映画感想「仁義なき戦い 代理戦争」 | 大TOKYOしみじみ散歩日記

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お独り様となった50路男の、ぶらぶらノンビリンの東京物語

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そして大切な母ちゃんとの想い出も時おり混ぜ合わせて

書き留めてゆきたいなと、思います

『仁義なき戦い 代理戦争』


岩戸景気が続いていた昭和35年
広島を牛耳る勢いであった村岡組の跡目候補が白昼惨殺されるというキナ臭い出来事から始まる
オリンピック前年の、昭和38年までを描く集団抗争
心理劇
新しい登場人物の中では村岡組の次の跡目候補と目されながら、優柔不断と臆病さを見透かされてしまい周囲から呆れられるも、したたかに世渡りを続ける
打本昇の軟弱ぶりが際立っています
彼の気弱さは、既に時代が斬ったはったの任侠世代が幅を利かす時代ではなく
算盤感情と風向きを読む商才に長けているのが何よりである事を物語は描き

それを感じながらも風下に立つ主人公・広能や、村岡組の解体によって山守組に属する武田や松永、江田といった直情タイプや仁義優先型の者が徐々に身の置き所に腐心するようになってゆくのが、本作の伏線にもなっていました

公開されている新作の感想に(必要悪)としてヤクザを語るものがたまにあります
甘いなあ

この群像劇を見れば、かつて黒澤明が「酔どれ天使」で(仁義?そんなものはヤクザ同士の安全保障条約みたいなもんさ)と言わせたように
利権を争う事が戦後ヤクザの目的となり、地方行政に食い込んで土建土木や警備業を営んで資金を作り
新しい利権を奪い合う事を繰り返したのですから

一人二人の古臭いヤクザの生き方に共感して、ヤクザも満更じゃないと平気な顔してのたまうのは

本編においてボロ切れのように殺される青年ヤクザと、その母親の慟哭に
どう声を掛けるのでしょうか
(でもヤクザも必要悪だから)と言えます?

ちなみに松永のモデルになった人物
本編で描かれたように堅気になるよう勧告されて足を洗い
後にビルメンテナンス会社を経営し、成功されました

まだ
仁義という言葉に力があり
任侠という言葉に拠所となる輝きがあった
その最後の時代を生きていた新旧の思考で渡り合った連中の、意地の張り合いを生き生きと描いた

(2021.3.4より転載)