〇〇は布団の中で、少しだけ目を細める。
部屋が静か。
外の月も、遠くの街の灯りも、
ゆんぎの声も、全部が少し丸く聞こえる。
「私、ちゃんと大人?」
そう聞くと、
ゆんぎはすぐに頷く。
「大人。」
「仕事で疲れて、悔しくて、酒で少し荒れて」
「それでもメイク落として、水飲んで、偉かったな。」
それから、〇〇の額に指先で軽く触れる。
「だから合格」
「酒で荒れたから満点じゃない。合格」
〇〇が「満点じゃないんだ」って少しむくれると、
ゆんぎは笑う。
「毎回飲みすぎなんだよ...けど満点じゃなくたっていい」
その言い方が、
少し厳しいのに
でも、見捨てない温度を感じるトーン。
〇〇が布団の中から手を出すと、
ゆんぎはその手を取る。
指を絡める手前で、少しだけ止めて、
それからゆっくり絡める。
急がない。
奪わない。
ただ、そこにいる。
「ねえ」
「ゆんぎ、帰るの?」
〇〇がそう聞くと、
ゆんぎは少し眉を上げる。
「帰ってほしいのか?」
〇〇が首を振る。
ゆんぎは小さく息を吐いて、
ベッドの上に片肘をつく。
距離が少し近くなる。
「じゃあ、帰らない」
「お前が寝るまでいる」
〇〇が「寝たら?」って聞くと、
ゆんぎは当然みたいに言う。
「寝たら、少しだけ見てる」
「ちゃんと眠れてるか確認してから帰る」
「ほんとに確認だけ?」
〇〇が小さく聞く。
ゆんぎは少し黙って、
それから意地悪く笑う。
「確認だけじゃないかもな」
でも、そのあとすぐ、
額にこつんと軽く触れるだけ。
「今日はこれで十分」
「酔ってるお前に、これ以上砂糖は足さない」
ずるい。
ちゃんと甘いのに、ちゃんと止める。
それがまた、好きになるやつ。
〇〇が少しだけ目を閉じると、
ゆんぎの声が近くで落ちる。
「〇〇」
「今日はよくやった」
「悔しいまま終わったのも、悪くない」
「悔しいってことは、次を見てるってことだから」
手首の内側を、またゆっくり撫でる。
「でも今日は、もう考えるな」
「明日の〇〇に渡せ」
部屋の中に、柔らかい香り。
ガーゼケットの肌触り。
遠くの月。
隣にいる気配。
ゆんぎは最後に、少しだけ声を甘くする。
「俺が何しに来たか、まだ分からないか?」
〇〇が薄く目を開ける。
ゆんぎは、あずの手を握ったまま言う。
「お前を、今日から連れ戻しに来た」
「仕事からも、酒からも、不安からも、悔しさからも」
「ちゃんとこの部屋に戻すために来た」
それから、額にもう一度、静かに触れる。
「だからもう、戻ってこい」
「俺の隣で、溶けてろ」
そして、少しだけ笑う。
「寝るまで、まだ話してていい」
「でも酒は終わり」
台無しにするみたいな一言。
でも、その一言まで含めて、安心する。
ゆんぎは布団の端を整えて、
〇〇の手を握ったまま、声を落とす。
その夜、
月の見える窓の横で、
〇〇は少しずつ眠くなる。
ゆんぎはまだ帰らない。
合鍵を持って、
当たり前みたいにそこにいる。
そして小さく、最後に言う。
「今日もよく頑張ったな、〇〇」
「おやすみにはまだ早いなら、もう少しだけ撫でてやる」