ジャン・ジュネの傑作戯曲を、若手俳優の矢崎広と碓井将大が交互に上演。
多岐川裕美が色を添えての三人芝居。
正面最前列で、やや上段にステージ。
まるで檻に囲まれたような舞台で、隣家の隙間から覗き見する感じ。開演すると檻の半分が天井へ上がり、照明の妖しさも手伝って、臨場感と緊張感が立ち込める。
ソランジュとクレールの姉妹が、夜な夜な奥様の部屋で催す虚構の鬼畜芝居。そこへ不意に旦那様の電話と奥様の帰宅があり、姉妹は女中たちとして振舞うが…。
全編、女たちの会話劇。
表情や動きもポイントで、台詞よりも見た目に重点を置いた演出か。
女中に扮した矢崎くんと碓井くんは、時に声音を使い分けて、芝居がかった台詞や長台詞に挑戦。その忍耐強さと集中力はさすがといえよう。
女を演じるとはいえ、若い2人は女装するわけでもなく、むしろ擬態化。声も身体もいかにも“らしく”見せるが、核に男を残すのがこの舞台の面白さ。
だから脚を広げ、スカートを捲り上げ、激しい首締めや取っ組み合いもありのままに繰り広げられる。度々、2人の白長パンツが見え隠れw。
うつろいだ翳りのある彼らの表情は色っぽいが、艶めいた色気は感じない。
こういう台詞劇だと、演技の上手さや経験が判明する。
昨年、井上和彦&水島裕のおっさんコンビで同じ「女中たち」を観たので、つい聴き比べ。
矢崎くんの苦味走った顔が和彦さんに似ていてビックリ。声やトーンにも安定感があり、小さな台詞も聴き取れる。さすが声優経験もある役者。
だが演技に定評があった碓井くんは、台詞が妙に上ずっていて、早口が馴染まず、イマイチ聴き取り難い。表情や動きで補って見栄えはするが、台詞や声の力不足感は否めない。
いま考えると、クレールの水島裕さんの台詞は実に分かり易く、これぞ実力派役者だったんだなと思い出した。
それに、和彦さん&裕さんの中には長年培った関係性が感じられたが、矢崎くん&碓井くんの間にはまだ余所余所しさが残っているようだ。
多岐川裕美さんが50分過ぎに登場すると、若い彼らの実力がなお分かる。
美しく華やかな出で立ちでパッと場の空気を変えるが、彼女の声と台詞が何とたおやかで気持ちよく届くこと。ちゃんと受け手を考えている言葉のやり取り。あらためて多岐川さんの実力と存在感を思い知る舞台でもあった。
和彦さん&裕さんの時の奥様役は三ツ矢雄二さんで、グレーゾーンを脱却した美しい女装には驚いたが、やはり本物の女優さんは抱えてるオーラが違うw。
今回は、多岐川裕美さんがいてこそ成立する舞台だろう。
ラストは、先に観たものと内容がやや違っていて、重く美しく締めた感。
碓井くんの慈愛を持った穏やかな顔と対照的に、悲痛に歪んだ顔と眼に光るものを見せて役を全うしていた矢崎くん。彼の本物めいた涙を観るのは初めてで、ドキリとした。
500円高いマダムシートはかなり間近に彼らの姿を観れるのだろうか。
正面席は、ここぞという場面をストレートにたっぷりと見せてくれる。やはりセンターブロックは抜群。
役が逆バージョンの公演も取ってはいたが、予定が入ってしまい手放す必要。碓井くんの台詞もネックかな。
別キャストでいつか観たいものだ。





