お正月が近付くと思い出します。

学生時代、なぜか覚えさせられた百人一首。


「あ~あったね~。」

「もう、忘れちゃったよ。」

友人達は口々にそんなことを言います。


でも私の場合、この歳にして未だに百首覚えています。


記憶に擦込まれたものは、そう簡単に忘れるものじゃない

…と言うより、短い言葉の中に込められた深い感情に

心から感動した記憶があるのです。


たった三十一文字に、これほど心を込められるなんて…

古の人々の繊細な感性に脱帽せざるを得ません。


当時は『恋』が生活の中心であったため、そのほとんどは

恋歌ですが、それだけに引き込まれやすい要素が過分に

あるとも考えられます。


どれも甲乙つけ難い中で、私の一番のお気に入りは

權中納言敦忠(ごんのちゅうなごんあつただ)の歌




逢見ての のちの心にくらぶれば

  昔はものを思はざりけり




現代でもハッキリと意味が分かる明快さ。

それでいて誰しもが一度は感じたと思える心を、真芯で

表現しているような気がします。


千年以上の時を経て、今なお心に染みる恋歌を

雅やかな気分で新年に堪能する…


それが私にとって、最高に贅沢な正月の楽しみなのです(^^)