映画感想「シラノ」 | 大TOKYOしみじみ散歩日記

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お独り様となった50路男の、ぶらぶらノンビリンの東京物語

映画・マンガ・小説・芝居・テレビに動物
そして大切な母ちゃんとの想い出も時おり混ぜ合わせて

書き留めてゆきたいなと、思います


『シラノ』(2021)

17世期のフランス
30年戦争の真っ只中にあっても、シラノの作家として詩人として哲学者として
そして武人としての名はいよいよ高まっていた

彼には心に秘めた人がいる

ロクサーヌ

幼い頃からの仲良し、愛しき人
彼女のためなら命は要らない、彼女のためならなんでもしよう
シラノはそう決めていた

ある日、彼はロクサーヌと待ち合わせをする
愛しい彼女からの願い事に心を上気させ、彼はその美しい声に耳を傾ける

好きな人がいます。彼の名はクリスチャン
彼はやがて貴方のいる衛士隊に入ります。どうか仲良くしてあげて、危険な目に遭わさないで、友達になってあげてくださいね

クリスチャンはイイ男だ

ロクサーヌが一目惚れするのも御尤も
しかしシラノはガッカリした
彼女が惚れた男の中身が空っぽだったから

有頂天の2人を取り持たなくてはならなくなったシラノは詩人に徹した
美しい愛を詩いあげ、クリスチャンの名でロクサーヌに毎日手紙を送ったのだ


やがて…

夜のとばりが降りるころ

彼女と直に逢うというクリスチャン

君の手紙には感謝する。でももう平気さ、彼女にキスをするだけだから
自信満々のイイ男を優しく見守るつもりのシラノだったが、想定外の問題が…

嗚呼、素晴らしい漢の浪漫

岩波文庫の復刻戯曲を読んで読んで読み耽った20代

ニューヨークのヨーロッパ映画専門館、シャンデリアが城内を照らし、背もたれの無い板張りの舞台小屋風の劇場でフランス人たちと見て、騒いで笑って泣いたドパルデューの映画版に酔った26歳の冬


あれから30数年

まさかのミュージカル映画版を見る事になるとは

まさかのキャラクター総改変を見る事になるとは

想像もしなかった新世界がありました


当たり前ですがストーリーはそのままですから

浪漫あふれるプラトニックなラブストーリーを弄りはしていませんが

ミュージカルにすべきだと思う程の曲が揃っていただろうかという、そもそもの疑問と

あまりにロクサーヌを今風の女の子と捉え過ぎてはいないか?というあたりに改変したさがありありと伝わり、見ていて気持ちの良いものではありませんでした


1600年代のフランスに黒人やアジア系らしき兵士がいたのか?とか

この背格好のシラノが幾人もの刺客を一人で追い払えるものなのか?という視覚的な注文は控えても

新しい書き手のセンスが邪魔をしてしまっていたのは間違いありません


シラノを演じたピーター・ディンクレイジは好演

「スリー・ビルボード」で主人公の友人を颯爽と演じていて気になる存在でしたが

今回の堂々主演はお見事でした



全体に勿体ない出来栄え
そんな気になるミュージカル映画です