さいたまネクストシアター 世界最前線の演劇2 第三世代 | アクエリアス

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さいたまネクスト・シアター 世界最前線の演劇2「第三世代』



さいたまネクスト・シアターが国際演劇協会日本センターと共同し、世界各地の優れた同時代の戯曲を上演によって紹介することを目指すシリーズの第2弾。
今回はイスラエルのヤエル・ロネンによる「第三世代」を中津留章仁の演出で上演する。



ドイツ、イスラエル、パレスチナを巡る対立の根源を探ろうとする、ホロコーストとイスラエル建国とナクバ後の“第三世代”の若者たちの語り合いと対峙を描く。

これまでの日本の演劇では経験したことのない斬新な試みと芝居パターン。
アフタートークで中津留氏も話してくれたが、複雑な二重三重構造の舞台で、議論劇や劇中劇も混ざり合ってくる。

2009年のベルリンでの上演は、アラビア語とドイツ語と英語で喋る戯曲で、2つの言語が分からない仕組みになっていたとか。
今作は全部日本語で語り、全部分からせる設定に変更。それでも日本人は演じ慣れてないし、難しい言葉や背景も理解しないといけなく、とにかく大変な作業である。それでもこの戯曲をやりながらの彼らの成長は間違いない。

ドイツ人4名、イスラエル在住ユダヤ人3名、イスラエル国籍パレスチナ人3名。
彼ら彼女らの言い分や考えを聞いていくうち、少しずつ共鳴できる人、反発してしまう人が出てくるのがポイント。
私は特に反ユダヤ主義ではないが、ユダヤ人たちの言い分にどんどん腹立たしくなってくるからフシギ。
総じて、男性の言い分は好戦的で頑固、女性の言い分は柔軟だが感情的だ。

クールドライなドイツ人カルステン(内田健司)はどこの国でもウケはいいようだが、確かに冷めた考えには納得。パレスチナ人のラウダ(井上夕貴)はボリューム感を活かしたパワフルな言動が頼もしい。
ユダヤ人イシャイ(松田慎也)が悪役っぽい立ち位置になってたが、あえて悪役を探すなら、三国のコーディネーターを気取ってたドイツ人ニールス(高橋英希)だろう。
とにかく銃やマシンガンの殺傷能力の高い武器を出したら負けだろうな。

解決の道は見つけられなかったが、色々とあれこれと考えさせられて興味深かった。
たまにはこういう異色の演劇も刺激的だ。


アフタートークで、アラブ文学の山本薫氏が補足。
1948年にパレスチナの地にイスラエルが建国、パレスチナのアラブの人たちは国をもてなくなった。パレスチナとは元々そこに住んでいたアラブ系の人たちを指すが、実は3種類いて複雑だという。
①パレスチナ難民
②イスラエル支配に入らなかった地域のアラブ人(パレスチナ自治区)
③イスラエル市民権をもてたアラブ人
実はイスラエル人とは、8割がユダヤ人で2割がアラブ人だという。
この複雑な構造が、今回の舞台にも影響していて、『第三世代』に出演したパレスチナ人3名は、難民でもなければ自治区にも住んでいない、イスラエル在住の人達だった。
これが、この舞台の最大のオチだろうな。どうせなら難民と自治区に住んでるパレスチナ人も呼んでほしかった。
まあ、さいたまでは日本人が演じているんだけど。

公演は11月18日まで、埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 NINAGAWA STUDIO(大稽古場)にて。

次にさいたまで観劇するのは『ヘンリー五世』