『にんじん物語』
ストーリーは、兄弟の末っ子に生まれた彼は赤い毛、顔がそばかすだらけで
家族から「にんじん」とあだ名で呼ばれている一人の男の子のお話。
にんじんは、お母さんやお父さん兄弟とうまくいっておらず、本人も少し変わっている。
お母さんからの厳しいしつけ、お父さんの冷たい態度をとられている・・・
小学生の低学年くらいで読んだ時は、
「にんじんはなんてかわいそうなんだ」「家庭でイジメられてるんだ」
児童虐待のツライ悲しい話だと受け取っていた。
大人になってから考えると、にんじん自身の思い込みのような描写も見受けられ
虐待の話、とは言えないのかもしれないと思った。
それは、にんじん自身も変わった行動をとる子供だというところ。
虐待によって精神的に不安定ともとれるが、子供の頃というのはみんな情緒不安定ではないか。
"少し変わっている"という印象で周りから見られる子というのは独自性があって
結構しっかり自分の考えを持っていたりする。
それが故に、大人や社会を斜めから見たり、同じであることを嫌う傾向にもある。
そして、感受性が強いと他に対してとても敏感になる。
子供は自分が感じたままにしか受け取れないもの。
自分の困った行動に対する親の反応も、自身の非を認識していないと
ただ拒否された、否定されたと感じてしまったり、その裏にある愛情を理解するには難しい。
小説自体、にんじん視点であることからわかりずらいけれど
客観的な視点の描写から、そういうことが読み取れるところはある。
訳仕方や、出版された年代によって解釈は変わっている作品なのかもしれませんが、
虐待の中でも独自性を失わず自我を持って逆行を生き抜いている少年
・・・の話なのかもしれないし、
こういった主観と客観性があいまった話なのかもしれないのです。