千葉大学のエコチル調査では

母子約7万8,000組のデータを用いて、生殖補助医療により生まれた子どもの3歳時点の神経発達について解析を行った。(エコチル調査千葉ユニットセンター・千葉大学予防医学センター「Reproductive Medicine and Biology」に掲載)

 

要約

1.エコチル調査に参加している約78,000組の子どもと母親のデータを解析した。

2.生殖補助医療(体外受精または顕微授精)により生まれた子ども、その他の不妊治療(排卵誘発・人工授精)により生まれた子ども、自然妊娠で生まれた子どもについて、3歳時点の神経発達を比較した。

3.体外受精、顕微授精、その他の不妊治療により生まれた子どもは、自然妊娠で生まれた子どもと比べて、3歳時点で発達の遅れの頻度が高かった。

4.多胎妊娠を除外し、両親の年齢など不妊に関係する要因の影響を取り除いて解析を行った場合、体外受精、顕微授精、その他の不妊治療により生まれた子どもは、自然妊娠で生まれた子どもと比べて、発達の遅れのリスク増加は認められなかった。

5.体外受精、顕微授精のうち、凍結胚移植、胚盤胞移植により生まれた子どもは、自然妊娠で生まれた子どもと比べて、発達の遅れのリスク増加は認められなかった。

 

医療技術ではなく、親の年齢など不妊にかかわる要因と多胎妊娠が関係する可能性

親の背景(年齢、出産経験、社会経済状況、基礎疾患など)と子どもの性別の影響を取り除いて解析を行うと、不妊治療と自然妊娠との差は減少。さらに妊娠合併症(糖尿病・妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群)と胎児の発育不良の影響を取り除いて解析を行うと、体外受精グループも自然妊娠との差はなくなった。さらに、単胎児(双子や三つ子ではない子ども)のみを対象として、親の背景と子どもの性別の影響を取り除いた解析を行うと、体外受精、顕微授精、他の不妊治療のいずれのグループも、自然妊娠との差はみられなくなった。

これらの結果から、生殖補助医療や他の不妊治療では、子どもの発達の遅れがやや多くみられたが、体外受精、顕微授精という治療技術そのものが原因とはいえず、主に、親の年齢など不妊にかかわる要因と多胎妊娠が関係している可能性が示された。