『一生懸命やってもらいました。』
受験で受からせる事が出来なかった生徒の保護者に言われるのが辛い。
やるだけやったんだからと妥協してしまいそうになる自分が嫌いだ。
正直受験は毎年怖い。
怖くて仕方がない。
うちの塾は、生徒が発表の日にすぐ電話をくれる。
どんな結果であっても。
そして全員が塾に帰って来る。
あの電話を待っている時間、合格できなかった生徒の顔、ろくなことが言えない自分。
毎年積み重なっていく。
今年の生徒も全員、俺を信じてくれた。
志望校を見ればわかる。
怖くて仕方がない。
本当に怖い。
強気な自分を前面に出している分、1人になると弱気になる。
だから仕事に集中する。
365日、頭が働く限り受験受験受験。
生徒生徒生徒。
入院したくない。
パソコンを持ち込んで仕事はできるが生徒の顔が見えない。
こんな俺でもいなくなると生徒は動揺する。
毎年、受験のたびに今年で辞めよう。今年で辞めようと思う。
でも辞めることができない。
この仕事から逃げ出すことは赦されない。
信じてくれる生徒と保護者がいる。
酒は飲まない。ギャンブルもしない。
趣味も全部辞めた。
それでも生徒全員を合格させることが出来ない。
今度は何を捨てればいいのだろう。
わからないから仕事に打ち込む。
数字と結果と実績は裏切らない。
ひたすらにそれを積み上げる。
毎日毎日考えて考えて、もう良いだろうなんて思わずに考える。
母親の葬儀の日も、火葬の日も、父親が突然死んだと知らせを受けた日も喪服のまま授業をしていた。
親不孝だとは思わない。
どんな日でも受験が怖い。
怖いから毎日仕事をする。
俺の都合なんて受験は待ってくれない。
だから毎日仕事に打ち込む。
うちの塾の生徒はみんな勤勉だ。
毎日塾に来て、笑いながら、泣きながら、楽しみながら、悔しさを握りしめながら頑張ってくれている。
1年生、2年生であっても22時まで全員が塾に残る。
帰れと言っても誰も立たない。
その生徒達を送り迎えしてくれる保護者も毎晩毎晩遅くまで待ってくれている。
受験生に至っては22時半までだ。
なんて塾なんだろう。
俺はこんなにも信用されている。
だから余計に受験が怖い。
今年の生徒達は今までで一番勤勉だ。
俺は何ができるだろう。
怒ればいいのか、笑えばいいのか、褒めればいいのか。
おそらくその全てだ。
人間は感情の生き物だ。
辛いものは辛い。
何で受験問題で86点も取って悲しい顔をさせてしまうのか?
周囲が90点以上だからだ。
甘やかしたくなる。生徒も自分も。
良くやってるって。
でもそれは後で必ず良い結果にならない。
だから褒めてあげられない。
それは努力している生徒に失礼だ。
妥協は出来ない。
受験の本当の怖さを彼らは知らない。
その日、その時間は着々とせまって来る。
俺は知っている。
受験は時に、とても無表情に生徒を深く傷つける。それを知っている。
あの辛さよりは憎まれた方がましだ。
だから怒る。叱る。
それでも生徒はついてくる。
保護者も協力してくれる。
出来る事を探さないと。
まだまだ何かが足りない。
怖がらず踏み出そう。あと一歩前に。
何者も怖れなかった時代のように。
受験に何度も何度も心を折られ、弱気になって踏み出せなくなった。
怖いものは怖い。
辛いものは辛い。
だけど踏み出そう。
一歩前に。
その一歩が今の自分には足りない。
勇気が欲しい。
一歩を踏み出して良いと誰かに言って欲しい。
だけど、自分で踏み出すしかない。
俺は塾長なんだから。
背中を押してくれる人はいない。
だからこのブログで踏み出そう。
生徒を信用しよう。信じよう。
人を信じよう。
この一歩を何年間も踏み出せずにいる。
生徒が信じてくれるのだから、自分が結果を怖れて距離を置くのは辞めよう。
本当の俺を生徒は知らない。
だから知ってもらおう。
一歩前に踏み出そう。
逃げて自分を失うくらいなら自分の全てを生徒に残していこう。
生徒たちは俺の蜘蛛の糸。
君たちは俺に救われるんじゃない。
救ってくれるんだ。
本当の自分が心の中に閉じ籠っている。
生徒たちは俺の蜘蛛の糸。
これが最後のチャンスかもしれない。
上に上に。
人間は空を見上げる生き物だ。
その糸を掴もう。
踏み出そう。そして掴もう。
何年間かかっただろう。
この一歩に。
生徒を救っている訳じゃない。
今年、俺は救われる。
信じよう。
だから一歩前に。
今日は必ず一歩を踏み出す。
迷わず、躊躇わず、怖れず、顧みず。
前を向きその糸を掴め。
そして上に上に。
俺の全てを全部、残すつもりでいるから、発表の日には全員が笑って欲しい。
今日からの俺が本当の俺だ。
このブログを投稿したら後には引けない。
もう明け方だ。仕事がまだある。
投稿してしまえ。
必ず晴れやかな気持ちになるはずだ。
いつも昔の自分に憧れ、憎み、嫉妬して数年間を生きて来たんだから。
あの頃の自分を取り戻す。
あの頃の自分を越えたい。
今年の生徒と一緒に。