シアターコクーン・オンレパートリー2016 『メトロポリス』
フリッツ・ラング監督の無声映画『メトロポリス』や原作をアレンジ、串田和美の演出で舞台化。
実力派の豪華キャストを得て、様々な表現方法に挑戦している。
DJマリアの慰めとほのかな恋を、支配者と労働者の闘いやメトロポリスの崩壊と共に描く。
現代にも繋がるメッセージや、恋愛や親子の葛藤と悲劇など、言いたいことは何となく分かる。だがわざと前衛的な表現で複雑に難儀に見せる演出が、どうにも嫌気がする。
芝居と語りと歌とダンスパフォーマンスで構築する、これは演劇ではなくアートなのだろう。
正面から見たシーンはそのまま一枚絵として飾れ、見る者の心を動かすのだろうか。
だが演劇としては散漫で雑、ひどく退屈でつまらない。これまで何度かウトウトさせる舞台に出逢ったが、これはほぼ眠れてしまう愚鈍なステージだった。
松たか子は歯切れのいい声で語り、意外とよく動きアクションや踊りもこなし、柔軟性と多様性を魅せる。
ダンスに定評のある森山未來はクネクネを中心に卓越した動きを披露するが、台詞にもキレがあり情感豊かな演技力を発揮。
ほぼ松たか子と森山未來だけで支える舞台だが、印象的なキャストも多い。
佐野岳はもはやアクロバット俳優の域だが、台詞が殆ど無いのが残念。
趣里の声とメイクがチャーミング。大方緋紗子の落ち着いた声と所作に安心感。串田和美はしつこそうで目立つ役柄。
森山未來フレーダーの分身の2人が素晴らしい身体能力。
分身や影や偽者まで現れて、何が何やらの複雑怪奇。ジャングルジムのような可動式セットを幾つも何度も動かし場面を作り上げるが、意味不明なものも多い。
劇中台詞に「ノアの方舟」「子どもたち」が出てきて、ミュージカル『黒執事』が浮かんでしまう。さしずめ佐野岳やパフォーマンサーみんな“ノアの方舟サーカス団”に入団できるだろう。
台詞はなく、様々なダンスパフォーマンスと映像と音響だけで作られた『WASABEATS』のほうが、まだ見応えはあったと思う。
メトロポリスと現代の渋谷を重ねて見せるが、109は出てきてもAiiA theaterが出てこない。
むしろこういうオタク風な演目は、串田さん以外の演出家で、AiiA theaterでやるのが相応しいのかもしれない。



