今日は、うつ病の時に見た幻覚のお話です。
幻覚とは
実際に感覚的刺激や対象がないのに、あるように知覚すること。
幻視・幻聴など。
私はうつ病の時、幻覚に悩まされました。
誰にも見えないものが、私にだけ見える状態。
周囲は私に
「そこには何もないよ」と言いたそうでしたが、
私にしてみれば、
「何で見えないの?」
という気持ち。
でも、変な人と思われたくなかったので、
私はいつも幻覚を見ていないふりをしていました。
しかし、ある時
幻覚が見えるだけなら無視をすれば周囲をだますことができていたのに、
幻覚の実体を感じてしまいました。
そうなると、もはや幻覚ではなく現実でした。
そのときのお話。
◆◆◆◆◆◆
ある日の会社帰り、駅の構内にいました。
突然、目の前がぐにゃりと歪みました。
人も壁も地面も、ぐにゃぐにゃ。
貧血?と思ったけど、意識はしっかりしていました。
「また幻覚かな?仕方ない。線路に落ちないように真ん中を歩こう」
と周囲にばれないように涼しい顔を作って歩こうとしました。
すると、ズボッ!
右足が地面にめり込んでしまいました。
あわてて両手を地面について体を支えました。
「あれ?幻覚じゃないの?これは現実?」
驚いて、周囲を見ましたが、
みんなは普通に歩いています。
もう一度、自分の右足を見ると、地面の中に入っている・・・。
「・・・そうきたか・・・。」
現実に、足が地面にめり込む事はありません。
すぐに、また新しい脳の異常が発生したと悟りました。
私はめり込んだ足をコートで隠しながら、
「落し物を拾ってるだけです」という顔で
ゆっくりと右足を引き上げました。
右ヒザを立てて、忍者のポーズでバランスをとりながら、
安全な場所はないか辺りを見渡しました。
すると、ちょうど3m先にベンチがありました。
「とりあえず、あのベンチにつかまろう」
しかし、目の前はぐにゃぐにゃと揺れており、
まるで船の上にいるように体も左右に振られています。
たった3mですが、立ち上がって歩くことはできなそうでした。
おそらく2、3回は地面に手をついてしまいそうです。
その駅は会社から一番近い駅でした。
変な行動を誰かに見られるわけにはいきません。
そこで私は周囲を見渡し、誰もこちらを見てない隙に
シュパパパパー
地面を這う忍者のように移動しました。
今思うと
「そんな姿見られたら、余計に恥ずかしいわ!」
と言いたくなりますが、当時の私は真剣です
ベンチにたどり着くと、両手でしがみつきました。
その途端、
下半身が波にさらわれるように後ろに引きずられました。
幻覚なのに、すごい力です。
こちらも負けられないので、
手の力だけで体をベンチの上に持ち上げました。
さいわい、ベンチの上は揺れがなく、安全でした。
目の前のグニャグニャがおさまるまで、
ベンチの上で電車を何本かやり過ごし、
落ち着いた後、電車に乗って帰りました。
◆◆◆◆◆◆
現実に、地面に足がめり込む事はありません。
私も「そんなことが起こるはずがない」と、
何度も見返しました。
でも、今でも
ふくらはぎに当たるぐにゃっとした感覚が忘れられません。
夢なのか?とも思いましたが、
その前に起きた出来事や、
電車を数本遅らせて、帰宅して見たテレビの時間などを
考えてみると、
現実の生活に時系列でぴったりと合わさっており、
どこまでが現実で、どこから夢なのか、区別が付きません。
「それとも、
私はパラレルワールドに迷い込んでいるのか?」
と真剣に思っていました。
現実味のない不思議な日々でした。
私は当時、この幻覚について数名の友達に相談しました。
しかし、私の説明不足もあって信じてもらうことはできませんでした。
「夢でも見たんじゃない?」
「疲れてるんだね」
優しい言葉をかけてもらっても、
誰一人自分を理解してくれる人がいないというのは
寂しく孤独なものです
私のように脳の異変で本人がうまく説明できない時、
このようなパターンもあると認知されたら
誰かの助けになるかもしれないと思って
このお話をいたしました。
もちろん、今回の幻覚のお話も、
うつ病の人すべてに当てはまるわけではありません。
見える幻覚の内容も、その感じ方も人それぞれです。
何かの参考になれば、幸いです