碧空
2007年12月1日までの記事は「孤帆の遠影碧空に尽き」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze )にアップしています。
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ロシア  ウクライナの攻勢に加え、戦時経済の一時的活況が終わり、行き詰まりが見え始めたロシア経済

(ウクライナの攻撃を受け、クリミアでは都市部が停電に見舞われた(23日夜、イエウパトリア)【625日 BBC】)

 

【トランプ大統領 一転してウクライナを“大健闘”と称賛】

ウクライナとロシアの戦いは、連日ウクライナ側の攻勢が報じられています。

ただ、そうしたウクライナの目覚ましい戦果とは別に、ウクライナ東部での戦いはロシアの進軍を押しとどめて、場所によっては失地を回復している・・・とは言うものの、ロシア側の激しい攻撃に苦しんでいる場所もあるようです。

 

****ロシア、東部要塞「事実上制圧」 ウクライナは前線で苦戦****

ロシアのプーチン大統領は23日、ウクライナ軍が死守してきた東部ドネツク州のコンスタンチノフカを「事実上制圧している」と表明した。コンスタンチノフカは同州西部の主要都市スラビャンスクやクラマトルスクに連なる要塞エリアの一角。陥落すればウクライナにとって打撃となる。 

 

ウクライナ国防当局者はロシアの侵攻開始から24日で44カ月になるのを前に共同通信の取材に応じ、コンスタンチノフカをほぼ制圧したとのロシア側の主張は「事実に基づいていない」と否定したが、東部の前線では「苦しい戦いが続いている」と述べた。  

 

ロシア国防省は、ウクライナ当局の主導により、クラマトルスクの一部地域で今月9日から17歳までの未成年者がいる家族の強制避難が始まったと主張している。(後略)【624日 共同

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プーチン大統領の「事実上制圧」発言が本当なのか、“大本営発表”なのかはわかりませんが、ドローン戦術の活用などで注目されているウクライナにしても、“東部の前線では「苦しい戦いが続いている」”という現実はあります。

 

しかしながら、ひと頃はトランプ大統領に「ウクライナにはカード(切り札)がない」と言われ、勝ち目のない戦争だと思われていましたが、最近の“潮目の変化”を受けてトランプ大統領の評価も一変しているようです。

 

****ゼレンスキー氏はロシアとの戦いで「大健闘」 トランプ氏****

ドナルド・トランプ米大統領は24日、かつて「カードがない」と述べて勝ち目がないと評していたウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領について、侵攻を続けるロシア軍との戦いで大健闘しているとの認識を示した。

 

トランプ氏はホワイトハウスの大統領執務室で記者団に対しゼレンスキー氏について、「彼はかなりよくやっている。少なくとも持ちこたえている。(ウクライナとロシアの)双方で多くの人々が亡くなっているが、彼は大健闘していると思う」と語った。

 

さらに、「彼は勇敢だと言わざるを得ない。素晴らしい装備を持っているだけでなく、素晴らしい人材、つまり優れた兵士たちを抱えている」と称賛した。

 

専門家らは、ウクライナが戦場では善戦するようになってきているが、第1次世界大戦よりも長期化しているこの紛争で、同国の各都市は依然としてロシアによる致命的な攻撃の標的になっていると指摘する。

 

トランプ氏とゼレンスキー氏は、直近では先週フランス東部エビアンで開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)で会談している。

 

会談後、ゼレンスキー氏はX(旧ツイッター)に、「トランプ大統領のウクライナへの関心と、平和を近づけるための支援への前向きな姿勢に感謝する」と投稿した。【625日 AFP

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【トランプ大統領を豹変させたウクライナの攻勢は戦術的にはドローン戦での技術的優勢であり、エリア的にはクリミアであり、ロシア領内奥深くの石油関連施設や首都モスクワ】

ウクライナに冷淡で、ロシア寄りの和平案をウクライナに飲ませようとしていたトランプ大統領の風向きが変わったのは、上記記事最後にもあるようにフランスで開催されたG7サミットでした。

 

****G7サミットで「賭け」に勝ったウクライナと「モスクワ戦災」に怯え始めたロシア両国の攻防は今どうなっているのか****

6月半ばにフランスで開催された先進7カ国首脳会議(G7エビアン・サミット)で、イギリス、フランス、ドイツなどがウクライナと組んで、ある「作戦」を仕掛けた。その計画は裏目に出る可能性もあったが、結果的に奏功した。その作戦とは何だったのか――。  

 

作戦の舞台となったのは、ゼレンスキー大統領も参加してウクライナ、中東など地域情勢について討議したサミット2日目の会合。アメリカの報道によると、サミットのホストであるフランスのマクロン大統領が会合前夜に提案した作戦の概要は、こうだ。

 

トランプにウクライナへの武器支援拡大を認めさせられるか  

会合でイギリス、フランス、ドイツ、イタリアの欧州首脳らとゼレンスキーが、アメリカのトランプ大統領に対し、侵攻では現在ウクライナが勝っており、ロシアが負けていると、強調する。そのうえで、トランプ大統領に対し、キーウへの武器支援拡大の必要性を訴えるというものだった。  

 

この作戦にはリスクがあった。  これまでロシアのプーチン大統領寄りの仲介をしていたトランプが、こうしたウクライナ支援強化論に反発して、欧州側と対立するなど、逆効果になる可能性があったからだ。

 

しかし、結果的にこの賭けはうまくいった。  トランプも含め、G7首脳は共同声明でウクライナに対する防空システムや長距離攻撃用兵器の供給で合意。さらにゼレンスキーが強く求めているアメリカの主力防空システム「パトリオット」のウクライナ国内でのライセンス生産認可を検討することも表明したのだ。  

 

同時にロシアへの経済制裁を強化し、石油・ガス部門もこれに含めることを、G7の共同声明は打ち出した。  

 

もちろん、考えがくるくる変わるトランプのこと、今後再びロシア寄りに立場を変える可能性は残る。それでもウクライナ支援強化が、トランプも同意した共同声明に明記された意味は大きい。

 

では、トランプは今回、なぜ、ウクライナへの軍事支援拡大を支持したのか。その最大の要因は、キーウの軍事専門家たちも驚くようなスピードで急拡大するウクライナ軍の攻勢だと筆者は考える。  

 

攻勢はロシア領土や占領地に及ぶが、プーチンにとって最も深刻なのは、クリミア半島に対するウクライナ軍による補給路遮断作戦の進展、モスクワに対する長距離ドローン・ミサイルによる大規模な波状的攻撃だ。  

 

① のクリミアは、2022年のウクライナ侵攻の前段階として、14年に違法に併合されている。プーチンにとって、クリミアは「常に戦争に勝利する指導者」として国民から80%以上の熱狂的支持率を獲得した栄光の地だ。

 

しかし、(中略)ウクライナ軍は5月、ロシア南部からウクライナ南部の占領地を通ってクリミアに至る陸上回廊(R280号線)を、ウクライナ軍用語で言う「砲火統制下」に部分的に置いた。  

 

これは回廊を走るトラックを、ドローンで容易に攻撃できる状態になったことを指す。この結果、ロシア本土からの軍事物資や生活用品の補給が大幅に削減され、クリミアではガソリンなど燃料不足が深刻化している。

 

すでに、ウクライナ南部とクリミア西側を結ぶ5本ある橋の一部は破壊されていた。さらにクリミア東部とロシア本土を結ぶクリミア大橋(長さ約19キロ)も、たびたびの攻撃を受け、燃料などの重い物資の輸送はできなない「片肺」状態になっている。

 

ウクライナはその気になれば、最近実戦配備した長距離巡航ミサイルなどでクリミア大橋を攻撃し、通行不能にすることが可能であるとみられる。ただ、居住するロシア国籍の住民を、大橋を通ってロシア本土に移住させるため、当面の間は、大橋を破壊しないと言われている。 

 

ウクライナは年内にクリミアへの上陸作戦を開始か?   

一方で、ウクライナ部隊が年内にクリミアに上陸作戦を行うのではないかとの見方も出始めた。  いずれにしても、現在数万人規模といわれる駐留ロシア軍部隊が一部でもロシア本土に撤退することになれば、プーチンの政治的メンツは丸つぶれになろう。

 

② のモスクワへの波状的ドローン攻撃は、クレムリンにとって、政治的にはクリミア以上に深刻だ。攻撃を受けた首都南東部にあるカポトニャ製油所は市内最大級の精油工場。クレムリンから約15キロしか離れていない。モスクワ用のガソリンの約40%を供給しており、死活的に重要なエネルギー施設だ。  

 

モスクワへのドローン攻撃としては過去最大で、付近の上空は巨大な黒煙で覆われた。市民は首都が「戦場」と化しつつあることを実感しただろう。この精油施設は2日前にもドローン攻撃を受けたばかり。ロシア軍の防空システムは多くのドローンを撃墜したものの、多数のドローンを投入する攻撃を2回とも防げなかったことになる。

 

このため今回の攻撃は、クレムリンにとって大きなショックだった。プーチンは59日の対独戦勝記念日前に起きた首都などへのウクライナのドローンを迎撃できなかったとして、防空の責任者である航空宇宙軍総司令官を交代させたばかりだ。それでも次のドローン攻撃を防げなかった。ロシア軍の防空システムの能力ではウクライナのドローンを完全には迎撃できないことが証明された形だ。  

 

このため、これまで「国父」として25年以上君臨してきた、プーチンの大統領としての権威は大きく傷ついた。モスクワでは軍の迎撃態勢は信用できないとして、大企業などが自社ビル屋上に自前の防空システムを設置する動きも出ているほどだ。

 

このモスクワの防空問題は、さらに非常に深刻な、それも緊急な対応を要する懸案になっている。なぜか。 

 

モスクワが戦火に巻き込まれる現実性  

モスクワへのドローン攻撃の直前、キーウにある世界遺産のペチェールシク大修道院がロシアのドローン攻撃で被害を受けた。これに対し、ゼレンスキーはこの攻撃への報復を表明したからだ。ウクライナがモスクワのどの歴史的建造物を報復攻撃の標的にするのか。さまざまな憶測がモスクワで飛び交っている。

 

こうしたウクライナによる首都攻撃への懸念が高まっている背景には、年末までにウクライナが初の長距離弾道ミサイルを開発し、配備するとの情報がある。このミサイルが配備されれば、モスクワの代表的政府施設が最初の標的になるのではないか、とロシアは警戒しているのだ。  

 

具体的にどこを攻撃するかは別にして、ゼレンスキーとしては、強力な弾道ミサイルでモスクワに大きなダメージを与えることで、侵攻を続けているプーチンの気持ちを折り、和平交渉のテーブルに着かせることを狙っているものとみられる。

 

今年に入ってから新型ドローンを投入して、戦況を有利に進めるウクライナだが、ゼレンスキーによる「力による平和」路線が顕在化しつつある。(後略)【619日 東洋経済オンライン

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上記記事にもあるように、ウクライナの攻勢は戦術的にはドローン戦での技術的優勢であり、エリア的にはクリミアであり、ロシア領内奥深くの石油関連施設や首都モスクワです。

 

クリミア攻略はプーチン大統領から「栄光の地」を奪い、その権威を失墜させるものであり、石油関連施設への攻撃はガソリン不足・価格上昇という形で市民生活を圧迫し、プーチン体制への不満を増幅させます。 そしてモスクワへの攻撃は、これまでプーチンが大都市住民の目から隠そうとしてきた戦争の現実を首都住民に明白にさせることになります。

 

【戦時経済の一時的活況が終わり、行き詰まりが見え始めたロシア経済】

下記記事の「プーチン大統領のオワコン化」はいささかセンセーショナルですが、プーチン大統領が、今までと変わらぬ強気の発言とは裏腹に、苦しい状況に追い込まれつつあるのは事実でしょう。西側の思惑に反して一時は戦時経済で活況を呈したロシア経済でしたが、行き詰まりが見えてきています。

 

****囁かれる「プーチン大統領のオワコン化」暖房も電気も止まるロシアで始まった“国家崩壊”の現実「3か月で209000社倒産、体感インフレ16.4%****

ドイツのキール世界経済研究所はストックホルム移行経済研究所と連名でロシア経済に関する報告書を発表し、ロシア経済について「構造的基盤が急速にむしばまれ、成長は停滞、財政的余力も乏しく『終局の輪郭』が浮かびつつある」と指摘した。軍事費を優先する一方で、経済は失速し、インフラは老朽化し、市民生活は確実に追い詰められている。(中略)

 

プーチン大統領は、すでにオワコンだ

ロシアでは、アパートの窓ガラスに内側から氷が張り、室温は11度まで下がる。給湯ボイラーは止まり、ある町では8万人以上が1週間にわたって電気を断たれた――亡命系メディアのノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパが202622日に報じ、英字紙モスクワ・タイムズが同日伝えた。 

 

これは200年前の話ではない。核大国を自称し、世界秩序の書き換えを叫ぶ国家の、2026年の日常である。 この光景こそ、いまのロシアを最も正確に映している。

 

プーチン大統領の戦争は、敵を屈服させるどころか、自国の経済が真っ逆さまに崩壊していく。 表面的には監視と愛国宣伝で国家の形を保っているが、その内実はもはや「崩壊の連鎖」と呼ぶほかない段階に入っている。私はひとつの確信を持つに至る。 プーチン大統領は、すでにオワコンだ。

 

成長を殺している主犯は、中央銀行自身が握る政策金利

まず数字から検証してみよう。 20262月、プーチン大統領自身が、2025年の実質GDP成長率がわずか1%にとどまったことを認めた。2023年、2024年に軍需を中心とした莫大な国家支出で記録した4%台の成長は、もはや見る影もない。 

 

財務省は通年予測を2.5%から1.5%へ引き下げ、IMFや世界銀行、OECD2026年見通しは軒並み1%前後で並ぶ。これは一時的な景気の谷ではない。構造的な長期停滞への転落である。 

 

成長を殺している主犯は、中央銀行自身が握る政策金利だ。20264月に0.5%引き下げてなお14.50%という歴史的高水準にある。戦時インフレを抑えるための不可避の措置だが、軍需以外の民間企業にとっては死刑宣告に等しい。 法外な借入コストの前で、新規投資も設備更新も事実上不可能になる。軍事部門だけが資金を吸い上げ、民間経済は干上がっていく。

 

大企業28社の25年合計収益は前年比16.7%減、純利益は30.8%減

この歪みは、もともと2022年以降のロシア経済を一時的に支えた仕組みの裏返しでもある。侵攻直後、軍需産業への国家支出と財政刺激は「軍事ケインズ主義」とも呼べる過熱を生んだ。 深刻な労働力不足を背景に名目賃金は上がり、消費が膨らみ、それが成長を演出した。

 

だが砂糖を舐め続けた身体に二日酔いが来るように、刺激が後退し高金利が利き始めた瞬間、すべてが逆回転を始めた。 中央銀行総裁が2025年に「労働力と生産資本が枯渇した」と認めたとおり、成長を支える原資そのものが尽きたのである。

 

財政も同じ穴に落ちた。2025年の石油・ガス収入は前年比24%減、予算赤字はGDP2.5%に達し、年初予測の5倍に膨れ上がった。 稼ぎ頭が痩せ細るなか、政府は付加価値税の引き上げで穴を埋めようとするが、冷え込む経済に増税を重ねれば、消費はさらに縮む。出口のない循環だ。 

 

その結果が、企業決算にむき出しで表れている。ロシアを代表する大企業28社の2025年合計収益は前年比16.7%減、純利益は30.8%減という壊滅的な数字を叩き出した。(中略)これは不況という言葉では足りない。基幹産業の崩落だ。

 

1四半期だけで209000社が清算に追い込まれた

体力のない中小企業はさらに早く倒れる。2026年第1四半期だけで209000社が清算に追い込まれた(自主的・行政的清算登録含む)。 小売、美容室、レストランといった市民生活に直結する商売が次々と店を畳んでいる。

 

そして、企業の資金繰り破綻は最も弱い者へしわ寄せされる。 未払い賃金の総額は20264月時点で前年同月比94%増、2025年初頭からおよそ6倍に膨れ上がった。働いても給料が出ない。それが特例ではなく、建設や電力供給の現場で常態化しつつある。

 

政府は公式インフレ率を5%台と発表する。だが、貯蓄を持たない低所得層が体感しているインフレ率は16.4%に達している。 年金や公務員給与は「現実」ではなく「公式」のインフレ率に連動して調整されるから、市民生活が確実に削られ続けていることは、プーチン大統領が必死に隠したい本丸である。 悪夢は続く。ウクライナによる長距離ドローン攻撃である。

 

ウクライナドローン、国家のインフラ・財布そのものに打撃

これは戦術ではなく、戦略の次元で効いている。ロシア領内深部への攻撃回数は、2022年から2024年の3年間で335回だったものが、2025年単年で658回へ倍増した。狙いは石油精製所と輸出港という、戦争を支える国家のインフラ、財布そのものに打撃を受けている。 

 

ウクライナ軍は賢い。一度叩いた施設を、修理の真っ最中にもう一度叩く。トゥアプセ製油所で実証されたこの「反復攻撃」によって、稼働停止は致命的に長期化してしまっているようだ。 

 

2026年春の時点で、ロシア全土の石油精製能力の約20%が破壊または損傷を受けた。原油処理量は過去16年で最低水準まで落ち込んでいる。西部の主要輸出港3カ所が同時に標的となった数週間で、ロシアは10億ドル超の石油収入を失った。 

 

西側の金融制裁が数年がかりで進めようとしたことを、ドローンは数週間でやってのける。私はこれを「動的制裁」と呼ぶのが最も的を射ていると考える。 

 

しかも皮肉なことに、国内の燃料パニックを抑えるための補助金「燃料ダンパー」が財政を二重に圧迫する。20264月のその支払いは、同年1月の石油・ガス収入全体の半分以上に相当した。 輸出で稼げず、国内を鎮めるために残った財源を食いつぶす。出血しながら止血剤を買い続ける構図だ。

 

財政の破綻が、最も残酷な形で地方を直撃

この財政の破綻が、最も残酷な形で地方を直撃した。202512月から20261月にかけ、ロシア全土で少なくとも2270件の大規模インフラ事故が報告された。(中略) 崩壊は天災ではない。国家予算がGDPの約8%という軍事費に極端に偏り、公共事業が意図的に切り捨てられた必然の結果だ。

 

(中略)そのうえで、9月の議会選挙が終わった直後の10月に、公共料金を20%以上引き上げる。暖房も電気もまともに来ないのに請求書だけが届いているわけだ。

 

マクロ経済の停滞、インフラの構造的崩壊、社会秩序の瓦解

戦争は国境の向こうにとどまらなかった。ベルゴロド州の民間人死傷者は前年同期の約3倍に膨れ、開戦からの4年で116000発以上の弾薬が撃ち込まれた。

 

しかも被害の一部は、自国軍機が誤って投下した航空爆弾によるものだ。 2025年だけで確認分143発。敵だけでなく味方にも殺される現実が、政府への信頼すら奪う。

 

そして社会の底が抜けつつある。 受刑者を恩赦と引き換えに前線へ送り込み、トラウマと暴力の技術を抱えたまま社会へ戻す。帰還兵による殺人の発生率は他集団の18倍以上に達し、確認されただけで274人の市民が殺された。 それでも司法は「愛国者」として彼らを庇い、被害者は正義を奪われる。法の支配の崩壊だ。 

 

マクロ経済の停滞、インフラの構造的崩壊、社会秩序の瓦解。国家を支える三本の柱が、いま同時に音を立てて崩れている。 プーチン大統領はなお勝利を語るだろう。だが、凍えるアパートで雪を溶かす市民の現実を、強権とプロパガンダでこれ以上覆い隠すことはできない。リソースを軍事に注ぎ続ける限り、この崩壊は加速するだけだ。結末は、もう見えている。【617日 集英社オンライン

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国連の独立調査委員会  イスラエルのパレスチナの子どもへの攻撃を“ジェノサイド”の一環と報告

(パレスチナ自治区ガザ地区南部ハンユニスにあるナセル医療複合施設で治療の順番を待つ負傷した子どもたち(2026525日撮影)。(c)Bashar Taleb/AFP【623日 AFP】)

 

【暴力が止まらないパレスチナ】

イスラエルに関しては、レバノンにおける対ヒズボラ軍事行動を続けるのか、それがイランとアメリカの停戦合意にどのように影響するのか、アメリカ・トランプ大統領が戦争継続を主張するイスラエル・ネタニヤフ首相をどこまで制御するつもりがあるのか、あるいは、制御できるのか・・・イラン戦争絡みの話題がもっぱら注目されていますが、今回取り上げるのはパレスチナの問題。

 

ガザ地区ではハマスとの停戦合意はあるものの、イスラエルが断続的に攻撃を行い、犠牲者が増え続けていること、また、ヨルダン川西岸地区では国際法上は違法入植者であるユダヤ人入植者によるパレスチナ人住民への暴力が加速しており、イスラエル軍がこれを黙認、あるいは加担していること・・・等についてはこれまでも取り上げてきました。

 

611日ブログ「パレスチナ  “停戦”中のガザ地区で増え続ける犠牲者 西岸地区の暴力にイスラエル当局が直接関与

519日ブログ「パレスチナ・ガザ地区の崩壊状態に近い住民生活 4月実施の地方議会選挙結果から見えてくるもの

 

状況は変わっていません。

 

****停戦後のガザの死者1000人を超える さらなる強制避難も****

パレスチナ自治区ガザ地区の保健当局は17日、昨年10月の停戦以降のガザ側の死者が1000人を超えたと発表した。停戦後もガザに駐留するイスラエル軍の散発的な攻撃は続いており、犠牲者の増加に歯止めがかからない状態が続いている。

 

AP通信によると、南部ハンユニスでは17日、イスラエル軍の空爆があり、2人が死亡、6人が負傷した。軍は「テロリストを殺害した」と主張したが、詳細は明らかにしていない。住民によると、軍は海岸線付近にいた人を標的に空爆したという。

 

停戦合意後、イスラエル軍はガザの東側に後退したが、合意で想定されている53%を超えて、現在はガザの64%を制圧しているという。国連人道問題調整事務所によると、12日にはイスラエル軍が制圧地域を拡大したことで、ガザ市東部の住民数十世帯が強制避難を余儀なくされた。(中略)

 

イスラエルとハマスの戦闘は、202310月にハマスが越境攻撃を仕掛けたことをきっかけに勃発。越境攻撃ではイスラエル人ら約1200人が死亡した。一方、戦闘開始以降のガザ側の死者は計73000人を超えている。【618日 毎日

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****イスラエル軍、パレスチナ人若者2人射殺 ヨルダン川西岸****

パレスチナ自治政府当局者によると、ヨルダン川西岸のベイト・ウマル地区で22日、イスラエル軍兵士がパレスチナ人の若者2人を射殺した。イスラエル軍は、2人がユダヤ人入植地付近で火炎瓶を投げたりタイヤを燃やしたと主張した。

パレスチナ通信社WAFAによると、死亡した2人は15歳と19歳の若者。親族もロイターに年齢を確認した。

イスラエル軍は、入植地カルメイ・ツール付近で火炎瓶を投げ、タイヤを燃やしていた3人に向けて発砲し、1人が負傷し2人が死亡したと明らかにした。負傷者についてWAFAは、病院に搬送され容体は安定していると伝えた。パレスチナ赤新月社(PRCS)によると、この人物は15歳。

イスラエル軍はヨルダン川西岸で頻繁に急襲作戦を実施し、ここ数カ月は入植地周辺のパレスチナ人の村に対する移動制限を強化している。国連機関や大半の国は、イスラエルの入植地は国際法違反と非難している。

イスラエル人入植者によるパレスチナ人やその村への攻撃も急増している。国連のデータによると、入植者や軍が関与した事件で、今年少なくとも57人のパレスチナ人が殺害されている。

イスラエルは、パレスチナ人がヨルダン川西岸でイスラエル軍兵士や入植者を攻撃していると指摘。総保安庁(シンベト)によると、今年は少なくとも1件の攻撃で死者が出ている。【622日 ロイター

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【イスラエルに対する国連の厳しい姿勢 国連の独立調査委員会「ジェノサイドの一環」】

こうした暴力が止まらないパレスチナの状況について、国連など国際社会はイスラエルの責任を厳しく追求する姿勢を強めています。

 

611日ブログでも取り上げたように、69日には国連「占領下パレスチナ地域に関する調査委員会」がイスラエル当局がヨルダン川西岸地区において、パレスチナ人を殺傷・追放する入植者の攻撃に直接関与し、入植者を保護しているとする報告書を公表しました。 そして、その後も・・・・

 

****イスラエルなど8カ国、紛争下で「子供の権利侵害」 国連報告書****

国連は17日、2025年の「子供と紛争」を巡る報告書を発表し、紛争下の子供に対する重大な権利侵害が38558件で、調査を始めた1996年以降で最大となったと明らかにした。イスラエルやロシアなどの国家による権利侵害の件数が、武装組織を初めて上回ったという。

 

国連は毎年、紛争下での子供に対する殺人や傷害軍などへの勧誘性暴力誘拐学校や病院への攻撃人道支援の拒否――について、事実関係を検証し、事務総長に報告している。

報告書によると、殺害された子供は6266人で前年より3割以上増加し、過去最大。また軍などに勧誘されたり、利用されたりした子供は6607人、性暴力を受けた子供は1783人でいずれも最大となった。

 

国家として権利侵害に関与したと認定されたのは、イスラエルロシアミャンマーシリアソマリアスーダン南スーダンコンゴ民主共和国(旧ザイール)――8カ国。なかでも子供の殺害はイスラエルやスーダン、軍などへの勧誘や性暴力はコンゴで多かったと指摘した。

 

イスラエルとパレスチナを巡っては、計5663人の子供に12445件の権利侵害があったと認定した。

なかでもイスラエル軍の関与は9465件に上った。パレスチナ自治区ガザ地区などでの人口密集地での空爆、学校や病院への攻撃、多くの子供を拘束し、拘束中に暴力を振るったことなどが非難された。イスラム組織ハマスなどパレスチナの武装組織による子供への権利侵害も明記された。

 

一方、国連などの支援で軍や武装組織から脱出した子供は全世界で13112人に上った。

 

国連高官は17日、子供への権利侵害は「前例のない」レベルに達しており、紛争が激化することで、子供を含めた攻撃を「戦略」として使う結果になっていると主張。子供への性暴力もコミュニティー全体を追放する手段などとして使われており、「子供を守ることは任意ではなく、法的、道徳的義務だ」と強調した。また「ブラックリスト」に載せた国家や武装組織に国際法の順守を呼びかけた。【618日 毎日

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“子供を含めた攻撃を「戦略」として使う”・・・・前出のように69日にイスラエル当局がヨルダン川西岸地区において、パレスチナ人を殺傷・追放する入植者の攻撃に直接関与していると報告した国連「占領下パレスチナ地域に関する調査委員会」(独立調査委員会(COIと略されることも)は更に踏み込んで、23日の報告ではイスラエルへの子ども攻撃を「ジェノサイド(集団殺害)」という言葉を使って批難しています。

 

なお、COIの正式名称は「国連・占領下パレスチナ地域(東エルサレムを含む)およびイスラエルに関する独立国際調査委員会」です。

 

****国連調査団、ガザの子ども狙うイスラエルを非難 「ジェノサイドの一環」****

イスラエルはパレスチナの子どもたちを意図的に標的にしており、これが現在も続くパレスチナ自治区ガザ地区での「ジェノサイド(集団殺害)」の主要な要因になっていると、国連(UN)の調査団が23日に公表した報告書で非難した。これに対し、イスラエル側は猛反発している。

 

国連の独立調査委員会(COI)は、報告書で「パレスチナの子どもたちがイスラエル治安部隊によって意図的に標的にされ、殺害された証拠」が見つかったと発表した。これにより、「ガザにおけるパレスチナ人という大きな集団を破壊しようとする、イスラエル当局および治安部隊のジェノサイドの意図」が立証される主要な要因になったとしている。

 

3人の委員からなる調査チームは、昨年9月の報告書で、イスラエルがガザ南部での武力衝突において「ジェノサイド」を犯したと初めて結論づけていたが、イスラエル側はこの認定を拒否していた。チームは、国連を代表して発言する立場にはない。

 

新たに発表された報告書の中で、調査団は、イスラエル軍による激しく組織的な軍事作戦が継続していることで、パレスチナの子どもたちに「前例のない」死傷者や精神的トラウマが生じていると指摘。イスラエル当局と治安部隊がガザで「ジェノサイドの罪を犯し続けている」と結論づける「合理的な根拠」があるとした。

 

かねてより同委員会を激しく批判してきたイスラエルは、今回の報告書を「中傷的」であり「事実無根の欺瞞(ぎまん)だ」と猛烈に批判した。調査団に対し、「イスラエル人の子どもを冷酷に攻撃し、パレスチナ人の子どもを人間の盾として利用しているイスラム組織ハマスの残虐な戦術」を無視していると非難した。

 

■ ガザで「消し去られた」子ども時代

国連人権理事会によって2021年に設置された同委員会は、最新の報告書において、パレスチナの子どもたちに影響を与えている犯罪や、イスラエルがガザに課した生活環境が「防ぐことのできた子どもの死亡にどのようにつながったか」を検証した。

 

チームは声明で、「イスラエル当局と治安部隊はパレスチナの子どもたちを意図的に標的にしており、その結果、ガザ地区でのジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪、およびヨルダン川西岸での戦争犯罪を引き起こしている」と述べた。

 

委員会は、心身への深刻な被害、集団的トラウマ、孤児化、家族の離散、障害、繰り返される避難、飢餓、そして教育や医療の崩壊により、ガザにおける「子ども時代が消し去られた」と指摘。こうした影響は、同地区の子どもたちの生涯にわたって続くだろうと述べた。

 

調査委員会の議長を務めるインドのシュリニバサン・ムラリダール元判事は、「子どもを標的にすることで、イスラエルはパレスチナ人が存在し、自らの未来を決定する能力そのものを攻撃している。202510月の停戦後も、子どもたちは殺害され、深刻な負傷を負わされ続けている」と指摘した。

 

■ 「破壊のための戦略」

この報告書が公表される数日前には、国連児童基金(ユニセフ)が、イスラエルとハマスの停戦が発効して以降、ガザでは少なくとも265人の子どもが殺害され、さらに数百人が負傷したと発表している。

 

イスラエルの公式発表に基づくAFPの集計では、2023107日のハマスによるイスラエルへの越境攻撃の死者は1221人。一方、ハマスが統治するガザ地区の保健省によると、イスラエルによるガザへの報復攻撃では72800人以上が死亡している。

 

国連の調査団は、戦争の最初の2年間に、少なくとも2179人の子どもが死亡し、44143人が「ガザにおける戦闘の直接的な結果として」負傷したと発表。パレスチナの子どもたちを殺害し、身体に障害を負わせることは、「ガザにおけるパレスチナ人の生物学的な継続性と将来の存在を破壊するための戦略の一部だった」と指摘した。

 

委員会はガザだけでなく、1967年以来イスラエルが占領しているヨルダン川西岸においても、イスラエル人入植者によるパレスチナの子どもたちへの暴力が急増していることを指摘。イスラエルを含むすべての国連加盟国に対し、犯された犯罪の責任を追及するよう強く求めた。【623日 AFP

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【国連の独立調査委員会によるイスラエルへのジェノサイド批判は「反イスラエル」の産物か?】

20265月以降で見ても、国連の複数の機関・関係組織はイスラエルの行動について厳しい批判や懸念表明を行っています。主なものを時系列で整理すると次のようになります。

 

*****イスラエルのパレスチナにおける行動に関する国連機関の批判・懸念表明(20265月以降)****

1. 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR

518・・・・OHCHRは、占領下パレスチナ地域における人権状況に関する包括報告書を公表しました。

報告書では、ガザに対する大規模軍事作戦、民間人への被害、インフラ破壊、強制移住、国際人道法違反の疑いなどを指摘し、「大規模な国際法違反や残虐行為犯罪(atrocity crimes)」が発生したと報告しました。 

 

2. 国連人権理事会(UNHRC

56日決議(公表・関連文書は5月)・・・・国連人権理事会は、「占領下パレスチナ地域における人権状況」に関する決議を採択し、イスラエルによる占領政策、入植活動、ガザでの軍事行動について強い懸念を表明しました。 

 

3. 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR

527・・・・OHCHRは、停戦後もイスラエル軍がガザ境界付近でパレスチナ人を殺害していることについて、「違法な殺害」「戦争犯罪に該当する可能性」があるとして警告しました。

報告によれば、停戦以降の死者453人のうち152人がイスラエル側の設定した緩衝地帯周辺で死亡していました。 

 

4. 国連人道問題調整事務所(OCHA

5月~6・・・・OCHAは複数の報告書で、ガザでの攻撃継続、子どもを含む民間人の死傷、医療・衛生環境の悪化、大規模避難について強い懸念を表明しました。

65日の報告では、停戦発表後も女性や子どもを含む民間人が殺害されていると指摘しています。 

 

5. 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA

5月~6・・・・UNRWAは、ガザでの人道危機、支援活動への制約、難民支援施設への圧力について繰り返しイスラエルを批判しました。 また、国連事務総長は、「イスラエル当局がUNRWA施設敷地内に軍事施設を設置した」との決定を非難しています。 

 

6. 国連調査委員会(Commission of Inquiry

69日報告・・・・国連独立国際調査委員会は、パレスチナ民間人が深刻な人権侵害にさらされているとし、イスラエル軍および入植者による違反行為を詳細に報告しました。 同報告は同時にハマスによる虐待や処刑も批判しており、「双方の違反」を扱っています。 

 

7. 国連事務総長グテーレス報告

617・・・・「子どもと武力紛争」年次報告書【前出 618日 毎日

 

8. 国連調査委員会

623・・・・・国連独立国際調査委員会は、ガザの子どもを意図的に標的にしたジェノサイド(集団殺害)の要素が認められる戦争犯罪および人道に対する罪の可能性があるとの極めて厳しい報告書を公表しました。【前出 623日 AFP】  【624日 ChatGPT

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20265月以降の国連機関の声明を見ると、焦点は主にガザでの民間人被害、子どもの犠牲、人道支援への妨害、入植地拡大と入植者暴力、国際人道法違反の疑い、戦争犯罪・ジェノサイド認定の可能性に置かれています。

 

特に6月に入ってからは、従来の「深刻な懸念」から一歩進み、「戦争犯罪」「人道に対する罪」「ジェノサイド」といった法的評価を含む報告が目立つようになっています。もっとも、イスラエル政府はこれらの報告を「政治的に偏向している」として強く反発しており、国連とイスラエルの対立は一段と深まっています。

 

特に、前出のように国連の独立調査委員会(COI)は623日、「ジェノサイド(集団殺害)」という言葉を用いてイスラエルを非難する厳しい見解ですが、これは国連の独立調査委員会(COI)の組織・構成国などがパレスチナに有利な形になりやすい仕組みなのか? それとも、現在の国際社会の見方を反映していると見るべきか?

 

*****COI報告は反イスラエルの産物か?*****:

COIはイスラエルに非常に批判的な結論を出す傾向があるとしてイスラエルやその支持者から強く批判されている。

しかし、その報告内容が国際社会で完全な少数意見になっているわけでもなく、近年はイスラエルに対する国際的批判がかなり強まっている。一方で、「ジェノサイド認定」については依然として国際社会で意見が割れている。・・・・というのが実態に近いと思われます。

 

まず、このCOIとは何か。今回の報告を出したのは、Independent International Commission of Inquiry on the Occupied Palestinian Territoryです。

 

これは2021年に国連人権理事会が設置した常設調査委員会です。委員会は国家代表ではなく独立した専門家数名で構成されています。

 

現在までの報告では、ハマスによる2023107日の攻撃は戦争犯罪、人質拘束も戦争犯罪、イスラエル軍によるガザ攻撃は戦争犯罪、一部は人道に対する罪、さらにジェノサイドに該当する・・・・という判断を示しています。つまりハマスも非難していますが、近年はイスラエルに対してより厳しい結論を出しています。 

 

「国連=中立」ではない

ここで重要なのは、「国連が言った=世界の総意」ではないことです。 国連人権理事会は加盟国47か国の投票で運営されます。 歴史的に見ると、アラブ諸国、イスラム諸国、グローバルサウス諸国が多数派になることが多く、イスラエルや米国は長年、「人権理事会はイスラエルに対して過度に厳しい」と批判してきました。

 

実際、人権理事会では他国と比較してイスラエル問題が非常に頻繁に議題になります。 そのためイスラエル側は、

「調査委員会そのものが政治的に設計されている」と主張しています。 

 

では今回の報告も単なる反イスラエルか・・・そこが難しいところです。 

近年は人権理事会だけでなく、Amnesty International、Human Rights Watch、多数の国際法学者、ジェノサイド研究者などからもイスラエルへの厳しい評価が出ています。 

また、ガザの死者数の多さ、子どもの死者の多さ、病院や学校への攻撃、長期封鎖による飢餓問題などについては、イスラエル支持国の中でも懸念が広がっています。 

 

つまり、「イスラエルに対する批判そのもの」はもはや人権理事会だけの特殊な見方ではありません。 

 

しかし「ジェノサイド認定」は別問題・・・ここが最大の争点です。

国際法上のジェノサイドは、単に多数の民間人が死亡しただけでは成立せず、「特定集団を破壊する意図」の立証が必要です。

 

そのため、COI、一部の国際法学者、一部の人権団体はジェノサイドと主張していますが、米国や多くの西側諸国政府は必ずしも同意していません。

 

最終的な法的判断を下す権限を持つのは、COIではなく International Court of Justice や International Criminal Court などの国際司法機関です。現時点では最終確定判決には至っていません。

 

現在の国際社会の空気をどう見るか

202310月直後は、多くの国がイスラエル支持でした。しかし2026年現在では、「ハマスの攻撃は非難する」「しかしイスラエルの軍事行動は行き過ぎている」という立場がかなり広がっています。 つまり、「イスラエルへの批判が強まっている」こと自体は国際社会の現実を反映していると言えます。

 

ただし、「イスラエルはジェノサイド国家である」というCOIの結論までが国際社会の完全な共通認識になっているわけではありません。

 

したがって今回の報告は、「国連人権理事会系の調査機関が持つ比較的厳しい対イスラエル評価」と「近年拡大している国際社会のイスラエル批判」の両方を反映しているが、ジェノサイド認定については依然として大きな国際的論争の対象である、と理解するのが最もバランスの取れた見方だと思われます。【624日 ChatGPT

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中南米  鮮明になった右傾化・保守回帰“ブルータイド”の流れ 拡大するトランプ大統領の影響力

(青:右派政権 赤:左派政権  右の地図(20266月)の白抜き部分のコロンビアは青に確定、 ペルーもほぼ青になると思われます。 地図は【617日 小橋啓氏 住友商事グローバルリサーチ】)

 

【ペルー 右派ケイコ・フジモリ氏 4回目の決選投票で勝利目前】

僅差の大接戦となっている南米ペルーの大統領選挙決選投票(67日投票)は、未だ最終確定には至っていませんが、4回目の大統領選挙挑戦となる右派ケイコ・フジモリ氏の左派サンチェス候補を下しての当選がほぼ確実な状況となったようです。 外国在住者の票での大量リードが決め手になったようです。

 

****ペルー大統領選、ケイコ・フジモリが勝利目前――得票率50.1%、サンチェスとの戦い決着へ****

22日付ヴァロール記事の一部 ペルーの大統領選決選投票で、右派のケイコ・フジモリが勝利への道を確実にした。

 開票率99.7%の時点で、フジモリは50.1%、左派のロベルト・サンチェスは49.9%。両者の差は4700票にまで縮まった。

 

前大統領ペドロ・カスティーリョ派の継承者として戦うサンチェスは、領事投票(外国在住者投票)の無効化を求める異議申し立てを検討。

 

フジモリは国外のペルー系市民で63.2%の支持を集めており、この票が決定的な役割を果たした。サンチェスは国内投票では50.1%でフジモリと並ぶが、国外投票での圧倒的な敗北が命取りとなった。

 

民主主義の葛藤が、日本を含めた外国在住者の一票で決まる。ペルー政治の複雑さは、そこにある。【623 ブラジル日報】

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汚職や不祥事で大統領や閣僚の交代が相次いだ左派政権への国民の不信感は根強く、左派への失望が有権者の間に広がっていることが“ケイコ・フジモリが勝利目前”という状況の根底にあります。

 

4回連続で決選投票に臨むケイコ氏がアピールしたのは、2024年に死去した父フジモリ氏が左翼ゲリラ掃討に成功した実績。「この国が必要とするのは秩序と治安だ」と述べ、犯罪横行で悪化した治安の回復に決意を訴えました。一方のサンチェス氏は格差是正などを公約に掲げています。

 

一方で、父フジモリ氏の“強権的政治手法”という負の遺産のために、これまで3回の大統領選挙では惜敗したケイコ氏ですが、父フジモリ氏の独裁的な手法を嫌う「反フジモリ派」の動きが今回は低調で、ケイコ氏に有利に働いているという側面もあるようです。

 

サンチェス陣営が多数投票所について無効化請求や異議申し立てを行っており、その審査に時間を要していますが、残票の傾向からして、逆転する可能性はかなり低いとみられています。

 

****開票状況および今後の予測****

今回特に時間がかかっている理由は、得票差が極めて小さい、約40万票分に相当する1600以上の投票所記録が審査対象となった、サンチェス陣営が多数の無効化請求や異議申し立てを行った、海外票の扱いを巡る争いも発生した・・・という事情のためです。 

 

したがって、現在行われているのは日本でいう「再開票」そのものではなく、「開票済みだが有効かどうか確定していない票や集計表を法的にチェックしている段階」と考えるのが正確です。審査が終わった票だけが正式結果に加算されるため、開票率が99%台で長く止まっているように見えます。 

 

なお、残っている票の多くはリマ首都圏や海外票で、これまでの傾向ではフジモリ候補に有利とみられており、選挙専門家の間では結果が逆転する可能性はかなり低いとみられています。【623日 ChatGPT

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【コロンビア トランプ大統領支援の右派デラエスプリエジャ氏勝利】

南米コロンビアは、他の南米諸国が左傾化する時代もアメリカと麻薬対策で連携するなど長く親米国として歩んできましたが、2022年の前回大統領選で左派のペトロ氏が勝利。トランプ大統領はアメリカへの麻薬流入を問題視し、軍事攻撃も示唆するなど対立しています。

 

そのコロンビアで621日に行われた大統領選挙では、こちらも接戦でしたが、トランプ大統領も支援する右派のアベラルド・デラエスプリエジャ氏(47)が勝利しました。

 

****コロンビア大統領選 親米右派候補が勝利宣言 米の影響力拡大か****

南米のコロンビアで、大統領選挙の決選投票が行われ、アメリカのトランプ政権との連携強化を訴えてきた右派のデラエスプリエジャ氏が勝利を宣言しました。コロンビアでも親米の右派政権が誕生する見通しとなり、南米でトランプ政権の影響力が一段と強まることになりそうです。

 

南米のコロンビアで21日、大統領選挙の決選投票が行われ、選挙当局の速報値によりますと開票率99.98%の段階で、右派で弁護士のデラエスプリエジャ氏が49.66%、現職の後継で左派の上院議員のセペダ氏が48.70%となっていて、地元メディアは、デラエスプリエジャ氏が勝利したと伝えています。

 

これを受けて、デラエスプリエジャ氏は「今の政権を打ち負かすことができた。私たちの提案を信頼し、悲惨な国になるより、奇跡的な国になることを選んだ国民に感謝したい」と述べ、勝利を宣言しました。

デラエスプリエジャ氏は、現職のペトロ大統領と異なり、トランプ政権と連携しながら、麻薬・治安対策を徹底的に強化すると訴えました。

 

トランプ大統領も支持を表明していて、デラエスプリエジャ氏は選挙のあと、トランプ大統領から祝福を受けたと明らかにしました。

 

南米で親米の右派や中道政権が増える中、コロンビアでも親米の右派政権が誕生する見通しとなり、トランプ政権の影響力が一段と強まることになりそうです。

 

米大統領 コロンビア大統領選で勝利宣言の親米右派候補を祝福

アメリカのトランプ大統領は、21日、コロンビアの大統領選挙でトランプ政権との連携強化を訴えてきたデラエスプリエジャ氏が勝利を宣言したことを伝える記事とともに、「彼は勝った、大勝利だ」とSNSに投稿し、祝福しました。(中略)

 

またルビオ国務長官も21日、SNSで、「コロンビアの次期大統領と電話で話し、選挙での勝利を祝福した。トランプ政権は、地域における安全保障協力を推進するとともに、アメリカへの不法移民をなくし経済関係を強化するため、次期政権と緊密に協力していくことを楽しみにしている」として、今後の連携に意欲を示しました。【622日 NHK

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デラエスプリエジャ氏は選挙戦では、巨大刑務所を建設して徹底した治安改善を目指すと主張し、AP通信の取材には「麻薬テロリストらを、ゴキブリやネズミのように根絶やしにする」と語っています。

麻薬組織の収益源となるコカインの原料コカの畑に除草剤を散布し栽培できないようにする方針を示し、また、現政権下で悪化したアメリカとの関係強化を訴えています。トランプ大統領を彷彿とさせます。

 

【左右に揺れる中南米の政治傾向】

中南米諸国の政治情勢は、(各国の事情はそれぞれ異なるものの)各国が連動するかのように同時期に左右の同じ方向に向かう傾向が見られます。右傾化・保守回帰の流れは昨年から出ていました。

【20251217日 ブログ“中南米で保守回帰の流れ トランプ政権は中南米に積極介入し中国を排除する政策重視 両者連動か?

 

2000年代には相次いで左派政権が誕生しており、その現象は「ピンクタイド」と呼ばれました。キューバやベネズエラほど急進左派ではないため、「赤」ではなく「ピンク」という訳です。

 

****ピンクタイドの特徴****

左派政権における政府は、各国で程度の違いはあったもののアメリカやIMF、世界銀行による介入を批判し反ネオリベラリズムや反帝国主義を掲げた。

 

そして、政策としては格差を減少させ、貧困問題の改善に取り組むことを目指した。また、複数の国の経済では西欧諸国の社会民主主義を掲げ、自由市場経済と福祉国家の両立を目指した。【2020213日 GNV Saki Takeuchi氏「中南米:揺れ動く政治体制」】

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やがて「ピンクタイド」の流れは衰退し、チリ、ブラジル、ボリビア、エクアドルでは右派政権が成立し、振り子は右に揺れ戻すことに。

 

****ピンクタイド衰退の原因****

このように左派政権下において様々な改革が行われ、社会保障や貧困の改善など社会状況に大きな変化をもたらした。しかし、2009年にホンジュラスで左派のマヌエル・セラヤ氏に代わり右派の大統領が政権を握り始めた。それ以降、中南米の複数の国で次々に右派政権が誕生した。なぜこのように「ピンクタイド」の動きが弱まるようになったのか。詳しくみていこう。

 

まず、中南米諸国における経済の後退が挙げられる。2008年のリーマンショック以降、世界的に石油や鉱物資源への需要が減少し市場価格が下がっていった。中南米諸国はこの石油や鉱物資源の収入により好景気を作り上げていたため大きな打撃となった。

 

経済成長が止まり、各国の経済状況が悪化した。一方で政府は公的な支出を制限するようになった。経済悪化に伴う影響で人々の生活状況が厳しい状況に置かれるようになり、日々の生活への不満からデモが発生する国も現れた。

 

経済危機の最も極端な例ではあるが、ベネズエラではハイパーインフレションによる経済危機から深刻な人道危機に陥っている。このような状況下で中南米諸国の左派は政権を維持することが難しくなった。【同上】

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しかし、右派政権においても各国の貧困は改善せず、大きな格差が国内に存在し、そして政治の腐敗は相変わらず・・・という状況で、コロナ禍の経済的打撃と、ロシアのウクライナ侵攻が引き起こした猛烈なインフレという経済情勢もあって、20年以降にチリやホンジュラス、ブラジルなどで再び左派政権が登場。

 

このような再び右派政権から左派政権に転換する現象は「ピンクタイドの再来」と言われました。

 

****中南米に左派政権次々、コロナとインフレ契機****

中南米はコロンビアで初の左派大統領が誕生し、ブラジルも10月の大統領選に向け左派候補が有利に選挙戦を進めるなど、「ピンクの潮流」と呼ばれた2000年代初頭の左傾化を思わせる動きが強まっている。

中南米では、新型コロナウイルスのパンデミックによる経済的打撃と、ロシアのウクライナ侵攻が引き起こした猛烈なインフレに怒った有権者が主流派政党に見切りをつけ、「大きな政府」と財政出動の公約に引き寄せられている。(後略)【2022625日 ロイター】

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【鮮明になった右傾化・保守回帰“ブルータイド”の流れ】

この「ピンクタイドの再来」に抗したのが202311月の大統領選挙でチェーンソーを振り回して勝利したアルゼンチンのミレイ大統領でした。

 

そして流れは再び右へ。2025年10月のボリビア大統領選では、中道のパス新大統領の勝利で20年続いた反米左派政権が終結。

 

11月のホンジュラス大統領選でも、それまでの左派政権に代わって右派の野党候補が勝利。そしてチリでも「チリのトランプ」と呼ばれる右派候補が勝利・・・ということで、右傾化・保守回帰の“ブルータイド”の流れが起きていました。

 

そして、冒頭で紹介したようにコロンビアでも。そしておそらくペルーでも。

 

****コロンビアで右派政権誕生、中南米の保守回帰鮮明に****

南米コロンビアは大統領選決選投票で、右派候補の弁護士アベラルド・デラエスプリエジャ氏が勝利し、右派政権が誕生することになった。中南米地域は各国で右派勢力が台頭しており、コロンビアの政権交代で保守回帰の流れが一段と鮮明になった。

 

6月7日に行われた大統領選決選投票を巡る異議申し立て票の集計が続くペルーでも、保守派のケイコ・フジモリ氏が0.2%強の僅差で勝利する見通しとなっている。アルゼンチン、チリ、エクアドル、ボリビア、パナマは既に政権を右派が占めており、2020年代前半にコロンビア初の左派大統領グスタボ・ペトロ氏らを誕生させた「ピンクタイド(左派の潮流)」は大きく後退しつつある。(中略)

 

中南米各国は景気の低迷や治安悪化で有権者の優先事項が変化している。こうした中、かつては周辺勢力だった強硬右派候補が、犯罪取り締まりの強化を掲げて支持を拡大した。背景には、世界的な右派ナショナリズムの高まりに加え、トランプ米大統領が中国の中南米への影響力拡大に対抗し、米国のこの地域への関与を強めようとしていることもある。

 

米ハーバード大学のスティーブン・レビツキー教授(中南米研究)は「トランプ氏にとって、異例なほど条件がそろっている。これほど多くの政権がイデオロギー的に収れんするのは非常に珍しい」と話した。

 

コロンビアのペトロ大統領は中南米で最も声高な反トランプ派として知られてきた。一方、デラエスプリエジャ氏は熱心なトランプ支持者で、米国籍を取得してフロリダ州マイアミに居住していた経歴を持つ。決選投票を前にトランプ氏から支持表明を受けた同氏は、トランプ氏が主導して発足させた右派の地域同盟「米州の盾(シールド・オブ・ジ・アメリカズ)」への参加、麻薬組織の取り締まり強化、規制緩和、減税、ペトロ政権下で停止された石油・天然ガス開発の再開を公約に掲げている。

 

専門家は、ガイアナとベネズエラの豊富な石油埋蔵量や、アルゼンチンの巨大シェール層を背景に、中南米は世界のエネルギー供給拠点として台頭する可能性があると指摘している。

 

<課題は財政と治安>

アルゼンチン、チリ、ペルー、コロンビアの右派指導者は、減税、小さな政府、鉱業や化石燃料開発の規制緩和を掲げて支持を集めてきた。しかし、多くの国は財政赤字を抱え、歳出削減を余儀なくされ、その結果、各地で抗議デモが発生している。

 

ボリビアでは、中道右派のパス大統領が導入した緊縮政策に反発し、労働組合などが50日余りにわたって道路を封鎖。政府は最近、非常事態を宣言し、封鎖解除に乗り出した。

 

チリでは、イランでの戦争に起因する燃料価格上昇を受けてカスト大統領の支持率が急落し、アルゼンチンのミレイ大統領も緊縮政策を巡る抗議デモに直面している。

 

治安面でも課題は残る。エクアドルでは昨年、殺人件数が30%増加した。ノボア政権は犯罪組織間の縄張り争いが原因だと主張している。コスタリカでも、右派ポピュリストのチャベス政権下で殺人件数が急増。後任のフェルナンデス大統領は「犯罪との戦争」を宣言したが、南米産コカインの米欧向け中継拠点である同国は高い犯罪率が続く。

 

<議会は分断、厳しい政権運営>

アナリストによると、麻薬取引や違法採掘、政府の統治が及ばない地域の存在など、コロンビア特有の問題は、デラエスプリエジャ新政権にとって大きな試練となる。

 

同氏は得票率1%未満の僅差で勝利した。議会も分裂状態にあり、対立候補イバン・セペダ氏の「歴史的協定」党は単独では最大勢力を維持している。

 

派手な服装や巨大刑務所建設の公約から、デラエスプリエジャ氏は「世界一クールな独裁者」を自称するエルサルバドルのブケレ大統領になぞらえられている。もっとも、同氏自身は「ブケレ氏を模倣しているわけではない」と否定している。

 

コンサルティング会社コロンビア・リスク・アナリシスの創業者セルヒオ・グスマン氏は「コロンビアはエルサルバドルよりはるかに大きく複雑な国であり、エルサルバドル型の治安対策をそのまま導入することは、法制度や財政、国際関係の面からみて現実的ではない」と指摘。

 

ハーバード大のレビツキー教授も「デラエスプリエジャ氏は改革を進めるために、強固な民主制度と協調していかなければならない。もし急進的な路線を取れば、深刻な問題に直面する可能性がある」と警告した。【623日 ロイター

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【中南米で広がるアメリカ・トランプ大統領の影響力】

各国とも問題は抱えていますが、国内では中間選挙に向けて足元が揺らいでいるトランプ大統領、ドンロー主義を掲げる中南米にあってはその影響力を拡大しています。

 

****中南米で広がる親米右派政権 米国の影響力、さらに拡大****

21日に実施されたコロンビア大統領選でトランプ米大統領が推す右派のデラエスプリエジャ氏が勝利を確実にしたことで、中南米で続く親米右派巻き返しの動きが一層鮮明になった。6月上旬に実施され、開票作業が続けられる隣国ペルーの大統領選でも、右派のフジモリ氏が優勢を保つ。

 

西半球重視の「ドンロー主義」を掲げ、地域への関与を進めるトランプ政権は、露骨な圧力を用いて影響力を拡大させている。過去1年で、チリやホンジュラスで左派から親米右派への政権交代が起きた。コスタリカでも親米路線を継承する右派候補が勝利。米国への追い風が続いている。

 

トランプ政権はアルゼンチンやエクアドル、エルサルバドルなど親米右派政権に経済援助を行う一方、反米左派のマドゥロ・ベネズエラ大統領を軍事作戦で拘束したり、キューバへの圧力を強めたりするなど、「アメとムチ」を使い分け、各国に揺さぶりをかける。

 

選挙前に特定候補への支持を表明するなどの干渉も繰り返しており、10月に行われる地域大国ブラジルの大統領選への介入に対する懸念も高まっている。

 

伝統的な政府間の協議ではなく、トランプ氏との関係の良しあしにより対米関係が大きく影響される時代。各国指導者は、麻薬組織対策などを巡り米国の要求を一定程度受け入れつつ、国内で「譲歩しすぎ」との批判を集めないよう、繊細な外交判断を迫られている。【623日 時事

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イラン戦争後の世界  「ポストアメリカ(米国後)」に向けて広がる混沌 「勝ったのは中国」とも

(【620日 TBS NEWS DIG】)

 

【イラン戦争を経て「ポストアメリカ」の時代の混沌】

圧倒的な軍事力を誇るロシアもアメリカも、激しく抵抗するウクライナ・イランを屈服させることができないことが明らかになっています。

 

イラン戦争に関する覚書は、恒久和平ではなく、あくまでも「60日間の覚書(MOU)」を軸とした暫定的な枠組みです。核問題、制裁解除、レバノン問題などの本質的争点は今後の交渉に先送りされており、和平が定着するかどうかはまだ不透明です。

 

その上で、この戦争と停戦が今後の国際情勢に与えうる影響を考えると、いくつかの方向性が見られます。

 

一つはアメリカの同盟国の対米不信が強まる可能性、アメリカ中心の国際秩序が相対的に弱まり、「ポストアメリカ」とも言える各国が自力で安全保障を確保しようとする動きであり、もう一つは、戦争で一発の銃弾も撃たなかった中国の外交的地位の相対的上昇でしょう。

 

しかし、アメリカ・ロシア・中国といった大国以外の国々の動きを勘案する、現実は複雑です。

 

****「米国後」に備え始めた世界、イラン戦争で地政学激変-混沌の時代に****

(中略)米国側が発表した14項目の合意概要によれば、事実上の(アメリカの)降伏に等しい。

 

中東にとってこれは、ホルムズ海峡からイランのウラン問題に至るまで、ほとんど何も決着しないまま、少なくとも合意文書で規定された60日間を確実に超え、数カ月あるいは数年にわたって「まやかしの戦争」が続くことを意味する。決定的な解決はほとんど、あるいは全く得られないだろう。世界全体にとっても、この膠着(こうちゃく)状態がもたらす波及効果は同様に深刻だ。(中略)

 

米国の同盟国とこれまで自認してきた残る6カ国の首脳や、インドやブラジルといったサミットに招待された中堅国の首脳は、「ポストアメリカ(米国後)」の未来を考えなければならない。

 

米国の対イラン戦争は、ロシアによるウクライナ侵攻とは異なる。しかし共通点がある。大国の大統領が自国より小さい国を攻撃し、打ち負かすことに失敗したことだ。

 

開戦時点でロシアも米国も、通常兵器で圧倒的に優勢だったことは関係なかった。世界最大級の核保有国である両国の核戦略は、核兵器を持たない国を相手にした場合、意味を持たなかった。勝てなかったことで、米国もロシアも敗者となった。その結果の一つとして、米国とロシアは、それぞれ異なる形ではあるが、自ら選んだ戦争を経て疲弊し、力を失うことになる。

 

「勝ったのは中国」

トランプ政権1期目で国家安全保障を担当したフィオナ・ヒル氏は、米国とロシアは破壊力は示したが無力さも露呈させ、その結果として「以前よりも権力や影響力を行使する手段が減り、どちらもかつてのように世界の行方を左右し、時には国際社会に不可欠と見なされる国家ではなくなる」との見方を示している。

 

もう一つの大国、中国はもちろん米国とロシアによるこの緩慢だが加速する自己破壊を注視してきた。そして習近平国家主席は、自らの前提が裏付けられたと受け止めている。

 

その一つは、ロシアが中国に従属するパートナー以上にはなれず、米国への対抗には役立つものの、経済やテクノロジー、政治といった核戦力以外のあらゆる面では中国に太刀打ちできないという認識だ。

 

そして次に来るのが、米国が長期的な衰退局面にあり、中国が自国のリソースを温存する限り相対的に強くなり続けるという見方だ。

 

米ブルッキングズ研究所のライアン・ハス氏は、「米国とイスラエルがイランと戦い、勝ったのは中国だ」と結論付けている。

 

エビアンであれどこであれ、議論が米国・中国・ロシアの3大国だけに集中するなら、それは世界が冷戦期の二極体制から米国一極体制を経て、多極化へ向かっているという考え方を裏付けることになる。

 

それだけでも十分に問題だ。こうした状況は、すでに予測不能で不安定だ。しかし分析には、G7サミット参加国を含めその他全ての国も組み入れなければならない。

 

もちろん、第2次世界大戦の敗戦国、ドイツと日本も加わる。戦後、米国に守られた日独両国は平和主義を戦後憲法に取り入れ、米国の軍事力を後ろ盾とし商業国家として成功するという大戦略を追求した。

しかし今では日本もドイツも、「父親」代わりとしての米国は永久に失われたと認識している。そして戦後のタブーを破り、大規模な防衛力増強を進めている。

 

長年にわたり同盟国の「ただ乗り」に不満を示してきた米国は、この変化を歓迎している。だが、その副作用として、ナチス・ドイツに侵略されたポーランドや日本の植民地支配を経験した韓国は再び神経をとがらせている。

 

現時点では、大きな問題ではない。ポーランドも韓国も今は、ドイツや日本よりロシアや中国、北朝鮮を警戒しており、日独を同盟国と見なしているからだ。ポストアメリカ世界における一つの処方箋は、米国抜きで協力し、新たな同盟を形成すること、いわゆる「脅威均衡」だ。

 

軍拡競争

しかし、協力、ましてや欧州連合(EU)が試みているように統合を深めることは容易ではない。

米国製兵器頼みから抜け出すため、ドイツとフランスは次世代戦闘機の共同開発を進めてきたが、この計画は頓挫した。現在のG7議長国フランスのマクロン大統領は最近、米国の核の傘の信頼性が失われたことを受け、フランスの核抑止力を欧州全体に拡大することを提案した。しかし、その結果として、答えよりも多くの疑問が浮上した。

 

同様のジレンマは、いまあらゆる国に突き付けられている。トランプ氏が併合したいと語るカナダから、長らく中立国として国内問題に専念していればよいと考えていたものの、トランプ氏の機嫌を損ねれば自国も爆撃され得ると最近気付いたオマーンまで、その例外ではない。

 

インドのような核保有大国から、トルコのように大きな国だが核兵器を持たない国に至るまで、全ての中堅国、さらには一部の小国も自らの安全保障を再検証しなければならない。その上品な表現が、米国や中国、その他あらゆる国からの「デリスキング(リスク低減)」だ。

 

その帰結の一つが、世界的な軍拡競争だ。その兆候はすでに数字に表れている。通常兵器の世界販売は急拡大している。

 

また、核保有国をこれまで9カ国に抑えてきた核拡散防止条約(NPT)が形骸化へ向かう中、イランだけでなく、より多くの国が核兵器の保有を目指し、それを実現する可能性が高い(10年に2回開かれる直近のNPT運用検討会議は、合意文書なしで終了した3回目の会議となり、外交的行き詰まりを示すシグナルとなった)。

 

この新たな(無)秩序を多極化と呼びたければそう呼んでいい。しかしその言葉は、なお「G7」や「G20」、あるいは「Gなにがし」といった枠組みによって世界が統治されていることを前提としている。

 

もう一つの可能性は、地政学アナリストのイアン・ブレマー氏らが言う「Gゼロ」の世界だ。そこでは、開かれた通商や基本的な安全保障といった公共財を保証する能力や意思を持つ国が存在しない。

 

極性という電磁気学の比喩にこだわるなら、世界の地政学的未来はプラズマに例えられるかもしれない。太陽の表面のように、帯電粒子が予測不能かつ混沌(こんとん)とした形で、しばしば激しく相互作用する「るつぼ」だ。そこでは渦やフレア、そして時折、爆発が発生する。【619日 Bloomberg

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【「勝ったのは中国」】

そうした混沌の時代にあって、「勝ったのは中国」と言われるように、以下のような有利な流れを引き寄せているように見えます。

(表向き)軍事的冒険主義を避ける責任ある大国としての評価

アメリカと欧州および湾岸地域の同盟国との緊張

グローバルサウス・アジア世界において、アメリカは信頼できず、ますます予測不能なパートナーになっているというアメリカのオウンゴール的な信頼喪失

アメリカの軍事介入は混乱をもたらすというプロパガンダ補強

エネルギーショックを乗り切った自信

エネルギー面で逼迫した経済圏の不足緩和に寄与するエネルギー外交

 

****イラン戦争の勝者は、一発も弾丸を撃っていない「あの国」だったと言える理由****

(中略)イラン戦争には影の勝者がいるかもしれない。一発の銃弾も撃たなかった国、中国だ。

 

中国は開戦当初からこの戦争を非難していた。アメリカとイスラエルによる攻撃でイラン最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師やその他の高官が殺害されたことを糾弾し、一貫して交渉による解決を支持してきた。

現在、アメリカとイランが不安定な和平に向けて動くなか、アナリストたちは、中国がイラン戦争を通じていくつかの重要な戦略的利益を得たと指摘する。

 

安定した大国

主権を尊重し、対話を重んじ、海外での軍事的冒険主義を避ける責任ある大国として自らを示そうとしてきた中国にとって、イラン戦争は、そのメッセージを強化する絶好の機会だった。

 

中国の王毅(ワン・イー)外相は戦争中、イランの外交当局者らと繰り返し協議を行い、一方で北京は、交渉の仲介に向けたパキスタンの取り組みへの支持を繰り返し表明した。イランのカゼム・ガリババディ外務次官も、停戦枠組みが形を成す直前、中国の高官らと協議している。

覚書署名後、イランのアッバス・アラグチ外相は、交渉の促進を支援するうえで中国が建設的な役割を果たしたとして、公に謝意を示した。

 

中国は外交姿勢を鮮明にアピールできるように

中国当局者らは、自国が対話を重視してきたことを強調してきた。それとは対照的に、アメリカとイスラエルの軍事作戦は無謀であり、世界のエネルギー市場を混乱させ、中東をさらに大きな戦争へと近づけたものだと訴えてきた。

 

北京に拠点を置く中国グローバル化センターのヘンリー・ワン所長は「イスラエルとアメリカによるイラン攻撃は、本当に前例のないほど悪い実例を作り、80年にわたる世界秩序を解体した」と本誌に語った。

この主張は、イラン戦争を懐疑的に見ているグローバルサウスの国々に向けられている。

 

また、イラン戦争は欧州および湾岸地域のアメリカの同盟国との関係にも緊張をもたらした。

イラン戦争を通じて、アメリカのパートナー国からの支持は一様ではなかった。貿易摩擦や関税について、すでに不満を募らせていた欧州各国政府は深く関与することに消極的だった。実際、同盟国は作戦やその経済的影響について公然と疑問を呈した国も1つではない。

 

ブルッキングス研究所中国センターのライアン・ハス所長は「戦争の正当性、遂行、その余波をめぐり、アメリカとパートナー国との間に明確な見解の相違が表面化したことで、時間とともに他の問題領域へ広がりかねない亀裂が露呈した」と分析した。「中国にとって、こうした亀裂は安心材料となる」

 

プロパガンダ上の思わぬ利益

この戦争はまた、中国にアジア全域の人々に発する新たなメッセージを与えた。アメリカは信頼できず、ますます予測不能なパートナーになっている、というものだ。

 

「トランプの発言や政策がもたらした損害は、いま各国が(イラン戦争への)支持を差し控えていることにはっきり表れている。アメリカの決定によって自国に負担と危険が及んでいると怒るのは当然だ」と、アメリカン・エンタープライズ研究所の外交・防衛政策研究部長のコリ・シェイク上級研究員は本誌に語った。

「アメリカは中国と同じくらい冷酷に映る。そして、中国よりも予測しにくく、戦略面でも劣っているように見えるのである」

 

ハスも「中国にとっては、アメリカがイランで戦略目標の達成に苦しんだ事実がはっきり示されたことも、歓迎材料となるだろう」としている。

 

中国当局者にとって、イラン戦争は格好の宣伝材料である。圧倒的な軍事力を持つアメリカでさえ、イランのような地域大国を相手に、決定的な成果を得るまで何カ月も苦戦した。そうであるなら、中国は今後こう問いかけることができる。ワシントンに、中国沿岸により近い場所で、はるかに大規模な戦争を続ける意思が本当にあるのか。そもそも、それを続ける能力があるのか。

 

イラン戦争によって中国側は、アメリカの軍事介入はしばしば混乱を残し、意思決定にほとんど関われなかった同盟国にまで負担を強いるものだ、という従来の主張をさらに強めることになった。

 

これは台湾にも当てはまる。台湾は事実上、自ら統治を行っているが、中国はこれを自国領だと主張し、必要であれば武力を用いてでも統一するとしている。近年、中国は台湾への軍事的圧力を強めるだけでなく、台湾社会の士気をくじき、本土との統一以外に道はないと思わせるためのプロパガンダ活動も強化している。

本誌は、在米中国大使館と在米台湾外交部にコメントを求めている。

 

エネルギーショックと強靭性

イラン戦争はまた、中国最大の脆弱性の一つを試すものとなった。

中国は原油の約40%、液化天然ガスの約3分の1を中東から調達している。ホルムズ海峡が事実上閉鎖され、海運がほぼ停止状態に陥ったとき、多くの分析家は、中国が深刻な経済的混乱に直面する可能性があると警告した。

しかし、中国はそのエネルギーショックを乗り切った。

 

イラン戦争中、原油輸入は急減し、数年ぶりの低水準に落ち込んだ。それでも中国は、およそ12億バレルと推定される戦略石油備蓄、製油所の稼働率低下、供給ルートの多様化、輸入化石燃料への依存を減らすために長年続けてきた取り組みによって影響を和らげることができた。

日本や韓国を含む国々が緊急備蓄の取り崩しを迫られる一方、中国は思い切った措置を取る圧力をあまり受けなかった。

 

中国が加速させたエネルギー外交

中国の強靭性はまた、他国が供給確保に奔走するなかで、中国にエネルギー外交を進める余地を与えた。

中国の精製業者は、ジェット燃料やディーゼルなどの製品の輸出を増やした。フィリピンのようなアメリカのパートナーを含む、エネルギー面で逼迫した経済圏の不足緩和に寄与した。

 

アナリストらは、多くの国が信頼できる供給元を探していたこの時期に、中国は各国の信頼を得るとともに、影響力を広げる機会を手にしたとみている。

 

また、この危機は、電気自動車、バッテリー、太陽光パネルなどのクリーンエネルギー技術に力を入れてきた中国の方針が、結果的に正しかったことを示すものにもなった。

 

原油価格が上昇したことで、世界的に電動化を進めるメリットが増し、国際EV市場ですでに優位に立つ中国メーカーには追い風となった。燃料価格の変動に左右されにくい選択肢を消費者や各国政府が求めたため、イラン戦争中、中国車の輸出は急増した。【622日 Newsweek

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【核拡散リスクの上昇 「エネルギー秩序」の枠組みの変化】

上記以外にもイラン戦争の影響は多方面に及びます。

 

核拡散リスクの上昇

今回の戦争を見た各国は、「核兵器を持たない国は攻撃される」という教訓を得る可能性があります。

特にサウジアラビア、トルコ、エジプトなどでは、独自核武装論が強まる可能性があります。

もしイランの核問題が最終合意で解決できなければ、中東は将来的に多極核地域へ向かう恐れがあります。

 

エネルギー市場の構造変化

今回、世界は改めてホルムズ海峡への依存の大きさを認識しました。

その結果、LNG調達先の分散、原油輸入先の分散、戦略備蓄の拡大が進む可能性があります。

 

単にそうした調達先の分散にとどまらず、「エネルギー秩序」の枠組みが大きく変わる動きが出ています。

 

****「もう元には戻らない」 イラン戦争は世界経済の何を永久に変えたのか****

米国とイランの停戦合意によって、ペルシャ湾で続いてきた暴力の連鎖と、エネルギー供給や貿易を損なう混乱が終息する期待が高まっている。 だが、228日に米国とイスラエルがイランへの爆撃を始める前の状態に、世界各国の経済がそのまま戻るとは考えないほうがいい。 この戦争は、元に戻すのが難しい変化を引き起こしたのだ。

 

様変わりした「エネルギー秩序」

世界のエネルギー秩序は再編されつつある。 中東からの石油・ガス供給がほぼ停止し、価格が急騰したことで、力の移動が起きている。

 

湾岸諸国から南北アメリカ大陸に至るエネルギー生産国は、自らの支配的な地位を維持、あるいは拡大しようとしている。他方で顧客側は依存を減らし、供給を固めようと苦心している。 

 

その結果、エネルギー市場は変化している。エネルギーミックスも変わり、主要なプレーヤーも変わりつつある。 アジア、欧州、その他の地域で、輸入エネルギーに依存することの深刻な脆弱性が明らかになり、代替策を探す動きが一気に加速している。 

 

韓国や日本のように、一部の地域では石炭のような別の化石燃料の使用増加につながっている。だが長期的には、太陽光や風力などの再生可能エネルギー、そして原子力への移行を加速させる可能性が高いのだ。 

 

ロンドンに拠点を置くエネルギー調査団体「エンバー」のダーン・ウォルターによれば、電気バッテリー技術と効率の向上によって、2022年のロシアによるウクライナ侵攻が世界的なエネルギーショックを引き起こしたときよりも、この移行は実現しやすくなっているという。 

 

多くの地域で電気自動車は以前よりも手の届きやすいものになった。そして20264月には、風力と太陽光による発電量が、世界全体で初めてガス火力を上回った。 「これは大きな転換だ。5年前にはかろうじて競争力がある程度だったものが、いまでは目に見えて安くなっている」とウォルターは指摘する。 

 

再生可能エネルギーへの投資もまた、より有望な賭けになっている。30年ではなく、2年近くでリターンが見込めるようになっているそうだ。 

 

産油国同士の関係も変わりつつある。この戦争はアラブ首長国連邦とサウジアラビアの緊張を高め、アラブ首長国連邦がOPECプラスの石油カルテルを離脱するきっかけとなった。この離脱の影響が全面的に表れるのは生産が回復してからだろうが、石油輸出国機構の弱体化は、石油市場の変動をさらに大きくする可能性がある。 (中略)

 

大西洋の向こう側では、世界が代替供給国を探すなか、ブラジル、ベネズエラ、コロンビア、アルゼンチン、ガイアナが石油生産能力を増強している。【620日 COURRIER JAPON

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イラン  保守的な革命防衛隊の影響力が増し、戦争という大義名分を得たことで人権抑圧を加速する政権

(殺害された最高指導者ハメネイ師の巨大看板の前を通り過ぎる通勤客 テヘラン 【420日 ARAB NEWS】)

 

【政権の「勝利宣言」の一方で、経済的困窮と人権弾圧に苦しむ国民も】

イランはアメリカとの覚書合意を受けて「勝利した」と主張しています。実際、国際情勢を分析する視点からも「アメリカに負けなかった」ことで、イランは実質的にアメリカに対し非常に優位な立場に立ち、覚書でもアメリカ・トランプ大統領の要求を大幅に押し返した、将来的にも世界経済を人質にとるホルムズ海峡支配能力という強力な武器を手にし、湾岸諸国への影響力も見せつけた・・・という見方が主流です。

 

国際情勢という視点からはそういう話になりますが、イラン国民が喜ぶべき“勝利”か・・・と言えば、生活に疲れた多くのイラン国民には勝利の高揚感はないかも知れません。 もちろん、体制支持の立場の国民は街頭に繰り出し、“イラン勝利”の旗を振るのでしょうが。

 

****イラン政府の「勝利」宣言に国民は違和感、続く生活苦と締め付け****

イランのアラグチ外相は米国との戦争終結に向けた暫定合意を発表した際、自国の勝利を宣言した。しかし、多くのイラン国民にとって、そのような実感はない。

 

3カ月以上にわたる米国とイスラエルによる空爆、米海軍によるイランの港湾封鎖は、長年の制裁下で既に青息吐息だった人々に新たな悲劇をもたらした。

 

確かに今のところ、戦争は終わった。だが、イラン国民は出費を慎重に抑えている。ロイターは今週、イランの体制支持者と反対派の双方に取材したところ、状況がすぐに好転すると信じている人はほとんどいなかった。

 

経済的な怒りが政府に対する新たな抗議活動の波を引き起こす可能性があるという意見や、今年1月に起きた前回の抗議デモに対して行われたのと同じような凄惨な弾圧が新たに加わるとの観測もあった。

 

さらに恒久的な合意は今後の交渉に先送りされたため、戦争を終わらせるための今回の暫定合意の効力が夏を越せるという確信を持っている人はほとんどいない。

 

<経済的困窮>

イラン中部イスファハンでメディア制作企業を経営するアミールさん(34)は「99%の人々が生き延びることだけを考え、ただその日暮らしをしているだけだと思う。もはや誰も希望を持っていないし、将来がどのようになるかというビジョンも持てていないと感じている」と打ち明けた。

 

ロイターは、彼らが自由に話せるようメッセージアプリを通じて接触したが、アミールさんを含む数人は当局の怒りを買うことを恐れてフルネームの公表を拒んだ。ただ首都テヘランでカメラ取材に応じた他の数人は、フルネームを明かした。

 

「人々の状況、生活環境は良くなるどころか日に日に悪化している。今、誰に尋ねても『満足している』と答える人などいるだろうか」と、戦争初日に殺害されたイランの故ハメネイ最高指導者の巨大な遺影の近くでメフディ・サバヒさんはカメラに向かって語りかけた。

 

こうした暗い見通しは、イランの統治体制を支持する強硬派には共有されていない。彼らはこの戦争を勝利として描き、イラン国民は不屈で団結していると表現する。とはいえ、彼らの中にもイランはもっと良い条件を要求すべきだったと言う声はある。

 

日刊紙「ソブ・エ・ノ」編集長のサイード・アジョルロワ氏は「われわれがこの合意文書(覚書)に非常に満足しているわけではない。国民はこれ以上のものを求めており、われわれはそのような世論に直面しているのだと伝えなければならない」と言い切った。

 

その上で「わが国民が疲れ果てているとか、疲弊し降伏する構えだと思わないでほしい。それどころかわれわれの姿勢は勝利の姿勢なのだ」と強調した。

 

自分はイランのイスラム神聖政治体制の支持者でも反対者でもないとするテヘランのカフェ店主は、イスラエルとトランプ米大統領の両者が、再びイランを爆撃したがるだろうと考えている。 メッセージアプリで「最終決定されつつあるこの合意には、あまり魅力を感じない。長く続くようには思えない」と答えた。

 

ロイターが取材したほとんどの人々と同様に、このカフェ店主も生活水準の低下を痛感しており、人々が支出を減らしている様子を、最近よく使われるペルシャ語の表現を用いて「食卓を小さくすることに慣れた」と表現した。

 

テヘランの25歳の学生は「全てが悪化し、指数関数的に物価が上がった」と嘆き、自分も友人も、もはやカフェで会う余裕すらなくなったと付け加えた。

 

<新たな弾圧懸念>

イラン政府による新たな弾圧への不安は、少数民族が暮らす場所でとりわけ強い。過去の抗議運動の弾圧において、こうした地域はしばしば最も多くの犠牲者を出してきた。

 

イラン西部のクルド人居住地域に住む3人の男性は、戦争によって貧しくなっただけでなく、さらなる抑圧や不安定な状況がもたらされたと語った。

 

そのうちの1人は「現体制をそのまま残すことは、抑圧的な機構の力を強めるだけだ」と指摘。1月の流血事態によってしばらくは新たな抗議活動は控えられるだろうが、経済的な苦痛によってすぐに新しいデモが発生するとみている。

 

別の25歳の学生によると、戦争初期に米国がイラン体制に対してクルド人による武装蜂起を扇動しようとしているという噂が流れたことで、この地域の状況はさらに悪化した。「戦争はクルド人にさらなる問題を引き起こしただけだった」という。

 

少数民族地域以外の人々も、戦争によって政治的自由が拡大する見通しが損なわれる恐れがあると心配している。

戦争が始まって以来、イランの指導層は街頭での人々の行動を支配しようとしており、都市の中心部には集会を開いたり、殺害された指導者の追悼行事を実施したりする体制支持者があふれている。

 

イスファハンのアミールさんは、そうした支持者らの存在は、国家が日常生活に入り込んでいることを常に思い起こさせるものだと述べた。

 

「イスラム共和国がすぐにどこかへ消え去ることはない。以前から強固に定着していたが、今ではその10倍も深く根を張っている。改革や何かが変わるという希望は、基本的には完全に消え去った」と同氏は語った。【618日 ロイター

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【2026年に入ってからも続く抗議運動関係者への圧力・処刑】

イラン側がアメリカとの停戦合意交渉にのぞんだのも、これ以上の戦争継続で経済状況が更に悪化すれば、国民の不満が爆発しかねないとの懸念があってのことでしょう。

 

経済状況は戦争停止、制裁解除、復興と経済開発のための3000億ドル規模の基金といったことで、今後改善する期待もありますが、人権抑圧状況が緩和する兆しはありません。

 

イラン国内においては、20229月に服装規定違反の疑いで逮捕されたマフサ・アミニさんが拘留中に死亡し、抗議デモが各地で起きた事態、20251228日の首都テヘランでの経済抗議デモを機に、体制への不満も噴出した大規模な反政府運動が全土に拡大した事態などに対し、政権側は容赦ない鎮圧行動をとり、数千人規模の犠牲者を出したとも言われています。

 

当局は革命防衛隊(IRGC)、治安部隊、民兵組織バシジを投入して“力”で鎮圧、以後も活動家や遺族への圧力が続いています。2026年に入ってからも抗議運動参加者とされる人物の処刑が続いています。

 

****演奏配信でむち打ち74回、女性歌手ら8人に有罪判決 イラン****

イランの裁判所は、ユーチューブでパフォーマンスをライブ配信したとして、著名女性歌手とミュージシャンら計8人に対し、それぞれ鞭打ち74回の判決を下した。関係者や現地メディアが明らかにした。

 

演奏は、伝統的なキャラバンサライ(隊商宿)で行われた。大きなペルシャじゅうたんが一枚だけ敷かれた薄暗いステージの上で、同国の著名歌手パラストゥ・アフマディ氏は観客のいない客席に向けて、力強くも哀愁を帯びた歌声を響かせた。 アフマディ氏が歌い、ピアニスト、ドラマー、ギタリスト、ベーシスト楽曲を演奏した。

 

イランでは、女性が公の場で歌うことが禁止されており、また控えめな服装とヘジャブの着用が義務付けられているが、アフマディ氏はストラップ付の黒いロングドレスと深紅の口紅を身にまとっていた。全員が黒い服で演奏に臨んだ。

 

ライブ配信は、202412月に行われ、これまでに300万回以上再生された。他のチャンネルでも数万回以上視聴されている。

 

ビデオグラファーのタハミネ・モンザビー氏は18日、インスタグラムへの投稿で「全員に2年間の芸術活動禁止、出国禁止、そして鞭打ち74回の判決が下った」と説明した。

 

アフマディ氏、モンザビー氏、ミュージシャン、および制作に関わったスタッフらは、映像配信から数日後に拘束された。地元メディアは当時、保釈を伝えていたが、司法当局の公式ニュースサイト「ミザン・オンライン」によると、「法的および宗教的基準を遵守せずに音楽を演奏した」として訴追されたことを明らかにしていた。

 

ミザンやその他の公式ウェブサイトは、判決について公式に確認していないが、同国のオンラインニュースメディア「エムテダード」も18日、このニュースを報じた。(中略)

 

オンラインニュースメディア「エムテダード」は「判決はコム州の刑事裁判所によって下された。インターネット上で下品かつ不道徳なコンテンツを制作・公開し、公序良俗を乱した」として有罪と判断されたと伝えた。

 

イランでは、20229月に服装規定違反の疑いで逮捕されたマフサ・アミニさんが拘留中に死亡し、抗議デモが各地で起きた。それ以降、ヘジャブを着用せずに公の場に現れる女性が増加している。

アフマディ氏が歌った曲には、当局への抗議デモで拘束されたイランの若者たちに言及する歌詞も含まれていた。【621日 AFP

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****司法系ニュースメディアによると、イランは20261月の抗議活動で2人の男性を処刑【自動翻訳】****

イランは、司法機関のニュースメディアミザンが火曜日にシャフルード県で「2026年初頭の騒乱の武装指導者」とされる2人を処刑したと伝え、被告をジャヴァド・ザマニとアボルファズル・サエディと特定した。

 

二人はモハレベ(神に対する戦争)、地上の腐敗、公私財産の損害、国家安全保障に対する犯罪で有罪判決を受けました。【616日 ロイター

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【外敵との戦争という大義名分を得たことで抑圧を加速する政権】

イラン体制の人権抑圧体質への懸念は以前からのものですが、戦時体制下でその抑圧体質が加速しているとの懸念があります。

 

****イラン、抗議デモ参加者の死刑執行 戦火の影で抑圧加速****

イランで(4月)6日、1月の全国的な抗議デモに関連する罪で有罪判決を受けた男性の死刑が執行された。イランでは、米・イスラエルとの武力衝突を背景に、政治犯と見なされる自国民の処刑が続いている。

 

人権団体によると、男性(23)は、抗議活動中に起きた革命防衛隊傘下の民兵組織「バシジ」のテヘラン基地への攻撃に関与したとして有罪判決を言い渡された。

 

司法当局系のウェブサイト「ミザン・オンライン」は、男性が「テロリストの暴動における敵要員の一人」だったとし、最高裁による承認を受けて絞首刑が執行されたと伝えた。 事件では7人が死刑を言い渡され、10代の少年2人を含む4人がすでに処刑されている。

 

ノルウェーに拠点を置く人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ(IHR)」は、過去8日間で10人の「政治犯」が処刑されたとし、4人が抗議デモに関連する罪で、別の6人が非合法化された反体制組織「イスラム人民戦士機構(MEK)」に所属していた罪で処刑されたと説明した。

 

IHRによると、男性らは「拷問を受け、弁護士へのアクセスを拒否された」とし、「極めて不公正な」迅速裁判で死刑を宣告されたという。

 

IHRのマフムード・アミリモガッダム代表は「一連の処刑は、地域の紛争の影の下で自国民に対して戦争を仕掛けるというイスラム共和国の生存戦略の一環だ」と指摘した。

 

アムネスティ・インターナショナルも、処刑が「恐怖を広め、根本的な政治変革を求める者たちに復讐するための抑圧の道具」になっていると述べている。【47日 時事

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****イランの人権問題を取り巻く環境*****

イランの国内情勢、特に人権問題を取り巻く環境は、相次ぐ大規模デモの武力鎮圧と、それに続く対外的な軍事衝突という「二重の危機」によって、現代イラン史上最悪とも言われる過酷な局面を迎えています。

 

2022年のマフサ・アミニさんの事件(「女性・生命・自由」運動)に続き、202512月末には通貨リアル暴落と深刻なインフレを端緒とした大規模な経済抗議デモがテヘランのバザール(市場)から発生しました。

 

これが瞬く間に現体制の退陣を求める全土的な反政府運動へと発展し、政権側は「建国以来最大規模」とも言われる容赦ない武力鎮圧を敢行。国際機関や人権団体の報告では、この数ヶ月で数千人から数万人規模の犠牲者、数万人規模の拘束者が出たと推定されています。

 

この凄惨な国内鎮圧に加え、直近(20262月以降)のアメリカ・イスラエルによるイランへの軍事攻撃(戦争状態への突入)が、国内の人権状況をさらに決定的に悪化させています。現状は以下の4つの側面から整理できます。

 

1. 革命防衛隊(IRGC)の権力肥大化と「国家安全保障」の武器化

対外的な戦争状態に突入したことで、保守強硬派、特にイスラム革命防衛隊(IRGC)の影響力は最高潮に達しています。

 

体制側は現在の状況を「戦時下」と定義し、すべての国内反体制派や不満分子を「外敵(アメリカやイスラエル)に協力するスパイ・テロリスト」と同一視するロジックを強化しました。これにより、平時であれば一定の配慮が必要だった国際社会からの批判を完全に無視し、身柄拘束や資産没収、死刑執行を「国防」の名目で正当化・迅速化しています。

 

2. 司法手続きの形骸化と政治的処刑の急増

人権団体(アムネスティ・インターナショナル等)の報告によると、デモ参加者、ジャーナリスト、弁護士、人権活動家らに対して、弁護人の立ち会いや適切な弁護活動を認めない「不当な即決裁判(見せしめ裁判)」が加速しています。

 

拷問と強制自白拘束された人々への拷問や隔離拘禁が常態化しており、テレビ等で強制的に「罪の告白」をさせる古典的な手法が再び急増しています。

 

死刑適用の拡大ネット上での反政府的な書き込みや活動を「間諜行為(エスピアナージ=死刑対象)」と厳罰化する司法判断が下されており、政治的動機による処刑のペースが跳ね上がっています。

 

3. 歴史上最長規模の「インターネット遮断」と情報統制

国家体制の異質さを象徴するのが、徹底した情報封鎖です。政権側は、国内の凄惨な鎮圧の様子や軍事被害が外部(および国内他地域)に拡散するのを防ぐため、20265月下旬に一部制限付きで再開されるまで、実質約3ヶ月(88日間)に及ぶ大規模なインターネット・通信遮断を行いました。

 

 通信手段を奪われた市民は完全に孤立し、人工衛星経由のネット通信端末(スターリンクなど)の所持・使用に対しても「死刑に値する犯罪」として最高刑を科すなど、徹底した情報隠蔽と恐怖政治が敷かれています。

 

4. 女性や社会的少数派への抑圧の継続

アミニさんの事件以降、多くの女性たちがノーヘッドスカーフ(ヒジャブ未着用)で街に出るなど、命がけの抵抗を続けてきましたが、現在の戦時体制・強硬派主導の社会において、監視の目はさらに厳しくなっています。

 

女性のみならず、クィア(LGBTQ+)コミュニティやクルド人などの民族的・宗教的少数派は、反体制派の温床として優先的に標的とされ、過酷な処罰にさらされています。

 

現在のイランは、「経済崩壊による国民の怒り」と、それを力でねじ伏せる「戦時下を隠れ蓑にした革命防衛隊の独裁」が極限まで衝突している状態です。

 

外敵との戦争という大義名分を得たことで、現政権は国民の基本的人権や生存権を文字通り「完全に圧殺」する体制へと変貌を遂げており、国際社会による監視や人道介入のハードルもかつてないほど高くなっています。【621日 Gemini

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「戦争」により政権が国民の基本的人権や生存権を文字通り「完全に圧殺」する体制へと変貌を遂げた一方で、都市部を中心に女性の権利拡大や社会自由化を望む層も依然として大きいため、今後の政治体制がより軍事・治安機関主導へ向かうのか、それとも経済再建のため一定の改革へ向かうのかが大きな焦点になっています。

 

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キューバ  革命以来で最大級の経済改革 市場経済の導入 体制維持のため中国・ベトナム型へ転換か

(2026612日、キューバのハバナで、生活必需品の不足が深刻化する中、人々が空の容器を積んだ荷車を押して水を汲みに行く。写真:AP通信 【616日 Vietnam.vn】)

 

【停電・断水 “生き延びるので精いっぱい”のキューバ国民】

トランプ大統領は1月から反米社会主義政権のキューバへの石油輸出を遮断し、武力行使もちらつかせて社会主義の放棄を要求しています。トランプ大統領は「私はやりたいようにできる」と豪語しています。

キューバの追い詰められた状況は521日ブログ“キューバ  米海軍の空母打撃群がカリブ海に配備 ラウル・カストロ氏殺人罪起訴などの揺さぶりも”でも取り上げました。

 

首都ハバナですら1日に最長で2022時間の停電が頻発しているといい、病院や学校もまともに機能していません。

更に電気が止まると水道システムも止まります。

 

****水も電気も逃げ場もないアメリカの「兵糧攻め」に遭うキューバの今****

キューバの首都ハバナで、路上の給水車からペットボトルに水を詰める男性。

キューバに政治体制変更を迫る米政府は1月以降、制裁を強化しており、そのエネルギー封鎖で水道施設が深刻な打撃を受けているためだ。

 

石油輸入減少による電力不足で水のくみ上げから配管管理まであらゆる水道システムが滞り、市民を苦しめている。【61日 Newsweek

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人々は文字どおり“生き延びるので精いっぱい”の状況です。

 

****停電・断水キューバ困窮 現地住民が実情語る****

アメリカのトランプ大統領が、イランの次の標的として圧力を強めているカリブ海の島国キューバ。経済制裁で停電が続くなど、過酷さを増す生活の実情を、現地の住民が語りました。 

 

「生き延びるので精いっぱいです」

キューバ西部在住・アナさん 「キューバの生活は日々ますます悪化しています。生き延びるので精いっぱいです」 リモートインタビューで厳しい現状を訴えたのは、キューバ西部に住むアナさん。4歳の息子を育てていますが、石油不足などで大規模な停電が続き、深刻な状況だと話します。 

 

キューバ西部在住・アナさん 「5月は4050時間も停電が続き、復旧してもたった23時間だけです。(さっき)電気が復旧したから、少しは水が使えるようになりました。電気がないと何もできません」 これはアナさんが送ってくれた動画。電気調理器が使えないため、調理には炭を使います。この短い動画を送るためにも電力復旧を何日も待たなければなりませんでした。

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停電で水をくみ上げることもできないため、こんな工夫も。 

キューバ西部在住・アナさん 「雨が降ったら、パイプをつたって桶に水がたまる仕組みを、夫が作ってくれました。洗濯やトイレなどに使います」 さらに、家の外では… 

 

キューバ西部在住・アナさん 「ゴミ収集車に燃料がないので、ゴミが回収されないんです」 放置されたゴミが散乱していました。

 

深刻な石油不足トランプ政権による制裁強化の影響

深刻な石油不足は、トランプ政権による制裁強化の影響です。 今年1月、ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束・連行したトランプ政権は、ベネズエラからキューバへの石油供給を遮断。さらに、キューバに石油を供給する国に対し追加の関税を課すと発表して“石油封鎖”を行っているのです。

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トランプ大統領 「次はキューバだ。キューバはめちゃくちゃになる。そう遠くないうちに崩壊するだろう」 トランプ大統領は、キューバがロシアや中国、イランなどの国々やテロ組織と連携していると主張。圧力を一段と強め、アメリカに近い体制への政権交代を狙っているのです。

 

「キューバ危機以来、最も緊張」専門家

専門家は次のように話します。 フロリダ国際大学 キューバ研究所 セバスチャン・アルコス所長 「1962年のキューバ危機以来、両国間の関係が最も緊張しているといえます。キューバでの人道的な崩壊を防ぐためには、かなり迅速に行動する必要があると思います」 トランプ政権が武力行使の可能性もちらつかせる中、緊迫度は日に日に増しています。【66日 日テレNEWS

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【アメリカ 水面下の接触も 制裁圧力強化】

キューバに体制転換を迫るトランプ政権ですが、体制崩壊の混乱は大量の難民がアメリカに押し寄せることにもなり、アメリカとしても歓迎しないところでしょう。 できればベネズエラのようにアメリカに協力的な政権にソフトランディングしてくれるのが一番望ましいと考えているでしょう。

 

軍事的侵攻は・・・どうでしょうか。

 

****米軍、対キューバで机上演習 政権崩壊に備え****

米ニュースサイト「アクシオス」は28日、米当局者の話として、トランプ政権はキューバの現政権が今夏にも崩壊する可能性に備え、軍事的対応に関する机上演習を行ったと報じた。    

 

アクシオスによると、中南米やカリブ海を管轄する米南方軍が先月行った机上演習では、キューバが保有する無人機や騒乱発生への対応も議論した。ただ、米当局者は「あらゆることがテーブルの上にあるが、(キューバ)侵攻は計画していないし、差し迫ってもいない」と語った。【529日 時事】 

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アメリカ要人がキューバに存在するグアンタナモ米海軍基地などを訪問し、キューバ側との接触も行われています。

 

****米国防長官、グアンタナモへ キューバ軍と接触注目****

米国防総省は9日、ヘグセス長官がキューバにあるグアンタナモ米海軍基地を10日に視察すると発表した。トランプ政権が反米姿勢の転換を狙ってキューバに圧力をかける中、キューバ軍当局と接触するかどうかが注目される。

 

中南米を管轄する米南方軍のドノバン司令官は5月、グアンタナモ基地周辺で複数のキューバ軍高官と会談。両国の軍高官による会談は異例で「任務の安全上の課題」について意見交換した。

 

中央情報局(CIA)のラトクリフ長官も5月にキューバを訪問。米側は対話と圧力で体制に揺さぶりをかけている。(後略)【610日 共同

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アメリカはキューバ指導層への圧力も強化しています。1996年にキューバの戦闘機が亡命キューバ人グループが運航する航空機を撃墜した事件への関与を理由に、ラウル・カストロ氏を殺人罪で起訴したのに続き、ディアスカネル大統領にも‌制裁を科しています。

 

****米、キューバ大統領に制裁 「卑劣」と外相反発****

米国は4日、キューバのミゲル・ディアスカネル大統領(66)に制裁を科した。米財務省のウェブサイトで明らかになった。制裁は、ディアスカネル氏の妻リス・クエスタ・ペラサ氏、カストロ家の2人を含む4人と、キューバ革命軍事省など5団体も対象になった。(中略)

政府はこのところ、共産党体制下にあるキューバ指導部への圧力を強めている。

制裁の発表に際し、トランプ米大統領は記者団に対し、米国はキューバが「うまく統治された国になる」ことを望んでいると述べた。

これに対し、キューバのロドリゲス外相は交流サイト(SNS)への投稿で、今回の制裁を「卑劣」と非難した上で、米国による干渉の最新の例だと強調。「両国間に対立の構図を作り出そうとする米国のあらゆる行動は失敗する運命にある」と語った。

米政府は先月も、キューバの通信相や複数の軍指導者、主要情報機関を含む11人の当局者に制裁を科した。(後略)【65日 ロイター

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キューバ経済の根幹を担う国営石油会社にも制裁を。

 

****米、キューバ国営石油会社に制裁 燃料不足深刻化の恐れ****

米財務省は11日、キューバの国営石油会社「ウニオン・クーバ・ペトロレオ(CUPET)」に対する制裁を発動したと明らかにした。同社はキューバの石油生産、精製、燃料輸入を担っており、キューバの燃料不足が一段と深刻化する恐れがある。 

ルビオ米国務長官は交流サイト(SNS)への投稿で「キューバの共産主義エリートはエネルギーを、社会統制と腐敗利益の手段として利用してきた」とし、「キューバ政権は何十年にもわたり入手可能な燃料を横領し、囲い込み、カストロ一族の専用機や国民抑圧に用いられる治安機関、観光客のいないホテルの照明維持のほか、見せかけの抗議や政治的演出のための動員に使用してきた。その一方で国民は停電に苦しみ、給油のために数週間待たされている」と記した。 

ルビオ長官はキューバ移民の息子で、米フロリダ州マイアミ出身。キューバでは米国の厳格な禁輸措置により数カ月にわたり原油や燃料の供給が途絶え、発電用を含め深刻な燃料不足に直面している。【612日 ロイター

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【市場経済の導入 キューバ革命以来の改革】

上記のようなアメリカの圧力で追い込まれた形のキューバは、従来の社会主義経済の幅広い部分に市場経済の仕組みを取り込む改革を実施する計画を発表しています。

 

****建国以来のキューバの社会主義経済モデルが変わるかも?****

キューバのマレロ首相は18日、共産党とラウル・カストロ元国家評議会議長の支持を得た抜本的な経済改革案を議員らに提示した。米国による過酷な制裁を生き抜くために、キューバが1959年の革命以来堅持してきた社会主義経済モデルの幅広い部分に市場経済の仕組みを取り込む。

 

改革案は、民間による不動産開発に道を開き、国営企業を株式や持ち分を持つ民間営利企業へと衣替えさせ、かつて国家が独占していた金融セクターへの民間銀行の参入を許可するといった内容だ。

 

またこれらの措置により、キューバの民間企業や起業家に対する許認可や各種申請などの行政上の手続きも大幅に削減されることになる。

 

マレロ氏は議員らに対し、改革は市場原理を「資源の効率的な分配のための手段」として認めるものだと説明した。これはキューバの共産党幹部としては極めて異例の譲歩と言える。

 

一方で「これらの変革は、われわれの社会主義プロジェクトから逸脱するものではなく、反対にその発展に対応する。経済・社会モデルの刷新は、同胞の生活の質を向上させるという本質的な目的を持っている」と強調した。

 

改革を実施するには今後、議会の承認が必要となる。

トランプ政権による数カ月に及ぶ石油封鎖を含む厳しい制裁は、既に低迷していたキューバ経済に打撃を与えており、こうした米国からの重圧を受けて改革を推進せざるを得なくなったとみられている。

5月に米国が殺人罪で起訴したラウル・カストロ氏はこの改革を「有益」と評価し、迅速な実施を促した。【619日 ロイター

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キューバ議会はこの改革を承認しました。

アメリカは「遅きに失した表面的なもの」だと批判しています。

 

****キューバがアメリカに「譲歩」か、市場開放につながる経済改革案を承認米側は「遅きに失し表明的」と批判****

社会主義国キューバの人民権力全国会議(国会)は18日、国営企業の民営化や外国からの投資促進など市場開放につながる経済改革案を承認した。キューバの改革を求めて事実上の石油禁輸措置を長期化させている米国に対し、譲歩したとみられる。

 

マヌエル・マレロ首相が18日、国会で改革案を提案した。改革案では、最大100人までとしていた民間企業の規模を制限しないことや民間銀行の参入を許可することが盛り込まれた。民間企業による不動産開発、輸出入の規制緩和も進めるとしている。

 

キューバでは米国の制裁下で国民生活が窮乏している。マレロ氏は、「歴史上、最も困難な局面にある」と認め、改革案について「社会主義からの逸脱ではなく、国民の生活の質を向上させることを目的にしている」と述べた。

 

米国はキューバに対して政治・経済体制の転換を要求し、圧力を強めてきた。実際に改革案が実行されれば、1959年のキューバ革命から続く社会主義経済の転機となる可能性がある。

 

ただし、米国務省当局者は19日、本紙に対し、今回の改革案は「遅きに失した表面的」なものだと批判しており、米国は圧力をかけ続ける構えだ。【620日 読売

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アメリカ国務省当局者は「独裁体制の常とう手段だ。(改革を実行して)体制の全面的な支配が脅かされれば即座に撤回する」だろうと指摘しています。

 

【「アメリカの要求への屈服」というよりは、「制裁と経済崩壊を前に、体制そのものを守るために中国・ベトナム型へ大きく舵を切った」】

今回の市場経済導入の改革は、アメリカへの「譲歩」というより、行き詰ったキューバ経済再生のためキューバ自身が必要としている内発的改革の一環であり、キューバはこれまでも部分的に市場経済を導入する改革を行ってきています。

 

*****「アメリカの要求を受けて」「アメリカへ譲歩」とばかりは言い切れない体制維持のための市場経済導入改革****

今回の改革は「アメリカに言われたから市場経済化する」という単純な話ではなく、主因はキューバ経済の深刻な危機に対応するための内発的な生存戦略です。ただし、その危機を決定的に悪化させている要因の一つがアメリカの制裁強化であり、結果として「米国の圧力が改革を促した」という側面もあります。 

 

今回発表された内容を見ると、キューバ指導部自身が改革の理由をかなり率直に説明しています。

民間不動産開発を認める、国有企業を株式会社化できるようにする、民間銀行を認可する、海外在住キューバ人の投資を認める、市場による資源配分を一定程度認めるなど、1959年革命以来で最大級の経済改革です。

 

首相マレーロは市場を「資源を効率的に配分する手段」とまで表現しました。これは従来のキューバ共産党では極めて異例です。 

 

しかし同時に、「社会主義からの逸脱ではない」「社会主義を発展させるための改革だ」と強調しています。 

つまりキューバ政府の自己認識としては、「中国型・ベトナム型の社会主義市場経済への接近」であって、「東欧や旧ソ連のような資本主義化」ではありません。 

 

ではなぜ今なのか。

背景には近年の経済危機があります。長年の低生産性、外貨不足、食料不足、電力不足と大規模停電、観光収入の低迷、若年層の大量国外流出、ベネズエラからの支援縮小などが重なっています。

 

2020年代後半には社会インフラそのものが危機的状況に陥り、抗議デモも発生しています。 

 

特に2025年以降のトランプ政権下では制裁が再強化され、キューバ政府高官への追加制裁、軍系企業グループへの圧力、外国企業との取引制限、投資や金融取引への締め付けが強まりました。 

 

そのため今回の改革は、「米国の要求を受け入れた」というより、「米国の圧力で窒息しそうになったので、体制維持のため市場メカニズムを導入せざるを得なくなった」と見る方が実態に近いと思われます。 

 

さらに重要なのは、キューバには実は市場化の蓄積が既にあることです。

1990年代の「特別期間」、ラウル・カストロ時代の2011年改革、2019年憲法での私有財産承認、中小企業の合法化など、少しずつ市場経済要素を取り入れてきました。

今回の改革は突然の方向転換ではなく、その延長線上にあります。 

 

興味深いのは、中国やベトナムとの比較です。

キューバ指導部は近年、「中国・ベトナム方式」を公然と参考にしていると認めています。つまり、共産党一党支配は維持、政治改革は行わない、経済だけ市場化する、外国資本を導入するという路線です。 

 

したがって今回の改革は、「アメリカの要求への屈服」というよりは、「制裁と経済崩壊を前に、体制そのものを守るために中国・ベトナム型へ大きく舵を切った」と理解するのが最も実態に近いでしょう。むしろキューバ共産党にとっては、「社会主義を捨てるための改革」ではなく、「社会主義政権を延命するための改革」と位置付けられています。【619日 ChatGPT

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ウクライナ  イランを終えてトランプ大統領の関心ももどる? ロシアに過去最大の攻撃 勝負に出る?

(2026618日:ウクライナ軍のドローンの直撃を受け激しく炎上するモスクワ製油所。【619日 AP】 住民の頭上をドローンが飛び交い、地上からロシア側が迎撃する・・・という形で、モスクワが戦場と化しています)

 

【トランプ大統領「今度はウクライナ戦争終結に焦点」 従来よりロシアに厳しい姿勢も】

イラン情勢については、イスラエルのレバノンでの動きなど不確定要素があり、60日間の交渉で最終合意が得られるかも定かではありませんが、とにもかくにも一応の覚書合意ができたことで、トランプ大統領の関心がウクライナに戻ってきた・・・と見る向きがあります。

 

****トランプ大統領「ロシアは和平合意すべきだ」 “重要な転換”との見方も ウクライナめぐり圧力強化 “制裁復活”にも言及 ゼレンスキー氏との会談後に****

アメリカのトランプ大統領はウクライナでの戦闘をめぐり「ロシアは和平に合意すべきだ」と述べ、ロシアへの圧力を強めました。 (中略)

 

トランプ大統領は16日、ウクライナのゼレンスキー大統領との会談後にこのように述べたうえで、イラン情勢を受けて緩和していたロシア産原油への制裁を復活させる可能性にも言及しました。 ゼレンスキー氏はトランプ氏との会談に先立ち、G7首脳会議に加わりウクライナ情勢を話し合っていました。

 

アメリカのブルームバーグ通信はトランプ氏の発言について、ロシア寄りだった姿勢からの「重要な転換を示している」との見方を伝えています。【617日 TBS NEWS DIG】

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「イラン問題が終わったので、今度はウクライナ戦争終結に焦点を当てる」「それも片付けられるかやってみよう」といったトランプ発言があったとか。【616日 Yenişafak English AAより】

 

またゼレンスキー大統領によれば、会談の中でトランプ氏は「ロシアは戦争に勝っていない」と発言し、アメリカがウクライナをさらに支援することにも前向きだとの認識を示したとされています。 

 

このため欧州首脳は、これまで「ロシア寄り」とされていたトランプ氏の対ロシア姿勢に「変化」が見られると評価しました。

フランスのマクロン大統領は「アメリカのアプローチに非常に大きな変化があった」と述べ、カナダのカーニー首相も「ウクライナに関する米国のトーンの変化を感じた」と語っています。 

 

注目されたのは、トランプ大統領が従来よりもロシアに厳しい発言を行い、ゼレンスキー氏との関係改善を印象づけた点でした。 

 

なお、会談のきっかけとしては、ゼレンスキー氏がロシア軍によるキーウ攻撃の写真(世界遺産に登録されているキリスト教ウクライナ正教会のペチェールシク大修道院の火災)を示し、民間被害の実態を直接説明したことが、トランプ氏の態度変化に影響した可能性があると複数の報道で指摘されています。【619日 ChatGPTより

 

アメリカはNATOが米国製武器を購入して、ウクライナ支援を継続することを求めています。支援というより「米国製品を買え」という方に力点があるのか・・・

 

****米国防次官、NATOにウクライナ支援継続要請 米製兵器購入で一段の強化****

エルブリッジ ・コルビー 米国防次官 (政策担当)は18日、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し、ウクライナへの防衛支援を継続するとともに、米国製の兵器を購入することで支援を強化すべきだと述べた。

 

コルビー氏は、NATO本部で開催されたウクライナ問題に関する会議にビデオ形式で参加し、「NATO加盟国がウクライナ優先要求リスト(PURL )構想を通じてウクライナの防衛支援を継続し、さらに強化することが重要だ」との考えを表明。「これにより、重要装備品がウクライナの前線に確実に届けられ、ウクライナ軍はロシア軍のさらなる進攻を阻止できるようになる」と述べた。【619日 ロイター

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【欧州もウクライナ継続支援】

ひと頃はウクライナ支援疲れも見えた欧州側も、ウクライナを支えていく姿勢を改めて見せています。

 

****ウクライナ、独と弾道ミサイル迎撃巡り協定 同盟国は10億ドル拠出表明****

ウクライナのゼレンスキー大統領は18日、同国とドイツが弾道ミサイル迎撃能力に関する協定に署名したと発表した。他の西側同盟国にも参加を呼びかけるとともに、冬までに成果が見られることを期待すると述べた。

ゼレンスキー氏はウクライナ国防コンタクトグループ(通称ラムシュタイン・グループ)の会合で、同国は長距離砲と無人車両を緊急に必要としていると説明。ウクライナ軍の長期的な資金調達に向けた追加的な金融手段の構築も要請した。

「ロシアの弾道ミサイルは依然として問題であり、われわれはそれに対する解決策を必要としている」とし、この冬までに、弾道ミサイル防衛に関する具体的な成果が見られるはずだと述べた。

無人車両はドイツで生産される見通し。ドイツのピストリウス国防相は、複数のドイツ企業がこのプロジェクトに関心を示していると述べた。

ウクライナの同盟国は同会合で、北大西洋条約機構(NATO)の「ウクライナ優先必要品リスト(PURL)」プログラムについて10億ドルの拠出を発表した。ウクライナのフェドロフ国防相が明らかにした。

フェドロフ氏は会合後の共同記者会見で、支援パッケージの総額は40億ドルを超える可能性があると述べた。【619日 ロイター

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ウクライナのドローン戦での優勢やロシア深部への攻撃が伝えられるなかで、ウクライナは依然としてロシアの弾道ミサイル攻撃に対し、迎撃ミサイルが不足し苦しんでいます。

“ウクライナの空の守りに綻び 足りぬ迎撃ミサイル、世界遺産も被害”【616日 日経

 

****イギリスがウクライナにドローン15万機供与へ 過去最大級 支援の規模約1600億円ロシア凍結資産の収益が財源****

イギリス政府は18日、ウクライナ向けとして過去最大級となる15万機のドローンを、年末までに提供すると発表しました。

 

イギリス国防省によりますと、支援の規模は75200万ポンド、日本円で約1600億円で、ウクライナ製のドローン15万機に加え、350発以上の防空ミサイルやレーダーが含まれます。 財源は、凍結ロシア資産の収益を裏付けとした融資です。

 

今回の支援はNATO=北大西洋条約機構の国防相会合に合わせて発表され、イギリスはウクライナの防空能力を強化する方針です。【619日 FNNプライムオンライン

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“ウクライナ支援”とは言っても現実問題として先立つものはカネ・・・ですから、アメリカは欧州に出させようとするし、欧州は凍結ロシア資産を活用しようといったところです。

 

いずれにしても、トランプ大統領がウクライナへの関心を回復し、ロシアに対し従来より厳しい姿勢も見せている、欧州もウクライナ支援を継続する姿勢・・・というのは、昨今のウクライナ側優勢への「潮目の変化」を多分に反映したものでしょう。

 

525日ブログ潮目が変わったウクライナ戦争  ウクライナが領土奪還 ロシアを長距離攻撃 米の制御力弱まる

613日ブログ“ウクライナの攻勢で補給路を絶たれつつあるクリミア 綻び始めたプーチン独裁体制

 

【強気のゼレンスキー大統領 「ウクライナが燃えるなら、ロシアの首都モスクワも燃えることになる」 ロシアへの過去最大攻撃 国際社会の関心を喚起すべく“勝負に出てきた”?】

ゼレンスキー大統領の言動も“強気”姿勢に。

 

****ロシアの攻撃続けば「モスクワは燃える」、ゼレンスキー氏が警告****

ウクライナのゼレンスキー大統領は18日、首都キーウの世界遺産「ペチェルシク大修道院」がロシアによる攻撃で被害を受けたことの報復として、ロシアに対するドローン(小型無人機)による大規模な攻撃を実施した述べ、ロシアによる攻撃が続けば「首都モスクワは燃える」と警告した。

 

この日はロシアがウクライナの首都キーウをミサイルで攻撃し、ウクライナはロシアの首都モスクワなどに対するドローン攻撃を実施。双方の攻撃の応酬が続く中、ロシアのラブロフ外相が、ウクライナによるモスクワに対する攻撃を受け、ロシアはウクライナに対する大規模攻撃を定期的に実施すると述べるなど、事態は収拾に向かっていない。

 

ゼレンスキー大統領は記者向けのワッツアップ・グループに送った音声メッセージで「ウクライナはこの戦争を望んでおらず、一度も望んだことはない。このことは誰もが知っており、パートナー諸国も理解している」とした上で、「ウクライナが燃えるなら、ロシアの首都モスクワも燃えることになる」と警告した。

 

ゼレンスキー氏はこの日、ブリュッセルで開かれるウクライナ支援国会合に出席。制裁措置を通してロシアに対する圧力を強化し、プーチン大統領に戦争終結を迫るよう改めて呼びかけた。【618日 ロイター

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単に強気の発言だけでなく、実際にこれまでにない攻撃をロシアにしかけています。

 

****ウクライナ無人機、過去最大1000機 モスクワで「石油の雨」****

ロシア国防省は18日、過去24時間でウクライナ軍の無人機約1000機を撃墜したと発表した。ロシアの独立系メディア「アゲンツトボ」によると、ウクライナ軍が1日に使用した無人機の数としては過去最大。この攻撃で首都モスクワ郊外の製油所で大規模火災が発生し、住民は「石油混じりの雨が降った」と訴えた。

 

アゲンツトボによれば、これまでロシア軍が1日に使用した無人機は最大約950機で、今回の攻撃はこれを上回る。ウクライナ軍は無人機の増強を急速に進め、1カ月当たりの数でも3月に初めてロシア軍を超えた。ウクライナは3月だけでロシアより1000機以上多い7551機を攻撃に使ったという。【619日 時事

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ゼレンスキー大統領は、G7でのトランプ大統領との会談にも見られるようなウクライナ問題に対する国際社会の関心を喚起したい狙いで“勝負に出てきた”という見方も。

 

****首都モスクワにも着弾なぜ可能に?ウクライナ“過去最大”の攻撃****

アメリカとイランが停戦へと歩みより、世界が一息ついたのも束の間、ウクライナがロシアに対し、過去最大規模の攻撃に出ました。モスクワ中心部から15キロほどの所にある石油の精製施設は攻撃によって炎上し、激しく黒煙が上がりました。ロシアに対して一気に攻勢に転じたウクライナの狙いとは。

 

黒煙に包まれ対象はロシア全土か

CNN 「重要な石油精製施設も標的となり、今週だけで2回目の攻撃です。ウクライナによるロシア全土への大規模攻撃の一環とみられます」

 

モスクワ市内にある石油関連施設が18日に攻撃を受けました。ロシアの国営メディアすらも「モスクワに対する攻撃では、ここの2年間で最大規模」としていて、全面侵攻が始まって以来、この4年余りでウクライナ側による最大の攻撃だったことは間違いないようです。(中略)

 

ゼレンスキー大統領 「これはロシアによるウクライナの街や地域社会への攻撃に対する当然の報復であり、我が軍による大きな戦果でもある」

 

占領地ではガソリン不足も

ウクライナはここ最近、ロシア領内の石油関連施設への攻撃を立て続けに行っています。ロシア国防省はこの日「900機以上のドローンを撃墜した」としています。16日にもドローン60機を使い、航空燃料などを扱う石油関連施設を破壊したばかりです。

 

ロシアの戦費を支え、戦時経済を回す源泉になっている石油。そこへの攻撃の効果は着実に出ています。

GDTD 「ロシアの約10地域から燃料不足の報告が出ている。ドローン攻撃によって生じた燃料不足に対処するため、ガソリンを輸入する計画を立てている」

 

ロシアが占領しているクリミアで先週撮影された映像。ガソリンスタンドには長い行列ができていました。

英王立防衛安全保障研究所 セスクリア上級研究員 「ウクライナ側には軍事的には重要です。侵攻を続けるロシアの継戦能力に大打撃を与える上で、自国の戦力を戦略的に行使できることを示しています」

 

独自進化…AI搭載ドローンまで

ウクライナはこの1年、ロシア領内への直接攻撃を行ってきました。着実に反転攻勢の起点となっていますが、それを可能にしているものは何なのでしょうか。

 

ウクライナ保安庁YouTube 「FPVドローンをロシアへ送り、モジュール式の家屋に隠した」

当初行われていたのは、ロシア領内にドローンを運び入れ、攻撃対象に限りなく近付くという戦法でした。

 

しかしここ最近では、ロシアの防空システムを物量で圧倒させる戦法です。CNNが先月報じたのは

CNN 「ロシア領内を飛行するウクライナのドローン群。画面ではAIが算出した座標が猛烈な速さで明滅している」

 

取材したのはウクライナ国内で展開するドローン部隊です。約400キロ先の目標を攻撃しています。まず飛ばすのはロシアの防空システムを無効化させる囮(おとり)のドローン。

 

ウクライナ 国防省情報総局長 「爆薬を積んだ機体を混ぜて、数百機の囮を飛ばしている。爆薬は少量でも防空システムを破壊するには十分だ」

そして実際に爆撃を行う攻撃型ドローン。さらには撮影用のドローンと、数十機を同時に操作していました。

ウクライナ 国防省情報総局長 「ロシアが我々のシステムを破壊できないのは、集中司令部を持たず、各所に分散しているからだ」

 

可能にしたのは、自国で開発生産したドローンと、スターリンクやAIといったアメリカの最新技術でした。ただ懸念もあります。戦況が変わりつつある中、アメリカがこうした支援を打ち切る可能性はぬぐいきれません。

 

アメリカ トランプ大統領 「我々の関心はイランで、ウクライナは二の次だ。そもそも我々は当事国でなく、武器を売るだけ。はるか遠くのウクライナ戦争は、我々に何の影響もない。ただ、毎月25000人の若い命が失われるのは見過ごせない。私としては手を尽くすつもりだ」

 

クレムリンから15キロの衝撃

ロシア情勢に詳しい、防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

 

Q.このタイミングでの首都モスクワへの攻撃をどうみる)

兵頭慎治さん 「これまでもウクライナはモスクワのみならず、ロシア全土に対するドローン・ミサイル攻撃を続けてきました。今回、ゼレンスキー大統領は、勝負に出てきた感じがします。

 

というのは、ドローンの技術が進化して大規模な攻撃ができるようになったこともありますが、もう1つは政治的なタイミングもあると思います。イランとアメリカで戦闘停止に関する覚書が結ばれた。そして、G7でもゼレンスキー大統領はトランプ大統領と直接会談し、イランが収束した上で、トランプ大統領をはじめ、G7の関心をウクライナに引き戻して、支援を強化したい思いがあります。

 

戦況はウクライナに有利な状況にあるとアピールしながら、ウクライナ問題に対する国際社会の関心を喚起したい狙いがあると思います」

 

実戦もとにドローン技術向上

ウクライナから首都モスクワまでは500キロ以上離れていますが、ロシアメディアによると、16日にはウクライナのドローン60機をロシアの防空システムが撃墜。18日には992機のドローン、さらに長距離ミサイルなども撃墜したとしていますが、撃墜しきれなかったドローンが、モスクワ近郊の石油関連施設を攻撃したことになります。この施設は、クレムリンからわずか15キロほどの距離にあります。また、近くのショッピングセンターにもドローンの破片が落下し、火災が発生したということです。

 

Q.ウクライナのドローン技術は進歩している)

兵頭慎治さん 「ウクライナ戦争は5年目に入りましたが、この期間、ウクライナは実戦経験を元に、ドローンの改良を積み重ねていて、そのスピードも極めて早いです。場合によっては数週間で新しくバージョンアップしたものを開発・生産するところまでこぎ着けています。世界最高水準のドローンの開発・生産国になっていると思われます。

 

ウクライナのドローンはこれまで、ロシア国内の民間通信網を利用しながら遠隔操作をしていました。それに対してロシア側は電波妨害のほか、国内の通信を規制・遮断しながら、ドローン攻撃を避けてきました。ただ、ウクライナは最近、GPSを使ったものや、AIを投入して自律飛行ができるものまで投入していいて、飛行距離も伸び、ピンポイントの精密攻撃ができるようになってきています。そのため、モスクワへのドローン攻撃が激化していく可能性があります」

 

Q.ロシアの防空システムではドローンを防げなくなってきている)

兵頭慎治さん 「59日の対独戦勝記念日、赤の広場での軍事パレードも、ドローン攻撃を恐れて規模を縮小しています。この時はモスクワに防空体制を集中させたと思いますが、今はモスクワが手薄になっている可能性があります。今回は1週間に2回、同じ石油施設がウクライナのドローンに攻撃されています。

 

ロシアは通信規制を強めていますが、若い人たちはスマホなどがないと生活ができなくなってきます。こうした通信規制の観点からも戦争を肌身で感じ始めている。ここもウクライナの狙いだと思います」

 

Q.ドローン戦においてはウクライナが有利。それは今後の戦況にどう影響してくる)

兵頭慎治さん 「現代戦はドローン戦なので、まずここで主導権を握ることが重要になります。ただ、それで戦争を勝利に導くことができるかというと、ロシアに占領された地域を奪還するとなると、ドローンだけではできません。歩兵も投入した形で、前線での領土奪還を行わなければいけません。ただ、ドローン戦で主導権を取らなければ、その先もないので、ウクライナとしてはドローン戦においてロシアを制する動きを強めているんだと思います」

 

全面侵攻から4年超 見通しは

Q.ウクライナが領土を奪還して終戦するためのカギは)

兵頭慎治さん 「ウクライナとロシア、当事者同士の交渉は難しいと思います。ゼレンスキー大統領も呼び掛けましたが、プーチン大統領は相手にしていません。やはりトランプ大統領による仲介が必要ではないかと。

 

イラン問題でトランプ大統領のウクライナに対する関心が大幅に低下していました。今回、イランの問題が収束して、トランプ大統領の関心がウクライナに戻るのであれば、交渉の再開が期待されます。しかし、イラン情勢が本当に落ち着くのかどうか。ウクライナの停戦交渉が復活するかどうかは、そこにかかっていると思います」【618日 テレ朝NEWS

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トランプ大統領による仲介が奏功するかどうかはプーチン大統領の姿勢にもかかってきます。そこで問題になるのはロシアの窮状、プーチン大統領がどこまで戦争を継続できるのか・・・という問題ですが、そこらは長くなるのでまた別機会に。

 

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イスラエル  レバノン駐留を続ける姿勢 17日にもレバノン南部を空爆 部隊展開継続で米と交渉

(イスラエル軍は17日、レバノン南部でさらなる空爆を実施した。【618日 BBC】)

 

【ネタニヤフ首相 トランプ大統領との確執激化】

アメリカ・イランの停戦交渉の最終局面、合意目前という段階で、イスラエル・ネタニヤフ首相がヒズボラを狙ってレバノンのベイルート南郊を攻撃したことでイランが態度を硬化させ、一時は合意が危ぶまれる事態になったとも言われています。

 

中間選挙を控えてアメリカ国内のガソリン価格や物価水準を抑制したい思いから、多少の譲歩はしてもイランとの合意に漕ぎつきたいトランプ大統領と、(戦争を継続しないと自身の裁判が進み政治生命が危うくなる、戦争継続を主張する極右勢力の協力が得られないと政権が維持できない・・・といった事情に加えて)ヒズボラ無力化というイスラエル安全保障にとって譲れない線に固執するネタニヤフ首相の間で“確執”が激しくなったことは多く報じられたところです。

 

“トランプ氏、レバノン空爆のネタニヤフ氏を猛非難「まともな判断力がこれっぽっちもない」”【615日 中央日報

“トランプ氏、ネタニヤフ氏を非難 「非常にやっかいな男」”【615日 CNN

 

****トランプ氏、イスラエルのレバノン作戦批判 民間人犠牲「多すぎ」****

トランプ米大統領は16日、親イラン武装組織ヒズボラを標的としたイスラエルのレバノンでの軍事作戦について、戦闘員を追跡するために集合住宅全体を爆撃する必要はないと述べ、公然と批判した。米国大統領がイスラエルの軍事戦術を批判するのは異例。

 

トランプ氏はここ数日、レバノンの首都ベイルートに対するイスラエルの攻撃がイランとの和平合意を危うくしかねないと不満を示していた。

 

同氏はフランスで開催中の主要7カ国(G7)首脳会議で、イスラエルがヒズボラと「あまりに長く」戦闘を続けていると指摘し、「あまりにも多くの人が殺害されている。誰かを探すたびに集合住宅を破壊する必要はない。そうした住宅には大勢の人がいて、全員がヒズボラというわけではない」と述べた。

 

トランプ氏とイスラエルのネタニヤフ首相の間では最近、緊張が目立つようになっている。イスラエル当局者はトランプ氏とイランの合意について内々に不満を表明している。一方、トランプ氏は和平協議を進める中でイスラエルがベイルートを攻撃し、イランの反撃を招いたことを巡り、ネタニヤフ氏へのいら立ちを募らせている。

 

トランプ氏は、ネタニヤフ氏とは「素晴らしい関係」にあるとしながらも、レバノンに関して「より責任ある」対応を取るべきだと指摘。「米国がいなければイスラエルは存在しない。私がいなければイスラエルは存在しない。他のどの大統領も、私がしたことをやる意思はなかった」と語った。【617日 ロイター

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【かつてないほど孤立し、脆弱に見える】

周知のように、トランプ大統領は“盟友”ネタニヤフ首相の主張を振り切ってイランとの覚書合意に至った訳ですが、これによりネタニヤフ首相はアメリカの圧力に“屈服”するのか、それとも同盟国アメリカと決裂してもイスラエルの安全保障を追求するのか・・・難しい決断を迫られています。

 

14項目の覚書の第1項には次のように“レバノンを含む停戦”が記されています。

“1.米国とイラン、および現在の戦争における両国の同盟国は、本覚書に署名することにより、レバノンを含む全ての前線での軍事行動を即時かつ恒久的に終了することを宣言する。今後、相互にいかなる戦争または軍事行動も開始せず、相互に対する武力による威嚇または武力の行使を控え、レバノンの領土保全と主権を確保することを約束する。最終合意は、レバノンを含む全ての前線での戦争の恒久的終結、および本項のその他の条項を確認するものになる。

 

イラン国営テレビによると、イラン外務省のバガイ報道官は18日、イスラエルのレバノン攻撃が続けば、アメリカによる「覚書における義務違反と見なす」と述べています。

 

****今度はイスラエルが「存立の危機」──トランプがイランとの覚書に署名****

圧倒的な軍事力を誇ってきたイスラエルが、いまやかつてないほど孤立し、脆弱に見える

 

「イスラエルは力の頂点にある」。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は4月のホロコースト記念日に、勝ち誇ったようにそう語った。 だがその言葉は、本人が意図しなかった形で、ますます予言めいて見える。彼が誇示した力の限界が、次第に明らかになりつつあるからだ。

 

米国のドナルド・トランプ大統領は、イスラエルと共同で始めたイランとの戦争を終わらせる覚書に署名。その間、イスラエルは蚊帳の外に置かれ、イスラエルにとっての安全保障上の懸念も顧みられなかった。

 

かつて「史上最も親イスラエル的な大統領」と称賛されたトランプとネタニヤフの間には個人的な緊張も表面化している。イスラエル軍はレバノンからシリア、ガザ、ヨルダン川西岸まで展開し、限界に近づいている。

 

反イスラエル感情は欧州だけでなく、イスラエル支援の基盤である米国でも高まっている。イスラエルとパレスチナ自治区を含む、ヨルダン川から地中海に至る地域の人口動態や政治的緊張も重なって、イスラエルはその圧倒的な軍事力にもかかわらず、かつてないほど孤立し、脆弱に見える。

 

それは、1948年に建国された国家の長期的な存続をめぐる問いを投げかけている。近代シオニズムの創始者テオドール・ヘルツルは19世紀末、日記の中で、その構想は「狂気じみている」と記していた。

 

「われわれは存亡の瀬戸際にいる」。ネタニヤフの政敵であるナフタリ・ベネット元首相は今週、タイムズ・オブ・イスラエルにそう語った。

「戦争を続けることは、決してイスラエルのドクトリンではなかった。イスラエル社会を疲弊させ、予備役を疲弊させ、経済を疲弊させ、国際的地位を大きく傷つけるからだ」(中略)

 

イラン核計画に一定の打撃

228日にイスラエルが米国とともに始めた戦争が、イランの核開発計画を後退させたことは間違いない。トランプの合意も、しばらくはそれを抑制する可能性がある。だがイランは、イスラエルにとって重要な条件には同意しなかった。ミサイル戦力の削減と、イスラエル破壊を掲げて戦うヒズボラなどの代理勢力への支援停止だ。

 

トランプの合意はまた、イスラエルが弱体化を狙い、場合によっては退陣を望んでいたイラン支配層に、資金面での命綱を与えるようにも見える。いずれ彼らは、常に否定してきた核兵器開発の野心を復活させ、イスラエルが保有するとみられる核戦力に対抗し、地域の戦略バランスを変えようとする可能性がある。

 

トランプとネタニヤフの摩擦が強まるなか、米大統領はイスラエルが得たものに感謝すべきだとの考えを明確にし、大規模な破壊にもかかわらずヒズボラのドローン攻撃を止められていないイスラエルのレバノン作戦を批判した。

「私がいなければ、イスラエルは存在しなかった」。トランプは616日、フランスで開かれたG7サミットでそう述べた。「私が関与していなければ、イスラエルはとっくに吹き飛ばされていただろう」

 

(中略)「敵はいる。深刻な国内問題もある。だが、われわれはバランスを保つべきで、ヒステリーに陥るべきではない」。エルサレム安全保障戦略研究所のエフライム・インバー所長は本誌にそう語った。

 

攻撃を広げ過ぎたイスラエル

「われわれには強い国がある。現時点で存続が危機にあるわけではない。イランが核爆弾を手にすれば話は別だが、おそらく核実験は阻止できたと思う。だから、まだ選択肢はある」

「トランプが一時的とはいえ攻撃に加わってくれたのは幸運だった。われわれは時間を稼いだ。これからは、注目を集めにくい秘密工作に戻る必要がある」

 

戦争が始まって以降、イスラエル軍の戦線は大きく広がっている。実戦で地域最強の軍であることは疑いがないが、それでも過剰展開の兆しが見える。イスラエル軍は親イランのヒズボラ部隊に対抗するため、拠点となるレバノン南部深くまで進軍し、占領を続けている。

 

シリアの一部地域にも展開し、ガザ地区の多くも掌握し続けている。ガザでは、トランプが仲介したガザ停戦合意にもかかわらず、ハマスがなお影響力を保っている。

 

1967年の戦争でガザとともに占領したヨルダン川西岸でも軍事作戦が続き、過激なユダヤ人入植者集団が暴力の連鎖をあおっている。

 

ガザ、ヨルダン川西岸、時にはレバノンで散発的に生じる脅威に対し、敵勢力を定期的な軍事作戦で弱体化させるというイスラエルの伝統的な安全保障政策(通称「草刈り」)は、いまやイランやイエメンにまで広がっている。

 

課題は格段に大きくなり、民間人を含む犠牲者の数をめぐって国際的な怒りを招いている。

「イスラエルは、あまりに傲慢で過剰なアプローチを取ることで、自らを危険にさらしている。それにより、地域にとってますます消化できず、受け入れがたい存在になっている」。近年ますます見通しが暗くなっているイスラエル・パレスチナ和平を目指す米国中東プロジェクトのダニエル・レビはそう述べた。

 

敵を滅ぼすまで戦う

「イスラエルには、生き残る道が十分にある。それには、攻撃的な態度を抑え、ゼロサム的な考え方をやめ、パレスチナ人の根絶を追求することをやめる必要がある。だが実際には、イスラエルの長期的存続をめぐる議論は、ますます現実味を帯びている」とレビは本誌に語った。

 

パレスチナ人の運命は依然として不透明だ。ネタニヤフは、自らの在任中には決してパレスチナ国家は認めないとしている。安全保障上の脅威になるからだという。

 

世論調査によれば、2023年以降、イスラエル人の多数もこの考えに同意している。昨年末の調査では、パレスチナ人の多数も、もはや二国家解決は不可能と考え反対していることが示された。

 

それは、何世紀にもわたり無数の「殉教者」を出してでもイスラエルを破壊する戦争を続けるというハマスのメッセージに沿うものだ。ハマスの創設憲章は、イスラエルと十字軍国家を何度も比較している。十字軍国家はこの地域で約2世紀にわたって存続した後、イスラム勢力によって滅ぼされた。

 

これに対し、イスラエル・カッツ国防相は最近、こう反論した。「イスラエル国家は崩壊しつつある十字軍帝国ではない。イスラエルは、いかなる脅威に対しても自らを守る能力を証明してきた、強く断固たる国家だ」

 

地域ライバルの包囲を受ける

イスラエルの敵はそれだけではない。旧オスマン帝国圏をめぐるトルコの地域的野心の高まりは、イスラエルにとって長期的な危険の1つだ。地域の力学は、イスラエルに有利とは言いがたい。

 

アラブ諸国のなかには、アラブ首長国連邦(UAE)のように、トランプが2020年に進めたイスラエルとアラブ諸国の国交正常化を定めたアブラハム合意に喜んで加わった国もある。

 

だが、今回のイラン戦争でイランからの攻撃を受けたサウジアラビアは、イスラエルから距離を取った。サウジアラビアとカタールはむしろ、イランとの関係改善を模索してきた。両国はこれまでのところ、アブラハム合意に加わるべきだというトランプの提案を一蹴している。

 

さらに遠くの国々では、イスラエル支持は急落している。少なくともその一因は、ガザとレバノンでの民間人殺戮の凄惨な映像と、数万人の死者にある。

 

イスラエルにとって、米国で好意的な世論が落ち込んでいることは懸念材料だ。最近のピュー・リサーチ・センターの調査によると、米国人の10人に6人がイスラエルに否定的な見方をしている。2022年には42%だった。(中略)

 

人口でアラブ人に並ばれる

イスラエルには強い経済という利点もある。OECDは今年の経済成長率を約3.3%と見込み、来年にはさらに加速すると予想している。戦争で支えられたテクノロジー産業と防衛産業がその一因だ。世界幸福度報告は昨年、イスラエルを世界で8番目に幸福な国に位置づけた。

 

だが国内の緊張もある。今年後半に予定される選挙で、その緊張は頂点に達する見通しだ。イラン合意をめぐる暗い空気や、各戦線に向けた予備役の度重なる招集は、ネタニヤフにとって追い風にはならない。

 

長期的な最大の課題の1つは、イスラエルの人口動態だ。

アラブ人口の増加が、ユダヤ人との人口バランスを変えつつあるという長期的な問題がある。アラブ人口は現在、ガザとヨルダン川西岸のパレスチナ人、さらにイスラエル人口の約5分の1を占めるイスラエルのアラブ人を含め、700万人を少し上回る。

 

これはイスラエル国内のユダヤ人と、国際司法裁判所が違法と判断したヨルダン川西岸のユダヤ人入植地に住む数十万人を含めた同じ地域のユダヤ人数に、すでにかなり近い。

 

イスラエルのユダヤ人口の中で最も急速に増えている超正統派ハレディの宗教共同体も大きな問題だ。大家族が多い彼らは手厚い国家補助を受けているが、2024年の裁判所判断まで、伝統的に義務兵役を免れてきた。

 

徴兵への抵抗は続いており、今週には徴兵逃れの逮捕に抗議するハレディのデモを解散させるため、警察がスタングレネードを使用した。議会では、ハレディの徴兵を拡大する一方で、フルタイムの宗教学生には免除を認める法案をめぐり意見が割れている。この問題は、超正統派政党に依存するネタニヤフ連立政権も危うくしている。

 

超正統派との国内戦争

ハレディとその役割をめぐる問題は、次の選挙で、国外の戦場と同じくらい大きな争点になるだろう。別の政権が国内外のさまざまな前線を落ち着かせられるかどうかは、また別の問題だ。

 

「われわれは多くの存亡の瞬間を生き延びてきた」とインバーは語った。「もちろん、過ちを犯さないよう最善を尽くすべきだ。われわれは小さな国であり、慎重に振る舞わなければならない」【618日 Newsweek

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人口でユダヤ人がアラブ人に並ばれるというのは長期的には大きな問題で、仮に極右・右派強硬論者の主張するようにガザ地区や西岸地区を併合すると、人口で将来的にはユダヤ人は少数派となり、「ユダヤ人国家」というアイデンティティが揺らぐことになります。現実問題としてユダヤ人に匹敵する、あるいはむしろ多数派のアラブ人をどのように扱うのか・・・もしユダヤ人と同等の権利を与えないという話になると、ユダヤ人がアラブ人を支配する“人種差別国家”に堕してしまいます。

 

そうした人口問題、あるいは超正統派をめぐる問題も重要ですが、まずはレバノン・ヒズボラをどうするのか?という問題です。

 

【ネタニヤフ首相 レバノン駐留継続の姿勢で、米と交渉】

ネタニヤフ首相は今のところレバノン駐留、ヒズボラ攻撃を続ける姿勢です。停戦の覚書の破綻にも繋がりかねない不安定要因です。

 

****レバノンでくすぶる火種 ネタニヤフ氏、選挙まで軍の駐留継続か****

米国とイランの戦闘終結に向けた覚書の署名式を控える中、レバノンでイスラエル軍と親イランのイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘が続いている。イランはレバノンでの停戦も強く求めているが、イスラエルは強硬姿勢を崩しておらず、火種としてくすぶっている。

 

「ヒズボラはかつての面影を残しているだけだ。しかし、やるべきことはまだ残っている」

イスラエルのネタニヤフ首相は15日の記者会見で、ヒズボラが弱体化しているとの従来の見方を改めて示しつつも、攻撃を続ける意思があることを強調した。

 

米イランの交渉を仲介するパキスタンのシャリフ首相は、今回の合意に基づき、レバノンを含むすべての戦線で恒久的に戦闘が停止すると表明している。しかし、ネタニヤフ氏はイスラエル軍のレバノン南部での駐留継続を表明。16日には無人航空機(ドローン)攻撃を行い、4人の死者を出した。ヒズボラもミサイルで反撃しており、衝突が続く。

 

イラン軍幹部は16日、「レバノン南部での攻撃が続くならば、激しい報復を覚悟すべきだ」と述べており、停戦合意の不安定要因となっている。

 

ネタニヤフ氏がレバノン攻撃に固執するのは、10月までに総選挙を控える中、ネタニヤフ氏が「戦果」を必要としているからだ。イスラエルは2月末、イランの体制転換や核開発断念などを目標に先制攻撃を仕掛けた。だが、イランの体制は維持されたうえ、核開発を巡っても明確な成果は出ておらず、「戦略的失敗」との指摘が相次いでいる。

 

3月に本格化したヒズボラとの戦闘を巡っても、妨害電波がきかないヒズボラの有線ドローンによる攻撃を防ぎ切れておらず、国境を接するイスラエル北部の安全保障環境も大きく改善できていない。そのため、支持層である右派に強硬姿勢をアピールするためにも、「選挙まではレバノン南部から軍を撤退させることはない」(イスラエルメディア)との見方が有力だ。

 

だが、ネタニヤフ氏が強硬路線を続ければ、外交的解決を目指す同盟国・米国との亀裂を招く可能性がある。トランプ米大統領は16日、「(レバノンで)あまりにも多くの人が殺害されている。誰か(戦闘員)を探す度にアパートを破壊する必要はない。ヒズボラではない人も含まれている」と不快感をあらわにした。

 

ネタニヤフ氏はイランに対しても戦闘再開を辞さない姿勢を崩していない。だが、イランから攻撃を受けた湾岸諸国は停戦を求めて仲介外交を活発化させてきた。イスラエルが武力に固執すれば、「イスラエルが地域を不安定化させる要因」との見方がいっそう強まり、地域での孤立が深まる可能性がある。【617日 毎日

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イスラエルはレバノン駐留をめぐってアメリカと交渉を続けているようです。

 

****イスラエル、レバノン南部への部隊展開継続で米国と交渉=当局者****

イスラエルは、レバノン南部への部隊展開を継続すべく米国と交渉を行っている。ネタニヤフ首相に近い高官を含む2人のイスラエル当局者が18日、ロイターに明らかにした。

前日には、米国とイランが「レバノンの領土保全と主権」を確保するよう当事者に求める覚書に署名した。

イスラエルはレバノン、ガザ、シリアで掌握した地域を自国敵との間の「緩衝地帯」と位置付けており、ネタニヤフ氏はこれらの地域から撤退すべきだという要求を拒否している。

イスラエル高官によると、レバノン南部への部隊展開の継続を巡り、米国と「粘り強い交渉」を行っている。

同高官は、レバノンのリタニ川以南の地域への部隊駐留を含め、イスラエルは自らの立場を譲らないと述べた。
イスラエル首相府はコメント要請に今のところ応じていない。【618日 ロイター

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隣国に進駐して敵との間の「緩衝地帯」とする・・・いささか自国に都合のいい論理です。

レバノンから撤退しないイスラエルに対しトランプ大統領がどのような対応をするのか。

イスラエルにレバノン領内における“自衛のためのヒズボラとの戦闘”を認めるのか。

 

そこらを明確にしないと覚書は早い段階で「空文化」しかねません。

 

イスラエル軍は17日、レバノン南部でさらなる空爆を実施しました。トランプ大統領がイスラエルの行動を改めて批判するなかでの攻撃となりました。

 

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イラン  「負けなかったことで勝った」という印象も 以前よりもはるかに強い国として浮上

(体制支持を訴えるデモで手のひらに描いた国旗を見せる女性=テヘランで2026529日、AP 【615日 毎日】 イランにとって体制の存続は今回の戦闘における最大の「勝利」と言えるとの指摘も)

 

【今後60日間の交渉で恒久合意を目指す暫定枠組み 軍事衝突の可能性も残る 食い違う両者の主張】

周知のようにアメリカとイランは、戦争終結に向けた初の合意に達して覚書に両国の代表が署名し、19日にはお披露目の署名式が行われます。下記のような多くの犠牲者を出し、中東情勢を揺るがし、世界経済を混乱させた戦争に最終和平合意ではないものの一応の歯止めがかかるという点では世界を安堵させるものです。

 

今回署名されたのは最終講和条約ではなく60日間の暫定枠組み(MOU)です。この覚書は停戦を延長し、その間に核問題やホルムズ海峡、制裁解除などの恒久的解決を協議するためのものと説明されています。

 

したがって619日の署名式が終わっても、戦争が完全に法的終結するわけではなく、今後60日間の交渉で恒久合意を目指すものの交渉が失敗すれば再び軍事衝突の可能性も残るというのが現在の状況です。

 

実際、トランプ大統領自身も「気に入らなければ再び撃ち合いになる」と発言しており、停戦はまだ暫定的な性格が強いとみられています。 

 

****米・イスラエル対イラン戦争の犠牲者数など****

20263月から6月にかけて続いた米・イスラエル対イラン戦争については、停戦合意が成立した現在でも正確な総犠牲者数は確定していません。 ただし、各国政府や報道機関の集計から見ると、少なくとも以下の規模になっています。

 

イラン・・・・軍人・革命防衛隊・民間人を含め数千人規模の死者。

イラン政府・当局発表:・・・・死者数は3,300人〜3,400人規模 イランの人権団体(Hengaw・・・・戦闘による死者数は7,650人に上り、うち民間人は1,030人と推定しています。負傷者数は26,000人規模と発表されています。

 

レバノン(今回合意で停戦が実現するのか依然として不明ですが)・・・・レバノン保健省によると、32日~614日の戦闘で死者 3,783、負傷者 11,699、さらに120万人以上が避難を余儀なくされたとされています。

 

イスラエル・・・・イランのミサイル・ドローン攻撃による死傷者が発生していますが、レバノンやイランに比べると人的被害は小さいと報じられています。(イスラエル国内で10人以上)

 

米軍・・・死者数は少なくとも6人、米中央軍は、一連の対イラン軍事作戦において約200人の米軍兵士が負傷したと発表しています

 

その他シリア、イラク湾岸地域の犠牲者を合わせると、戦争全体の死者数は少なくとも7,0001万人規模に達している可能性が高いとみられています。

 

また、この戦争は人的被害だけでなく、イラン国内では米軍・イスラエル軍の空爆により軍事施設、港湾施設、石油関連施設、都市部が被害を受けました。レバノンではGDP7%縮小見込み。中東湾岸諸国にも石油関連施設などに大きな被害が出ています。

 

更に、ホルムズ海峡封鎖による世界経済への打撃も甚大です。

 

また、数百万人規模の避難・生活基盤喪失を生み出しており、地域全体への影響は死者数以上に深刻と評価されています。【617日 ChatGPTGeminiより

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これだけの被害を出した結果、どのような停戦合意がなされるのか・・・よくわかりません。 覚書内容について一部報道はあるものの、アメリカ・イランの言い分が大きく異なっています。

 

お互いに都合よく解釈することで和解するというのは外交の常道ではありますが・・・・核問題、ホルムズ海峡の開放、レバノンの停戦、3000億ドルの復興基金・・・項目ごとに取り上げていたらキリがありませんが、大まかな状況は下記のようにも。

 

****米とイランが覚書で食い違い ホルムズ海峡なお船舶停滞 レバノンで応酬続く****

G7に出席しているアメリカのトランプ大統領は、イランとの戦闘終結に向けた覚書に両国の代表が署名したと明らかにした。ただ双方が「勝利」を主張しており、ホルムズ海峡の開放や核問題を巡る主張のずれが浮き彫りになっている。

 

ホルムズ海峡巡り食い違い

「アメリカを譲歩させた」と「勝利」をアピールするイランだが、政権内部や市民の間で意見の対立も指摘されている。(中略)

 

トランプ大統領は15日、自身のSNSに「ホルムズ海峡から多くの船が動き始めている。船団は完全に安全で安心でき、何の問題もない」などと投稿。ホルムズ海峡の封鎖は解除されつつあるとアピールしている。

 

ホルムズ海峡巡る状況

しかしCNNは、船舶の動向を追跡する分析会社「ケプラー」のデータをもとに、現在ペルシャ湾に足止めされている220隻のタンカーと船舶全般でおよそ500隻に顕著な移動は確認されていないと報じている。

 

こうした状況を受け、フランスのマクロン大統領は米仏首脳会談の中で、ホルムズ海峡に空母や戦闘機などを23日以内に派遣し、船舶の護衛などによって安全な航行の維持に貢献する意向を示したという。

 

またホルムズ海峡周辺にはイラン側が敷設したとされる機雷があり、その除去が必要とみられている。 ロイター通信によると、日本、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなど9カ国の首脳が、各国の憲法上の要件に従うことを前提に「機雷除去作業を実施するための防衛的任務を通じて役割を果たす」とする共同声明を発表したという。日本も協力を求められているということだ。

 

アメリカとイランは、ホルムズ海峡の開放を巡って互いに勝利をアピールしているが、その中でポイントになるのが通航料だ。

 

トランプ大統領は14日、ニューヨークタイムズのインタビューで「ホルムズ海峡の通航は恒久的に無料になる」と述べている。 しかしイランのメヘル通信は、アメリカ側が直前になって譲歩した合意内容として、ホルムズ海峡の通過管理や提供されるサービスに関連する料金の徴収はイランとオマーンに委ねられると伝えている。

 

またイランのファルス通信も、最終合意に向けた交渉が行われる今後60日間のみ船舶の無償通過を認めるが、それ以降はイランが料金を徴収し、経済発展の支援に充てる予定だと情報筋の話として伝えている。

 

核問題は難航か

アメリカが攻撃に踏み切った大義名分の一つが、この問題だ。トランプ大統領は15日、覚書について、イランが核兵器を保有しないことに同意したなどとして「世界に多くの成功をもたらす」と強調した。

 

しかしメヘル通信によると、イラン外務省のバガイ報道官は「我々は覚書で核計画の詳細について言及していない」としており、「核問題とその見返りとしての制裁解除の両方について60日以内に協議を行うことで合意している」と話しているという。

 

ただCNNは、アメリカの諜報(ちょうほう)に詳しい情報筋の話として、イランは査察や回収を逃れるためか、ここ数週間でウランの貯蔵施設を封鎖する動きを加速させていると報じている。 具体的には、トンネルを意図的に崩落させたり入り口に地雷を仕掛けたりするなど、貯蔵施設の要塞化を進めているとの見方も伝えている。

 

対米合意で国内対立

イラン国内では意見の対立も指摘されている。

イランは戦闘後も体制を維持しているが、ニューヨーク・タイムズによると、イランの権力構造に変化が生じているという。革命防衛隊が中心となる集団指導体制に移行し、強硬路線を追求するようになっているようだ。

 

またアメリカのシンクタンク「湾岸国際フォーラム」によると、ハメネイ師の死後、対米政策などを巡ってイラン指導部の内部対立が激化しているという。

 

そんななか、アメリカとの合意に踏み切った背景には経済の悪化を指摘する声もあるとみられている。 アルジャジーラによると、イラン当局はアメリカとの戦闘によって日本円でおよそ43兆円もの損害が出ているとの推計もある。 またCNNによると、イランの労働当局はおよそ100万人が失業したとみており、ロイター通信は経済危機が長引けば去年末から起きていた大規模な反政府デモが再び起きる可能性も指摘している。

 

さらにSNSに投稿された動画には、イランの首都テヘランで「ガリバフ!アラグチ!我が指導者の血をどうするのか」と、強硬派の市民が交渉にあたっているガリバフ国会議長やアラグチ外相を名指しで批判。アメリカとの合意に反対してデモを行う様子が映っているという。

 

レバノンで応酬続く

アメリカとイランの合意がうまくいくのか、不安定要因となっているのがイスラエルの存在だ。

イランメディアが報じた覚書の合意内容には「レバノンを含むすべての戦線で即時かつ恒久的に戦闘を停止する」とある。

 

一方、アメリカ側はレバノンでの停戦が合意に含まれるかどうかについて言及していない。

 

こうしたなか、合意後もイスラエル軍はレバノンの複数箇所を攻撃し、レバノンの親イラン武装組織ヒズボラとの応酬が続いている。

 

イスラエルの動向がアメリカとイランの合意の障害になる可能性もある。 イスラエルのベングビール国家治安相は自身のSNSに「合意は我々を拘束するものではない。イスラエルはアメリカに従属する国ではない」と投稿し、アメリカとイランの合意に反発している。 またネタニヤフ首相も15日「トランプ氏とは意見が食い違うこともある」と述べ、レバノンからの撤退を否定した。

 

こうしたイスラエルの動きに対してトランプ大統領は16日、「(ネタニヤフ首相は)より責任ある対応をすべきだ」と発言した。(後略)(2026617日放送分より)【617日 テレ朝NEWS

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【「イランは負けなかったことで勝った」 勝つことより生き残りを重視し、相手に「この戦争は割に合わない」と思わせる】

今回の合意は最終講和条約ではなく、あくまでも停戦を60日間延長して恒久合意を目指す暫定枠組み(MOUですから、戦争の総括には早すぎますが、トランプ大統領・イラン側双方が「勝利」をアピールしている状況で大まかなイメージを言えば、「イランは負けなかったことで勝った」という印象も。

 

****やはりイランは「勝たずに勝つ」のか 敵を完全に打ち負かすことよりも自らが生き残ることを重視する歴史****

(中略)

自らが生き残るためのイランの仕組み

(中略)筆者はその中(45日掲載の記事)で、イランの戦略は「勝つこと」そのものを目的としていないのではないかと書いた。
地下施設に分散されたミサイル、破壊されることを前提にした軍事インフラ、中東各地に配置された代理勢力。それらは相手を打ち負かすためというより、自らが生き残るための仕組みに見えた。

 

そして筆者はこう書いた。 「相手にコストを強い、疲弊させ、最終的に『割に合わない戦争』に変えてしまう」 それがイランの戦い方ではないか、と。(中略)戦争が停戦へ向かう現在、欧米メディアを読み比べると、どうも世界は同じ問いを語り始めたように見える。

 

イランは勝ったのか。 あるいは、勝たなかったのに勝ったのか。・・・そんな奇妙な議論である。

 

「イランは勝ったのか」欧米メディアの分析

アメリカのニューヨーク・タイムズ紙は15日の社説で、「トランプ大統領はこの戦争に敗れた」と断じた。

同紙によれば、トランプ大統領が掲げた「無条件降伏」「体制転換」「ウラン濃縮の完全停止」はいずれも実現していない。


イラン政権は存続した。核開発問題も決着していない。ホルムズ海峡という戦略的カードも失っていない。・・・だから敗者はトランプ氏だ、というのである。

 

一方、イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙はもう少し慎重だった。 同紙は「イラン政府は自らを勝者だと考えている」と分析した。

 

確かにイランは生き残った。 しかしその代償はあまりにも大きい。
最高指導者アリ・ハメネイ師は死亡した。 軍・政府の高官も多数失われた。 インフラは破壊され、経済的損害も莫大である。
軍事的現実だけを見れば、イランは敗者である。 それでもテヘランでは勝利の物語が形成されているという。

 

最も興味深かったのは、イギリスの戦略誌『エンゲルスバーグ・アイディアズ』だった。 その記事のタイトルは、「イランは負けなかったことで勝ったのか」である。


チェスの比喩を使いながら、同誌はこう論じる。

イランは政権を守った。 ホルムズ海峡を武器化した。 フーシ派を温存した。 ヒズボラも残した。 イラクの親イラン勢力も生きている。・・・つまり盤上の主要な駒を残している。 だから勝者だというのである。

 

どこか違うイランの発想

4月にも書いたが、イランという国は、そもそも「勝つ」ことで生き延びてきた国家ではない。 古代ペルシア以来、この国は何度も征服されてきた。 アラブに敗れた。 モンゴルにも征服された。 しかし消えなかった。 むしろ征服者の側がペルシア文化に取り込まれていった。

 

戦場の勝敗だけで歴史が決まるわけではないことを、この国は身をもって知っている。 だからイランの発想は、西側の戦略家とはどこか違う。 

 

敵を完全に打ち負かすことよりも、自らが生き残ることを重視する。 短期決戦より持久戦を選ぶ。 勝利より消耗を重視する。 そして相手に「この戦争は割に合わない」と思わせることを狙う。・・・・今回の戦争では、その戦略が成功したようにも見える。

 

イランは勝ったのだろうか。 それはまだ分からない。
今週スイスで行われる調印式も終着点ではない。 むしろ60日間に及ぶ新たな交渉の始まりにすぎない。


だが少なくとも現時点で言えることが1つある。 4月に筆者が書いた問いは、杞憂ではなかった可能性がある。
イランは軍事的勝利を収めたわけではないが、やはり「勝たずに勝つ」のかもしれない。【617日 木村太郎氏 FNNプライムオンライン
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【イランは以前よりもはるかに強い国として浮上した】

「負けずに生き残った」イランは“前より強くなった”とも。

 

****イランは米国との戦争を生き延び、前より強くなった****

米国とイランを合意へ向かわせたのは信頼ではなく恐怖だった。すべての当事者が、軍事力だけでは問題を解決できないと理解している。

 

米国とイランは、戦争終結に向けた初の合意に達した。中東を揺るがし、世界市場にも混乱をもたらした今回の戦争をめぐり、双方はそれぞれ自らの成果を強調している。

 

614日に発表された覚書(MOU)は、619日に署名される予定だ。まだ恒久的な和平を実現するものではないが、それでもイラン・イスラム共和国は、最大の目標だった体制維持を果たしたと言える。米国とイスラエルによる前例のない共同軍事作戦にさらされながらも、生き残ったからだ。

 

さらにイランは、ホルムズ海峡を通過する国際的な石油・ガス輸送に影響を及ぼす能力を誇示した。戦火はサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など湾岸協力会議(GCC)加盟国にも波及し、イランは同盟勢力であるレバノンのヒズボラに対するイスラエルの攻撃停止を米国に要求するまでの影響力を持つに至った。

 

一方、米国はイラン最高指導者アリ・ハメネイ師をはじめとする最高指導部の排除と、イラン軍事力の大幅な弱体化という成果を手にした。

 

だが、ドナルド・トランプ大統領が誇る戦場での勝利には不確実性も付きまとう。ハメネイ師の後継者となった息子モジタバ・ハメネイの下で、イランがかえって強硬姿勢を強めるとの見方が出ているためだ。

 

米ジョージ・ワシントン大学エリオット国際関係大学院のシナ・アゾディ助教授は本誌に対し、「イランは、米国とイスラエルを同時に相手にして戦う意思と能力を示したことで、以前よりもはるかに強い国として浮上した。今後は地域でより自信を持って行動することになるだろう」と語った。

 

「全面戦争には至らない水準で米国とイランの衝突が続く新たな常態」が生まれる可能性もあると、アゾディは指摘する。

 

根本問題は未解決

その場合、イランはさらなる打撃を受ける可能性が高い。しかし、紛争の影響が拡大し続けるなかで、米政府への圧力も強まることになる。しかも、イランの体制崩壊や核開発の完全放棄といった、より大きな成果が得られる保証もない。(中略)

 

合意内容をめぐっては、依然として米国とイランの当局者の説明に食い違いがある。ただ、現時点で明らかになっている内容を見る限り、今回の合意は両国の根本的な対立の解消ではなく、当面の戦闘停止に重点を置いたものとみられる。(中略)

 

双方が時間を買うための合意

国務省で中東政策に携わった経験を持つバージニア大学ミラーセンターのマラ・ラドマン上級フェローは、ホルムズ海峡の海上交通が実際に再開され、イラン核問題をめぐる交渉が前進して初めて、「合意の成果の本当の証拠になる」と指摘する。 さらに、今回の枠組みが将来的により実質的な合意へ発展したとしても、米国は過去より不利な立場に置かれていると主張する。

 

(中略)米国とイランには、より包括的な合意を先送りにしてでも停戦延長を優先する理由がある。

国際危機グループ(ICG)のイラン・プロジェクト責任者アリ・バエズは本誌に対し、「米国とイランの当面の目標は、傷を癒やすことではなく出血を止めることだ」と語った。(中略)

 

海峡という圧力手段は依然有効

「彼らは、革命防衛隊には限定的な戦術攻撃を遂行するうえで十分な能力がない一方で、米国、イスラエル、そしてアラブ諸国の同盟国が構築する統合防衛網は、小規模な攻撃であれば比較的効果的に迎撃・無力化できると判断している」(中略)

 

またイランは、ホルムズ海峡を戦略的な圧力手段として利用できることによって、従来は米国が一方的に握っていた経済的圧力の構図を変えることも可能だとレザエイは指摘する。 この問題は、今後の交渉においても重要な争点となる可能性が高い。(中略)「イランがホルムズ海峡の海上輸送に影響を及ぼす能力は、将来の交渉における重要な交渉材料となり得る。場合によっては、制裁緩和をめぐる協議の場に外部勢力を引き出す力にもなり得るだろう」【616日 Newsweek

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南アフリカ  アパルトヘイトの歴史的遺産だけではない格差 不満のはけ口としての移民排斥激化

(5日、南アフリカ・ヨハネスブルク郊外で不法移民に抗議する人々(ロイター=共同)【68日 共同】)

 

【アパルトヘイトの歴史的遺産だけでは語れない南アの世界最大級の不平等社会】

南アフリカはアパルトヘイト(人種隔離政策)が終結してから30年以上を経てもなお、世界最大級の不平等社会が続いています。1994年の民主化後、ネルソン・マンデラ氏は「虹の国(Rainbow Nation)」構想を掲げ、人種和解・経済成長の明るい将来を期待させましたが、「虹の国」実現には未だ遠いようです。

 

****世界最大級の不平等社会 格差大国・南アで増える、贅を尽くした犬たちの楽園****

シャンデリアが輝くスイートルームで特注おやつを楽しむワンちゃんの近所に、テント暮らしの貧困層。根深い分断社会は続く

 

白人と非白人の居住区を定めたアパルトヘイト(人種隔離政策)が終結してから30年以上を経てもなお、世界最大級の不平等社会が続く南アフリカ。

 

一部の富裕層が欧州の都市に匹敵する快適な生活を享受する一方で、人口の半数以上は食料や最低限の生活必需品すら確保できない暮らしを強いられている。貧困と失業が蔓延し、殺人事件の発生率は世界トップレベルにある。

 

そんな格差を象徴するかのように、同国第2の都市ケープタウンを中心に急成長を遂げているのが高級ペットホテル産業だ。市内には贅を尽くしたペット向けの宿泊・娯楽施設が次々に誕生し、シャンデリアやテレビを備えたスイートルームが人気を博している。「犬用シャンパン」から特注のおやつまで至れり尽くせりのサービスが並び、スパでは美容と健康に配慮したさまざまなメニューが準備されている。

 

こうした施設の経営者はペットと飼い主に喜ばれるだけでなく、地域に雇用を生み、政府に税収をもたらしていると主張する。だが動物たちの幸せそうな姿は、根深い社会の分断と政治の失敗もいや応なく突き付けている。【69日 Newsweek

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南アの格差社会で最初に思い浮かぶのは、アパルトヘイト廃止後も歴史的遺産として残る白人と黒人の間の人種間の資産格差です。

 

****南ア不利かにおける格差の状況****

南アは「世界で最も不平等な国」の一つ

世界銀行は南アフリカを「世界で最も不平等な国」と評価しています。消費や所得の格差を示すジニ係数は約0.65と非常に高く、国際的に見ても最悪水準です。

 

また、世界銀行の報告では、南アの不平等度はサハラ以南アフリカ平均や同程度の所得水準の国々より40%以上高いとされています。

 

富の集中は極端

所得格差だけでなく、資産格差はさらに深刻です。

“上位10%が国内資産の8586%を保有” “上位1%だけで全資産の約55%を保有” “上位0.01%(約3500人)が、下位90%全体より多くの資産を持つ”・・・という研究結果があります。

 

つまり、超富裕層の生活水準は欧米の上流階級と変わらない一方で、多数の国民は貧困状態に置かれています。

 

貧困と失業も深刻

2025年時点でも、“国民の約60%が上位中所得国向け貧困線以下で生活” “失業率は32%超” “失業者は800万人以上”とされています。

 

特に若者や黒人層の失業率は高く、アパルトヘイト(人種隔離政策)の歴史的影響が現在も色濃く残っています。

 

人種格差との結び付き

南アの格差は単なる「金持ちと貧乏人」の問題ではなく、人種問題とも深く結びついています。

アパルトヘイト時代には白人少数派が土地・教育・企業所有権を独占していました。制度廃止後30年以上が経過した現在でも、“黒人世帯の典型的な資産額は白人世帯の約5” “企業所有や土地所有でも白人が依然として優位”という状況が続いています。

 

なぜ「豪華な犬の楽園」が成立するのか

そのため南アでは、高級住宅街では犬専用スパや高額ペットホテルが成立する。一方で周辺には失業率が非常に高いタウンシップ(旧黒人居住区)が存在する・・・という「第一世界と第三世界が隣接している」ような風景が見られます。経済学者の間ではしばしば「二重経済(dual economy)」と呼ばれます。

 

要するに、Newsweekの記事が描いた豪華な犬の施設は特殊な例ではあるものの、南アの現実を象徴しています。世界有数の富裕層が存在する一方で、多くの国民が貧困や失業に直面しており、その落差が世界でも際立っているのです。【616日 ChatGPT

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アパルトヘイトの歴的遺産としての人種間の資産格差は以前から問題視されているところですが、格差の背景にはそれ以外の要因もあり、白人富裕層 vs 黒人貧困層という構図だけでなく、黒人富裕層 vs 黒人貧困層という格差も拡大しています。

 

*****アパルトヘイトの歴史的遺産だけでは語れない南ア格差社会の背景****

アパルトヘイトの歴史的遺産は南アフリカの格差を理解するうえで不可欠ですが、それだけでは現在の極端な不平等を説明しきれません。実際、1994年の民主化後には黒人の中間層・富裕層もかなり成長しましたが、格差は依然として世界最高水準にあります。研究者が指摘する主な要因は次のようなものです。

 

1. 高失業率と「雇用なき成長」

南アの最大の問題は、単なる低賃金ではなく「仕事そのものがない人が非常に多い」ことです。

失業率は長年2030%台で推移、若年層では50%前後に達する地域もある、正規雇用と失業者の格差が極端

その結果、同じ黒人コミュニティ内でも、安定した職を持つ公務員・専門職と失業状態の人々の間で大きな所得格差が生じています。

 

2. 教育格差の継続

民主化後も教育の質には大きな差があります。

都市部の良質な学校では英語教育、ICT教育、大学進学が可能である一方、貧困地域では教員不足、理数科教育の弱さ、高い中退率が続いています。

 

そのため労働市場で求められる技能を持つ人材が不足し、高技能労働者の賃金が高騰する一方で、低技能労働者は失業しやすくなっています。

 

3. 資本集約型経済

南ア経済の中心は歴史的に鉱業、金融、通信、エネルギーなどです。 これらは比較的少人数で大きな付加価値を生み出す産業です。

 

例えばアジア諸国が経験したような、労働集約型製造業、大規模な工場雇用が十分に発展しませんでした。 そのため、低学歴層を大量に吸収する雇用創出が弱かったと指摘されています。

 

4. 都市構造と空間的分断

アパルトヘイトは終わりましたが、居住地の分断は残っています。 典型的には、富裕層が住む郊外、貧困層が住むタウンシップが離れて存在します。

 

その結果、通勤費が高い、求人情報にアクセスしにくい、良い学校や医療機関から遠いという不利が世代を超えて続きます。 経済学では「空間的不平等(spatial inequality)」として研究されています。

 

5. エリート層への富の集中

民主化後には黒人経済エリートの育成政策(BEEBlack Economic Empowerment)が進められました。

しかし批判的な見方では、一部の政治家、大企業と結びついた新興富裕層に利益が集中した面もあります。

その結果、白人富裕層 vs 黒人貧困層という構図だけでなく、黒人富裕層 vs 黒人貧困層という格差も拡大しました。

 

6. 治安・犯罪問題

高犯罪率は投資や雇用創出を妨げます。

企業は警備費用、保険料、自家発電設備などに多額のコストをかけています。これは新規事業や雇用拡大の阻害要因になります。

 

7. 国家統治・インフラ問題

近年は特に、電力不足、国営企業の経営不振、汚職問題が経済成長を抑制してきました。

代表例が国営電力会社のEskomで、長年にわたる停電(load shedding)が企業活動に大きな損害を与えました。

経済成長率が低いため、貧困層が上昇する機会も限られています。

 

興味深い点:現在の格差は「人種格差+階級格差」

今日の南アを研究する社会学者の多くは、「人種格差は依然として重要だが、それだけではない」と考えています。

民主化直後は「白人対黒人」の構図が中心でしたが、現在は白人富裕層、黒人富裕層、黒人中間層、大規模な失業・貧困層へと社会が分化しています。

 

そのため南アの格差は、「アパルトヘイトの歴史的遺産」と「高失業率・教育格差・資本集約型経済・統治問題が組み合わさった結果」として理解するのが現在の主流的な見方です。むしろ近年は、人種間格差だけでなく、黒人社会内部の格差拡大も重要な論点になっています。【616日 ChatGPT

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【極端な格差、高失業率、政府への不信、経済停滞が生み出した「社会不満のはけ口」としての移民排斥激化】

格差が大きな社会では、底辺に位置づけれた人々の不満は“よそ者”である移民に向けられがちです。

 

****南アフリカで移民排斥激化 職奪うと主張、退避支援も****

南アフリカで移民排除の動きが激化している。欧州メディアなどによると、アフリカ諸国からの不法移民が職を奪っていると主張する一部市民が排斥運動を展開。死者が出たり一部の国が自国民退避を支援したりしており、ラマポーザ大統領は7日の演説で融和を訴えた。

 

南アでは4月以降、反移民デモが相次いだ。一部団体は不法移民に6月末までの出国を要求し、合法的な移民にも排除の矛先を向けている。失業率が3割を超える中、ラマポーザ氏は不法移民だけが仕事不足の原因ではないとした。

 

ナイジェリア外務省は5日、千人以上の自国民が退避を希望していると明らかにした。西アフリカ・ガーナは5月、約300人を帰国させた。 

 

南アの隣国モザンビークは2日、南ア在住のモザンビーク人5人が移民への暴力で死亡したと発表。

ラマポーザ氏は不法移民対策を強化するとしつつ「思いやりに満ちた南アを実現する」と強調。南アの白人を優先したトランプ米政権による移民政策を「差別的」と批判して米国との関係が冷え込む中、移民問題の悪化を避けたい思惑もあるとみられる。【68日 共同

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襲撃の恐怖から、自らの意思で南アを離れようとしている移民も多いようです。

 

****反移民感情高まる南ア、1週間で外国人2745人送還 大半は不法滞在者****

南アフリカは、シリル・ラマポーザ大統領が不法移民に対する取り締まりを強化すると表明してから1週間で、外国人(移民)2745人を送還した。レオン・シュライバー内相が14日、明らかにした。

 

アフリカ有数の経済大国である南アには長年にわたり、アフリカ全土から外国人労働者が集まり、合法移民だけでなく不法移民も大勢入国していた。

 

だが、同国では失業率が30%を超える中、反移民暴動が定期的に発生しており、ここ最近も起きたばかり。

一部地域では棒や鞭、盾で武装した南ア人暴徒が街を練り歩き、在留資格を持たない外国人に対して630日までに退去するよう要求している。

 

反移民暴動で商店が略奪され、外国人が標的にされたことで治安への懸念が高まり、ナイジェリア、マラウイ、ガーナ、ジンバブエ、モザンビーク出身の外国人たちが、本国政府が主導する自発的な帰国を受け入れている。

 

シュライバー内相は記者団に対し、「大統領の表明から昨夜までの1週間で、移民2745人が帰国した」「この数字は暫定的なものだ」と述べた。 政府によると、帰国した外国人の大半は不法滞在者だった。

 

大統領の表明後に設置された閣僚級の移民対策委員会によると、帰国した外国人にはマラウイ人も含まれている。反移民暴動を受けて、マラウイ人約7000人が東部ダーバンの広場に避難している。

 

マラウイ政府がバス8台を手配し、14日に自国民の帰国を開始。南ア政府も帰国を促すためにバス10台を提供した。(中略)南アフリカに3年間暮らしていたマラウイの経済中心地ブランタイヤ出身のフォーチュネイト・チレンジさんは、「ようやく出発できてホッとしている。ここで恐怖におびえながら暮らすよりはマシだ」と語った。

チレンジさんによると、暴動発生後に設置された避難民キャンプにも暴徒が押し寄せ、退去を迫られていたという。

 

高まる緊張

南ア政府は14日、避難民キャンプの運営は行っておらず、一時的なものであっても設置するつもりはないと表明した。(中略)

 

ラマポーザ大統領は先週、不法移民に対する国民の懸念を認める一方、私刑(リンチ)などの自力救済は容認しないと警告していた。

 

529日に西ケープ州モッセルベイで不法移民に抗議するデモが行われた後、モザンビーク人2人が殺害されたことで緊張がエスカレートした。なお、モザンビーク当局は死者数は2人ではなく5人だと主張している。

 

南ア統計局によると、同国には人口の5.1%に相当する300万人以上の外国人が暮らしている。 【616日 AFP】********************

 

注目すべき点は“人口の5.1”は決して高い数値ではなく、欧州諸国や北米と比べるとむしろ低い部類に入ることです。

 

****南アフリカの移民排斥問題****

この問題は、「格差」と実はかなり密接につながっています。

 

興味深いのは、南アの外国生まれ人口は2022年時点で約240万人、総人口の4%弱程度であり、「外国人に国を乗っ取られている」という一部運動の主張とはかなり隔たりがあることです。

 

なぜ反移民感情が強まるのか・・・背景には少なくとも5つの要因があります。

1. 失業率の高さ・・・・最大の要因です。

南アでは広義の失業率が40%を超える水準に達しており、多くの若者が職を得られません。

こうした状況では、ジンバブエ・モザンビーク・マラウイ・ナイジェリアなどからの移民が低賃金でも働くため、「外国人が仕事を奪っている」という認識が広がりやすくなります。

 

ただし経済学者の研究では、失業の主因は景気低迷や教育・技能のミスマッチであり、移民だけで説明できる規模ではないとされます。

 

2. 犯罪との結び付け

南アでは治安問題が深刻です。そのため一部の政治勢力や市民運動は麻薬取引、売春、強盗などを外国人と結び付けて語ります。

 

実際には犯罪統計からそのような単純な因果関係は確認されていませんが、「犯罪=外国人」というイメージは政治的に動員しやすいのです。

 

3. 公共サービスへの不満

貧困層が利用する公立病院、学校、公営住宅は慢性的に不足しています。 そこで「外国人が福祉を食っている」という不満が生じます。

 

欧州や米国の移民論争にも見られる構図ですが、南アでは失業率や貧困率がはるかに高いため感情がより激化しやすいのです。

 

4. 政治利用

今年の一連の運動では「March & March」という反移民団体が注目されました。 地方選挙を前に一部政党も移民問題を争点化しており、国境管理強化、強制送還、不法移民排除を訴えています。

これは欧州の右派ポピュリズムや米国の移民問題と似た現象です。

 

5. 「期待の裏切り」・・・これが南ア特有です。

1994年の民主化後、Nelson Mandelaが掲げた「虹の国(Rainbow Nation)」構想では、人種和解・経済成長・アフリカ連帯が期待されました。

 

しかし30年以上経った現在でも、高失業率・電力不足・汚職・格差が続いています。

そのため社会学者の中には、「政府への怒りが、より弱い立場の外国人に向けられている」と分析する人も少なくありません。

 

歴史的に見ると

南アの排外主義は突然現れたものではありません。

2008年には外国人を狙った大規模暴動で60人以上が死亡し、15万人以上が避難しました。その後も2015年、2019年、2022年、そして2026年と周期的に反移民暴動が起きています。

 

つまり現在の移民問題は、「移民流入そのもの」よりも、極端な格差、高失業率、政府への不信、経済停滞が生み出した「社会不満のはけ口」として理解する方が実態に近いでしょう。

 

興味深いのは、南アの外国人比率(約4%)は欧州諸国や北米と比べるとむしろ低い部類であるにもかかわらず、反移民感情は非常に強いことです。これは「移民の数」よりも「社会の不安定さ」の方が排外主義を説明する力が大きい可能性を示しています。【616日 ChatGPT

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