男性は
「これ、あなたが勧めてくれたから買うよ。色んな電気屋に行ったけど、みんな機能の説明ばかりだったからわけわからんかった。あなたの熱心さに感心した」
とのお客様の一言にアズ子は胸がいっぱいになった。
「ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!」
と何度も頭を下げる。
売場は多くのお客様いたが、アズ子にはこのお客様一人しか見えないほどの嬉しさだった。
頭の中は学生時代にオーケストラ部で演奏したベートーベンのエグモント序曲のコーダの部分、「勝利のシンフォニア」が高らかと響き、アズ子は感極まった。
人の熱い思いがモノづくりに繋がり、
人の熱い思いがそのモノの良さを人に伝え、
人はそれを感じてそのモノを手に取る。
それは画面の指先でクリックするだけでは得られないものだ。
アズ子は思った。
まだまだ寒さも厳しくなる季節。
雪の結晶のような輝きを放つ気高き精神がアズ子の胸に宿り、
やがてそれは春の飛躍へとつながる。
完