この道を抜ける時 いつも思う事がある
旧 福知山線 廃線跡を友人と歩いた時の事

生瀬から武田尾温泉まで 
およそ10キロ程 武庫川沿いを行く
いくつものトンネルを通って
到着した後の楽しみは
あったかい温泉に浸り 
冷たいビールを飲む事だ

記憶から離れないのは
懐中電灯の明りもおぼつかない
トンネルの中での体験

音もなく 広さも分からず
自分の身体さえも感じなくなり
五感が封じ込められて
脳髄だけが闇に浮遊している

自分の存在が確認出来ない
不思議な感覚 …


                *


閉じているのか
開かれているのか
私は時々この道を歩く

森の 深い静寂の中に入り
浄化された空気に包まれていると
まるで水底に沈んでいるかのようだ


もう一度 あのトンネルに
ひとりで 入って
そこで じっと座っていたいと思う

発狂するだろうか …