ミュージカル『HEADS UP!ヘッズ・アップ!』。
裏方を主役にして、「“仕込み"と“バラシ”を描く」バックステージもの、しかもミュージカルで!
ラサール石井さんの長年の夢がやっと実現した渾身の舞台である。
舞台を作る人たちに焦点を当てたコメディものだと、堤泰之さんの『abc』シリーズが真っ先に浮かぶが、本格的ミュージカル仕立てというのは稀有な様相。
冒頭から狂言回しとして観客との橋渡しになる中川晃教が圧倒的な歌唱を聴かせ、ブロードウェイさながらの煌びやかさで、先ず表舞台を見せる。
栃木の寂れた劇場という設定なのにw。
そしてガランとして何もまだない裏舞台。
大道具担当の橋本じゅん&芋洗坂係長&上原理生の元不良設定トリオのパワフルな歌と芝居に圧倒。彼らにイジられる入野自由がヘタレな若者役で実にキュート。
舞台監督の相葉裕樹がほぼ出ずっぱりだが、この役どころは『マジェプリ』を思わせる。その相葉くんを導くのは、カリスマ舞監の哀川翔で、2人の信頼に満ちたやり取りがいい。
制作担当の青木さやか、小道具担当の新良エツ子、女優として美しいオーラを振りまく大空祐飛ら3人の歌やコーラスが素晴らしい。裏の番長ならぬ、女の存在感が強烈に見える。
衣装担当のMINAMIはハスキーでピュア。哀川さんとは本当の親子共演。一緒のシーンでは娘を見守るような表情が見て取れる。
老俳優役の今拓也さんがMINAMIさんを娘として抱く場面では、見守る哀川さんから嬉しくも誇らしく羨ましいような感情も伝わってくる。
ミュージカルスター・今拓也さんの歌はさすが絶品だが、劇中の「○○の靴」のフレーズとダンスがいつまでも頭にこびり付き、喜劇俳優としての一面も覗かせた。
錚々たるベテラン勢と共演し、ダンスでも芝居でもしっかり支えて盛り上げる男女アンサンブルの豊かなこと。バク転も披露した青柳塁斗は老俳優や女優とも絡んで、良き経験を積んだと思う。
そして生演奏の臨場感で楽しませたミュージシャンの皆さん。
バラシでもさり気に溶け込み作業された本物の裏方さん。
ホントに様々なパワーとバランスが集結した舞台だと実感させる。
楽曲はどれも耳に馴染んで、キャストの魅力を輝かせる。照明や音響、振付も程良い安定感。
音楽へのラサール石井さんの拘りも感じる。
更に若手のソロもふんだんに使い、ラサールさんの若者への信頼感が嬉しい。
ただ演出家としての拘りなのか、劇中の演出家や演出助手の描き方が中途半端で、もう少し活躍させて欲しかった。
劇中劇のストーリーもイマイチ不明だ。カテコにも王様と妃、その他アンサンブルしか登場しなかった。劇中作品を通して何かを啓発されるものではないらしい。
客席通路を頻繁に使うのはいいが、拍手や手拍子を誘導するなど、少々強引な手法は鼻に付く。
お隣のご婦人なぞ、観劇中、度々ウトウトされていたが、手拍子になると目を覚まし手を叩いたりと、見てるだけで可笑しかった。
ラストの鏡の演出も蜷川さんを彷彿させる。
『abc』のように、舞台を通しての若者の成長を描いたものではなく、ベテランから若手へ思いや仕事を「繋ぐ」話でもあった。
舞台監督、大道具、そして付き人から始まる新たな女優の誕生か。
何より、この「劇場の思い」と「舞台魂」を後世にまで繋いでいく、大らかなハートフル・コメディであった。
ラサール石井さん司会で、アフタートーク。
相葉裕樹&入野自由&上原理生のあいう順。
歌が苦手な相葉くんだが、主人公にもソロをというラサールさんの思い入れで、劇場入りしてからソロ曲を渡されたそうだ。
声優としても活躍中の入野くんだが、ラサールさんは奥様と一緒に「おそ松さん」を観てるってw。
哀川翔さんもトーク中に急遽参加。細かい所に気づき気さくでキュートな方とみんなで褒め称え。
哀川さんからは、稽古前にみんなストレッチしてて開脚もできてビックリしたと、飾らない褒め言葉。
和やかな雰囲気と楽しいトーク内容だった。
お花スタンド。
映画「図書館戦争」が真っ先に目を引いた。
惜しむらくは、KAATという立地の悪さと広過ぎる劇場。
2階3階席はガラガラで、ちょっと厳しい手応えとなった。













