人より歯が5本多かった。もうダイアン津田を笑えない。


『アヒルと鴨のコインロッカー』を読んだ。著者:伊坂幸太郎





引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は――たった1冊の広辞苑!? そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ!」



その発言をよく眺めれば、実につまらないことなのだが、風貌から雰囲気、長身の青年(以下、河崎)を構成する全てが彼の言葉に諧謔性をもたらす。口車に乗せられるとはまさにこの事で、青天の霹靂はごく自然と夜に馴染む。並行して進む2年前でも変わらない河崎に振り回される人がいて、書店強盗とリンクする何かが確実に起きている。しかし、それは河崎同様に中々尻尾を掴ませてくれない。


昔、姉だか、両親だかに教えてもらいながら覚えたての物差しを使って直線を1本引き、終着点から角度を変えてもう1本引いたことがある。暗号のようだった。角度を変えてもう1本。やはり暗号だった。また1本。なんか見たことがあった。最後にもう1本。そうして出来上がった星にいたく感銘を受けて、その日は無我夢中に星を描き続けた記憶がある。その感覚と同じだ。それだけで十分魅力的な作品の連続が、1つの芸術を生み出す。