連載小説 物産展への誘い(17) | アズグループ 広島派遣物語  ゚+。:.゚.:。+゚A~Zまでアズ゚+。:.゚.:。+゚

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広島の人材派遣会社アズグループ登録スタッフの軌跡を追う!人情ストーリー巨編??
※フィクション作品です。派遣のお仕事をしってもらいたい!ただそれだけの理由・・・
物語風に更新していきまぁ~す。 更新は木曜あたりかな?
『広島 派遣 物語 ブログ』

前回までのあらすじはこちら↓

http://ameblo.jp/azgroup/entry-12223356013.html

 

ふと、少し離れた岡山県コーナーのブースを覗いてる客の中に、見覚えのある顔があった。

アズ美はそれを見た途端に、目の前で応対してたお客様の声が聞こえなくなり、

催事場全体のあらゆる声、音が消えて、視線はそこに釘付けになった。

そして血の気が引いた。

 

仲良く腕を組んでブースを覗き込む男と女。

その男と目が合った。

男の方もアズ美に気づいたのか、腕を絡めてべったりとしてる女と笑顔で会話してたそれまでの顔が引きつったように見えた。一緒にいる女の方は、二人の目が交錯してることに気づいてない。

 

男は、慌ててアズ美のいるそれっちゃのブースを避けようとしてたが、女の方が男の手を引っ張って、それっちゃのブースに来てしまった。

男の顔はさらに引きつった。

アズ美も困惑したが、

「いらっしゃいませ。久しぶりね」

わざと笑顔で声をかけると、

男は、体裁を取り繕うようにぎこちなく、

「あっうん。アズ美、お前ここで何してるんだ?」

「見ての通り仕事してるの」

 

その男は、アズ美と別れた夫、春紀だった。

 

「だあれ?このオバサン知り合い?」

春紀と腕を組んだまま、べったりとその身体をくっつけてる女性が二人を見ながら聞いてきた。

年齢はアズ美より若い。

艶やかな長い黒髪に色白のスレンダーなこの女性は、あまり生活感を感じない。

流行りの洋服に煌めくネイル、付けてるアクセサリー、細い肩にかかるバッグ、足元のヒール、そして唇のウェット感のある赤いルージュ。

上から下まで完璧な姿だ。

 

春紀はぎこちない笑顔でその女性に、

「知り合いっていうか、職場の元同僚・・・かな」

「そうなん、こんにちは」

その女性は微笑みながらエプロン姿のアズ美を、上から下まで値踏みするような視線で一瞥して、それから軽く頭を下げた。

ウェット感のあるルージュに塗られた口元から見える白い歯が、どこか勝ち誇ったように見える。

アズ美は、軽く会釈したがこの女性に嫌悪感を覚えた。

 

「ねえ、これすっごく美味しそう!買っていい?」

女性は上目遣いに春紀を見つめながら、それっちゃの石炭ショコラをねだる。

春紀ものぼせた表情で、

「うん、いいよ」と答える。

アズ美は、

「ありがとうございます」と、

ちょっと事務的な口調で答えた。

 

女性は、アズ美に見下すような笑顔で、

「これから一緒に広島交響楽団の演奏会を聴きに行くの。それが終わったら部屋で一緒にこの御菓子頂こうと思って。素敵な御菓子ありがとう」

と聞いてもないことまで言った。

しかも「一緒に」という言葉も二度も使って。

 

「そうですか、楽しんできて下さいね」

アズ美も応戦した。

「行こう」

春紀が女性の手を引っ張って二人は人混みの中に消えていった。

 

アズ美は店主の藤永に、

「ちょっと2番(お手洗い)に行ってきます」

と言ってすぐにブースを離れた。

小走りにバックヤードに向かい、そこで目から溢れ出る涙をハンカチで拭いた。

思いっきり泣きたいわけではない。

悲しいから涙が出るわけでもない。

悔しい?そう、今さら未練も何もなく、忘れかけてたあんな馬鹿な元夫とあんな女と張り合った自分が情けない。

なぜかそれが口惜しい。

どこにぶつければいいのかわからないこの口惜しさ、自分でもどうすればいいかわからない腹立たしさ、怒りが渦巻いた。

(売場に戻らなければ…)

今ここでくよくよしてる時ではない。

仕事中だ。売場に戻らなければ。

アズ美は化粧を直して売場に戻った。

 

ブースに戻ると、店主の藤永が心配そうに聞いてきた。

「どうしたん?客からなんか言われたんか?」

アズ美は、

「いえ、大丈夫です。何でもありません。それよりお客さん増えてきましたね!しっかり頑張ります!」

と笑顔を作って接客を始めた。

目の前のお客様の応対をすることで、何もかも忘れたかった。

きっとこの仕事をしてなかったら、部屋に閉じこもってしまってたかもしれない。

接客を通してお客様との掛け合いすることが、今はなぜか救われる。

 

アズ美がテンションを上げて笑顔で商品をお勧めして、どんどん商品が売れていくのを店主の藤永は、

(なんかすごいな…)

と驚きながら見つめていた。

でも、この高いテンションは天真爛漫な明るさではなく、どこか病的な高揚感にも見える。

(あいつ、大丈夫か…)

店主の藤永は少し不安も感じた。

 

 

つづく