舞台『幽霊』
ヘンリック・イプセンの傑作を、文学座公演でもお馴染みの鵜山仁の演出で、実力派豪華出演者でおくる会話劇。
夫亡き後、屋敷を守り孤児院の開院式に臨むアルヴィング夫人を中心に、様々な人間模様、屋敷に現れるという幽霊、そして別れを描く。
月影先生の「気温を感じさせる芝居」ではないが、舞台となるノルウェー・フィヨルドを思わせるような、長く濃い闇と一筋の光を体現したような人物ばかりが登場。
どの役者も天と地ほどの振り幅の大きい芝居が求められ、存分に発揮されてるのが醍醐味。
アルヴィング夫人以外の人物は、舞台袖やガラス壁越しからも、くぐもった声が聞こえてくるのが興味深い。
アルヴィング夫人の浅海ひかるは、物腰も優雅で品があり、凛とした佇まい。息子を溺愛する様子が自然で、一番感情移入させやすい。ムンクの叫びのような表情が印象的。
息子オスヴァルの安西慎太郎は、現代っ子とも重なる、甘えとプライドの放蕩息子ぶり。パイプを燻らし気取る様子はイヤミがない。
グレーをベースの親子の衣装が品良く、夫人のドレスは透け感もあってセクシーだ。
吉原光夫のエングストランは、見た目も口調も怖い迫力、出てくるだけでもデンジャラスな雰囲気。脚の添え木で歩き辛そうだ。
夫人の小間使いのレギーネの横田美紀は、芝居の雰囲気が吉高由里子に似ていてキュート。
常識人のマンデルス牧師は、小山力也の柔軟な演技で人が良さそうな忠義者に見えるが、一番のくせ者でもあった。
1幕は殆どがアルヴィング夫人とマンデルス牧師との会話で、やや退屈ではあるが、膨大な台詞を完璧にこなす2人の芝居が圧巻。
2幕では隠された真実が浮き彫りになっていき、サスペンス基調で降下してスリリングだ。
ワンシチュエーションだが、照明と音響の力で、様々な色を見せる演劇。
エングストランは望みが叶えられ、颯爽と出ていく。
レギーネは白いエプロンを投げ捨て、黒い蝶と化し羽ばたいていく。
コートに帽子と黒ずくめで去っていく牧師は、保身を暗示しているのか。
髪を何度も振り乱し、タイやボタンも取り外して素肌を曝け出すオスヴァル。彼が終始追いかけていた、小さな光への憧憬が切なく残った。
終演後アフタートーク。
安西慎太郎、吉原光夫、小山力也に、急遽、演出の鵜山仁さんが加わる。
鵜山さんの演出について、みんなベタ誉め。「ストレスがない」と光夫さん、前の現場では余程ストレスがあったのか。
紀伊國屋ホールで力也さんを観るのはフル・サークル以来。笑う内容ではないのに、「面白かったらガハハって笑ってイイですよ」ってw。力也さんの面白さこそ笑いを誘うわ。
ジャージー・ボーイズの時みたいに、司会者が途中で丸投げ、結局トークの牽引役は光夫さん。
安西くん効果か、紀伊國屋ホールには珍しく、今日は若い女子いっぱいの客席だった。





