怖い体験は幾つかしてるけど、その中でもとくに!

ってのがこれでしょうなぁ。


もう10年以上も前、私が営業の仕事をやっていた頃の

話です。

打ち合わせの約束の時間よりだいぶ早く着いてしまって、

その頃はまだ携帯電話もないですから、先方の都合も

確認できませんしとりあえず車の中でぼ~っと時間を

潰しておりました。


そのうちに、ウトウトしてしまい浅い眠りの中へ…


ふと約束の時間が気になり、時計を確認しようとしたのですが

身体が全然動かない…俗に言う金縛りというやつですね。


それまでも何度か金縛りの経験があったので、自分では

わりと冷静に、

「まず眼は開くんだよ、それで何も見えなきゃただの疲労。

で、疲労だと思えば身体が動く。よし。」

などと自己確認をしながら、ゆっくりと眼を開きました。

なにしろ平日の夕方。とはいえ周囲もまだ明るいし、そうそう

変なことなんてあるわきゃありません。


ところが私の眼に飛び込んできたのは、見知らぬおばあさん

の顔でした。

ジッと私の様子を覗き込んでいるようです。

しかもその体勢が、どう考えても車の天上に腹這いになって

覗き込んでいるような状態なのです。つまり頭が逆さま(恐)


血の気が引く音というのを、初めて聞いた気がします。

とにかくもうぶっ飛んでしまい、眼をギュッと瞑ると必死に

知りもしない南妙法蓮華経だか南無阿弥陀仏だかを唱え

ました。

やがてフッと身体の力が抜け、金縛りが解けたことで恐る恐る

眼を開けると、おばあさんの姿は消えていました。


すごく長い時間のようでしたが、実際はほんの3分ぐらい。

私が車をとめていた場所は、大きな木がちょうどいい木陰をつくって

いる民家の脇で、かなり快適な場所だったのですが、もうそれどころ

じゃありません。結局その場所はすぐに離れ、喫茶店で時間を潰し

打ち合わせに行きました。


3日後、その家の前には葬式の花輪がいくつか出ていました。


怖くて確かめられませんでしたが、あのおばあさんが亡くなったんだ

ろうなぁと、自分なりに解釈しています。