劇団俳優座創立70周年記念公演第5弾。
安部公房の戯曲『巨人伝説』。
伝説の巨人でもなく、進撃の巨人でもない、ダイダラボッチがモチーフ。
1960年に錚々たる名優陣で好評を得た作品を、若手の眞鍋卓嗣の演出で再演。
初演はもちろん知らず、54年ぶりに蘇る新生「巨人伝説」である。
女主人と元巡査が一緒になるため、15年の歳月と、とある犠牲と打算が必要となってくる話。
1960年の寂れて黴だらけのうどん屋と、1945年のストーブのある交番とが、盆によって回り、交差しながら進行。
元巡査・大貫役の中野誠也さんと、女主人の川口敦子さんが、何度も衣装変えして登場し、台詞も動きも多く結構大変そう。
大貫が信仰して唱える「ダイダラボッチ」のまじないは、映像で大男を出現させ、万能な自分へと置き換える。
大貫のまじないも女主人には通用せず、迷いの中で、ただ泣き喚くだけ。
肝心な時に、男は大きくなり女は小さくなることにする。そしてどちらもこう呟く。
「まぁ、仕方ないか」
この無責任ぶり。この他力本願ぶり。
登場人物に良い人はおらず、誰にも感情移入できない、極めてドライでシュールな作風だった。
それにしても共同体や世間体の中では、普通の人でも、我が子だって見捨てることができるのか。
日本人であるためには、自分も家族も捧げなければいかないとしたら、何と面倒で不条理なのか。
「お国のために」命を捨てるのが、どんなにバカらしいか今では知っているが、いざ戦争でも起これば、すぐ「お国のために」を庶民は強要させられるに違いない。
日本人であることは、なんと過酷で切ないことなのだろう。
マッピングを駆使した映像でスピーディ感。音響も繊細で不気味で迫力がある。
たまに登場するサブキャラが紙を咥えたり見せたりと、よく分からない演出。
推敲を重ねて丹念に施した演出だが、本来この作品が持つ生々しさには、あまり合わないように思った。
劇団俳優座の次回公演。
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劇団岸野『好きだってぇのに』。




