映画感想「ロリータ」(1997) | 大TOKYOしみじみ散歩日記

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お独り様となった50路男の、ぶらぶらノンビリンの東京物語

映画・マンガ・小説・芝居・テレビに動物
そして大切な母ちゃんとの想い出も時おり混ぜ合わせて

書き留めてゆきたいなと、思います

『ロリータ』(1997)

ハンバート・ハンバートの人生は少年時代に幕が下りていました
愛しい人を失った彼の傷はそれほどに
彼の心から、ときめきや感動
そして愛を奪い去っていたのです

歳を重ね、イギリスでの生活に見切りをつけアメリカのニューハンプシャーに教員の職を得たハンバートはつてを辿り、シャルロット夫人の屋敷に部屋を借りる事にしましたが
一番の決め手は
夫人の娘で未成年のドローレス(愛称〜ロリータ)に
心を奪われたからでした

無垢なる者への愛情はやがて、肉体の誘惑へと2人を誘い
美しさと醜さがせめぎ合う愛の残酷を描き出してゆくのです
表現の制限が多かった時代に製作されたキューブリック版の方が安定した評価を得てはいるのですが

私にとっては、この1997年版はリアルタイムで接した強烈な悲恋モノでしたし
なんといっても随所に流れるエンニオ・モリコーネのメロディに聴き惚れます
https://youtu.be/sJ4dHLd-EOs

封印してきた愛と夢が一気に吹き出して
ロリータに翻弄される事さえ悦びに感じてしまう中年男性の悲哀は
今の私の歳だと、とてもリアルな物事として捉える事も可能です

そう
人は幾つになっても、己の欲するものへの執着や憧れは完全に捨て去る事など出来ない生き物
ハンバート自身が人生の希望を失ったと思い込み美化してきた少年時代の記憶も
瑞々しく生々しい少女の瞳に脚に矯正中の歯に
敵わないという哀しみ

ハンバートもシャルロット夫人も、ロリータも
時の流れに弄ばれた哀しい人生を
私たちに見せてくれます

"脚"にテーマを持たせた画が印象的な
前に進めなかった人々を見つめる優しい悲劇でした