私は殆ど父を知らない
私が生まれた後
念願の 男子誕生で
「家」の重圧から 逃げたのだろう
父は故郷と私達 家族を捨てた
恋しさの余り
山頭火や放哉にイメージを重ね
美化し、膨らませて来た
虚像は 見事に崩れ落ち
数々の コンプレックスの残骸は
その後の私を 苦しめた
…
何処を漂流していたんだろう
ハーモニカ 一本と小さな手帳を遺して
54歳で 父は逝った
手帳には
少年の頃 遊び呆けたであろう 故郷の
山や川、牛などのデッサンで
隙間もない位に 埋め尽くされていた
故郷も家族も 捨てねばならない
それ程のものが
何故、父にはあったのだろう
朝まで酒酌み交わし
娘としてではなく
他人事のように
お父さん あなたの胸の内を
聴いてみたかった