東京駅の中にある「麦まる」。うどんとおにぎりで400円くらい。

『西の魔女が死んだ』を読んだ。著者:梨木香歩



新潮社公式HPより


「中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。喜びも希望も、もちろん幸せも……。その後のまいの物語「渡りの一日」併録。」


2人の丁寧な暮らしは実に啓発的だった。少し努力をして、同じ暮らしをしてみたいものだ。しかし、私たちが環境から道具、その他一挙手一投足を真似しても、2人の1ヶ月は濃霧の先にある。うっすらとしか視認できないから、どうも本質を辿れない。しかし、それを物足りないと思わせないことが本書最大の魅力である。


おばあちゃんは艶かしく、老獪の雰囲気も併せ持っている。いかにも魔女らしいけれど、それらは纏めて羽衣に包まれている。そんな言葉で紡いだミステリアスが全てを開示しないその先に、想像の選択肢を浮かばせる。そこに僕らは踏み込めない理想郷を作り上げている。


達観した雰囲気を纏ってはいるが、やはり「思春期」に足を置くまいは「最期」は直情的になる。それは分かりやすい感動しか生まないはずなのに、そこはユーモアと洒落気で溢れかえっていた。


彼女が魔女になるための備忘録をうっかり覗いてしまったようだ。本人には秘密にしておかなければならない。「アイ、ノウ」見透かしたような声がどこからか響いた気がする。