディングス)の子会社が保有する主要港湾運営契約が憲法に違反するとして無効判断を下した。パナマ運河の港湾運営を巡る先行きが不透明となり、CKハチソンが計画する港湾ターミナル売却に影響を及ぼす可能性がある。

 

CKハチソン傘下のパナマ・ポーツ・カンパニー(PPC)は、パナマ運河の太平洋側と大西洋側の入口にあるコンテナターミナルを運営する契約を1990年代から締結していた。契約はここ数年、延長されていたが、契約が違憲で、パナマを不利な立場に置いているとの批判が出ていた。

 

最高裁は、パナマ運河のバルボア、クリストバル両港湾ターミナルの開発・建設・運営・管理を巡って国とPPCが締結した契約について、「広範な審理」の結果、契約の根拠となった法律と措置が憲法違反に当たると判断した。 

 

CKハチソンは、今回のパナマの港湾ターミナルを含め、世界各地の多数の港湾を売却する計画を進めているが、判決を受け、売却計画に支障が出る可能性がある。売却先はブラックロックとメディタレニアン・シッピング(MSC)が主導する企業連合で、売却額は約230億ドル。

 

PPCは、判決の通知をまだ受け取っていないが、港湾の運営を認めてきた法的枠組みや法律とは矛盾する判決だと考えていると強調した。

 

「利用可能な情報に基づくと、新たな判決は法的根拠を欠き、PPCおよびその契約のみならず、港湾活動に直接的・間接的に依存する何千ものパナマ人家族の幸福と安定、同国の法の支配と法的確実性を危うくする」とする声明文を発表。約30年、パナマの港湾を運営する中で、インフラと技術に18億ドルを投じてきたともし、国内・国際法廷への提訴を含む「あらゆる権利を恒久的に留保する」と表明した。

 

中国外務省報道官は30日の定例記者会見で「中国企業の正当な権益を断固として守るため、必要なあらゆる措置を講じる」と述べた。

 

香港政府も声明で、判決を強く非難。「いかなる外国政府も、国際経済貿易関係において強制的、抑圧的またはその他の不当な手段を用いて香港企業の正当な商業的利益を深刻に損なうことに強く反対する」と主張した。

 

この判決は、世界的な貿易ルートを巡る米中間の対立が激化する中、世界海運の約5%を担うパナマ運河に対する中国の影響力を抑制しようとしているトランプ米政権にとって勝利と見なされる。

 

パナマは複数の航路を結ぶコンテナの積み替え拠点。海運各社にとって途切れない港湾運営は極めて重要だ。アナリストは、PPCが仲裁を申し立てる可能性を指摘している。【130日 ロイター

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上記にもあるように、中国側は不当な判決と強く反発しています。

 

****パナマ、中国の「重い代償」脅迫に反発 運河問題****

中米パナマの最高裁がパナマ運河両端の港を運営する香港系企業との契約を無効と判断したのを受け、中国の香港マカオ事務弁公室はパナマに「重い代償」を支払わせると脅迫した。だが、パナマのホセ・ラウル・ムリノ大統領は4日、この脅しを「強く」はねつけた。

 

ドナルド・トランプ米大統領が、中国がパナマ運河に対して過大な影響力を持っているとして、米国が建設した同運河の奪還をちらつかせ、ハチソンとの契約解除を求めて圧力を強めていた。

 

パナマ最高裁は129日、パナマ運河の大西洋側にあるクリストバル港と太平洋側にあるバルボア港の運営をめぐり、香港系企業の長江和記実業(CKハチソンホールディングス)の子会社がパナマ政府と結んだ契約を違憲とする判決を下した。

 

米国はこの判決を歓迎したが、中国は激しく反発した。ブルームバーグによると、中国の香港マカオ事務弁公室は通信アプリ「微信(ウィーチャット)」のアカウントで、パナマが外圧に屈したと非難。

「パナマ当局は現状を認識し、軌道修正しなければならない」「この誤った道を進み続ければ、政治的にも経済的にも重い代償を払うことになるだろう」と警告した。

 

ムリノ氏この脅迫を非難し、パナマは法の支配を重んじ、「中央政府から独立した司法機関の決定を尊重する」と主張。外務省がこの件について声明を発表し、「適切な決定を下す」と付け加えた。

 

中国外務省の林剣副報道局長は4日、中国は同国企業の「正当かつ合法的な権利と利益を断固として守る」と改めて表明。

米国を「東西冷戦時代の思考とイデオロギー的偏見」を持っていると非難し、「パナマ運河を強制的に所有し、法の支配の名の下に国際法を侵食しようとしているのは誰なのか、世界には明らかだ」と付け加えた。【25日 AFP

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中国は報復措置として、中国の国有企業に対し、パナマでの新規事業計画を停止するよう指示。

 

****中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風****

<パナマ最高裁が中国企業の港湾運営権を違憲として取り消した。トランプ政権の「勝利」とも言われるが、攻防本番はこれからだ>

 

中国は、パナマ政府が香港系コングロマリット、CKハチソンが持つパナマ運河近郊の港湾の運営権を取り消したことへの報復として、中国の国有企業に対し、パナマでの新規事業計画を停止するよう指示した。事情に詳しい関係者の話として、ブルームバーグが報じた。

 

パナマ最高裁は129日、中国がパナマ運河を支配していると主張してきたドナルド・トランプ米大統領にとって追い風となる判断を下した。トランプの主張は中国とパナマの双方が否定している。

 

中南米では、大規模なインフラ投資を通じて中国が存在感を拡大している。米政府はその影響力を懸念し、抑制を図ってきた。

 

米国は1999年にパナマ運河一帯の管理権をパナマに移譲したが、現在も運河の最大の利用国だ。全長約51マイルの水路を毎年通過する世界貿易量は、推定で約2700億ドル、全体の約5%に上る。米海軍の艦船も、太平洋と大西洋の間を移動する際にはこの運河を利用している。

 

ブルームバーグの情報筋によると、今回の中国の取引停止によって、数十億ドル規模の投資が失われる恐れがあるという。関係者が匿名を条件に語った。

 

中国の税関当局も、コーヒーや豆類を含むパナマからの輸入品に対する検査を強化しているという。(中略)

 

中国の香港・マカオ事務弁公室は3日、今回の裁判所判断を信義違反だとし、パナマは「大きな代償を払うことになる」と警告していた。また、この判断はトランプの圧力によるものだと非難した。

 

CKハチソン傘下で港湾を運営するパナマ・ポーツ・カンパニー(PPC)は、2021年にバルボア港とクリストバル港での事業について25年間の契約延長を認められていた。しかし昨年、パナマ会計検査院長は不正を理由に、国益を損なう利権の無効化を求める訴訟を起こしていた。

 

パナマ・ポーツ・カンパニーは3日、プレスリリースで次のように述べた。

PPCとその投資家は、インフラ、技術、人材育成に多額の投資を行ってきた。その規模は、パナマ国内の他のどの港湾運営会社をも上回る」

「これらの投資は、直接・間接に数千人の雇用を生み出し、世界有数の海運会社を引きつけてきた。その結果、国際的に認知された港湾・物流拠点としてのパナマの地位が確立され、国全体に前向きな影響をもたらしてきた」

 

米国務省の報道官は先週、本誌に次のように語った。

「我々は、特に中国共産党と関係する企業がパナマ運河周辺で影響力を持つことを引き続き懸念している。その点、一帯一路構想から離脱し、PPCの利権に対する監査を行うなど、中国共産党の影響力を抑制しようとするパナマの姿勢は評価できる」

 

PPCはパナマ政府を相手取り、国際仲裁の手続きを開始したと明らかにした。

中国政府からの批判に対し、パナマのホセ・ラウル・ムリノ大統領は5日の記者会見で、「これ以上緊張がエスカレートしないことを望む」と述べる一方、「パナマは尊厳ある国であり、地球上のいかなる国からの脅しも受け入れない」と述べた。

 

パナマ当局は今週初め、ターミナルでの混乱を最小限に抑えるため、デンマークの物流企業マースクの現地子会社が支援に入る用意があると明らかにした。【29日 Newsweek

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パナマ会計検査院による訴訟、パナマ最高裁の無効判決に関し、アメリカが関与したという事実は報じられていませんが、これまでのトランプ大統領のパナマへの圧力に加え、契約は約30年運用され、2021年に延長されたばかりであるにもかかわらず突然の「違憲」判断、判決による中国排除後に西側オペレーター(デンマークの物流企業マースクの現地子会社)が入る構図などから「アメリカの直接工作の証拠はないが、アメリカの対中国戦略の文脈の中で起きた司法判断であり、政治的に無関係とは考えにくい」という感があります。

 

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印とEUのFTA合意 トランプ氏、露原油購入停止を名目に対印関税引下 対中国に続く「TACO」?

(インド・ニューデリーで会談前に、記念撮影に応じる〈左から〉欧州理事会のアントニオ・コスタ議長、インドのナレンドラ・モディ首相、ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長 【127日 時事】)

 

【インドGDP 日本をすでに抜いた? 3年以内に独も抜いて世界3位に?

日本やアメリカにとってはインドとの関係は安全保障面での“対中国”という観点からの重要性がありますが、より基本的なところでは、人口14億人を擁する伸びしろも大きいインド巨大市場との関係は日米・欧州にとって重要性を増しています。

 

****インド、既に日本を抜いて世界4位の経済大国になったと主張****

インド政府が年末に公表した経済見通しによると、同国はGDP(国内総生産)で日本を抜いて世界4位の経済大国となった。当局は3年以内にドイツを追い抜いて世界3位となることを期待している。

 

しかし、公式な確認は2026年に発表されるGDPの確定値次第となる。国際通貨基金は、インドが日本を追い抜くのは来年だと予想している。

 

29日深夜に発表されたインド政府の経済説明資料には、「インドは世界で最も急速に成長している主要経済の一つであり、この勢いを維持する好位置につけている」「GDP41800億ドル(約653兆円)となったインドは、既に日本を抜いて世界4位の経済大国となっており、今後2年半から3年以内にドイツを抜いて世界第3位に躍り出ると見込まれている。2030年にはGDP73000億ドル(約1140兆円)に達すると予測されている。」と記されている。

 

IMFの推計によると、インドのGDP2026年に45100億ドル(約704兆円)となり、日本の44600億ドル(約697兆円)を上回る見通し。

 

人口規模で見ると、インドは2023年に隣国中国を抜いて世界で最も人口の多い国となった。

 

世界銀行の最新データによると、2024年のインドの一人当たりGDP2694ドル(約42万円)で、日本の32487ドル(約507万円)の12分の1、ドイツの56103ドル(約876万円)の20分の1に相当する。

 

政府の統計によると、インドの人口14億人のうち4分の1以上が1026歳となっており、政府はすでに何百万人もの大卒の若者に高給の仕事を用意するのに苦労している。

 

IMFのデータによると、インドのGDP2022年に旧宗主国である英国を上回り、世界5位となった。【20251231日 AFP

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【EU トランプ「リスク」を背景にインドとFTA妥結

欧州は以前からインドとの経済関係強化を目指して交渉してきましたが、しばらく中断していました。しかし、中国からの安値攻勢への警戒、そして最近のアメリカ・トランプ政権がもたらす「リスク」が追い風となって交渉が加速、今年1月にEUとインドの自由貿易協定(FTA)交渉が妥結しました。

 

“FTAは、特定の国・地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定です。関税や非関税障壁をなくすことで締結国・地域の間で自由な貿易を実現し、貿易や投資の拡大を目指すものです。FTA相手国と取引のある企業にとっては、無税で輸出入ができるようになり、消費者にとって相手国産の製品や食品などが安く手に入るようになるなどのメリットが得られます。”【わらしべ瓦版】

 

****EUとインドのFTA妥結 世界のGDP2割占める巨大経済圏誕生へ****

欧州連合(EU)とインドの自由貿易協定(FTA)交渉が妥結した。世界の国内総生産(GDP)の約2割を占める巨大経済圏が誕生する。

 

20年近く続いた交渉がまとまった背景には、高関税措置を乱発するトランプ政権下の米国や、安値攻勢で域内産業に打撃を与えかねない中国への過度な依存を避け、貿易関係を多角化したい両者の思惑が一致したことがある。

 

「史上最大級の通商協定をまとめ上げた」。EUの行政執行機関トップのフォンデアライエン欧州委員長はニューデリーで27日、こう誇った。AP通信によると、EUとインドの貿易額は年1365億ドル(約21兆円)規模。双方は、2030年に2000億ドルまで伸ばしたい考えで、年内の協定発効を目指すという。

 

協定が発効すれば、EUからインドへ輸出する製品の966%で関税が撤廃されるか引き下げられる。特に自動車への関税は年間25万台を上限に110%から10%へと段階的に引き下げられ、中国市場で不振に陥る欧州自動車メーカーには追い風だ。ワインやオリーブオイルなど農業食品の関税も幅広く引き下げられて門戸が開かれる。

 

両者の交渉は07年から始まったが、13年に規制などを巡る溝が埋まらず中断した。だが、EUが安値攻勢を仕掛ける中国からの輸入依存に警戒を強める中で、改めてインドの存在が注目されて22年に交渉は正式に再開された。

 

さらに、251月にトランプ氏が大統領に返り咲くと、米国はEUを含む世界各国・地域に高関税措置を発動した。昨夏に両者は関税交渉で基本合意したものの、トランプ氏は今年1月に一時、新たな追加関税を欧州8カ国にちらつかせてデンマーク自治領グリーンランドの領有容認を迫った。EUの中では「脅しを繰り返す」(高官)米国も中国同様に「リスク」と見なされ始め、インドとの交渉は加速した。

 

フォンデアライエン氏は「貿易がますます『武器化』される時代に、(EUとインドの)強みを組み合わせることで、戦略上の依存を減らすことができた」と意義を語った。【128日 毎日

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【インド・EUFTA妥結の直後、トランプ大統領はインド・モディ首相がロシア産原油の購入停止に合意したとして関税を大幅に引き下げ】

一方、インドはロシア産原油輸入を理由に、トランプ大統領から50%もの高関税を課せられており、これがインド経済にとって足かせにもなっていました。

 

しかし、上記のインド・EUFTA妥結の直後、トランプ大統領はインド・モディ首相がロシア産原油の購入停止に合意したとして関税を大幅に引き下げることを発表しています。

 

****トランプ氏、インドへの関税を大幅引き下げ モディ氏がロシア産原油の購入停止に合意****

米国のトランプ大統領は2日、インド製品への関税を引き下げる意向を表明した。インド側がロシア産原油の購入停止などを約束することと引き換えの措置だとしている。

 

これは容易なことではない。国際貿易データプロバイダーのケプラーによると、インドはトランプ氏がインド製品への制裁関税を課してから数カ月が経過した現在でも、毎日約150万バレルのロシア産原油を輸入している。ロシア産原油はインドの総輸入量の3分の1以上を占めている。

 

トランプ氏はソーシャルメディアへの投稿で、2日午前にインドのモディ首相と会話し、同首相がロシア産原油の輸入をベネズエラ産と米国産に置き換えることで合意したと述べた。トータス・キャピタルのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、ロブ・サメル氏によると、ベネズエラ産原油はロシア産原油と同等の品質で、重質で酸性度が高く、燃料油やディーゼルなどの派生製品の製造に最適であり、インドの製油所はすでにこれらの原油を精製する準備を整えているという。

 

しかし、その移行にどれだけの時間がかかるのかは不明だ。ベネズエラの石油インフラは老朽化しており、1999年に社会主義政権が政権を握る以前の日量300万バレル以上の生産量に戻すには、約10年の改修と数百億ドルの投資が必要となる。

インドはまた、ベネズエラが生産するよりも多くの石油をロシアから購入している。

 

インドはロシア産原油の主要購入国であるが、ロシア産原油はプーチン大統領によるウクライナとの戦争により、ほとんどの西側諸国から制裁対象となっている。中国はインドよりもはるかに多くのロシア産原油を購入しているが、インドとは異なりロシア産原油の購入に対する追加関税には直面していない。

 

インド政府当局者はこれまで、ロシア産原油の購入は同国のエネルギー安全保障に不可欠だと主張し、その正当性を擁護してきた。インドは世界第3位の原油消費国であり、ロシアは比較的距離の近い供給国。インドは世界最大の人口を背景に急成長する経済を支えるため、ロシアの原油に依存している。

 

みずほ証券のロバート・ヨーガー氏は、ロシア産原油は石油輸出国機構(OPEC)や米国産原油に比べて1バレルあたり約16ドル(約2488円)という大幅な割安で取引されており、インドが購入を中止することは困難だと指摘した。同氏は、米国との今回の合意後も、インドは過去数年間と同様に、制裁を無視してロシア産原油を購入する可能性があると予想。制裁対象の石油を運搬する「影の船団」の利用などに言及した。

 

しかし、過去数カ月にわたって原油価格が下落したため、制裁対象原油と非制裁対象原油の価格差は縮小し、インドが政策を転換する余地ができたとする見方も出ている。

 

トランプ氏は、インド製品への関税を50%から18%に即時引き下げると明らかにした。50%の関税率には、インドにロシア産原油の購入停止を促すため8月に導入された25%の追加関税が含まれる。ホワイトハウスの報道官はCNNに対し、トランプ氏は追加関税を完全に撤廃し、いわゆる相互関税を引き下げると述べた。【23日 CNN

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【明確でない“インドのロシア産原油の購入停止”】

トランプ大統領は“モディ首相がロシア産原油の輸入をベネズエラ産と米国産に置き換えることで合意した”としていますが、モディ首相側はそのあたりを明確にしていません。

 

トランプ大統領としては、このままインドとの関係がうまくいかないまま、インドに欧州が接近して市場を奪われる・・・といった事態を憂慮して、どれほどの“確約”があったかは不明ですが、強引に“インドがロシア産原油の輸入を停止”ということを名目に、インドとの関係修復に乗り出した・・・といったところでしょうか。

 

そうすると、トランプ大統領にとっては、昨年、中国に関税で圧力をかけたが、レアアースを武器化した中国の対応に、結局は関税引き上げを撤回した件に続く「TACO」(トランプはいつもビビッて退く)ということにも。

 

****強く出れば後退? トランプ氏、EUFTA締結したインドに「関税引き下げ」(1****

米国のドナルド・トランプ大統領は2日(現地時間)、50%に達していたインドに対する関税を18%に引き下げた。中国に代わる「世界の工場」であるインドが、欧州連合(EU)と自由貿易協定(FTA)を締結し、米国を除いた人口20億が参加する超大型の無関税「自由貿易市場」を完成させてから6日後のことだ。

 

トランプ大統領は関税引き下げの発表直後、重要鉱物に対する戦略的備蓄計画を公開し、「1年前の出来事を繰り返したくない」と語った。トランプ大統領は昨年、中国に関税で圧力をかけたが、レアアースを武器化した中国の対応に、結局は関税引き上げを撤回。「TACOTrump Always Chickens Out、トランプはいつも尻込みして退く)」という議論を巻き起こした。 

 

「ロシア産原油」を名目に具体策はなし 

(中略)トランプ大統領は、「(インドが)ロシア産原油の購入を停止し、米国や、将来的にはベネズエラからより多くの(原油を)購入することにした」という点を関税引き下げの背景に挙げた。また、「5000億ドル(約78兆円)以上の米国産エネルギー・技術・農産物など、高水準の『米国産購入』を約束した」と主張した。 

 

しかし、インドによる米国産原油および物品の購入に関する具体的な計画や日程などについての説明はなかった。 モディ首相はX(旧ツイッター)への投稿で、関税引き下げについてトランプ大統領に「感謝する」と述べた。しかし、ロシア産原油の輸入停止計画はもちろん、米国製品の輸入に関する言及はせず、むしろ自身が「14億のインド国民を代表する」とし、インドの巨大な市場規模を遠回しに誇示するような姿を見せた。 

 

20億市場」から米国のみ除外関税を「垂直引き下げ」 

欧州の主要メディアは、インドに対する関税引き下げが、先月27日に締結されたEUとインドのFTA合意直後に出された点に注目した。英BBCは「トランプ氏の関税引き下げは、FTA締結から1週間も経たずに出された措置」と意味を付与し、フィナンシャル・タイムズ(FT)も「FTAによってトランプ大統領がむしろ圧力を受けた可能性がある」と分析した。 

 

EUとインドは2007年からFTA交渉を進めてきたが、合意点を見出せずにいた。しかし、トランプ大統領が同盟国はもちろん戦略的パートナー国に対しても無差別的な関税圧力を加えた後、議論が急進展し、最終的に20年越しでFTAの締結に成功した。

 

EUとインドはFTA合意に基づき、貿易品目のうち966%に対する関税を撤廃する見通しだ。これは20億人の人口と世界経済の25%、世界貿易の3分の1をカバーする巨大な無関税市場が形成されることを意味する。関税で「壁」を築いた米国が参入できる余地は制限される可能性が高い。 

 

両側に関税で圧力をかけてきたトランプ政府は不快感を示した。ジェミソン・グリア米通商代表部(USTR)代表は先週、フォックスニュースのインタビューで「米国がグローバル化の問題を解決しようと努力している最中に、EUがむしろグローバル化をさらに強化した」とし、脱・米国に近い動きを見せた欧州諸国を叱責した。【23日 中央日報

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トランプ大統領の強引な施策に対し、欧州・カナダなどが中国との関係を強化する動き・脱米の動きにあることはこれまでも取り上げてきました。

 

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EUは、米国を除いた世界の主要市場を自由貿易圏として結びつける作業を加速させている。 EUはインドに先立ち、先月17日にブラジル・アルゼンチン・ウルグアイ・パラグアイの南米4カ国共同市場「メルコスール(MERCOSUR)」と別途のFTAを締結し、29日にはベトナムと外交協力の最高段階とされる「包括的戦略パートナーシップ」へと関係を格上げすることで合意した。EUASEAN東南アジア諸国連合)加盟国と当該の協定を結んだのは初めてだ。 

 

協力対象には、米国と対立する中国まで含まれた。昨年12月にエマニュエル・マクロン仏大統領が訪中して習近平国家主席と会談した。先月にはアイルランド、フィンランドの首脳も北京を訪れ、フリードリヒ・メルツ独首相は今月中国を訪問する。いずれも大規模な経済使節団を同行させているか、同行させる予定だ。 

 

EU加盟国ではないが米国の核心的同盟国である英国のキア・スターマー首相も、北京で習主席と首脳会談を行った。英国首相の訪中は2018年以来8年ぶりだ。

 

もう一つの核心的同盟国であるカナダのマーク・カーニー首相も先月、習主席と会い、両国関係を「新たな戦略的パートナー」関係に格上げさせた。

 

 同盟国たちの「反乱」に対し、トランプ大統領はグリーンランド併合に反対する欧州8カ国に10%の報復関税を課す計画を明らかにしたが、欧州が「対抗関税」で応じると計画を撤回した。また、フランス産ワインに200%、カナダに100%の追加関税を課すと公言したが、実際の措置は行われていない。【23日 中央日報

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【ロシアは否定 専門家も現実性を疑問視】

トランプ大統領が“インドがロシア産原油の輸入を停止”ということを名目に掲げていることに、ロシアはこれを否定しています。

 

多くの専門家もインドがロシア産石油を完全に断つのは困難であり、現実的ではないとの見方です

 

****「トランプは嘘の塊」ロシアが否定したインド関税解除の真相*****

インドがロシア産原油の購入を中止したことを受け、米国がインドに課していた追加関税25%を撤廃し、相互関税率も25%から18%へ引き下げるとしたドナルド・トランプ米大統領の発表が、波紋を広げている。

 

これに対しロシア政府は4日(現地時間)、インド側から原油購入を停止するとの正式な通知は受けていないと明らかにし、トランプ大統領の主張を真っ向から否定した。

 

専門家の間では、トランプ氏が今回も事実関係を誇張して発言した可能性が高いとの見方が強まっている。インドがロシア産原油の輸入量を減らしている動きを、あたかも「輸入中止を約束した」かのように拡大解釈して発表したのではないか、という指摘だ。

 

ロシア「インド側から正式な通知はない」

(米メディア)「CNBC」は、ロシアの「RIAノーボスチ通信」の報道を引用し、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官がトランプ氏の主張を否定したと伝えた。

 

ペスコフ報道官は「この問題について、ニューデリー(インド)側から何の説明も受けていない」と述べ、インドがロシア産石油の輸入を禁止するとの約束が事実ではない可能性を示唆した。その上で「米国とインドの二国間関係を尊重している」としつつ、「ロシアとインドの戦略的パートナーシップを強化する重要性も看過されるべきではない」と付け加えた。

 

インドがロシアとの関係悪化を覚悟してまで石油輸入を中止する可能性は低いとの見方を示した形だ。さらに、ロシアとインドの戦略的パートナーシップが最重要課題であり、両国関係の一層の強化を追求していく考えを示した。(中略)

 

トランプ氏の誇張発言か

トランプ氏が自身のSNSでインドとの貿易合意を発表する一方、ナレンドラ・モディ印首相もSNS上で合意の成立を認め、関税率が18%に引き下げられたことを歓迎する姿勢を示した。ただし、ロシア産石油の輸入を中止するとの言及はなかった。

 

専門家の間でも、インドがロシア産石油を完全に断つのは困難だとの見方が強い。米国による25%の報復関税を受け、インドが輸入量を一部減らしているのは事実だが、2022年のウクライナ戦争以降、ロシアにとって最大の顧客となったインドが、輸入を全面的に停止する可能性は極めて低いとみられている。

 

カーネギー国際平和財団の副理事、エヴァン・ファイゲンバウム氏は2日付の分析報告書で、インド政府がロシア産石油の輸入中止を明示的に約束した可能性はほとんどないとの見解を示した。ファイゲンバウム氏は「両国には歴史的かつ感情的に深い結び付きがあり、米国から圧力を受けたからといって、インドがロシアを排除することはできない」と指摘した。さらに、独立外交を掲げるインドにとって、ロシアは米国と同様に重要な存在であり、戦争遂行の核心となる石油輸入を断つことで両国関係が断絶する事態を、インド政府が望むとは考えにくいとの見方を示した。

 

格付け会社ムーディーズは、経済的な観点からトランプ氏の発言に疑問を呈した。ロシア産石油の輸入を全面的に中止すれば、製造業のコストが急騰し、消費者物価の上昇を招くため、発言の信憑性は低いとの判断だ。

 

ムーディーズは3日、インドがここ数か月にわたりロシア産石油の輸入を減らしているのは事実としつつも、経済成長を損なうような即時の輸入全面停止に踏み切る可能性は低いと予測した。世界有数の石油輸入国であるインドが、インフレを覚悟してまでロシア産石油を断つことは現実的ではないと結論づけている。【26日 江南タイムズ

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タイ  8日に総選挙 改革派・タクシン派・現連立政権中核の保守政党の三つ巴 司法介入の可能性も

(国民党の選挙集会で支持者の声援に応える元前進党党首のピター氏(25日、バンコク)=小林健撮影【23日 日経】)

 

【民意に背いてきたタイ政治】

明日8日は衆議院総選挙ですが、タイでも総選挙が行われます。

 

今回選挙の話の前に、近年のタイ政治について簡単に整理しておくと、従来タイ政治はタクシン元首相の勢力と軍部・司法・王室周辺などの既得権益層に支持される反タクシン派が争ってきましたが、最近では若者に支持される改革勢力が選挙では大きな議席を獲得しています。

 

しかし改革勢力(23年選挙の前進党)は第1党になっても旧勢力・保守層の抵抗によって、司法介入による解党処分をうけるなど、政権獲得には壁があります。

 

****民意に背くタイ保守層 続く不安定な政治****

タイで保守派の「タイの誇り党」のアヌティン党首が新首相に選出されたが、少数与党の連立政権となり不安定な政治情勢が続きそうだ。背景には、2023年の下院総選挙で革新系とタクシン元首相派がそれぞれ第1党と第2党となったにもかかわらず、タイ社会を支配する保守層が双方との対立を続け、民意に背いていることがある。

 

タイでは王室を頂点に軍や大企業、保守派政党などの保守層が既得権益を維持してきた。こうした中、23年総選挙で革新系の前進党(当時)が王室や軍の改革を公約に掲げて第1党に躍進。長年軍と対立し、農村部などの貧困層を地盤とするタクシン派のタイ貢献党も第2党となった。

 

前進党は貢献党などとの連立政権樹立を目指したが、保守派政党と上院議員の反対で失敗。貢献党は誇り党や親軍政党と手を組み、セター政権を発足させた。前進党政権を阻止したい保守層と、海外逃亡中のタクシン氏の帰国を実現させたい貢献党の思惑が一致したとの見方が出た。

 

前進党は24年8月、王室への不敬罪改正を公約に掲げたことが「国家転覆に当たる」として、保守層の影響が強い憲法裁判所から解党命令を受けた。後継政党は国民党となった。

 

一方、帰国したタクシン氏が24年2月に仮釈放され、活動を活発化させると保守層との対立が表面化。同年8月、閣僚人事を巡りセター首相(当時)は憲法裁の判決で失職した。

 

タクシン氏の次女のペートンタン氏が後任の首相に就任したが、対立は解消されないまま今年8月、カンボジアとの国境紛争を巡る失言で失職の判決を受けた。

 

外交筋は「タクシン派への支持は下落しているが、革新系は政治姿勢を変えなければ、今後も高い支持を得るだろう」と分析。「保守層が(革新系などと)対立を続けるなら、タイの政治は不安定なままだ」と指摘した。【202596 時事】

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****タイ新首相に野党アヌティン党首を選出、タクシン派敗退 元首相はドバイに出国****

タイ下院(定数500)は5日、首相指名選挙を行い、野党の中道「タイの誇り党」のアヌティン党首(58)が与党のタクシン元首相派「タイ貢献党」のチャイカセム元法相(77)を破り、新首相に選出された。

 

アヌティン氏は、4カ月以内の解散を約束しており、政局は流動的だ。一方、タクシン氏は4日、自身の裁判を前に自家用ジェット機で出国し、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイに到着した。 

 

選挙ではアヌティン氏が最大野党の改革派「国民党」の支持を得て勝利した。 

 

タイでは今年5月、カンボジアとの間で国境対立が激化。タクシン氏の次女、ペートンタン首相がカンボジアのフン・セン前首相と電話会談し、その際の音声が流出した。音声には、ペートンタン氏がタイ軍高官を批判する発言が含まれ、同氏への反発が強まった。 

 

誇り党は連立政権から離脱。発言は倫理規定に反するなどとする上院議員らの訴えを受けた憲法裁判所が829日、ペートンタン氏の解職を命じていた。 (後略)【202595日 産経】

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【三つ巴の争い 単独で過半数は困難】

解散前(202512月)の主要政党の議席数は以下のように。

国民党 143議席・・・・若者らの支持を受ける改革派で、前回選挙で前進党は151議席を獲得して1党になったものの、司法によって解党処分をうける。国民党はその後継政党 アヌティン首相選出には賛成し、早期解散を条件に閣外協力

 

タイ貢献党 140議席・・・・タクシン派 ポピュリスト政党とも タイ東北部に固い地盤を有し、選挙には強い

 

誇り高きタイ党 71議席・・・・保守中道 アヌティン首相が率いる政党で連立与党の中核 軍とも親和性が高い

 

今回選挙も上記3党による三つ巴の争いとなっており、単独で過半数をとるのはどの政党も難しいと見られています。

 

****タイ総選挙、三つどもえの闘い どの党も単独過半数獲得しない見通し****

タイで8日実施される総選挙は、アヌティン首相率いる与党「タイの誇り党」、進歩主義的な野党「国民党」、ポピュリスト政党「タイ貢献党」による三つどもえの闘いとなっている。

アヌティン氏は昨年12月12日に議会を解散した際、カンボジアとの国境地帯での衝突に端を発したナショナリズムの高まりが、総選挙での自身の基盤固めに資すると踏んでいた。その賭けが奏功したかどうかが選挙で判明する。

世論調査によると国民党が選挙戦をリードしているが、いずれの党も単独過半数を獲得する見込みはない。このためタイ政局は解散前と同様の分断された状態が続く可能性がある。アヌティン氏は解散の理由として、国境紛争が続く中、少数与党では政権運営に支障を来すと説明していた。

1月30日に発表された国立開発行政研究所の世論調査では、国民党のナタポン党首の支持率が29.08%で首位を維持し、アヌティン氏は22.24%で2位だった。

同日発表されたスアン・ドゥシット大学の調査では、ナタポン党首が首位、アヌティン氏は3位だった。

国民党は進歩主義的な政策を打ち出し、抜本的な制度改革を望む国民の支持を獲得。12月からほぼ全ての世論調査で首位を走っている。【26日 ロイター

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【改革派の国民党 選挙戦をリードするも、司法介入の危険も】

改革派の国民党は司法処分で公民権を停止されているピター氏(前身「前進党」の元党首)が前面に立って選挙運動を行っていますが、仮に選挙で勝っても、軍部・司法・王室周辺の既得権益層の抵抗により、司法的に失職・解党の危険性があります。

 

****「カリスマ」に賭けるタイ改革派 陰る熱狂、国境紛争で保守派挽回****

125日、バンコクで開かれた最大野党「国民党」の選挙集会。商業施設前の広場は数千人の支持者で埋め尽くされた。ナタポン党首や他の党幹部、議員候補者らを差し置いて、会場が最高潮の盛り上がりを見せたのは国民党の前身「前進党」のピター元党首の演説だった。

 

「第1党の我々が野党である現状に納得できるか!」。ピター氏が一言発するごとに付近のけたたましい交通音をかき消すほどの歓声に包まれ、拍手が鳴りやまなかった。

 

ピター氏はタイの名門タマサート大で学び、米ハーバード大ケネディ行政大学院で修士号を取得した45歳。華々しい経歴に加え、端正な顔立ちから絶大な人気を博している。2023年の下院選では前進党を率いて最多の151議席を握った。

 

前進党は軍が国政に介入を続けるタイに米欧型の民主主義の導入を目指した。10年代にアラブ諸国に広がった民主化運動になぞらえ、同党の躍進は「バンコクの春」とも呼ばれた。だが、春は訪れなかった。

 

前進党は国王への侮辱を罰する不敬罪の改正などの王室改革や、軍の政治介入の防止を主要公約に掲げた。タイでは1932年の立憲革命以来、未遂も含め軍のクーデターが19回起きた。国王が黙認したことも相次ぐ政変を許した一因とされるためだ。

 

国王はタイ社会で絶対的な権威がある。国王に忠誠を誓う軍を中心とした保守派は同党の台頭を警戒。23年の選挙後、軍の影響下にある上院はピター氏の首相選出を阻んだ。

 

翌年には軍が選出した裁判官で占める憲法裁判所が不敬罪改正の公約は国家転覆罪に当たると判断し、前進党の解党処分を下した。ピター氏の公民権も停止させられた。

 

前進党のDNAは国民党に受け継がれた。主要政策は変えず、支持層は従来の主力だった若者だけでなく中高年にも広がった。

 

公民権を停止されているピター氏は今回の選挙戦で首相候補にはなれないが、支持者の人気は根強い。現地メディアは連日のようにピター氏の動静を報じており、国民党にはカリスマ性にあやかりたいとの思惑があるようだ。

 

京都大学のタイ政治学者のパウィン教授は自身のSNSで、軍による前進党の弾圧はピター氏を「選挙を経ない権力から理不尽に抑圧された象徴」に変えたと指摘。同氏が公の場に姿を見せたことで「有権者の『正義への渇望』を再燃させた」とみる。

 

タイ国立開発行政研究院が130日に公表した世論調査では、国民党の支持率は小選挙区、比例区ともに34%と政党別で首位に立つ。各党の首相候補別の支持率も同党のナタポン党首が首位の29%で他党をリードする。

 

人気の背景にはタイ社会の閉塞感があるようだ。仏調査会社イプソスによると、タイで政治・経済的な機会の不公平感などにより「社会が崩壊している」と感じている人の割合は77%に上った。調査対象の31カ国のなかで最も高かった。

 

バンコクの飲食店経営者エーさん(57)は「タイの政治家は私利私欲にとりつかれている。新しい風を入れなければこの国はだめになる」と危機感をあらわにする。

 

国民党の支持者の期待とは裏腹に政権交代の実現性は不透明だ。アヌティン首相が率いる保守派与党「タイの誇り党」は軍とも親和性が高い。25年から続いたカンボジアとの国境紛争にともなう軍の人気の高まりとともに支持を伸ばす。

 

「命を懸けてタイの領土を守る。カンボジアとの国境も開くことはない」。アヌティン氏は130日に開いた選挙集会でスピーチの大半を安全保障や王室体制の擁護に割いた。有権者の愛国心に訴え、さらなる支持拡大につなげたいとの思惑が透ける。

 

タイの地元紙タイラットは、下院500議席のうち、誇り党が最多の140150議席を獲得し、国民党は2位の100130議席にとどまると予想する。

 

同紙によると、誇り党は内務相を兼務するアヌティン氏が地方の有力者らとのネットワークを構築。住民らの投票行動に大きく影響しそうだと分析する。国民党は政権交代どころか第1党の座すら守れない可能性もある。

 

保守派が影響力を持つタイ国家汚職防止委員会は、国民党の首相候補3人のうちナタポン党首ら2人を王室への侮辱を罰する不敬罪に関する容疑で捜査している。同党の政治的な影響力をそぐカードとして残しているとの見方が強い。

 

政治アナリストのスパラック氏は「タイ政治で政権をとるために最も重要なのは、軍を中心とした保守派に好かれることだ」と強調する。国民党が予想より多い議席を得たとしても、与党の連立工作により政権交代の可能性は悲観的とみる。

 

「失望しても絶望はしないでほしい」。ピター氏はいつか必ず政権交代を果たすと訴える。支持者の熱狂はいつまで続くか。国民党に与えられたチャンスは限られている。【23日 日経

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国民党については、依然として多くの支持を得ているというのが一般的な報道ですが、候補者選定問題があって、勢いに陰りもあるとの指摘も。

 

選挙後のタイ政治予測は現時点では困難です。

どの政党が第1党になるかもわかりませんが、いずれにしても複雑な連立工作が展開されるでしょう。

 

更に、前回選挙同様に司法の介入もあり得ます。ただ、そういうことを繰り返していてはタイの明日はありません。

 

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